2016年1月31日日曜日

米中軍事衝突の可能性(2):米艦、中国実効支配の島沖12カイリ内を航行

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● トリトン島

 アメリカがおそるおそる中国に対峙しはじめた
といった感じがする。
 選挙を控えて、オバマの考えにも若干の動きがでてきたのだろうか。
 アメリカが強く踏み込むことは、いまのところ考えられない。
 そっと、足を入れた、といったところだろう。


●テレビ朝日系(ANN) 1月30日(土)23時20分配信


●TBS系(JNN) 1月31日(日)1時18分配信


●フジテレビ系(FNN) 1月30日(土)22時44分配信



読売新聞 2016年01月30日 23時16分
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160130-OYT1T50064.html

米艦、中国実効支配の島沖12カイリ内を航行

 【ワシントン=大木聖馬】米国防当局者は30日、米軍のイージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」が南シナ海・パラセル(西沙)諸島で中国が実効支配するトリトン島の12カイリ(約22キロ)内で、航行の自由を訴える巡視活動を実施したことを明らかにした。

 同海域で活動を行ったのは現地時間の29日。米軍による巡視活動は、昨年10月にスプラトリー(南沙)諸島の人工島・スービ礁で実施して以来だ。米海軍の活動を誇示することで、力による海洋進出を続ける中国をけん制する狙いがある。

 米国は今回、トリトン島の領有権を主張する中国、ベトナム、台湾には事前通報をせずに国連海洋法条約で認められている、敵対行動を取らない「無害通航」で通過したという。今回の行動について当局者は、「過度に海洋権益を主張して米国や他国の(航行の)自由を制限していることに挑戦するものだ」と説明した。



毎日新聞 1月30日(土)21時25分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160130-00000074-mai-int

<西沙諸島>米艦、12カイリ内に…中国が実効支配

 ◇「航行の自由」作戦

 【ワシントン和田浩明】
  米国防総省は30日、中国が全域を実効支配する南シナ海・西沙(英語名パラセル)諸島にあるトリトン(中建)島の12カイリ(約22キロ)内に米海軍艦船を派遣する「航行の自由」作戦を実施したと発表した。
 米国は昨年10月にも南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で同作戦を実施。今後も定期的に続ける方針だ。

 西沙諸島では、1974年にベトナムと中国が武力衝突し、現在は中国が全域を実効支配。
 ベトナム、台湾が領有権を主張している。

 米海軍横須賀基地を母港とするイージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」が派遣され、現地時間30日に航行した。
 同省は、トリトン島周辺海域で外国船舶の航行時に事前通告や許可取得が求められるなど「過剰な要求」が行われていると主張。
 対抗措置として、領海内で国際法上認められる「無害通航権」に基づき事前通告なしで航行したと説明した。
 同省は「領有権の主張について特定の立場を示すものではない」と強調。
 あくまで米国を含む全ての国に認められた海洋・空域の合法的な使用の権利などを保護することが目的とした。

 南シナ海では28日、台湾の馬英九総統が、ベトナムやフィリピンなどが領有権を主張する南沙諸島・太平島を訪問し、中国もこれを支持。
 米国務省は「対立の平和的解決に資さない」と不快感を表明した。
 こうした事態を受けた今回の作戦には、航行の自由を侵害するような一方的な領有権の主張を控えるよう促す意図がある。
 トリトン島付近では、中国が2014年5~7月に石油掘削装置(オイルリグ)を設置するなどしてベトナムと対立。双方の船が衝突しベトナム船が沈没する事件も起きた。

 ◇中国「法に違反」

 【北京・石原聖】中国の領海法第6条によると、中国は「外国の非軍用船」に「無害通航権」を認めているが「外国の軍用船」には「中国政府の許可を取ること」を義務付けている。
 中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)副報道局長は30日、談話を発表し
 「米軍艦は法に違反し、無断で中国領海に入った」と批判。
 「中国の法律を尊重・順守するよう促す」と要求した。

 中国国防省の楊宇軍報道官も同日、「違法行為が関係海域の良好な秩序を破壊した」との談話を発表した。


●ANNニュース


WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年02月09日(Tue)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6044

日本が採るべき新たなる対中戦略 
情報共有と“逆A2/AD戦”の必要性

 新アメリカ安全保障センター(CNAS)のヴァン・ジャクソン客員研究員が、Diplomat誌ウェブサイトに1月6日付で掲載された論説において、
 アジアで対中バランスをどう維持するかにつき、
 海域の常時哨戒を行い、
 中国による一方的行動を速やかに把握してその情報を広くシェアすること、
 中国に仕掛ける気を起こさせない抑止力を持たせること
といった、現実的な提案を行っています。

■対中戦略に求められる3つのこととは

 アジアにおける米国の政策の目的は、安定した自由な秩序を維持することだが、最近はアジア諸国間の信頼の欠如、軍事力強化、領土問題とナショナリズムによって、この目的の達成が阻害されている。
 しかも、中国は微細な主張を強引に通そうとし続け、予想外の紛争を起こしかねない。

