2016年1月20日水曜日

爆買いは何時終わる(1):日本経済のカンフル剤としての恩恵、伝統文化や景観など健全な観光戦略を策定へ

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 「爆買い」は何時かは終わる。
 これは日本の共通認識であろう。
 それが何時終わるかはそれぞれの判断である。
 日本企業はそれを想定して対策を立てている。
 この爆買いは日本企業を一時でも支え、次の一歩を踏み出す余裕を与えてくれた。
 まあ言うなれば、風邪を引いた時の栄養剤点滴みたいなものである。
 永続的なものではない。
 そんなことは日本企業は重々承知であろう。
 今後に大きな期待は抱いていない。
 爆買いとはバブルである。
 弾ける前に引くというのが鉄則である。
 出遅れたものがババを引く。
 でもこの減少は日本にとってまさに恵みの雨だった。
 雨は必ず止む。
 だが、感謝感謝であろう。
 しかし、爆買いが終わっても、日本旅行は終わらない。
 昔、日本の若者すらも海外に行き、ブランド物を買い漁さった時期があった。
 失われた時代の訪れとともに、そのような行動は潮が引くようになくなった。
 しかし、その失われた時代にあっても、毎年のようにシーズンには海外旅行客は史上最高を記録し続けた。
 一度楽しんだ海外旅行の喜びはなかなか消えない。
 日本に観光資源があるなら、日本への観光客は増え続けるだろう。
 そのとき、爆買いは消えていると見ていいと思う。
 「爆買い」とは一過性のものである。
 旅行は継続性のものである。


日本テレビ系(NNN) 1月19日(火)20時36分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160119-00000083-nnn-bus_all

 止まらぬ株安“震源地”中国と中東で何が?



 19日の東京株式市場で、日経平均株価の終値は前日比92円80銭高い1万7048円37銭と4日ぶりに値上がりしたが、市場の混乱はおさまっていない。
 株安の背景には世界経済の先行きに対する警戒感がある。
 その震源地、中国と中東では今、何が起きているのだろうか?

■「爆買い」消費好調も…先行きは楽観できず?

 東京・銀座には19日も、多くの外国人観光客が訪れていた。
 中国人観光客
 「(Q予算は?)(上限は)決めていません。良い物なら買いますね」
 「家電製品をたくさん買いました。1万元(約18万円)使いました」 なかでも目立つのが中国からの観光客。「爆買い」とも言われる消費で、いまや日本経済を支える重要な存在だ。
 銀座にある百貨店にも買い物を楽しむ訪日外国人の姿があった。

 三越銀座店営業計画担当・村松一夫担当長
 「(外国人向け売り上げは)昨年が前年の3倍くらい大きく伸びた。
 非常に高い購買動向が続いているかと考えております」
 今年も売り上げは1.5倍と好調を維持。
 しかし、先行きについて聞くと楽観はできないという。
 村松担当長
 「海外のいろいろな状況がございますので、そういう意味では不透明な感じは今後あるのかなと」

■中国の景気減速と日本の株式市場

 そのわけは、中国の景気が減速していること。
 19日にそれを物語る数字が発表された。中国の去年のGDP(=国内総生産)の実質成長率は、前年比で6.9%のプラスとなった。
 これは25年ぶりの低い伸び率で、7%としていた中国政府の目標も下回ったのだ。
 これを受け、株安が続いていた日本の株式市場は、根強い不安感から、上げ下げを繰り返す展開に。
 結局、値を上げて取引を終えたが、年明け以降の下落幅は、去年末が1万9033円71銭、19日が1万7048円37銭と、すでに2000円近くに上る。

■株価急落のもう一つの要因

 「株価急落」の要因はもう一つある。
 それは「原油安」だ。
 そもそも、原油安が進んだ大きな要因は、
 中国や新興国の景気減速により、原油の「需要」が伸び悩む一方、
 サウジアラビアなどの産油国が原油の産出を減らしておらず、「供給」も過剰になっていること。
 そこで、原油が「余る」との見方が強まり、価格が下落しているのだ。
 すると、利益が少なくなる産油国の経済が打撃を受け、これまで世界中の株式市場に投資されていた、いわゆる「オイルマネー」が引き揚げられることになり、中国の景気減速とともに世界中の株価を押し下げることにつながっているのだ。

■原油安がさらに進む可能性も

 この原油安はさらに進む可能性がある。
 私たちはイランの首都・テヘランに向かった。

 原油埋蔵量、世界4位を誇る産油国のイラン。
 ガソリンの価格は1リットルあたり約40円と日本の3分の1程度だ。
 イラン南部の港町には巨大な原油の「輸出基地」もある。
 これまで、核開発をめぐって、イランは欧米などの経済制裁を受けていたが、その解除が決まり、今後、原油の増産に踏み切る考えなのだ。

 OPEC元イラン代表・ハティビ氏
 「制裁解除後、すぐに輸出を増やす考えです。
 なぜなら需要があるから」
 その場合、供給がさらに過剰になることから、原油安に拍車がかかる可能性がある。

■世界的な株安は今後も続くのか?

