2016年1月1日金曜日

中国が新たに敷設した鉄道は9000キロ以上:建設費用の3割が未払い?鬼道(ゴーストトレイン)になるののか?

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 鉄道建設はGDPのアップを支える。
 しかし、出来上がったそばから、金食い虫に脱皮する。
 全路線の95%は赤字運営である
 維持費だけでも膨大な金額。
 この金額はGDPには貢献しない。
 赤字鉄道をせっせと建設して、その路線の長さだけを自慢して鼻高々になる感覚は少々分かりにくい。
 事業には「イニシャルコスト」と「ランニングコスト」がある
というのは、中学レベルの経済知識。
 通常の経済感覚では、いかにこのランニングコストを低く抑えて、イニシャルコストを回収して事業の利益を搾り出すかが目標になる。
 中国の鉄道には「ランニングコスト」の概念がない
 イニシャルコストは発展に寄与する。
 ランニングコストは零落に寄与する。
 公共投資で経済の下支えをして、新常態を維持しようとしているのが今の中国。
 お金があるかぎりこれは問題はない。
 しかし、数年後を見ればゾーとするほど怖いことも確かである。
 

レコードチャイナ 配信日時:2016年1月1日(金) 8時10分
http://www.recordchina.co.jp/a126194.html

2015年、中国が新たに敷設した鉄道は9000キロ以上―中国紙

 2015年12月31日、中国鉄道総公司が明らかにした情報によると、海南島を一周する環島高速鉄道の全線開通に伴い、2015年の鉄道建設がすべて完了した。
 今年の中国の鉄道固定資産投資は8200億元(約15兆5800億円)、
 新たに敷設した鉄道の営業距離は9000キロメートル余り、新規着工プロジェクトは61件。
 今年末の時点で、中国の鉄道営業距離は12万キロを上回り、世界2位となった
 うち、高速鉄道は1万9000キロで世界一となっている
 人民日報が伝えた。

 鉄道への投資は勢いを保っており、鉄道建設に必要な資金はすべて調達され、一連のプロジェクトが無事に着工・実施された。
 年末、中国北西部では、北疆鉄道の重要な一部分となる全長420キロの鉄道が着工した。
 また、アジア横断鉄道と中国・ラオス国際鉄道の重要な一部分が開通し、中国−ASEAN自由貿易区の建設推進などにとって重要な意義を持つ。

(提供/人民網日本語版・翻訳/SN・編集/藤井)



サーチナニュース 2016-01-01 09:35
http://news.searchina.net/id/1598644?page=1

中国での鉄道建設は儲からない 
海外の高速鉄道受注に「血眼」になる理由

 中国メディアの21世紀経済報道は12月29日付で、中国を代表する
 鉄道建設会社の中国鉄路工程総公司(中鉄総)が資金欠如で、
 下請け業者などへの
 未払い金が2500億元(約4兆5824億円)
達した模様と報じた。
 国内での鉄道建設では利益が出ないため、国外進出に力を入れているとした。

 中国では2015年が第12次五カ年計画の最終年だ。
 記事は、すでに東側路線が完成していた海南島環状高速鉄道の西側路線が12月30日に開業すると指摘し、中国国内では26日からのわずか3、4日で、鉄道5路線が開業したとして、第12次五加権計画の鉄道建設が、成功を収めたと論じた。

 中国政府・交通運輸部の楊伝堂部長も12月28日、第12次五カ年計画における鉄道インフラ建設への投資は、
 過去の五カ年計画期間中で最多の3兆5000億元(約64兆円)に達した
と説明したという。

 記事はその上で、高額投資の背景には無視できない問題点があると指摘。
 中国工程院の王夢恕院士は
 「中鉄総の(下請けの)建設企業への未払い金は2500億元以上に達している」
と論じ、債務圧力が極めて大きいと主張したという。

 中鉄総はいわゆる、中国の中央国有企業だ。

 王院士は
 「第13次五カ年計画中にも、鉄道建設への投資は高止まりで進むだろう。
 問題は、どのようにして資金集めをするかだ。
 国家は考えねばならない」
と述べた。

