日本は『農協 月へ行く』といわれるほどまず農村から豊かさが始まった。
それを支えたのが農協というシステム。
政策的には選挙制度と米の政府買い上げである。
農村対都市の一票差は数倍あったことがある。
農村にはたくさんの国会議員がいて、彼らが補助金を国から分捕って農村にばらまいた。
その結果として、都市住人より農村住民の方が豊かになり、海外への集団旅行に先鞭をつけたのは農民であった。
そして最後は月に行くことにもなった。
もう一つ、これを支えたのが米の自動買い上げ制度である。
政府の米の自給政策により農家で作られた米は自動的に国に買い上げられた。
その価格が高いといわれた生産者米価である。
そして、その価格より安い値段で国民に配られた。
消費者米価である。
この差は農民を豊かにする施策でもあった。
もちろんのこの差額は国民の税金であった。
つまり、
政府はまず先に農村を豊かにするために
都市で働く労働者の税金を農村につぎ込んだ、
ということになる。
ここで忘れていけないことは、米軍の占領政策で農地解放が行われたことである。
これにより、これまで小作業であったものが農地を持つことになった。
つまり自動的に財産をもつことになった。
言い換えるとタダで農地を手にいれることになった、ということである。
これまで耕していた農地の生産物を、そのときからすべて自分の手に入れることができた。
このことによって、戦前の農民と戦後の農民は一気に様変わりした。
豊かさの基本は土地を持つということから始まっている。
この土地を担保にすることで耕運機や肥料や新しい情報が農協から供給されることになった。
資産をもつことによって、次の手が打てるというチャンスを得ることができるようになった。
これまでに賃仕事から経営農業へと変わっていった。
彼らをサポートしたのが農協である。
これにより、日本は農村から豊かになっていった。
戦後のベビーブーム以降は集団就職といわれるように、貧しい農村から都市に若い人が動いた。
ところがアット言う間に、「さんちゃん農業(「じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃん」)」といわれるように、年寄りでもできる農業が農協の手によって推進され、作られた米は自動的に高値で国が買い上げる形になっていった。
集団就職の若者たちが営々と都市で働いているとき、豊かな農村は海外旅行を楽しんでいた。
お正月に故郷に帰った若者は、親たちからハワイ旅行の話を聞くはめになったのである。
結果として農村の年寄りから先に豊かになった、
ということである。
たくさんの国会議員が農村にいて、せっせと動いてくれたわけである。
現在は
「都市にも公平に豊かさを回せ」、票の格差は憲法違反
ということで一票の格差は2倍以下になるように時々に調整されている。
日本の豊かさは農村から都市へと広がってきた、
ということになる。
いまは、農業、工業に続くサービス業という第四次産業の時代に入っている。
これからどうなって’いくのか、第五次産業が現れるのか、先は見えていない。
『
JB Press 2016.1.14(木) 川島 博之
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45733
中国の未来を悲観的に見なければならない理由
農民を豊かにできなければ真の大国にはなれない
20年以上にわたり奇跡の成長を謳歌して来た中国経済が曲がり角にある。
2015年の第3四半期の成長率は6.9%、実態はもっと悪いとされる。
年明けに株式市場が急落したことを見ても、中国経済が岐路に立つことは明らかであろう。
今後、中国はどのような道をたどるのであろうか。
新年にあたり、少し焦点を引いて、長期的な展望を考えてみたい。
■今後の中国は「農村」にかかっている
中国の将来についてエコノミストの意見は分かれている。
★.楽観派は、高度成長は無理としても1人当たりのGDPが8000ドル程度であることを考えると、年率数%の成長は可能と見る。
それによって2025年頃には米国と肩を並べるようになると考える。
★.悲観派は、中国の不動産バブルは深刻であり、その崩壊によって成長が止まると見る。
日本ではそれをきっかけにして共産党支配が崩壊するとの予測に人気があるようだ。
筆者は農業・農村から中国を見てきたが、今後、中国が成長を続けて米国をもしのぐ大国になるかどうかは、その農村政策にかかっていると考えている(「農業」政策ではない)。
彼ら(農民)を低賃金で働かせることによって、中国は安い工業製品を作り出すことに成功した。
それが奇跡の成長をもたらしたが、その果実は都市戸籍を持つ人々が独占してしまった。
