2016年1月3日日曜日

潜水艦受注合戦(1):日本政府いわく、「利益を優先せずに受注合戦に臨め!」

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時事通信 (2016/01/02-16:35)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2016010200117&j4

豪、潜水艦選び本格化=価格面で日本優位か


●海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦「ずいりゅう」=2015年10月15日、相模湾

 【シドニー時事】
 オーストラリア政府の次期潜水艦選定手続きが本格化している。
 日本、ドイツ、フランスが提出した建造計画を比較検討し、今年前半に共同開発相手を選定する。
 各国の計画内容は非公表だが、「価格で日本が優位」との観測が浮上している。

 豪州は8~12隻の新型潜水艦を建造する計画。
 費用は総額200億豪ドル(約1兆7500億円)、
 長期に及ぶ保守費を含めると500億豪ドル規模に上る見通し。
 2020年代半ば以降、老朽化が進むコリンズ級潜水艦と入れ替える。
 ただ豪メディアによると、3カ国がし烈な受注合戦を繰り広げている結果、豪政府は建造費を50億豪ドル以上圧縮できる模様だ。
 日本政府は、
 「そうりゅう」型潜水艦を建造する三菱重工業と川崎重工業に利益を優先せずに受注合戦に臨むよう求めており、
 企業として参加する独仏より価格面で優位に立つ可能性があるという。



NNA 1月4日(月)8時30分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160104-00000009-nna-asia

【オーストラリア】【2016 年始インタビュー】
「日豪の関係、実践段階に」:草賀純男大使インタビュー

 昨年後半は突然のアボット政権退陣で、日豪関係が揺らぐ不安にさいなまれた。
 だが当初中国寄りと評されたターンブル首相は、年末に単独で日本を訪問し、オーストラリア政府による日本重視の姿勢をあらためて示して日本側を安堵させた形となった。
 ただし、それが新型潜水艦の受注につながるかどうかは未知数で、捕鯨の問題も依然としてくすぶったままだ。
 キャンベラで日豪外交の最前線に立つ草賀純男大使に、年末の首相訪日や潜水艦、捕鯨、経済関係などについて、ざっくばらんに語ってもらった。【NNA豪州編集部】

 ――昨年9月の突然の首相交代劇からのオーストラリア政治をどう見ましたか。

 昨年はアボット前首相の支持率が低迷していたので、自由党議員の中で不安感があったのが政変の基本的な原因でしょう。
 アボット前首相と違って、物事を自由に協議して決めるというリーダーシップ・スタイルのターンブル首相が出てきて、支持率も約60%を維持して上々の出だしだと思います。
 今後どうやって経済を立て直し、改革を進めるかに注目が集まっていますが、幸先は良好だと思います。
 経済は今年が正念場だと思いますね。
 
 ――ただし日豪の外交関係では、安倍・アボット関係のカードが切れなくなったばかりか、ターンブル首相は親中派とは言わないまでも、中国への配慮をのぞかせています。
 親日的だったアボット首相と比べ、やりにくさはありませんか。

 必ずしもそうではないと思います。
 アボット前首相は世界でも珍しいほど例外的に親日的な首相でしたが、ターンブル首相も対日重視という点では同じです。
 日豪関係は個人と個人の強いつながりだけで維持されているわけではなく、国と国の強い関係が基本にあると思います。
 年末にターンブル首相が訪日した際にまとめた日豪共同声明でも「特別な戦略的パートナーシップ」の関係を再確認しています。

 日豪通商協定が締結されたのは戦後間もない1957年で、その後、長きにわたり、日本はオーストラリアにとって最大の貿易パートナーでした。
 これはオーストラリア人の気持ちの中にあり、日本に対する温かい気持ちはずっとあります。
 深く長く、幅広い、切っても切れない関係なのです。
 私が三十数年前に初めてキャンベラに赴任した時も同じでしたが、今はその傾向はもっと強く出ています。
 今回、周囲の実に多くの地元議員や官僚たちが、日本に行ったことがあると話してくれます。
 30年前はそんなことはありませんでした。
 この関係は、日本の経済界が長年にわたり築き上げてこられた功績でしょう。