 王院士は、中鉄総の資金不足のため、中国国内の(高速)鉄道建設は、1キロメートル当たりの費用が現在、橋梁やトンネルが部分が85%以上あるのに1億2000万元(1億元=約18億3000万円)程度に圧縮されていると指摘。

 一方、インドネシアでの高速鉄道建設は、橋梁やトンネルが少ないにもかかわらず、1キロメートルあたり1.8億元。
 また、中国とロシアを結ぶ高速鉄道はについて同社は1キロメートル当たり2.5億元の見積もりを出しているという。

 王院士は
 「国内における鉄道建設では全く儲からない。
 さらに自分が補填せねばならないとしたら、建設会社はどうやって生き延びるのか」
と、中国国内における鉄道建設の不採算体質を指摘した。

 単純に考えると、鉄道建設費用の30%が未払い金になっていることになる。
 イニシャルコストの約3割が未払い金というのは、異常というより異常すぎる
のでなないだろうか。
 ということは、ランニングコストではどんな具合になっていくのだろう。
 何か、目も当てられないことになりそうである。
 新常態というが、当の目標は7%であったが、一年ほどでいまは6.5%となっている。
 このままいけがおそらく数年で4%台、5%を切ることになるだろう。
 そんなときに長大な鉄道施設を維持するということはそこそこの負担になる。
 GDPの名目を支える鬼城(ゴーストタウン)があちこちに造られた。
 そのうち、鉄道もこの仲間になり「鬼道(ゴーストトレイン)」になる可能性も大きい。


サーチナニュース 2016-01-07 06:32
http://biz.searchina.net/id/1599066?page=1

中国高速鉄道の建設は実需かリスクか、
財政的に問題はないのか

 中国国内における高速鉄道の営業距離は2015年末時点で約1万9000キロメートルに達し、すでに世界一の規模となっているが、中国は今なお高速鉄道網の整備を続けている。

 中国で高速鉄道路線が次々に整備され、開通していることは、中国の人びとにとっては利便性の向上につながるものの、高速鉄道網の整備には莫大な費用が必要となる。
 中国は国土も広く、整備に必要となる費用は桁違いに大きいわけだが、果たして財政的に問題はないのだろうか。

 中国国内の一部メディアによれば、中国鉄路工程総公司(中鉄総)の下請け業者などへの未払金が2500億元(約4兆5824億円)に達した模様だという。
 中鉄総の資金不足が原因とみられる。中国メディアの四川新聞網は4日、
 「高速鉄道の建設の背後には実需はあるのか、それとも単なるリスクなのか」
と疑問を投げかけつつも、中国にとって高速鉄道は必要な存在だと肯定する記事を掲載した。

 記事は、中鉄総の資金不足による未払金の増加について懸念を示す一方で、高速鉄道は中国の国情に合致した交通機関であると主張。
 中国は国土が広く、人口も多いため、人とモノを速やかに移動させ、各地の経済を発展させるうえでは高速鉄道がもっとも適した交通機関だと主張した。

 さらに、中国を中心とした経済圏を構築しようとする「一帯一路」戦略の実現においても、高速鉄道は必要不可欠な存在だと主張し、
   「確かに高速鉄道の建設で資金不足が発生しているが、
 こうした問題によって高速鉄道の存在意義や人びとの需要に疑問を呈すべきではない」
と主張。
 また、中国にとって高速鉄道が外交ツールの1つになっていることを指摘したうえで、高速鉄道の建設による未払金の問題だけに着目して高速鉄道を否定すべきではないとの見方を示した。

 中国高速鉄道の営業路線のうち、黒字化を達成しているのはごく一部の路線であるとも言われる。
 中国高速鉄道は建設コストが低いが、それでも日々の営業でコストを回収するのは容易ではないということであろう。
 国家戦略や外交にもかかわる存在となった高速鉄道は、中国政府にとって単なる金銭的利益以上の価値があるものなのだろうが、鉄道網の整備によって財政を圧迫するようではリスクの側面も大きいのではないだろうか。



サーチナニュース 2016-01-15 21:12
http://biz.searchina.net/id/1599898?page=1

中国高速鉄道は幸福の絆!
中国人の価値観や感覚に変化をもたらす=中国報道

 2016年から20年までの「第十三次五カ年計画」の期間中、中国は人口20万人以上の都市、行政区の80%を鉄道網で結び、さらに50万人以上の都市、地方行政区の90%を高速鉄道網で結ぶ計画だ。同計画が達成されれば、
 20年末には中国高速鉄道の総延長は3万キロに達する見込みだ

