2016年1月6日水曜日

中国バブル崩壊(2):中国市場・株価が大暴落、「炭鉱のカナリア」は死んだのか? 

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日本テレビ系(NNN) 1月4日(月)18時45分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160104-00000067-nnn-int

 中国市場・株価が大暴落 
取引“強制終了”



 中国の株式市場では4日から、株価の急変動を抑制するため下落幅に応じて取引を止める新たな制度が導入されたが、初日の同日、早くも大暴落で取引が強制終了となった。

 株価の急変動が相次いだ中国の株式市場では、4日から有力企業300の銘柄で構成する指数が、前日に比べて7%変動した場合、取引を強制的に終了するなどの制度が導入された。

 初日の4日は午前中から急落となり、午後になって7%の下落となったため、取引予定時間を1時間半近くも残して、強制終了となった。

 同日発表された製造業に関する経済指標が予想を大きく下回ったことなどが要因とみられる。



サーチナニュース 2016-01-04 18:07
http://news.searchina.net/id/1598798?page=1

中国株で初のサーキットブレーカー 
段階的発動で下げ止まらず、
専門家に「再考」必要との声も

 中国の上海・深圳証券取引市場で4日、初のサーキットブレーカー制度が発動された。
  株価が下落した場合、下落幅に応じて「取引の15分間停止」、「終日中止」を定めたものだが、第1段階の取引停止で株価の下げが止まらず、終日中止となった。専
 門家の間では、数値設定を再考すべきとの見方も出た。

 サーキットブレーカーは、上海・深セン上場株式300銘柄で構成される指数の「滬深300」の
★.前日(15年12月31日)終値からの変動が5%以上になった場合に「全銘柄の取引を15分間停止」し、
★.7%以上になった場合には「その日の取引をすべて中止」する制度
だ。

 4日はまず、午後1時13分(日本時間同日午後2時13分)に、滬深300が前日終値比で5%以上下落したため、取引を15分間停止。
 再開後も下落が止まらず、午後1時33分に下落幅が7%以上になったとして、その後の取引をすべて中止した。

 4日の終値で、上海総合指数は前日比242.92ポイント(6.86%)下落の3296.26で出来高は2409億元(約4兆3230億円)だった。
 深セン成分指数は前日比1038.85ポイント(8.20%)下落の1万1626.8で、出来高は3553億元(約6兆3760億円)だった。

 中国新聞社によると、中国人民大学金融と証券研究所の趙錫軍副所長は、初めて発動されたサーキットブレーカーについて
 「比較的複雑な局面で、投資家に冷静に思考する時間を提供するもの」
と説明。

 ただし現在は、
 「サーキットブレーカーの導入、
 経済改革の推進、
 海外の情勢の複雑さな
どがあり、実際に出現した状況には安定性が欠けていた」
と説明。
 発動の基準となっている5%、7%の変動幅がさらに大きく設定されなおされる可能性
を指摘した。



ロイター 2016年 01月 5日 04:41 JST
http://jp.reuters.com/article/global-markets-idJPKBN0UI1WE20160104

年明け初日から中国発の世界株安
ダウ一時1万7000ドル割れ

[ニューヨーク 4日 ロイター] -
 2016年最初の取引となった4日の金融市場は、中国株が急落したことをきっかけに株式が世界的に売り込まれ、米ダウ平均株価は一時400ドル以上値下がりし、1万7000ドルの大台を割り込んだ。
 一方、リスク回避が強まり、金や債券は買われた。

 中東情勢をめぐる緊張が高まっていることも安全とみられる資産への買いを後押しした。
 一方、原油供給に支障が出るとの見方から、北海ブレント原油先物は一時39ドル近くまで上昇した。

 4日の中国株式市場では、CSI300指数が7%下落。
 この日から導入されたサーキットブレーカーが早速発動され、大引けまで取引が停止となった。
 12月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)が節目の50を引き続き下回ったことや、人民元が下げ幅を広げたことで、前場に大きく下げた株価が午後に入って一段と下げ足を速めた。

