2016年1月13日水曜日

中国バブル崩壊(4):政府の過剰介入、,不安定となっている中国株は落ち着くのか?、弱気な当局

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ロイター 2016年 01月 8日 13:33 JST Peter Thal Larsen
http://jp.reuters.com/article/column-china-market-investors-idJPKBN0UM0DA20160108?sp=true

コラム:中国市場混乱、投資家は「最悪事態」憂慮

[香港 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
  前回から半年もたたずに、中国市場の混乱がまたもや世界を揺さぶった。
 昨年8月と同じく引き金となったのは人民元相場の急落で、これに続く形で中国株が下落した。
 株が売られた原因ははっきりしないが、世界の他の地域にとっては不吉なことだ。

 人民元の対ドル相場はわずか4日間弱で1.5%下げた。
 これは昨年夏に世界の投資家を驚かせた1回の切り下げにほぼ匹敵する幅だ。
 人民元安を契機に中国株は売り込まれ、上海の主要株価指数の下落率が7%に達した場合に適用される新たなサーキットブレーカーが2度も発動された。
 上海株式市場は7日午前に寄り付きからわずか30分でサーキットブレーカーが発動し、取引終日が停止された。

 今の状況については概ね2つの仮説を立てることができる。
★.1つは中国当局が、
 大幅な人民元切り下げは経済の窮状を解消する上で最も悪影響が小さい手段だとの結論に達した
というものだ。
 通貨安戦争が再燃するとの不安感から投資家はオーストラリアや韓国といった中国の主要な貿易相手国から逃げ出し、コモディティ価格にも下げ圧力が掛かった。
 ブレント原油も売られ、1バレル33ドル強に下落した。

 中国当局は、人民元は対ドルでのみ下げていると反論している。
 対通貨バスケットでみると人民元は昨年ほぼ横ばいだった。

 加えて中国は引き続き貿易収支が黒字で、通貨切り下げにより輸出競争力を高める誘因は小さい。

 しかしもし中国が大局的なプランを持っていないとすれば、
★.「中国の当局者は世界第2位の経済を統御できなくなりつつある」というもう一つの仮説
が有力になる。
 昨年の株式市場介入や人民元切り下げでの不手際によって、
 中国の役所の無謬神話は崩れた。
 今回の混乱により、中国当局は市場化を進めながら安定を保ち、実現不可能な成長目標の達成を目指し続けながら経済のバランス調整を進めるという、相反する2つの要求の折り合いを付けるのに苦慮しているという見方が強まる。

 中国の今回の市場混乱が意図的なものであれ、怠慢によるものであれ、投資家が最悪の事態への想定を強めることに何の驚きもない。

●背景となるニュース
*人民元相場は7日に一段と下げ足を速め、アジア通貨が幅広く下落するとともに、中国の株式市場も安くなった。
*中国人民銀行は7日の人民元の基準値を1ドル=6.5646元と2011年3月以来の元安水準に設定し、市場を驚かせた。
*7日の基準値は前日から0.5%の元安水準で、昨年8月中旬の切り下げ以降で最大の下げ幅。
*7日の上海株式市場は寄り付きから30分で7%下落。サーキットブレーカーが発動され、その後の取引が中止された。
*中国関連の貿易で代替通貨として利用される豪ドルは2カ月ぶりの安値に下げた。アジアの株式市場も幅広く売られた。
*人民元切り下げへの不安からコモディティ価格も下落。ブレント原油は2%以上下げた。
*中国外貨取引センター(CFETS)は、人民元が下落し続ける根拠はないとして上で、人民元相場は主要通貨バスケットでみて2015年に安定していたとの見方を示した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



サーチナニュース 2016-01-12 20:12
http://biz.searchina.net/id/1599512?page=1

中国株は落ち着くか?
ジョージ・ソロス氏「世界金融危機を連想させる」

 中国で金融市場が不安定となっている。
 1月4日、7日の両日に上海総合指数はともに7%も下落し、株価の急変動を防止することを目的としていたサーキットブレーカーが発動、取引が終日中止に追い込まれた。