 中国では高速鉄道網が急速に整備され、人びとの生活にとって身近な存在となりつつある。さらに、中国高速鉄道は中国各地にさまざまな影響を与えているようで、特に地方部においてその影響は顕著だ。

 中国サイト捜狐は
 「高速鉄道は将来あなたの何を変化させるか?」
と題して中国で普及する高速鉄道が人々に与える影響について述べている。

 例えば記事は貴州省貴陽市から広東省広州市までの857キロメートルが結ばれた「貴広高鉄」を例に挙げ、貴州省のさまざまな特産品が広東省という大きな市場に運ばれるようになったという物流面のメリットのほか、路線上の小規模な都市も高速鉄道で結ばれたと指摘し、貨物輸送や経済発展にも繋がったと説明した。

 さらに、中国高速鉄道は物理的な距離を短縮しただけでなく、
 「中国人の自らの限界に対する認識を変えた」
と主張。
 高速鉄道は中国人の生活に溶け込み、農村と都市の架け橋となり、幸福の絆となったと抽象的な表現で賛辞を贈った。
 また、これまでは行くことが叶わなかった場所を訪れ、見ることの出来なかったものを目にし、思いもよらなかったことを体験することで中国人の価値観や感覚に変化を及ぼしているとの見方を示した。



サーチナニュース 2016-01-17 07:37
http://news.searchina.net/id/1599916?page=1

「量」から「質」へ
・・・発展の転換期迎えた中国の鉄道業界

 中国メディア・光明日報は12日、猛烈な勢いで発展してきた中国の鉄道建設が「量」から「質」へと転換しようとしているとする記事を掲載した。

 記事は、2015年は中国国内で61の鉄道建設プロジェクトが着工し、28の高速鉄道新路線が開通したと紹介。
 鉄道営業キロは12万キロを超えて世界第2位、そして高速鉄道営業キロは1万9000キロで世界一になったとした。

 また、同年は中西部地域に新路線の開通が集中し、地域間の経済バランス化を促すうえで重要な役割を果たしたと説明。
 さらに、今年の春節(旧正月)期間に高速鉄道・広州南駅で予想されるピーク時利用客数が、初めて一般鉄道の広州駅を上回る見込みであることを挙げ
 「経済発展、市民の収入増に伴い、市民の高速鉄道乗車への願いが強まっている」
とした。

 そして、15年は「一帯一路」戦略の推進に伴い、高速鉄道を主体とする中国の鉄道業界が積極的に世界における市場競争に参加し、技術・コスト・サービス面での優位性を生かしてインドネシア・タイ・ラオス・ハンガリー-セルビアなどの受注を獲得したと説明した。

 15年は、国外進出においても、国内の鉄道網整備においても、高速鉄道を主力とした中国の鉄道業界にとっては飛躍の1年となったと言えそうだ。
 とくに国内の高速鉄道整備は目を見張るほどのハイペースで進み、都市間の移動時間が大幅に短縮された。
 「ゴーストタウン」に代表される地方都市開発問題を含め、
 急ピッチな整備による不具合や弊害が今後出てくる可能性は否定できないが、
 「とりあえずどんどん作って、細かい部分は後から」
という中国的な進め方はやはりダイナミックだ。

 中国の鉄道業界で「量」から「質」への変化が進めば、この先技術や安全性に加え、サービスの成熟も進むことになるだろう。
 そうなれば、海外への売り込みを展開する日本の新幹線にとってさらに手ごわい相手となるはずだ。



サーチナニュース 2016-01-18 11:20
http://biz.searchina.net/id/1599969?page=1

中国の鉄道建設がやや減速 
2016年の固定資産投資は前年割れの14兆2500億円程度

 中国メディアの経済参考報によると、中国鉄路総公司が17日に北京市内で行った会議で、盛光祖総経理(社長)は2016年に8000億元(14兆2548億円)の固定資産投資を行うと述べた。
 盛総経理は2016年における事業推進の重要点として、鉄道建設についての投融資の体制改革や西部地区を重点とする鉄道建設への注力とともに、鉄道建設についての投資規模の維持を挙げた。
 ただし、2015年における投資総額は8238億元だったので、16年における投資総額はやや縮小する見通しだ。