 こうしたなか、中東では サウジアラビアがイランとの国交を断絶したことを受け、イスラム教スンニ派とシーア派の宗教対立による影響が周辺国にも拡大。
 4日にはバーレーンに続き、スーダンも首都テヘランのサウジ大使館襲撃などへの対応として、イランと断交すると明らかにしたほか、アラブ首長国連邦(UAE)は、イランとの外交関係を格下げした。

 人民元は対ドルで下落。
 中国人民銀行(中央銀行)が人民元の対ドル基準値を4年半超ぶりの元安水準に設定したことを反映し、上海外国為替市場(オンショア)取引で2011年4月以来の安値を付けるとともに、オフショア取引でも、序盤で11年9月以来の安値を付けた。

 独クセトラDAX指数は4%急落。FTSEユーロファースト300種指数も2.4%落ち込んだ。
 アイシェアーズ中国大型株上場投資信託(ETF)は3.7%安と、昨年9月に記録した4.5%以来の大幅な下げとなった。

 ウィンダム・フィナンシャル・サービセズ(バーモント州)の首席投資ストラテジスト、ポール・メンデルソン氏は
 「中国株の急落や中東情勢などが踏まえ、投資家の間で成長見通しを見直す動きが広がっている」
と話した。



ロイター 2016/1/5 04:21 ロイター
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160105-00000003-biz_reut-nb

今年3━5回の利上げ想定、
中国の影響懸念せず=米SF連銀総裁

[サンフランシスコ 4日 ロイター] -
 米サンフランシスコ(SF)地区連銀のウィリアムズ総裁は、弱い中国経済指標による影響は懸念しておらず、米経済の堅調さを踏まえれば、今年3から5回の利上げが理にかなうとの立場を示した。
 CNBCのインタビューで述べた。

 総裁は中国の動向が与える米経済への影響をめぐり、
 「個人消費や景気先行きの底堅さなど、米経済のファンダメンタルズは極めて力強く、大きな懸念材料ではない」
と指摘。
 中国株急落が米金融システムに及ぼす直接的な影響も軽微とした。

 その上で
 「2016年については、少なくとも現時点で、3から5回の利上げが理にかなうと思う」
と述べた。

 総裁はまた、失業率は今年も継続的に低下し、インフレ率は2%の目標に向かうとの見方をあらためて表明。
 「とりわけ海外からの逆風を勘案すると、この2━2.25%の成長軌道を維持するには、
 向こう数年に著しい金融緩和と極めて緩やかな利上げペースが必要」
とした。


サーチナニュース 2016-01-07 13:37
http://news.searchina.net/id/1599129?page=1

中国株、暴落でまたも取引中止 
1日の取引わずか15分、
「制度に欠陥」の声も

 中国の上海・深?証券取引市場で6日、上海・深セン上場株式300銘柄で構成される指数の「滬深300」の前日終値から7%値下がりしたためサーキットブレーカー制度が発動され、同日の取引は午前9時57分を持って中止された。
  専門家からは、制度に欠陥があるとの声も出始めた。

 サーキットブレーカー発動は、4日に続いて同制度が導入されてから2回目。
 6日は、深セン証取と上海証取の代表的な300の上場銘柄で構成される指数の「滬深300(CSI)300」が取引開始から午前9時半の取引開始後、わずか12分後の午前9時42分に、前日終値と比べて5%値下がりした。

 そのため、規定によって取引が15分中止された。
 9時57分に再会したが下げは止まらず、下げ幅が9時59分ごろに前日終値比で7%下落したため、取引が終日中止となった。
 1日の取引時間は15分に満たなかった。

 株価暴落の原因は人民元のレート引き下げと見られている。
 中国当局は輸出拡大を狙った可能性が高い
が投資家は、
 予想を超えた元安進行は、資本流失を加速させると判断した
とされる。

 中国の投資顧問会社、巨豊投資資訊問に所属し投資顧問として著名な丁臻宇氏は、値下がりそのものによりパニックが発生したのではなく、取引停止になることへの不安がパニックを呼んだと主張した。
 サーキットブレーカー制度が市場を混乱させる方向に機能している
との見方だ。