 中国政府・証券監督管理委員会(証監会)は7日夜に「サーキットブレーカー」制度をいったん取りやめると発表したが、中国株式市場が落ち着きを取り戻せるかどうかは不透明な状況だ。

 中国発で世界同時株安が起きたことに対し、香港メディアの鳳凰網は8日、世界的に著名な投資家であるジョージ・ソロス氏がこのほど、
 「世界の金融市場は危機に直面している」
と指摘したことを伝え、現在の環境は世界金融危機が起きた2008年に似ていると述べたと報じた。

 2016年の株式市場は世界的に急落から始まった。
 記事は、1月6日までに世界の株式市場で
 約2兆5000億ドル(約293兆円)が蒸発した
計算になることを指摘し、中国株の急落によってアジアの株式市場では下落幅が拡大する場面が見られたと伝えた。

 続けて、ソロス氏がスリランカで開かれた経済フォーラムにおいて、中国は新しい成長モデルの模索に苦労していると指摘したうえで、現在の状況は「危機」と呼ぶにふさわしく、08年の金融危機を思い起こさせると述べたことを紹介した。

★.08年の世界金融危機の際は
 中国が4兆元(約71兆円)にのぼる内需拡大策を打ち出したことで、世界は危機を乗り越えることができた
と言われる。
 しかし、
★.中国の内需拡大策は生産能力の過剰や不動産バブル、シャドーバンキングなどの問題も生み出した。
 中国国内の諸問題は経済成長によって覆い隠されてきたが、経済成長の鈍化に伴ってさまざまな問題が顕在化しつつある。



レコードチャイナ 配信日時:2016年1月13日(水) 7時30分
http://www.recordchina.co.jp/a126820.html

中国株急落ショックは「毒薬」、
世界経済への影響は計り知れない―独メディア

 2016年1月11日、独国際ラジオ放送ドイチェ・ヴェレ中国語サイトによると、ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッシャー所長は、ドイツ経済は先行きが不透明だが、中国株の急落ショックで不確定要素が増えたと分析した。
 中国の株価急落は
 「すべての企業にとって毒薬」とし、
 「このショックが世界的な金融市場や経済にどう影響するか計り知れない」
としている。

 フラッシャー所長は、2016年のドイツ経済の情勢は楽観できないとし、疲弊した中国経済やその他さまざまな問題がドイツの輸出にマイナス影響を与えると指摘。多数の難民流入で失業率は下がるものの、ドイツ経済に積極的な要素をもたらすとの見通しを示した。

 中国経済の低迷のほか、ブラジルやロシア経済の衰退、中東危機、ロシア・ウクライナの関係悪化などもあるが、それらは欧州連合(EU)諸国にとってはプラスにも働くとしている。
 16年のユーロ圏経済成長は1.4%前後になると予測したものの、そうした中から得られる利益は多くはないと指摘。
 「スペインの経済情勢はやや好転したが、フランスの経済成長予測は1%を切り、失業率は11%と高い状態が予想されている」
と述べた。

 また、ドイツの経済成長の足かせとなっているのは投資不足が主因だと指摘。
 低金利で活況となっている不動産経済がいつまで続くかは不明だが、最も弱いのは設備分野への投資だとし、16年も個人消費が経済成長の要になるとの見通しを示している。



ダイヤモンドオンライン 2016年1月14日 陳言 [在北京ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/84544

株の“万里の長城”、
中国サーキットブレーカーが4日で崩壊した理由

 オーストリア=ハンガリー帝国生まれの作家フランツ・カフカは、生前未発表の古典『万里の長城』で、万里の長城の建設目的と理由を解き明かそうとした。
 カフカの目には、長城は誰の目からも見えるが、このような城砦(じょうさい)を建設した意義を明確に説明するのは大変難しいと映った。