 中国の景気減速と原油安に端を発した世界的な株安。
 今後も続くのだろうか?

 三井住友アセットマネジメントのシニアストラテジスト・市川雅浩氏は、
 「(現在は)不安の方が先に立っている状態で、それで株式市場が動揺してしまっている。
 日本株については欧米株に比べて相対的な割安感があります。
 したがってもう少し金融市場が落ち着いてくれば、少しずつ買い戻しの動きも見えてくるのではないか」
と語った。



みんなの経済新聞ネットワーク 1月20日(水)3時35分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160120-00000000-minkei-cn

2015年の訪日香港人、前年比64.6%増の152万人に 
中国本土に次ぐ伸び率
"訪日香港人の伸びには活発なLCC利用も大きく寄与"

 日本政府観光局(JNTO)が1月19日、2015年の訪日外国人観光客統計を発表し、香港は前年比64.6%増の152万4300人と中国本土に次ぐ2番目の大きな伸びを示した。(香港経済新聞)

 JNTOによると、海外からの訪日者数増加は、円安よる割安感の定着、ビザの大幅な緩和、消費税免税制度の拡充、クルーズ船の寄港増加、航空路線の拡大、燃料サーチャージ値下がりによる航空運賃の低下、継続的な訪日旅行のプロモーションによるものと分析している。

 JNTO発表の報告書による国別
 トップは中国(本土)で2014年比107.3%増の499万3800人
 2位は韓国で45.3%増の400万2100人、
 3位に台湾の29.9%増の367万7100人と続き、
 香港は4番目となった(64.6%増の152万4300人)。

 人口比では、中国本土が270人に1人、韓国が12.6人に1人、台湾が6.4人に1人となり、香港は4.7人に1人で人口の2割を超える。
 経済的に香港のライバルと言われ、日本ではASEANへの入り口として関心が高まっているシンガポールは17.5人に1人となっている。

 外国人旅行者の消費総額は同比71.5%増で3兆4771億円と初めて3兆円を突破
 1人当たりの支出は16.5%増の17万6168円となった。
 うち香港人の1人当たりの消費額は16.5%増の17万2356円だった。

 内訳は宿泊代が4万2165円、飲食費が3万5439円、交通費が1万7203円、娯楽サービス費が4752円、買い物代が7万2145円、その他が652円だった。
 男女比では男性が48.2%、女性が51.8%、
 年齢別では20代以下が24.3%、30代が29.9%、40代が21.5%、50代が20.3%、60代以上が4%。

 20代から50代まですべてが2割を占めているのは香港だけのため、あらゆる世代が満遍なく訪日した結果となった。

 香港の平均宿泊日数は5.8日で、4~6泊する人が全体の62.2%を占める。欧米諸国では平均滞在日数が10日を超え、7泊以上の滞在が6割を超えている。

 香港の152万人という数字は、これまで過去最高だった2014年の92万5975人を大幅に超え、初の100万人超えの大台に乗った。
 その要因として、JNTO香港事務所は、地方の魅力を訴求する訪日プロモーションの強化、B to Cセミナーの開催、人気旅行雑誌との招請を上げる。
 LCCが地方空港への直行便を就航させたほか、札幌、米子、松山などに大手旅行会社のチャーター便を運航したことも寄与したと分析する。

 リピーター率が高いという成熟した市場で、2016年は世界経済の不安定な要素があるが同事務所では、「2016年は上積みを計画している」とし、具体的な数字は明らかにしなかったものの、香港からの訪日客は増えると予測。
 その理由として
 「VISAカードが香港人サラリーマンを対象にした調査で、
 年休20日に対し14日を海外旅行に充てている」
ことに注目し、
 「海外旅行は香港人に数少ない余暇でありこれを削るとは考えにくい」
と分析する。

 さらに、観光における「日本プレミアム」があるとし、
 「香港人の旅行回数が減ったとしても、日本は間違いない観光地であり、日本に行くことを減らさないのでは」
と付け加える。

 今後の展開について、同事務所は
 「2015年度までの4年間に「Rail & Drive]というプロモーションに取り組んできたが、
 2016年4月からは中長期的なコンセプトを盛り込んだ香港人のリピート化を促進する活動を行う」
としている。



現代ビジネス 2016/1/20 06:01 磯山 友幸
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160120-00047447-biz_gendai-nb