 ――ターンブル首相の年末の訪日は全体としてどんな成果があったと思いますか。

 今回は、日豪の特別な関係を再確認できたという意味で、非常に良い成果があったと思います。
 これは単なる題目ではなく、二国間だけのものでもなく、アジア域内で平和を構築しようという意味で特別な関係を確認し合ったということです。
 日豪両国は補完的な関係にありますが、政治でも経済でも、文化や人的交流でも、その特別な関係を実践する段階に入った、ということです。

 ――アボット前首相と安倍首相がまとめた相互訪問合意があったためにターンブル首相は訪日は果たしましたが、当初さほど積極的とは感じられませんでした。

 それは逆でしょう。
 ターンブル首相自身が強い決意で、日本重視の気持ちを示すためにあえて片道9時間もかけて1日だけの訪日を実現させたものです。
 単一の訪問国としてはニュージーランド(NZ)に次ぐもので、アジアでは最初の国です。

 ――ターンブル首相の訪日中、大使は常に随行されましたが、ターンブル首相の人となりが分かる場面はありましたか?

 明るくて非常にポジティブな方だと思いました。
 財界のリーダーたちによる昼食会がありましたが、ターンブル首相の周りには常に人だかりができて、ターンブル首相もそれぞれに明るく対応していました。
 日本のビジネス界も大歓迎しているという象徴的な場面でした。

 ――頭は切れるが、人を寄せ付けないような雰囲気もあると伝えられていましたが。

 そういうイメージはありませんでした。
 ジャーナリストで成功し、弁護士として、ビジネスマンとして、そして政治家としても成功したというターンブル首相には、ゆとりさえ感じますね。
 オーストラリア人の間でもこの人なら何かをもたらしてくれるという期待感があるように感じます。

 ――訪日中、ターンブル首相が特に気に入っていたイベントはありましたか。

 日本科学未来館でホンダの二足歩行ロボット「アシモ」と接したり、その後に訪れた裏千家で安倍首相と抹茶を飲んだり非常に楽しまれました。
 ターンブル首相は毎日午前11時くらいに豪州で作られた煎茶を飲むそうですが、抹茶を飲んだのは初めてだったそうです。
 その後「料理の鉄人」で知られる坂井宏行シェフが牛肉やワインなどオーストラリアの食材を使った料理を作ってもてなし、喜ばれていました。

 ――新型潜水艦の入札では、アボット首相の退陣後に日本は不利になり、再度振り出しに戻っています。
 日本政府は潜水艦入札をどう見ていますか。

 オーストラリアの潜水艦は、基本的にはアジア太平洋地域で安全保障面で極めて重要な役割を果たします。
 ですから、日本政府も積極的に関わっていきたいとオーストラリアに伝えています。
 当然、発注先を決めるのはオーストラリア側ですが、東シナ海と南シナ海を取り巻く海域で、北には日本があり、南にはオーストラリアがあり、ブックエンドのようにアジア海域を両国が挟んでいるという事実があります。
 中国が領有権を主張する南シナ海は国際的なシーレーンとして重要ですが、オーストラリアにとっても極めて重要だということです。
 日本とオーストラリアの安全保障の利害は共通しているのです。

 ――ちょうどターンブル首相の訪日直前に、日本は調査捕鯨の再開を発表してオーストラリアやNZなどから非難を浴びました。
 ターンブル首相も安倍首相に対して、失望感を直に伝えたようです。
 日本側が南極海での調査捕鯨を止めない限り、両国関係にトゲがささったままであるように思えます。