 皇帝が北方部族の襲来を防ぐために建設を命じたという人もいる。
 しかし、カフカは中国の皇帝の意図は、奇想天外ではないと感じた。
 皇帝が命じる前に、関連した考え方がすでに存在していた。
 北方部族への備えというのは長城建設の本当の理由ではなく、正解は中国文化そのものから探し出さなければならない、と考えた。

 時は流れて、2016年1月に飛ぶ。
 中国証券監督管理委員会(証監会)は証券制度上の万里の長城を構築した。
 サーキットブレーカー制度である。
 この制度は「自動相場停止制度」とも呼ばれ、株の値動きが規定の限界点を越えた時、取引所はリスクをコントロールするために取引の一時停止措置を取ることを指している。
 しかし、残念なことに、この証券制度上の万里の長城は、北京郊外に2000年以上も聳え立っている燕の長城と違って、わずか4日で倒壊した。

■秀才が構築したサーキットブレーカー制度

 サーキットブレーカー制度の停止後、「財新ネット」の張楡記者は記事で、次のように書いた。
 「サーキットブレーカー制度には意見聴取の段階で、様々な意見が出ていた。
 業界は取引の持続性、変動性について憂慮を示したが、最終的に法案に十分盛り込まれず、この制度は懐妊半年、”享年4日"の短命政策に終わった」。

 昨年5月以降、中国の株価指数先物の1日当たりの振幅が次第に拡大し、「極端相場」が頻出し、サーキットブレーカー制度の導入を求める声が強まった。
 株価暴落後、市場改善の緊急システムとして、国際経験を参考にして、多くの専門家、学者が株取引サーキットブレーカー制度の導入を提起した。

 8月末になると、早い段階で取引所が上級監督層に提起していたサーキットブレーカー制度構築に関する報告が、何度も書き直されてから、最終的にトップレベルの決定を経て現行の規則が選択された。
 新華ネット、中国証券報等がこもごも同制度導入の必要性を論評した。

 9月7日、上海、深セン両取引所と中国金融先物取引所は同時に「サーキットブレーカー制度関係規定についての公開意見聴取に関する通達」を発し、市場に2週間のフィードバック時間を与えた。
 市場からはこの「意見聴取原案」で提起された細部について、多くの意見が噴出した。
 財新の記者は取材の過程で、ディーラー、ファンド、プライベート・エクイティ・ファンド(PE)等の市場関係者が具体的な内容に対して、異なる見方を示し、こうした制度はパニックを醸成する等々の憂慮を示した。

 「原案」に対する市場各方面からの意見、提言は4861本に達したにもかかわらず、「最終的に実施に移された規則はこの『原案』を大幅に改められたものではなかった」と、財新ネットの記者は書いている。

 11月14日、上海取引所はサーキットブレーカーの全面的なテストを行った。
 12月4日夜、正式に2016年1月1日の施行決定を対外的に発表した。

■制度開始からわずか4日で「夭逝」したサーキットブレーカー

 1月4日、株式市場は12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が予想を下回り、人民元レートが取引開始早々に暴落するなどのさまざまな悪材料が重なり、上海、深セン両市場は小幅下落で寄り付いた。
 13時12分、下落幅が第1段階のブレーカー制度発動数値の5%に達し、上海、深セン両市場、株価先物取引は15分間停止した。
 初のブレーカー発動時に、上海の下落幅は4.96%、深センは6.47%、中小企業向け市場「SMEボード」は6.50%、新興企業向け市場「ChiNext」は7.10%に拡大していた。

 13時27分、相場は取引を再開したが、下落幅は引き続き拡大し、大幅な売りによって、6分後にブレーカー発動第2段階の7%に達した。
 取引の新ルールを根拠に、市場は13時33分、取引を停止し、同日の取引は再開されなかった。
 初日に2度もブレーカー制度が発動され、取引停止になることを、市場は全く予想していなかった。

 1月7日、中国語の慣用句で「速い雷に耳をふさぐ暇がない」というように、取引開始からわずか13分間で株価が急落したために対処が間に合わず、サーキットブレーカーが再び発動され、市場の一時停止から直接全面停止に追い込まれた。
 わずか1分で5%から一足飛びに7%へと下落幅が広がった。
 ディーラーたちは「出勤したらすぐ退勤だ」と、冗談を交わしていた。