「爆買い」は2月で終わる!?
観光客増でも、客単価の減少が止まらない

◆毎月下落が続く数字

 暖冬などの天候不順の影響もあり、昨年秋以降の消費減退が鮮明になっている。
 そうした中で、中国人観光客など訪日外国人による「爆買い」への小売店の期待は高まる一方だ。
 中国人留学生のアルバイト先といえば、外食チェーンやコンビニというのが長年の定番だったが、最近は小売店の免税カウンターなどでの仕事が増えているという。
 店の大小を問わず、いかに中国人や台湾人、香港人などを顧客として取り込むか、熱い視線を送っていることが分かる。

 だが、そもそも外国人観光客の「爆買い」はいつまで続くのか。
 昨年10月に本欄で
 「ついに『爆買い』がピークアウト! ?~中国の景気減退と、二つの数字が示す、明るくない未来」(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/45941)
という記事を載せた。
 新聞などが訪日外国人の急増による爆買いの様子を繰り返し報じていた段階だったので、多くの読者に読まれた。

 その記事で着目したのが、日本百貨店協会が毎月公表している「外国人観光客の売上高・来店動向(速報)」。
 百貨店71店舗で免税手続きが行われた物品の売上総額や免税手続きをした客の数、平均客単価などのデータが明らかになる。
 2015年10月20日に発表した9月のデータは免税の売り上げ総額が138億6000万円と前年同月の2.8倍だった。
 一見、良い数字に見えたが、前の月、8月の171億6,000万円に比べると19%もの大幅な減少だった。
 免税手続きをした客の数も19万2000人と8月の22万9000人から16%も減っていた。
 さらに、免税客の単価が下落していることが気になった。

 免税売上高が過去最高を記録した2015年4月の平均客単価は8万2000円だったが、そこから毎月下落が続き、9月には7万2200円にまで下落していたのだ。

◆「爆買いの質」が落ちている

 そこで、記事では結論としてこう書いた。
 「ひょっとして外国人観光客の『爆買い』がピークアウトしたのではないだろうか」
 「年末商戦に入れば、高額品の売れ行きが伸び、客単価も再び上昇するかもしれない。
 ただ、これまでの右肩上がり一辺倒の増加傾向には、どうやら変化が生じているように見える」
 結果はその通りになった。
 国慶節の休みがあった10月には免税売り上げは172億円に増加。客数も23万2000人となった。
 1月18日に日本百貨店協会が公表した12月のデータでも、免税売上高は177億6000万円、客数は23万人となり、客単価は7万7000円にまで上昇した。

 1年前の年末商戦と比べると、売り上げは1.4倍。客数も9万人増えている。
 だが、客単価だけは8万9000円から7万7000円へと大幅に減った。
 明らかに「爆買い」の質が変化してきているのだ。
 昨年12月の全国百貨店の売上高(店舗数調整後)は1年前に比べて0.1%の増加にとどまった。
 暖冬で冬物衣料が売れず「衣料品」部門が5.2%減ったことが足を引っ張った。
 そんな中で目だったのが「美術・宝飾・貴金属」部門の伸びの鈍化である。
 同部門の売上高の伸び率は2015年4月以降、2ケタの伸びが続いていたが、12月は6.3%増と大きく鈍化したのである。

 年末商戦に、高級時計や宝飾品といった高額商品の売れ行きの伸びが鈍化した背景には、外国人旅行者の財布のひもが堅くなったことがあるだろう。
 爆買いの対象が高級ブランド品などから化粧品や医薬品など低価格品にシフトしていることを示していると言えそうだ。

 それでも「爆買い」の威力は大きい。
 12月の百貨店売り上げでみても177億円の免税売り上げが無かったとしたら、全体でマイナスである。
 日本の国内消費がいかに弱いかが分かる。
 それだけに「爆買い」への期待は依然大きいのだ。

 では、今のところ高原状態にある外国人消費は今後どうなっていくのだろうか。

◆カギを握るのは韓国人!?

 カギを握るのはやはり訪日外国人客の行方だろう。
 日本政府観光局(JNTO)の推計によると昨年12月の訪日外客数は177万3000人。
 1年前に比べて43.4%増えた。昨年1月以降、前年比で30%~60%の大幅な伸びが続いている。
 伸び率が大きく鈍化したわけではない。

 だが、国籍別にみるとまったく違った姿が見えて来る。
 日本にやってくる外国人の総数は高原状態なのに、中国からの訪日客数は明らかに減少しているのだ。
 中国からの訪日客数の過去最高は昨年8月の59万1510人。
 1年前2014年8月は25万3900人だったから倍以上になった。
 日本国内いたるところで中国語を耳にするようになったのはこのためである。
 それが9月以降減り続け、12月は34万7100人になった。

 夏に付けたピークが12月にかけて減少するのは毎年のパターンなのだが、昨年夏からの激減ぶりは際立っている。
 爆買いを支えてきた中国人が減っているのだ。

 それでも訪日客全体が減らないのは、韓国からの訪問客が急速に増えていること。
 2015年2月以降、国別では中国からの来客数がトップで、韓国は台湾にも抜かれる月が多かったのだが、ここへ来て急増。12月に久しぶりにトップに返り咲いたのである。