 これはなかなか難しい問題です。
 クジラは知的動物だから保護すべきだと言う気持ちは分かりますが、日本人からすると、だからといってクジラに限って捕ってはいけないというのはおかしいという感情があります。
 国際捕鯨取締条約でも、調査捕鯨は認められています。
 ハーグの国際裁判所での判決でも、調査捕鯨を全面的に禁止したわけではないですね。
 日本国内ではクジラを食べている人たちがいるのも事実です。
 判決に従ってこれなら大丈夫だという形で調査捕鯨を再編したのです。
 オーストラリアはカンガルーを殺しており、それは日本には理解しがたいところです。
 大事なのは、われわれもオーストラリア人のメンタリティーを理解し、彼らにも理解してもらうよう、オーストラリアとの間でコミュニケーションを密にしていくことでしょう。

 ――例えばオーストラリアが沖の島の排他的経済水域周辺にやって来て、ウミガメを捕獲していると知ったら日本人は怒ると思いますが、同じように、調査と称してわざわざオーストラリアの南極海まで来て捕鯨することは、太地町のイルカ漁文化や3兆円ビジネスとも言われる新型潜水艦の売り込みさえリスクにさらしているように思います。

 オーストラリアは南極大陸に領有権を主張し、この関連で排他的経済水域をも主張してはいますが、これは国際的に認められてはいませんし、オーストラリアもそこは分かっています。
 それに成熟した二国間の関係として、理性的に、潜水艦と捕鯨はリンクさせないよう要望していますし、オーストラリアもリンクする意図はないと言っています。

 ――捕鯨の国際報道を見ていると、凄惨な血まみれの捕鯨映像をニュースで繰り返し流すなど、一様に日本を悪者として描いていて国益を損失していると感じます。
 日系企業や文化面で世界に貢献している日本が、捕鯨の問題では完全に悪者になっている構図です。
 霞が関や永田町は、海外でのそうした日本に対する扱いを理解していないように思います。

 いえいえ、そんなことはありません。
 逐一報告しています。
 ただ日本政府が維持しているのは、海外には理不尽に見えるかもしれないが、われわれの文化伝統を守るんだという姿勢なんだと思います。
 いずれにしても、基本はお互いの原則的立場を尊重することが重要だということです。
 
 ――日本外交にとってオーストラリアの存在は、カナダより大きくなっていると聞きます。一方でオーストラリアにとっては、中国の台頭で日本の存在が相対的に薄くなっているようです。

 いえ、日本の存在が薄くなっているとは思いません。
 日本に行くオーストラリア人も、オーストラリアに来る日本人も近年増えています。
 海外在住の日本人は、オーストラリアでは約8万5,000人と言われていて、米国、中国に次いで3番目に多くの日本人が住む国です。
 相変わらず存在感はあります。
 中国は貿易量や留学生数でトップになったとはいっても、われわれが気にすべきは「質」でしょう。
  50年代から今日に至るまで、強い経済関係を築いてきたことがあるからこそ、オーストラリア人は日本に対して温かい感情を持っています。
 それは誇りにしていいことです。
 オーストラリアの若者をアジア各地に留学させる「新コロンボ計画」では、最初の3年間で既に1,000人の若者が日本に行っています。
 オーストラリアは日本ともっと緊密になりたいと願っています。
 日本がオーストラリアから見て好ましい行動を取っていくということは極めて重要でしょう。

 ――日豪経済連携協定(EPA)や環太平洋連携協定(TPP)を受けて、経済面で日豪関係は今後どうなると思いますか。

 EPAが1月に発効して、いろいろな分野で効果が表れ始めています。
 ワインや牛肉、自動車などの貿易以外では、M&A(合併・買収)分野で盛んになりつつあります。
 内部留保を有する日本企業が、日本国内マーケットは拡大しないと見てオーストラリアに目を向けています。
 アジア太平洋地域にあって、政治的リスクも少なく、人口が安定して伸びている。そこで自由貿易協定を結んだことによって、企業に安心感を与えているのでしょう。
 特に、インフラやサービス分野でのM&Aに関心を持つ日本企業も増えています。
 ターンブル首相はインフラ重視ですから、まさに日本の技術が生かせるはずです。
 農業面でも、日本の技術を入れてもっと効率化したり、安全な作物を作ってアジアに輸出していくといった動きも出ています。
 日本の投資に対する警戒感が少ないのは良いことです。
 オーストラリアは戦後ずっと経常収支赤字の国です。
 ですので、資本収支を黒字にしなければいけませんが、そのためには外国からの直接投資を招き入れなければなりません。
 そういう意味では日本とオーストラリアは補完関係にあるのです。