日本に爆買いにやって来る人々は、ほぼ全員が都市戸籍である。
■工業による成長の限界
今後、中国がより豊かな国になろうと思うのなら、奇跡の成長に取り残されてしまった農民戸籍を持つ9億人を豊かにする必要がある。
だが、それは極めて困難な作業になる。
農民工の賃金を無暗に上げることはできない。
現在、農民工の月給は日本円にして6万円程度にまで上昇した。
そのために、工場が中国よりも開発の遅れたベトナムやバングラデシュに移る動きか加速している。
“China+1”である。
これ以上、農民工の待遇を改善し続ければ、輸出競争力を失う。
そしてより重要なことは、
★.すでに多くの部門が過剰設備を抱えており、
もはや工業によって国を豊かにすることができなくなってしまった
ことだ。
このまま農民を農民工として働かせていても、一向に農工間格差を是正することはできない。
この先、農民を豊かにするために残された道は、農村にサービス産業を起こすことだ。
現在、どの先進国においても産業の中心はサービス産業である。
■一向に埋まらぬ戸籍格差
そのような目で見ると、中国の未来は限りなく暗い。
農民を馬鹿にしてきたことのつけが回って来たとも言ってもよい。
そもそも、「都市戸籍」「農民戸籍」などと言って、戸籍によって人を区別することがおかしい。
戸籍制度は共産党が作ったものだが、このような制度ができた背景には、農民を一段下の人間として見る中国の伝統があった。
だが、農民をないがしろにしてきたことは、中国が経済発展を続ける上で大きな足かせになっている。
国務院人口調査(2010年)によると、中国の大都市(城と呼ばれる)の人口は4億人であるが、そこに住む人の22%は大学を出ている。
23歳に限って見れば大卒の割合は42%にもなる。
一方、約6億人が住む農村(郷と呼ばれる)の大卒割合は2%に過ぎない。
23歳に限っても8%。
都市と農村の教育格差は大きい。
工業が発展する際には勤勉な人材が求められる。
学歴は中卒や高卒程度でも十分だろう。
しかし、
サービス業が発展する際には創造性が豊かな人材が不可欠だ。
それには高度な教育が必要になる。
中国の未来を悲観的に見なければならない理由が分かるだろう。
都市と地方の教育格差が中国ほどではない日本でも、地方にサービス産業を根付かせることに苦労している。
それを考えれば、大卒人口が2%でしかいない中国の農村にサービス産業を育成することは不可能に思える。
■岐路に立つ中国
マクロな観点から見ると、
★.戸籍制度によって都市住民と農民を峻別した中国は工業化に適した社会
であった。
しかし、農村部でサービス産業が発展し難い社会になっている。
その結果として、米国を上回るような国になることができない。
米国は田舎にもそれなりに教育が行きわたり、規制緩和が進み、言論や報道の自由もある。
サービス産業が発展するインフラが整っている。
それに対して、中国の農村部は教育の普及が著しく遅れ、かつ規制が多く、言論や報道の自由がない。
そんな状況でサービス産業が発展することはない。
農村部の教育に多額の投資をするなどして格差の縮小に勤めれば、少々回り道になっても中進国の罠にはまり込むことなく、少しずつ成長を続けることができるだろう。
しかし、農民を馬鹿にして彼らを低賃金労働者としてしか見ないような態度を貫けば、中国がこれ以上に発展することは難しい。
工業化が一段落した現在、中国はまさに岐路に立っている。
2016年は中国が今後どのような道をたどるかを見極める上で重要な年になるだろう。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2016年2月8日(月) 22時10分
http://www.recordchina.co.jp/a128492.html
いつか来た道、30年前の日本人の「爆買い」―中国メディア
2016年2月5日、2015年度の日本の「新語・流行語大賞」の年間大賞を獲得した「爆買い」という言葉は、すでに日中関係史において無視することが困難なほどの言葉になっているが、日中両国に複雑な感情をもたらしており、中国では多くの人が何とも言えない気持ちを抱いている。
湖北省の医薬品企業の経営者は最近、「日本まで行って風邪薬を購入するのは中国の製薬会社にとって屈辱だ」と語る。
日本では中国人の「豪快さ」を手を叩いて喜んでいる人がいるが、
「日用品を買い占める」、
「マナーを欠くことが多い」
などの指摘や中国人による「爆買い」がなくなるのではないかとの懸念も上がっている。
環球時報が伝えた。
▼今年、日本は中国人観光客の「爆買い」ピークを迎える?