 サーキットブレーカー制度の停止の情報は早くから流れ、7日夜、人々は正式発表前から、携帯やパソコンの前で証監当局の発表を見守っていた。
 22時33分、取引所、証監会はサーキットブレーカー制度の一時停止を通達した。
 わずか4日の施行で、初のサーキットブレーカー制度は「夭折」した。

 証監会の中国式ライン「ウィーチャット」に流れたサーキットブレーカーに関する記者の質問に対する回答の閲読量は、数分の間に優に10万件を超えた。
 この制度は半年熟成させたが、デビューわずか4日で最終的に撤回され、練り直されることになった。

■政策の失敗によって一瞬のうちに失われた「130兆円」

 中国人民大学の洪○教授(○=さんずいに景+頁)はサーキットブレーカー制度を次のように論評した。
 「証監会当局者が最も望んでいた意図は裏切られ、市場の取引ルールを随意に変えようとしたが、
 試合をしながらルールを変えるようなもので、
 市場関係者の判断を混乱させ、彼らがどうすれば良いか分らなくさせ、市場を乱高下させた」。

 中国株式市場の乱高下は内発的な問題である。
 市場化改革が加速され、経済構造の調整が行われている時期に、成長の急激な減速、通貨デフレのリスクがまさに高まりつつある。
 中国上場企業の利益の乱高下は、経済の不確定性に伴って上昇している。
 こうしたリスクは簡単に取引ルールの操縦を通じて抑制されるものではない。

 中国の株式市場を見ると、日本などの国外証券市場と異なり、個人投資家が絶対多数を占め、保険などの機関投資家は重要な地位を占めていないことが分かる。
 「赤信号、みんなで渡れば怖くない」現象が、中国の株式市場の現状を大変よく描写している。
 日米の株式市場が採用しているサーキットブレーカー制度に倣って、中国の株式市場の特性を理解せずに、やみくもに導入したこの制度は、中国の株式市場の乱高下を拡大し、最終的には新制度を失敗させた。

 古代中国で、人々は万里の長城を建設して外部から不確実性を封じ込めようとし、現代中国では、政府が内発的な要因による市場の乱高下を封じ込めようとしたが、どちらも為政者が計画と抑制に惚れこんでしまった。
 その思考や姿勢は、今も昔も変わりはない。
 残念なことに、これによって中国経済は巨額の損失を被った。
 第一財経は、この4日間にA株市場から6.6兆元(約130兆円)が蒸発した、と報じている。



サーチナニュース 2016-01-14 19:12
http://biz.searchina.net/id/1599766?page=1

中国株の急落に火に油を注ぐ中国、
政府の介入は問題を複雑に?

 2016年の世界の株式市場は急落から始まった。
 中国では16年初日の取引日となった4日、上海総合株価指数は7%超も下落し、世界同時株安に発展した。
 東京市場も14日には一時1万7000円割れとなるなど、今なお不安定な動きが続いている。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルの中国語電子版はこのほど、
 中国政府の「過保護」が市場の急落を招いた
との見方を示し、
 市場経済に対する中国政府の行き過ぎた介入が中国経済の問題を造り出している
と分析した。

 中国株式市場では4日から「サーキットブレーカー制度」が導入されたばかりだった。
 株価指数が5%変動した場合は取引を15分間停止し、7%変動した場合はその日の全取引を停止する制度だ。

 中国はサーキットブレーカーを株価安定のために導入したが、記事は
 「サーキットブレーカー発動の基準が低くすぎるのは
 株式市場が本来許容できるはずの変動幅を狭めてしまうため現実的ではない」
と指摘。
 事実、サーキットブレーカー制度の低すぎる発動基準は悲観的なデータや人民元安といった要素と相まって、投資家たちの慌ただしい売りを誘発した。
 投資家の立場とすれば、取引が停止してしまう前に売ってしまいたいからだ。