**********

◆解説◆
 サーキットブレーカー制度は、金融取引において価格一定以上の変動を起こした場合に、相場を安定させるために値幅制限や取引中断の措置を発動する制度を指す。
 これまで2001年の米同時多発テロ事件、08年のリーマンショック、11年の東日本大震災の際などに発動された。



ロイター  2016年 01月 7日 10:33 JST
http://jp.reuters.com/article/global-markets-china-idJPKBN0UL02X20160107?sp=true

アングル:中国株、世界市場の異変伝える「炭鉱のカナリア」か

[ロンドン 6日 ロイター] -
 炭鉱で有毒ガスを検知してくれるカナリアか、それとも檻の中に閉じ込められた象か──。
 投資家から見れば、新年早々に世界の市場を荒れ模様にした中国株は、どちらのたとえも当てはまる。

 悲観派はカナリアに見立てるだろう。
 年明けに中国で始まった株価急落は、ある地域で起きた出来事がいかに世界中に波紋を広げるかをいち早く把握する上で、警鐘の役割を果たしている。

 一方で楽観派は中国を檻の中の象とみなす。
 つまり存在を無視することはできないが、国内市場はきっちり統制され、外国人投資家の関与はおおむね遮断されているので、世界的な投資環境に大きな影響を与えるはずはないという。

 もっとも今週の状況を何らかの手掛かりとみれば、中国株は世界におけるウエートこそなお比較的小さいものの、その動きは今年の世界市場を大きく揺るがすことになりそうだ。
 実際に4日には世界中で多くの主要株価指数が、年明けとしては何年も目にしたことがない大幅な下落率を記録した。
 そして投資家が一番の売り材料としたのが、7%という中国株の急落だった。
 中国の金融市場の基盤の弱さや当局の支援能力、マクロ経済の健全性をめぐる不安は、今に始まったことではない。
 昨年夏にも中国を震源地として世界的な株安が発生している。
 ただ、4日の下落率と世界全体が被った影響度は投資家の想定を超えてしまった。

 BMOプライベート・バンクのジャック・アブリン最高投資責任者は
 「中国政府が介入するたびに世界の市場は下げる傾向がある。
 投資家は絶望を感じている」
と話した。

 過去1年で見ると、上海総合指数が1日で5%ないしそれ以上下落したのは計12日。
 このうち米S&P総合500種が連動して下げたのは9日で、昨年8月24日には上海総合指数が8.5%下がり、S&Pも3.9%安となった。
 ただ、9日中4日はS&Pの下落率が0.5%未満にとどまり、別の3日は横ばいか上昇している。
 また昨年後半は米連邦準備理事会(FRB)の利上げや欧州中央銀行(ECB)の追加緩和が次第に主要テーマとなるにつれて、中国をめぐる懸念が次第に後退していった局面もあった。
 それでも恐らく今後数カ月、FRBとECBには何の動きもなさそうなので、市場の関心は再び中国に向けられた。

 ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのマネジングディレクター、アンドルー・ウィルソン氏は
 「われわれ(の目)はまた中国へと戻った。
 ボラティリティの大きさは懸念される」
と述べた。

<中国経済の重み>

 最近のロイター調査によると、今年の米国株にとって最大の懸念材料として中国を挙げたのはストラテジスト31人中7人にすぎない。
 別の5人は最大の懸念を世界的な景気後退もしくは景気減速と答えた。
 投資家にとって厄介なのは、中国経済と中国株の動きを区別しなければならないことだろう。
 もちろん長期的に見れば両者の相関度は高いが、過去数年単位ならそうではなかった。
 上海総合指数は昨年6月までの1年間に150%上昇した半面、同時期に中国の成長率は7.4%から7%に鈍化した。
 昨年全体では中国株は急落場面がありながらも10%上がったのに、景気減速が止まる兆しはまったく見えない。