日本では春節商戦に備え、各大型商業施設は早くから戦闘態勢を整えていた。
在庫を確保し、「春節おめでとう」というラベルを貼り出すだけでなく、定着した銀聯カードの上にさらに中国のモバイル電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」や「微信支付(WeChat Payment)」を売り出している。
2月3日から日本は2週間近くの間「祝・新春フェア」を開催し、前年比より売上高25%増、集客数40%増を達成するよう懸命に取り組んでいる。
▼30年前、農家が日本の「爆買い」をリード
1980年代に入ると、日本人は続々と海外旅行に出かけていった。
日本の「爆買い団」の中でも農家の人々が先陣を切った。
なぜなら彼らの所属する農業協同組合(農協)は最も早く組織的に、継続的な海外旅行を行なう団体だったからだ。
香川県で農業を営む高山さんは当時の農協海外「爆買いツアー」に参加した一人だ。
高山さんは、
「今思うと、当時ヨーロッパに行ったとき、私達は大勢の人に不快な思いをさせただろう」
と話す。
「私は日本人のマナーが悪いとは言えないと思う。
あの年代は海外に行く機会が非常に少なく、東洋と西洋の交流も少なかった。
私達はわざとやったわけでない。
なので今、日本に来る中国人や韓国人のマナーが悪いというのを聞くたび、そうではないと思っている。
文化の違いは確かに存在する。
当時の日本人にそっくりなところが、ある意味同じことを繰り返している感じを覚える」
と語った。
(提供/人民網日本語版・翻訳/JK・編集/武藤)
』
『
2016.2.5(金) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45986
中国化工、遺伝子組み換え食品に食指
5兆円強でスイスの農薬大手を買収する狙いとは
(2016年2月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国の国有化学企業、中国化工集団(ケムチャイナ)がスイスの農薬大手シンジェンタに提示した
「430億ドル(5兆円)」の買収金額
について最も注目されるのは、
中国企業による海外企業買収計画で過去最大であることだ。
中国化工が昨年、イタリアのタイヤメーカー、ピレリを買収した際の金額の5倍以上にのぼる規模だ。
だが、中国化工は大胆に海外進出する一方で、国内市場を強く意識しながら、そうしている。
◆肥料と農薬から多角化図る
中国化工はいわばタコのような組織で、化学品から石油精製、タイヤに至るまで幅広い事業部門を持つ。
同社のアグリビジネス部門は、肥料と農薬の主要生産者だ。
そしてこの2つは、中国政府が抑制したいと思っている環境に優しくない製品カテゴリーだ。
中国農業省は昨年12月、2020年までに肥料と農薬の消費の伸びを止めたいと発表した。
「基本的に(肥料と農薬の)市場の伸びがゼロになるだろう」。
台湾に本拠を構える調査会社ChinaAgのローレン・プエット氏はこう言う。
「中国化工はアグリビジネスのポートフォリオを多角化する方法を探している」。
中国化工に欠けているのは種子で、その意味ではシンジェンタは申し分ない買収先だ。
シンジェンタは遺伝子組み換え(GM)作物の4大生産業者の1つで、「7000種類」近い種子を持つ。
「最終的に中国化工は、現在持っていないGM種子の特許を利用できるようになるだろう」
とプエット氏は言う。
また、中核の化学事業から多角化を図ろうとする同様の願望が、中国化工によるピレリ買収を推し進める要因にもなっていた。