 中国政府の過保護が災いを招いた例は他にもある。
 記事は、
 工業分野における過剰な生産能力や不動産業の過剰在庫は、中国政府による市場介入にも原因があると指摘。
 中国政府が国有企業を支援するため、国有企業は採算を度外視した設備投資を行う。
 その結果として生産能力の過剰が引き起こされたというわけだ。

 中国の経済は市場原理を導入した社会主義市場経済と呼ばれるが、もともとが社会主義国であるため、政府の介入も頻繁かつ強引だ。
 15年夏に中国株が急落した際にも中国政府が株式市場に介入し、強引な株価維持策に対して世界から批判の声があがった。
 中国が主導する社会主義市場経済は成功を収めることができるのか、
 中国株の急落は世界が不安視している現れと言える
かも知れない。



東洋経済オンライン 2016年01月18日 村上 尚己
http://toyokeizai.net/articles/-/100806?utm_source=yahoo&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=related

中国政府は経済安定化政策を徹底できるのか
不徹底なら世界経済の大きな足かせになる

 2016年の世界の金融市場は大荒れで始まり、日本株は年初から一時10%近い急落となり、年始としては歴史的な続落になった。
 同様の株価下落が先進各国で起きているグローバルな現象で、米国などでも2015年8、9月の大底に株価が再び接近する下落となっている。
 株式市場が高値から10%前後下落する局面はこれまでも年に1、2回はあり、米FRBの利上げ開始によってマネーフローの行方が変わる思惑で、市場で不確実性が高まるのは避けられないが、年始早々に投資家のリスク回避姿勢が極度に強まった。

 すでに12月中旬から株式やハイイールド社債などリスク資産は、下落する原油価格次第で下振れる値動きをみせ、原油市況下落が新興国経済の停滞の表れとみなされ、その値動きに株式などのリスク資産が連動する2015年半ばと同様の様相となっていた。
 そんな中で、年始早々に人民元が連日で減価し人民元切下げが想起されていたところに、中国株式市場でのサーキットブレーカー発動を伴う急落が併発。
 また、中東情勢緊迫化で原油の生産調整が難しくなると解釈され、原油価格下落を後押しする悪材料も重なった。

◆強弱入り交じっている各国の経済動向

 一方、経済動向を表す各国のデータは12月初旬から1月までに判明したものを総じてみれば、強弱が入り混じっている。
 製造業ではエネルギー・セクターの調整が響き米製造業の景況感や生産や受注の戻りは鈍く、12月分のグローバル製造業PMIは前月から若干だが低下した。
 ただ、国別にみると、欧州、韓国、台湾で改善が続くなどまちまちであり、製造業の景況感指数は昨年9月の大底対比では若干ながらも上回っており、製造業循環の回復が途絶えたわけではない。

 エネルギー・セクターの減産や業績悪化が長引いているが、米国を中心に世界的に消費など国内需要が底堅いままである。
 米国では、好調だったサービス業の景況感はやや低下したが、12月の消費センチメントは改善し、また暖冬で上振れた分を差し引いても雇用者の伸びは、FRBが想定している失業率を低下させるペースを超える増加ペースを保っている。

 米経済は好調とまでは言えないが、国内需要の底堅さが、製造業の生産調整の悪影響を吸収し続けているとみられる。
 また、中国など新興国経済減速の影響を受ける欧州の企業景況感もほぼ横ばいである。
 製造業や資源輸出国の停滞は長期化しているが、世界経済の現状は2015年秋口からほぼ変わらず、持ちこたえているとみられる。

 一方で年明け以降のリスク資産の急落を踏まえると、今後の新興国経済の急失速や新興国の金融システムが揺らぐことで、世界経済の停滞が長期化することを織り込みつつあるように見える。
 2015年夏場にも同様のリスク資産の急落が起き、時間が経過して経済失速に対する懸念が和らぎ、株式などのリスク資産は反発した。
 景気指標の状況と金融市場の急変と比べると、当時と現在は似ている部分が多い。