 現在の米国の政策は、これらの問題を止めようとしていない。
 しかしこのまま進めば、米国のアジアにおける利益は阻害される。
 何ができるだろう?
  戦争にもならず、一方的に譲歩することにもならない解決策が今ならいくつかある。

1].一つは、米国の同盟相手及びパートナーのうち、
 中国と紛争に陥る可能性が高い国、例えば日本、台湾、ベトナム、フィリピンの軍事力を高めることである。
 これは、これら諸国に中国と同等の軍事力を備えさせるということではなく、抑止力を高め、中国の行動を慎重にさせるためである。

2].もう一つは、情報をできるだけガラス張りにすることである。
 中国は南シナ海領土紛争で、軍ではない力を行使し、「これは力の行使ではない」と強弁するが、情報をガラス張りにすれば、このようなことを難しくすることができる。
 そうなれば、いずれの側が仕掛けたかもわかるし、中小国が団結して中国を非難しやすくなる。

 そのためには、米国はアジアの関連国の海上偵察能力を向上させるのが良い。
 それは既にフィリピン、インドネシアで行っていることであり、シンガポールにP-8哨戒機を供与することも正しい一歩である。
 しかしこれはまだ「大海の一滴」であり、2017年に予定されるMQ-4C Triton無人偵察機配備等で米国が収拾する情報は、同盟国、友好国ともっとシェアするべきである。

3].さらにもう一つは
 いくつかの同盟国・友好国の軍事力を高め、中国がこれら諸国との初期段階の小さな戦闘では勝てないようにしておくことである。
 これは、中国が米国に対して取っている「接近阻止」戦略を逆に行くものである。
 そのためには、これまでのMD(ミサイル防衛)、巡視船の供与だけでは不十分である。
 水中機雷、潜水艦、巡航ミサイル、種々の無人機の供与が不可欠だが、これは例えばベトナムに対する従来の政治的・法的制限そして融資上の制限措置を解除することを意味する。
 もっとも重要なことは、先端ミサイル、無人機の供与を制限しているミサイル技術管理レジーム(MTCR)を改正することである。

 以上では生ぬるいと言う者がいるだろう。
 逆に以上の措置は、戦争の危険をかえって高めるという者もいるだろう。
 米国の技術流出を心配する者もいるだろう。

 しかし、以上の措置は、戦争と一方的譲歩の中間を行くものである。
 今日の技術開発は軍事研究より民需部門で行われており、技術の流出を過度に心配しても仕方ない。
 如上の3つの方策は並立し得るものでもあり、将来の大統領の対アジア政策を最も柔軟なものにできるだろう。

出典:Van Jackson,‘Rethinking US Asia Policy: 3 Options Between Appeasement and War’(Diplomat, January 6, 2016)
http://thediplomat.com/2016/01/rethinking-us-asia-policy-3-options-between-appeasement-and-war/

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■米軍自身の言及なき提案

 この論説の筆者Van Jacksonは、空軍の朝鮮語専門の情報担当としてキャリアを開始、その後一貫してアジア太平洋関連の国防畑を歩み、2009年から2014年まで国防長官の顧問として朝鮮半島等を担当してきた人物です。
 この論説は、アジアで対中バランスをどう維持するかについて現実的な提案を行っており、オバマ後の政権を主たるターゲットとした提言でしょう。

 提案の肝は、
 海域の常時哨戒を行い、
 中国による一方的行動を速やかに把握してその情報を広くシェアすること、
 同盟相手・友好国に中国との小型戦闘では勝てる力をつける、
 つまり中国に仕掛ける気を起こさせない抑止力を持たせること(中国が米国に対して適用している「接近阻止:の戦略を逆用)、
 そのために水中機雷、潜水艦、巡航ミサイル、種々の無人機の供与まで検討すること
です。

 しかし、気になる点もあります。
 まず、米軍(特に海軍、海兵隊)自身についての言及がほとんどありません。
 豪州の役割についても言及がありません。
 この論説の趣旨には賛成できますが、アジアの安定を地域諸国の間のヤジロベエ的相互抑止に委ねてしまおうという発想であるとすれば、要注意です。

 そして、日米同盟の役割について言及がありません。
 日本で論議を呼ぶのを警戒したのか、それとも、国防省でも日本担当者以外のマインドはこの程度のものなのかは分かりません。

 東アジアのバランスについては、中国、北朝鮮の核兵力、ロシアの新型巡航ミサイルが呈する脅威等も議論する必要があります。
 3月末には米国で核安保サミットが開かれるので、立場を整理しておく必要があります。

 日本の対中抑止力を整備するためには、日本の空母保有を米国が明示的に認めること、F35の供与を急ぐこと、巡航ミサイル、無人機技術を供与することが有効でしょう。







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