ピレリ買収によって、精彩を欠いていたタイヤ部門に魅力的なブランドが加わった。
長年中国化工を観察してきたある業界幹部は言う。
「彼らがピレリを買ったのは、川下方向にシフトし、化学品から遠ざかるためだ」。
ただし、1つだけ問題がある。米国がGM作物を受け入れているのに対し、中国では禁止されているのだ。
だが、中国化工は禁止措置が近く緩和されると見ている。
中国政府は地球上の耕作地の10%足らずで
世界の全人口の20%以上に食料を与えることに苦労しているからだ。
中国の農業生産高は米国のそれより40%以上低い。
GM作物はこの差を埋める助けになる。
「中国化工は15億人の人に食料供給を確保することに多大な関心を持っており、技術だけがその目標を達成できることを知っている」。
シンジェンタのミッシェル・デュマレ会長はアナリストとの電話会議で、こう語った。
さらに、中国化工は「企業買収に投資し続けることへのコミットメント」をはっきり示したと付け加えた。
◆中国政府もGM作物に前向き?
これについては中国政府も知っている。
中国はGM作物の選択的輸入を認めている。
少なくとも6種類のシンジェンタのトウモロコシのほか、昨年同社の買収に失敗した米国の巨大アグリビジネス企業モンサントからも同程度の数の輸入を認めている。
中国国務院(政府)は毎年、最初に公表する公式政策文書を農業に充てる。
「第1号文書」として知られる今年最初の文書は1月27日に公表された。
中国化工の任建新会長は3日、スイス・バーゼルで開いた説明会で、文書は「中国におけるGM技術の慎重な投入」を提唱していたと指摘し、中国政府は「この点に関して前向きな立場」を取っていると付け加えた。
シンジェンタとモンサントが組んでいたら、中国の規制当局から競争に関する懸念を招く可能性があった。
それと同じように、シンジェンタの米国事業を中国企業が所有したら、米国政府から厳しく精査される可能性がある。
任会長は以前、米国を訪問する査証(ビザ)を取得するのに苦労したと不満を述べたことがある。
デュマレ会長は、国家安全保障上の理由に基づき取引を拒否できる対米外国投資委員会(CFIUS)に対して今回の買収の承認を求める義務はないが、両社はそれでも承認を仰いだと語った。
M&Aを審査する責任を持つ欧州委員会の当局者らによれば、欧州連合(EU)法には、食料安全保障を理由にEUが買収を拒否できる仕組みが存在しないという。
EUの競争法は国家安全保障について適用除外を認めているが、そうしたケースはほぼ例外なく防衛関連の買収案件で使われた。
中国が実際にGM作物の生産を認めた時には、トウモロコシから始まるとアナリストらは見ている。
トウモロコシは、用心深い国民に売り込むのが難しいコメと異なり、主に動物の飼料として使われるからだ。
もし完了したとしても、中国化工とシンジェンタの提携は中国企業と海外企業がかかわる最初の農業パートナーシップではない。
中国化工の国営競合企業の1社である中国中化集団(シノケム)は2008年に、アジア7カ国で除草剤関連資産を取得するためにモンサントと提携した。
「農業部門の中国の業界首位企業は外に出て大型買収を行っている」
とプエット氏。
「中国化工はこのトレンドの一端にすぎない」。
By Tom Mitchell and Christian Shepherd in Beijing with Ralph Atkins in Basel
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