◆「市場心理は正常化に向かう」がメインシナリオ

 このため、昨年夏場同様に、時間の経過とともに市場は落ち着きを取り戻す可能性がある。
 当社エコノミストは、従来から中国経済に対して慎重に判断し、今後も景気減速は続くとみている。
 ただ、製造業の構造調整が続く一方で、消費や住宅市場など中国国内需要の成長が支えとなり、経済全体の減速はマイルドに止まるとみている。
 この見方に立ち、中国やFRBの利上げ開始への不確実性だけがリスク資産の急落をもたらしているならば、昨年夏場の再現となり、年初からの急落は短期的な投資機会になるだろう。

 もちろん、こうした比較的シンプルな見方にはいくつかリスクがある。
 以下は当社のメインシナリオではなく、筆者が懸念するリスクである。
 繰り返しになるが、現段階では景気動向は昨年夏場からほぼ同じあるいはやや改善しており、世界経済全体は米国の国内需要に依存するとみている。
 であれば、昨年夏場同様に、過度に悲観に転じた市場の心理はいずれ正常化する。
 れがメインシナリオである。

 筆者が懸念するリスクは、
★.混乱の震源となっている中国当局が、
 通貨政策を含めて経済安定化政策を徹底できず、
 金融市場の不安定化や世界経済停滞がもたらすシナリオだ。
 株式市場のサーキットブレーカー制度導入と取りやめを巡る混乱は一つの例だが、より根本的な金融・財政政策というツールが機能して経済安定化政策が徹底されるか不確実性がある。

 以下の、過去数年の先進国との比較が筆者の念頭にある。
 リーマンショック後の2009年以降、米国などの先進国において時間は要したが経済・市場が安定化を実現した要因には、金融政策を中心に経済安定化政策が徹底されたことがある。
 米国では大手銀行の国有化などの金融システムを守る政策が実現し、その後もデフレ防止のためのFRBによる資産大規模購入政策が続いた。

 欧州では債務危機発生に対して、政治的な制約を打破しECBが周縁国の国債購入開始に転じて、悪循環から抜け出し欧州経済はマイナス成長から抜け出した。

 日本では、安倍政権誕生とともに日本銀行執行部の交代が重なり、金融政策の転換で、株高と超円高の修正と脱デフレの正常化のプロセスが始まった。

◆通貨安容認か資本規制を強化するか

 中央銀行によるアグレッシブな対応が効果を発揮し、経済安定化政策として役割を果たした共通点がある。
 中国が構造調整を進めている点で先進各国と異なるが、人民銀行が政策金利を低下させる余地はあるし、2015年央からの政府による財政政策の発動が動いており、それが一定程度経済安定化をもたらしている。
 成長率の下支えや金融システムを堅持させるために、中央銀行の金融緩和が強化されれば良い。
 ただ、政治的な意向が中央銀行の政策判断に影響し、金融緩和が十分行われるかどうか不透明である。
 供給サイドの改革が、政治的に優先されているという観測も報じられている。

 さらに、為替市場の自由化を進める一方で、人民元レートの安定化を優先せざるをえないジレンマもある。
 中国では景気過熱の兆候はなくインフレ率が低位安定しているが、通貨を安定させる為替介入を続けているため、十分な金融緩和策を行うことが難しい制約に中央銀行が直面している。
 今後も人民元が割高だと認識され通貨安圧力に直面し続ければ、金融緩和政策が十分機能しないリスクがある。

 景気停滞に対して中央銀行がアグレッシブな金融緩和に踏み出すことが難しく、経済政策の制約が厳しい状況に陥っていれば、中国に起因するリスクに対する市場の疑心はなかなか収まらないかもしれない。
 一時的な市場心理の揺らぎで、金融市場が変動するだけならそれは投資機会の提供ですむが、仮に政策対応が不十分で新興国経済が失速するなど停滞が長引けば、2016年の世界経済の大きな足かせになりうる。