 中国鉄路総公司によると、2015年の新規開業延長は9531キロメートルで、うち3306キロメートルが高速鉄道路線だ。
 乗客数は延べ25億人で、10%以上の成長が3年間続いた。

 中国鉄路総公司は2013年、旧中央政府・鉄道部の解体にともない、同部の事業部門を継承する企業として設立された。
 鉄道部の行政部門は中央政府・交通運輸部内の国家鉄路局になった。
 各地の鉄路局(鉄道局)は、「北京鉄路局」、「西安鉄路局」など従来の名称を引き継いだが、行政組織ではなく中国鉄路総公司の傘下企業になった。

 中国鉄路総公司が発表する各種統計は、都市と都市を結ぶ長距離路線についてのもの。
 そのため、各都市で運営される地下鉄や郊外電車についての実績は反映されていない。



レコードチャイナ 配信日時:2016年1月29日(金) 6時40分
http://www.recordchina.co.jp/a127902.html

ゴースト空港にゴーストモール、
続々出てくる中国の「もったいない!」―中国メディア

 2016年1月28日、参考消息網によると、
 中国遼寧省大連市に建設された空港が毎日10人前後の利用客しかいない
として問題になっている。

 大連市長海県に建設された長海大長山島空港は1988年11月、国内唯一の県営民用空港として供用を開始した。
 当時は長海−大連間で毎日2便の運航があったが、96年の運航停止を機に空港も閉鎖。
 その後2008年2月に再開したが、1日当たりの平均利用客数は約10人だという。

 このような「ゴースト化」は過去にも数多く報じられており、最近では米大衆紙USAトゥデイが
 「上海最大の空き物件は米国のペンタゴン(国防総省本庁舎)を模した五角世貿商城だ」
と報じた。

 この大型ショッピングモールの建設には約2億ドル(約240億円)がかかったが、完成した2009年以降、大部分が空きスペースという状況が続いている。
 地元政府の関係者は
 「最初は雑貨を取り扱う市場にしようと思ったが、入居する業者が見つからなかったため輸入品を取り扱う施設へと変えた」
と話し、それでも消費者を呼び込むことはできなかったと語っている。



サーチナニュース 2016-01-31 14:19
http://news.searchina.net/id/1601236?page=1

中国経済がもはや「投資」に頼れない訳 
7億円以上かけて建設した空港、利用者は1日10人

  これまで中国経済を大きく牽引してきたのが、外需と投資だった。
 しかし、世界的に経済が落ち込めば、外需は大きく後退する。
 一方の投資だが、景気の悪化などで「回収の目途が立たない」事態になれば、投資は冷え込む。

 その象徴として、600万ドル(約7億1280万円)相当を投じて建設したが、1日の利用者が6人しかいない空港がある。
 遼寧半島の南沖の島にある長海大長山島空港は長さ850メートルの滑走路が1本あるだけと、規模の小さなローカル空港だ。
 それでも、中国メディアの参考消息によると、建設のために600万ドルが投じられたという。
 現在のところ、利用者は1日にわずか6人。
 通常の手法で投資が回収できるとは、とても思えない。

 参考消息は、上海市にも「役立っていない大規模施設」が複数あると紹介した。
 その1つが同市浦東新区の「五角世貿商城」だ。
 2010年の上海万博と同時期に、約2億ドルを投じて建設されたという。
 外観や規模は、米国防総省のペンタゴンにそっくりだ。
 ちなみに中国では「ペンタゴン」が「五角大楼」と呼ばれるので、呼称も「もじり」ということになる。

 テナント出店を当て込んだ商業施設だが、入居状況は惨憺たるもの。
 使われていないエスカレーターの手すりにはほこりがつもり、建物内で客の姿は稀という。
 広大な屋外駐車場に停められている自動車はわずか数台だ。
  同施設が「最後の頼みの綱」としているのは、8キロメートルほど離れた場所にあり、2016年夏に開業が予定される上海ディズニーランドという。