 ピクテ・アセット・マネジメントのチーフストラテジスト、ルカ・パオリーニ氏は
 「中国経済の世界におけるウエートは、中国株のそれに比べてずっとずっと大きい。
 私は中国市場のボラティリティを今年の主要リスクとみていないが、中国経済(の悪化)が米国や欧州の経済に伝染するようなら、事態の危険性ははるかに高まる」
と指摘する。
 MSCIの世界株指数に占める中国株の割合は2.5%。
 一方で米国株は53%前後と他のすべての地域を圧倒している。

 ところがマクロ経済の規模は米中が対等になりつつある。
 名目国内総生産(GDP)では米国が世界の約25%、中国がおよそ15%だが、購買力平価ベースでは中国が17%で、米国の16%を上回って世界最大になる。

 だから中国の減速は世界経済の成長スピードも鈍らせる公算が大きい。
 中国の成長率が政府目標の6.5%を大幅に下回るようなら、米国や新興国の経済のみならず、コモディティ価格や新興国通貨に下押し圧力がかかる。

 国際金融協会によると、昨年は新興国から1988年以降で初めて差し引きで資金流出となり、流出額は5400億ドルに上った。
 その大半は中国からだった。

 ユニジェスチョンの株式投資ディレクター、ブルーノ・テイラーダット氏は、FRBが徐々に緩和マネーを吸収する中で、中国から資金が流出して人民元がさらなる下押し圧力を受ける展開に、投資家は細心の注意が必要だと主張している。

(Jamie McGeever記者)




●フジテレビ系(FNN) 1月8日(金)6時35分配信



Bloomberg 2016/1/8 01:46
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160108-00000007-bloom_st-nb

中国29分の混沌:
動転するブローカー、
売り急ぐ投資家-渦巻く怒り

 (ブルームバーグ):ローラーコースター並みに荒い値動きが標準の中国株市場としても、7日の短い取引は混沌の29分だった。

  本土市場の取引開始とほぼ同時に始まった相場急落に、華西証券の専門家たちもわけが分からなかった。
 上海のある運用者は4600万ドル(約54億2800万円)相当の保有株を全て売った。
 しかし他の多くの投資家らは、サーキットブレーカーの発動で取引が突然停止されたため売ろうにも売れず立ち往生した。

 現地時間午前9時59分までには全てが終わっていたわけだが、証券会社にとっては終わりにならなかった。
 今週に入り2回目のサーキットブレーカー発動とCSI300指数の12%下落に動揺し怒った顧客から電話が殺到し始めた。

 華西証券の魏瑋アナリスト(上海在勤)は
 「怒った顧客から、相場下落とサーキットブレーカーについての苦情の電話が殺到し対応に追われた」
と話した。
 「市場に何が起こっているのか理解できず、どうしていいか分からなくて当惑した」
と付け加えた。

 世界の株式市場を揺るがせ中国経済への信頼を揺さぶった今週の中国株急落は確かに不可解だ。
 人民元は下落、成長は鈍化しているとはいえ、中国経済の成長が止まったわけではない。
 成長減速は既に分かっていることだし、元はドル以外のほとんどの通貨に対してはそんなに下げていない。
 アナリストは今年の「6.5%」成長を見込んでいる。

 投資家が不安がっているのは、
 乱高下する株式市場を中国当局がどの程度うまくコントロールできるかだろう。
 当局が昨年夏に介入で相場を下支えするという極端な措置を取った後、企業景況感や消費者信頼感に響く乱高下が再燃したことに政府がどう対応するかを、アナリストらは読みかねている。

 市場全体の取引を停止するサーキットブレーカー制度への批判は強まりつつある。
 年初に導入された同制度ではCSI300指数の変動率が5%になると15分間の取引停止、7%でその後終日の取引停止となる。
 今週は4日と7日に終日停止の措置が取られた。