 ――大使は日豪関係に携わる中でどういう役割を果たしていく予定でしょうか。

 米国やアフリカなど多くの国に赴任して感じることは、オーストラリアは非常に魅力ある国だなということです。
 そういう魅力ある国が、日本と同じ地域にあり、同じ価値観を持ち、同じ方向を向いていくというのは大事なことです。
 それは、意見が違っても、いろんなことを話し合える間柄です。
 私の在任中は、日本の魅力をもっと感じてもらえるように、相思相愛の関係をさらに温かくしたいですね。
(聞き手・西原哲也)



ロイター  2016年 01月 22日 10:16 JST
http://jp.reuters.com/article/aus-idJPKCN0V002O?sp=true

豪潜水艦の受注競争、
日仏が優位に 
独案は技術リスク高く=関係筋

[東京/シドニー 22日 ロイター] -
 オーストラリアの次期潜水艦をめぐる受注競争は、日本とフランスが優位に立ちつつある。
 豪国防省の選定プロセスを知る複数の関係者によると、
  既存艦を大型化するドイツの提案は技術的なリスクが大きいとして、支持を失いかけているという。

 オーストラリアは半年以内に最終決定する見通しで、雇用問題と絡む潜水艦の建造計画は、その後に控える総選挙の重要な争点になりうる。

 2030年ごろに潜水艦の世代交代を計画するオーストラリアは、
 排水量4000トンクラスの通常動力艦の建設を計画。
 共同開発相手に名乗りを挙げた3者のうち、
 ドイツのティッセンクルップ(TKAG.DE)は、2000トン級の「214型」を大型化することを提案している。

 一方、
★.日本の防衛省は海上自衛隊が運用する4000トンの「そうりゅう型」をベースにした艦を、
★.フランスのDCNS社は5000トンの原子力潜水艦「バラクーダ級」の動力をディーゼルに変更した艦を
提案している。

 ティッセンクルップは潜水艦の輸出実績が豊富だが、複数の関係者や専門家は、単に2倍に大きくする単純な話ではないと指摘する。
 大型化に伴う技術的な複雑さは、地震の規模を表すマグニチュードのように対数的に増すという。

 「ドイツの提案は小さな既存艦を大型化するというもので、技術的な危険を伴う」と、関係者の1人は指摘する。

 ロイターは豪国防省の担当部署にコメントを求めたが、返答を得られなかった。

 ティッセンクルップ・オーストラリアの責任者、ジム・ダンカン氏はロイターの取材に、
 「うわさは正しいかもしれない。誰も分からない」
と指摘。
 「この業界に長年いる者として忠告するなら、うわさは信じないほうがいい」
と語った。

 一方、DCNSオーストラリアのショーン・コステロ最高経営責任者(CEO)は、競合についてコメントしないとした上で、オーストラリアのプロジェクトに大型艦の建造経験は不可欠だと述べた。
 日本の防衛装備庁高官は、
 「(日本案は)優れた運用実績を有するそうりゅう型をベースにしており、高い信頼性、低いリスクの最良の提案と確信している」
とした。

 豪国防省は3者の案を技術的な観点から精査した上で、3月にもターンブル内閣に共同開発相手の候補を提案する見通し。
 同内閣は雇用の創出や国内経済への影響などを加味した上で最終決定する。

(ティム・ケリー、マット・シーゲル 取材協力:久保信博 編集:田巻一彦)





●【小川和久】 小川和久が中国海軍の惨め過ぎる実力を暴露 2015/12/01 に公開




【激甚化する時代の風貌】



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