 なお、理論的には、中国人民銀行が金融緩和を徹底するには、通貨安を容認するかあるいは資本規制を強化するかが必要になる。
 12日に、オフショア市場での人民元の介入と同時に、短期金利上昇によって流動性を絞った。
 限界的であるが資本規制に踏み出した側面がある。
 これは長期的な資本自由化の動きと相反するが、当面の金融市場安定や金融緩和による経済下支えを優先させる政策に転じたことを示唆すると、当社エコノミストは考えている。
 この政策が持続可能ならば、筆者が最も懸念するリスクが今後低下することになる。



サーチナニュース 2016-01-21 14:56
http://biz.searchina.net/id/1600398?page=1

中国高官「中国株、株価の乱高下は常態化する
サーキットブレーカーは間違いだった」=証監会・方星海副主席

 中国メディアの新浪網によると、世界経済フォーラム(ダボス会議)出席のため現地に滞在中の中国政府・中国証券監督管理委員会の方星海副主席は米衛星テレビ局CNNの取材を受け、
 中国における株価の大きな変動は常態化する
との考え方を示した。

 方副主席は、中国において株価全体が大きく変動する根本的な原因は、中国経済が投資と輸出に頼る体質から、内需主導に構造転換しつつある時期であることと主張。
 転換には、今後3-5年の時間が必要という。

 方副主席はさらに、株価の大きな変動の原因として、中国の株式市場は先進国の市場とは異なり個人投資家が主流であることを挙げた。
 機関投資家のような経験がないため結果として市場全体の大きな変動が生じてしまうという。

 中国が2016年になって導入し、2回の実施で導入の中止を決めた「サーキット・ブレーカー」制度については、「間違っていた」と認めた。

 方副主席は「サーキット・ブレーカー」について、小規模な投資家が市場の乱高下で被害を受けることを防止する目的で導入したが、
 「結果としてパニックを引き起こし、市場の流動性を喪失させてしまった」
と認め、
 「世界の別の地区では有効性を示したサーキット・ブレーカーだが、中国には適さない方法だった」
と述べた。

 方副主席によると、中国当局は市場への干渉を少なくしていく方針だ。
 そのため、経済構造の変革期にあっては、市場の大きな波動は常態化するという。

 方副主席さらに、経済構造の変革によって成長は減速すると主張。
 2015年の経済成長率が過去25年間最低の6.9%になったことについては、
 「経済学者もこれまで(高度成長の時代に)、今の経済は減速してこそ健全だとずっと言ってきた」
と説明。
 中国のこれまでの高度成長はそもそも「持続させることはできない」性質のものだったとの見方を示した。


 これまでの中国が得意とする居丈高な論調から比べると
 えらく弱気になってしまったものだ!


Bloomberg 2016/1/26 12:17
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160126-00000032-bloom_st-nb

中国株がたどる07年のバブル頂点から崩壊時の値動き
-底打ちまだ先か
 
  中国株は既にいったん弱気入りしたが、2007-08年のバブルの頂点から崩壊のサイクルが参考になるなら、なお下落余地がある。

  上海総合指数は昨年6月の相場急落以降の下落率が43%に達し、景気の勢いも失われつつある。
 同指数が1年間で高値から底値まで3分の2余り下落した世界的な金融危機当時と似ている。
 ラボバンク・グループは、同指数が年内に2500まで下がれば底打ちするとみている。
 25日の終値をさらに15%下回る水準だ。
 ラボバンクの金融市場調査責任者、マイケル・エブリー氏(香港在勤)は
 「中国株式市場は07-08年の動きをたどっているように見える。
 行き着く水準として可能性があるのは2500だ。
 その水準に下落した後、何らかの真の改革が実現するまで数年は横ばいで推移するだろう。
 ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)からすると、株式は多くの部分で割高だ」
と述べた。

原題:China Replaying 2007’s Boom and Bust Shows No Bottom
Yet: Chart(抜粋)





【激甚化する時代の風貌】



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