 申万宏源集団のセールスディレクター、ジェリー・アルフォンソ氏(上海在勤)氏はサーキットブレーカーについて、
 「明らかに意図せぬ結果を呼んでいる。
 取引停止になる前に売ろうとする人がいるため、かえって下げを加速させてしまう」
と指摘。
 「投資家は新しいルールに慣れる時間が必要だ。
 リテール中心の市場でこのような展開が難題をもたらすのは必至だ」
と話した。

 当局の対応をめぐる不透明は続いている。
 7日には明確な介入の兆候は見られなかった。
 中国証券監督管理委員会(証監会)は同日、相場が急落している本土株式市場に関する緊急会議を開いたが政策行動に関する決定には至らなかったと、事情に詳しい関係者が述べた。

原題:China’s 29 Minutes of Chaos: Stunned Brokers and a
Race to Sell(抜粋)



サーチナニュース 2016-01-08 10:13
http://news.searchina.net/id/1599206?page=1

中国株、暴落の「火消し」のつもりが「火に油」 
サーキットブレーカー、たまりかねた当局が中止を決定

 中国政府・証券監督管理委員会(証監会)は7日夜、株価の急変動を防止する目的で今年(2016年)になり導入したばかりの
 「サーキットブレーカー」制度をいったん取りやめると発表した。

 中国当局は2016年、上海と深センの両証取の代表的な上場300銘柄で構成される指数の「滬深(CSI)300」が、前日終値と比較して5%変動した場合には15分の取引停止、7%の場合には終日取引中止を行う「サーキットブレーカー」の制度を導入した。

 同制度の適用で、4日には上海と深センの両証取で午後1時13分に取引が15分停止、同1時33分に終日中止、7日には午前9時42分に15分停止、同9時59分に終日中止が適用された。
 7日の場合、1日の取引時間が15分に満たなかった。両日とも、「投資家が冷静になる」ために設けられた15分間の取引停止が終わっても、株価の暴落にまったく歯止めがかからなかった。

 4日の時点で専門家からは制度の方式について疑問の声が出た。
 証監会は5日の時点で制度の微調整を示唆したが、7日夜になって制度適用をいったん取りやめることを決めた。
 同制度は株価暴落の「火消」にするつもりが、
 燃える炎に油を注いで「力油(ヂアヨウ=元気づけ)」てしまったことになる。

 証監会は7日夜、同制度についてについて説明。
 「サーキットブレーカーが(4日と7日の)株価暴落の主な原因になったわけではない」、
 「投資家、とくに中小規模の投資家の合法的な権益を守るための制度だった」、
 「2015年に株価の乱高下が発生したため各方面からの求めに応じた」、
 「慎重に論証を進め、社会から意見も求めた」
などと主張した上で、
 「予期の効果がなかった」
と認めた。

 さらに、投資家が、サーキットブレーカーが発動されると取り引きが出来なくことを恐れ、売り急いだことで値下がりがかえって加速したと述べ、サーキットブレーカーが
 「まったく新しい制度であり、わが国には経験がなかった。
 市場が適応するには段階が必要」
などと論じた。

**********

◆解説◆
 上記説明は「かなり苦しい言い訳」の連発のように見えるが、「中小の投資家を保護するために検討を重ねた」ことは確かだろう。
 中小の個人投資家が一様に「予期せぬ大損」に直面すれば当局に対する不満が高まり、資金が撤退すれば、市場としても痛手だからだ。

 中国の株式市場は個人投資家が多く、しかも「博打感覚」が強いとされる。
 サーキットブレーカーの制度がうまくいかなかった背景には、金融の専門家らによる
 「投資家は普通、このように行動するだろう」
との想定と、
 「中国人投資家の実際の動き」の乖離があった
と言える。
 言い方を変えれば、エリート集団の庶民の皮膚感覚の距離が露呈したことになる。



JB Press 2016.1.9(土) 武者 陵司
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45735