 記事によると、浦東新区にあるテーマパークの「荷蘭風情小鎮(オランダ風情タウン)」や英国ロンドンの街並みを模した松江区の「泰晤士小鎮(テムズ・タウン)」も悲惨な状況だ。
 飲食店や娯楽スポットについてネットユーザーが点数をつけて感想を書き込む「大衆点評」を見ると、「平日に行ったが、人はほとんどいなかった。
 景色はすばらしい。
 天気がよかったからかな」と、落ち着いて過ごせたことを評価する書き込みがある。
 満足したが、「人がいなかった」とまで書かれたのでは観光スポットとして成功しているとは言い難い。
 他にも「寂寞としていた。商店は開いていない」などの書き込みが並ぶ。
 「混んでいた」との報告は皆無で、掲載された写真に人が全く写っていないのも印象的だ。

 中国では、内モンゴル自治区オルドス市のように、新しい市中心部を作ったが「鬼城(ゴーストタウン)」になってしまったケースもかなりある。
 過去の高度成長期のように、
 「開発すれば何とかなる」、
 「出遅れると先行者利益がなくなる」
といった状況ではなくなった。
 不動産開発やそれ以外の分野でも、投資に慎重にならざるをえないのは明らかだ。

 李克強首相は2013年の就任前から、中国経済には内需拡大のための大胆な構造改革が必要と痛感していたとされる。
 大胆な改革策を推進してきたのは事実で、成果も出てはいる。
 しかし、改革には必ず「痛み」がともなう。
 今の中国経済に、「痛みに耐えられるだけの体力」がどれだけ残っているのか。
 そのあたりが問題だ。

 もしかしたら、中国経済の減速は、李首相が想定していたのより、かなり早く本格化してしまったのかもしれない。



JB Press 2016.2.10(水)  川島 博之
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45987?page=3

異様な光景に絶句、
若者が逃げ出す中国の田舎町
日本をはるかに上回るハコモノ行政の残骸


●中国 遼寧省 営口市、新幹線が停まる駅のホームにて(筆者撮影)

 年明けから世界の金融市場が混乱し、その原因として中国経済の不振が挙げられている。
 不振の原因は過剰投資にあるとされ、特に2008年のリーマンショックへの対応として行われた「4兆元(約60兆円)」対策の影響が大きいと言われる。

 筆者は昨年(2015年)11月に大連の北方約200キロメートルに位置する営口を訪ねた。
 それについては既に
 「中国のゴーストタウンで見た官制バブルのなれの果て」
と題して報告したが、年初来、中国の過剰投資が金融市場で大きな問題になっているために、もう一度、過剰投資問題に絞って報告してみたい。

■閑散とした農村の新幹線

 冒頭の写真は営口市の北の外れに作られた新幹線の駅の様子だ。
 朝9時頃の写真である。
 PM2.5が混じった朝靄がかかっているために周囲はよく見えないが、周囲は農村である。

 農村の中に突然、新幹線の駅が出現したといった感じ。
 この写真は列車が入線する5分ほど前に撮影したものだが、ホームは閑散としている。
 反対側のホームに人影は見えない。

 車両は日本の新幹線によく似ており、乗り心地はよかった。
 ただ、1時間に1本程度の運行なのに車内はすいていた。
 大連まで新幹線で1時間、在来線でも3時間程度であろう。

 多忙なビジネスマンが多く乗っているわけでもなく、小さな子どもを連れた母親が移動している様子を見ていると、在来線でも十分ではなかったのかと思われる。
 ただ、写真からも分かると思うが、駅舎はなかなかモダンな造りであり、駅舎だけを見れば中国も立派な先進国である。


●写真(1) 営口市にある海浜公園、筆者撮影

上の写真(1)は誰もいない巨大な海浜公園。
 円形の奇抜な建物はスポーツや演劇などを行うホールだそうだ。
 遠くに立派な橋が見える。この海浜公園に至る道もよく整備されており、片道が3車線あるところも多かった。
 ただし、車はほとんど走っていない。

 当日は晴れていたにもかかわらず寒かった。
 営口は遼寧省の中では黄海に面しているために暖かいとされるが、それでも11月は寒くこの写真を写した時には、この広大な公園に筆者たちしかいなかった。
 祭りなどが行われて賑わうのは7月から8月にかけてのごく短い時期だけだそうだ。