中国経済のフリーランチ、終わりの始まり
世界連鎖株安は中国の市場封鎖で下げ止まる

(1):市場の反乱に市場規制・市場否定で対応する中国

◆悪循環再作動へ

 中国で株と人民元の連鎖崩落が止まらない。
 上海、深セン市場は7%下落リミットとするサーキットブレーカーを1月4日に導入したが即日7%下落でブレーカー作動、3日後の7日には取引開始から30分後にブレーカー作動、終日取引停止になった。
 中国株安に呼応して世界株式も新年に入り急落開始、世界金融不安が急速に高まっている。
 世界株安の要因としては北朝鮮の核実験、サウジとイランの国交断絶、ロシアトルコ間の緊張など地政学不安の高まりも指摘されているが、世界株安の主因は圧倒的に中国であろう。
 株式ととともに年初早々人民元安も進行している。
 オフショア市場の下落に先導される形で、当局の管轄下にあるオンショア相場も下落、当局の介入はあるものの、人民元の先安観が強まっている。

 また2014年6月にピークを付けた外貨準備高の減少傾向には歯止めかからずむしろ加速、
 2015年12月は過去最高の単月で1079億ドルの減少になった。
 中国の最近の経常黒字は月平均200億ドル程度なので、
 差し引き月間1300億ドル程度(約14兆円)の純資金流出が起きている
のである。
(1):中国人による対外直接投資の増加、
(2):外国人による対中投資の回収、
(3):中国人の対外資本逃避、
等が考えられるが、
 中心は(2)と(3)、つまり急速に中国から資本が逃げ始めているのである。



◆改善しない中国経済失速症状

 株安(資産価格下落)、通貨安、資本流出はまさしく1997年のアジア通貨危機を引き起した3点セットである。
 中国の金融不安の悪循環を放置すれば1997年アジア通貨危機の再現の可能性が高まっていく。
 本来なら経済成長率を高め株式や通貨価値に対する信任を回復することで市場を崩そうとする投機筋に対抗するべきなのであるが、
 今の中国経済は相次ぐ金融緩和と財政出動にもかかわらず、経済成長復元の兆しは全く現われていない
 鉄道貨物輸送量、粗鋼生産量、電力消費量、輸出・輸入などミクロデータは軒並み前年水準を下回っている。
 また景気対策の効果が期待される不動産開発投資や鉄道投資も昨年末前年比マイナスに陥った。
 経済失速が止まらないとすれば、株安(資産価格下落)、通貨安、資本流出の悪循環に弾みがつかざるを得ない。

しかし中国にとってはバブル崩壊、金融危機勃発といった事態は直ちに
 共産党の専制支配体制危機に結び付く
ので、絶対許容できない。

 残る危機回避策は市場の価格決定機能の歪曲、株の売り禁止、固定相場復帰となると
 残された唯一の手段は、市場機能の否定
ということしかなくなる。
 中国政府は年初来の株価急落に対応して昨年導入されいったん解除した上場企業の大株主による株式売却禁止を再度復活させるなど、市場価格立て直しのために強権介入を強めている。
 また投機筋のターゲットとされやすいサーキットブレーカーの発動を見合わせることも決めた。
 昨年の株価急落後には売りを推奨した証券会社社員や投資家、ジャーナリストを公安警察が喚問するなど情報統制が打ち出されたが、それらは一層強化されるだろう。

 為替面でも固定為替制復活とクロスボーダーの資本取引のより厳しい規制を打ち出すのではないか。

 昨年9月に打ち出された実質的先物売り禁止措置は今や効力はない。
 資本流出と元安を食い止めるには、強権の発動が不可避となるだろう。
 それは1997年アジア通貨危機の際にマハティール首相率いるマレーシアがとった手段である。
 マレーシアはIMFの支援勧告を無視し
★.通貨の大幅切り下げとそこでの固定化、
★.資本流出規制(海外投資家の資産売却代金の海外送付の禁止、出国する資本に対する課税)
を行い、為替投機を鎮静化した。

 今の中国にはクロスボーダー資本移動の禁止と人民元の釘づけ、株式取引の事実上の禁止などしかしか対応策は残されていないように見える。
 そうなれば株式と人民元売り投機は道を断たれ、世界金融市場の不安の連鎖は遮断され、世界株式底入れに向かうと期待できる。
 1997年のアジア通貨危機の再現は回避されるだろう。
 しかしこれらの措置は極論すれば市場の事実上の閉鎖である。

 かくして中国が推し進めてきた
 社会主義市場経済と言う矛盾(市場経済の都合のいいところだけをチェリーピックするフリーランチは、
 市場の側面が否定されていくことで
 社会主義(統制経済)に帰結していく
ことになる。
 それは世界が望む市場主義への改革とは全く逆行するものである。
 しかしそれ以外解決策はない、というところまで追い込まれていく
のではないか。

(2): 金融鎖国は中国にとって両刃の剣

◆中国のアキレス腱は巨額の対外資金依存

 市場の否定は当面の危機回避には有効だが、それは中国経済をさらに困難化する。
 市場経由の資金調達が困難になり、それは中国経済の命取りになりかねない。
 これまでの
 中国経済繁栄の最大の鍵が中国への国際資本の集中
だったからである。

 中国の経済発展には新興国のキャッチアップ過程で特徴的な(日本や韓国にも存在した)フリーランチが、特に強かったという特質がある。
 フリーランチは技術獲得、市場アクセスとともに、特に資本取得において顕著
であった。
 世界の余剰資本がこぞって対中投資・融資となって中国に向かい、中国で巨額の外貨準備が形成された。
 しかし金融鎖国は中国の国際資本調達の道を閉ざす
のである。

 中国による高経済成長をけん引した投資は巨額の外貨流入、対外借り入れによって賄われた。
 対外借入資金の増加が外貨準備の急増をもたらし、それを裏づけとしてなされたマネーの供給が空前の投資を可能にしたと言える。
 中国の中央銀行である
 人民銀行の総資産に占める外貨資産は8割に上っている
ことがそれを如実に示している。
 対外金融力の象徴とされている
 外貨準備高も実は過半が他国資本に依存したものである
とすれば、
 中国の対外金融力は相当に脆弱である
と言わねばなるまい。


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◆借金依存の中国外貨準備、ひっ迫する外貨事情

 これまでもレポートしてきたことであるが、
 外貨準備高の性格が日本と中国ではまるで違う
ことを知らなければならない。

外貨準備高とは対外決済や為替市場の安定のために当局が保有する外貨資産である。
★.日本の定義では日銀と財務省が保有する外貨の総額で、
 その大半はかつての外貨介入によって取得されたものであり、
 その源泉は全てが過去の経常黒字にある。
 また2015年11月末残高1.23兆ドルであり、
 その87%の1.07兆ドルが外国証券、
 大半は米国債となっている。

 それに対して
★.中国の外貨準備高の源泉は、過去の経常黒字の積み上がりに加えて、
 海外からの借り入れが大きく寄与している
と考えられる。
★.中国は民間や外資企業の外貨保有を厳しく管理しているため貿易収入や対外借り入れなどによって取得した外貨の大半は中央銀行に預託され、その預託額が外貨準備にカウントされている
と考えられるのである。

 だから
★.日本の対外総資産額に対する外貨準備高の比率は16%に過ぎないが、
★.中国の対外総資産額に占める外貨準備高の比率は61%と異常に高い
のである。

★.日本の外貨準備はひも付きのない自由な資金だが、
★.中国の外貨準備の過半は多大なる債務を負っている資金、つまり他国資本なのであり、
 介入には投入できない
 ゆえに中国に投融資している華僑系の膨大な資本が回収に転じ始めたら、上げ底の過大表示されている外貨準備高では到底足りなくなるという事態もあり得るのである。
 詳しくはリンク先の「図表4 中国の対外資産負債残高推移」を参照されたい。

(*)本記事は、武者リサーチのレポート「ストラテジーブレティン」より「第154号(2016年1月8日)」を転載したものです。
http://www.musha.co.jp/attachment/568f067f-a01c-412d-8450-4a4185f2cfe7/bulletin_j_20160108.pdf








【激甚化する時代の風貌】



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