■取り残された街並み

 中国の過剰投資と言うと、工場設備や、ゴーストタウンを意味する「鬼城」と呼ばれ誰も住んでいないマンションなどが有名だが、公園や公会堂も各地に建設されている。

 その建設の主体は地方政府であり、営口では公園の整備は営口市が行った。
 このような広大な公園を作れば、維持費もかさむだろう。
 夏の2カ月ほどしか使わないのであれば、巨大な公園は重荷になっていると思われる。

 案内してくれた人はその地方ではインテリと言ってもよい人物であったが、それでも一介の市民であり、建設資金の出所については分からないと言っていた。
 ただ「営口市は困っているのかもしれない」との印象をふと漏らした。
 それは昨今、市長が度々替わるからだそうだ。

 次の写真(2)は営口市の中心部にある海神を祭った神社である。
 営口は黄海に面した漁村であったために、このような神社があると言っていた。


●写真(2)営口市にある海神を祀った神社、筆者撮影

 写真が示す通りこの神社はさびれており、現在改装が進行しているとのことだったが、工事をしている様子はなかった。

 このような写真を撮ったのは、海浜公園とのアンバランスさに驚いたからだ。
 日本で広大な海浜公園「葛西臨海公園」が開園したのはバブル期の1989年だ。
 その頃には、神社仏閣もきれいになっていた。
 しかし中国では、門の下に投げ捨てられた壊れたリアカーが示すように、伝統的な建築物の修復は二の次になっている。

 もちろん、共産党は神社を中国の伝統とは思っていない。
 そう言い切ってしまえばそれまでかもしれないが、街を歩いていると、きれいに整備されている部分と、取り残された部分の落差に驚く。
 中心部を少し離れれば、旧態依然とした街並みが続く。

 日本でも「ハコモノ行政」が非難されたが、中国のそれは日本をはるかに上回る。
 これが4兆元対策の実態である。

■過剰な投資依存の果てに・・・

そもそも中国はなぜ4兆元(約60兆円)もの経済対策を行ったのであろうか。
 リーマンショックによる景気の落ち込みを防ぐといっても、
 リーマンショックは所詮、米国での出来事であり、対岸の火事と言ってもよい。
 中国に大きな影響を及ぼしたのは事実であろうが、それにしても対岸の火事に4兆元も経済対策を行う必要性はなかったであろう。

 バブル期の日本と同じように、あの頃、
 中国は急速に経済が発展する中で高揚感を押さえきれなかったようだ。
 そんな雰囲気の中で、建設業者はリーマンショックを口実に公共事業の大幅な拡張を要求した。
 政策担当者は賄賂や接待攻勢の中で、それを断ることができなかった。
 それが4兆元対策につながり、そして今日の困難な状況を招いた。

 日本のバブルは民間企業が銀行から借金をしまくって土地を買い占めたことが原因だったが、中国でバブルを作ったのは地方政府である。
 中央政府のお墨付きを得て、地方政府が巨額の投資を行った。

 当初のプランは、田舎から農民を集めて営口を一大工業都市にするというものだったが、営口に工場地帯が出現することはなかった。
 今回の訪問で、新たに作られた工場を1つも見ることはなかった。
 世界中でもの余りが続く現在、これからも営口が工業によって栄えることはないだろう。

 そんな事情を察してか、若者は北京、上海、広州、深圳に移り住みたがっている。
 最低でも大連という。
 若者が逃げ出す街が発展するわけがない。

中心部人口が20万人程度の田舎街に相応しくない巨額投資である。
 いささか度が過ぎたようだ。
 案内してくれた人は市のバランスシートは知らないと言っていた。
 一般市民には知らせていないようである。

 だが、債務が秘密のベールに覆われていれば、債務処理を進んで行う市長や官僚はいないだろう。
 問題の先送りが繰り返される。
 債務の飛ばしなどによって、現状維持に固執することになる。
 しかし、それでは発展は止まってしまう。

中国もついに、1990年代の日本と同じように「失われた20年」に突入した。
 そう考えてよいと思う。




【激甚化する時代の風貌】



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