 では、このまま中国からの訪日客の減少傾向が続くのだろうか。

◆春節が「最後の勝負」

 焦点は2月の春節(旧正月)にどれぐらい中国から観光客がやって来るかだ。
 昨年8月の59万1510人という過去最高を超すようなら、まだまだ中国からの訪日ブームは続くと見ていいだろう。
 それを大幅に下回るようだと、ピークアウトが鮮明になってくる。

 百貨店での免税売り上げも昨年4月に付けた197億5000万円という記録を抜けるかどうかが焦点だ。
 さらに、客単価が8万円台に戻るのかどうか。
 昨年、春節だった2月の客単価は8万7000円だった。

 今年の春節にいずれの記録も更新することができなければ、中国人を主体とする外国人観光客の「爆買い」はピークアウトしたことになるだろう。
 小売業者からすれば、中国シフトを見直し、韓国や他のアジア諸国、欧米諸国から観光客などにターゲットを移すタイミングということになるかもしれない。

 いずれにせよ本格的に「爆買い」が終焉する前に、日本人の消費を復活させなければ、日本経済は大打撃を被ることになりかねない。



ロイター 2016年 01月 24日 11:15 JST
http://jp.reuters.com/article/china-economy-consumers-idJPKCN0V200H?sp=true

アングル:中国「爆買い」の火は消えるか 

[上海 20日 ロイター] -
 世界経済の先行きにとって、さらに悪いニュースかもしれない。
 「爆買い」で昨年の経済成長を支える主役だった中国の消費者が、今年は支出を切り詰める可能性が高まっている。
 外食の頻度を減らし、スマートフォンの機種交換を先送りし、衝動買いを減らしていくという。
 世界第2位の経済大国である中国の政策当局にとっては、ただでさえ株式市場の動揺と賃金成長の伸び悩みに苦慮しているというのに、これもまた気を揉む材料だ。
 
 中国経済は昨年、この四半世紀で最も低い経済成長率を記録したが、少なくとも政府が掲げた目標に近い成長率を維持できたのは消費需要のおかげだったと、アナリストは見ている。
 エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの北京在勤アナリスト、トム・ラファティ氏は、
 「2015年に経済を救ったのは中国の消費者だ」
と語る。
 「彼らの消費支出が、これまで中国経済のけん引役だった産業や投資の不振を相殺することに貢献した」
と言う。
 だが、今年も消費者が同じように動いてくれるという保証はない。

 オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)が20日発表した調査によれば、中国の消費者信頼感は今月記録的な低さとなった。
 米調査会社チャイナ・ベージュ・ブックの調査では、第4・四半期の雇用成長・賃金成長は過去4年間で最低となっている。
 これらの調査を裏付けるように、ロイターが上海で取材した消費者も、今後支出には気を配り、抑制していく可能性が高いと語っている。

<爆買い頻度も減少>

 男性のZhouさんは、昨年ガールフレンドとともに外食で約7万元(約125万円)、衣類とアクセサリーに4万元を使ったという。
 だが、今年は経済状況に鑑みて約3分の1近く支出を切り詰める予定だ。
 「自炊を増やす。
 携帯電話などのエレクトロニクス製品の買い替え頻度も減らすかもしれない」
と言う。
 ある店舗でマグカップやベッド用のシーツを物色していた30歳の女性Zhengさんは、
 「物価上昇に収入が追いつかないようだ」
と不安を口にする。
 「こういうものは必要ない。
 もう少し自制して、買い物にも頻繁に行かないようしなければ」
と語った。

 さらに厳しい打撃を受けるのは、中国で増大しつつある高齢者層かもしれない。
 医療費が可処分所得に食い込みつつあるからだ。
 すでに退職した55歳の女性は、ロイターの取材に対し、自分のお金の大半は都市部の大気汚染対策用のエアフィルターに使わざるを得なかったと語る。
 「病気になって病院に行く必要が生じたときのために、貯金しておきたいのだけど」
と言う。

 中国国内に多数存在する小規模な小売店経営者は、彼ら自身も消費者だが、完全に国内需要に依存して生計を立てているだけに、厳しい状況に置かれている。
 上海で携帯電話ショップを経営するDongさんは、昨年下半期に売上が急激に落ちたという。
 「奇妙な話で、理由は分からない。
 株式市場が暴落したからかもしれない。
 2016年はもっと悪くなると思う」
と話す。

<逆風>

 エコノミストは、今年、賃金が伸びず失業率が上昇すれば、消費者の支出は低下すると警告するが、そうなる可能性は高そうだ。
 また、最近の人民元安によって中国で販売されている多くの輸入品価格にその影響が及んでおり、中国人の購買力が内外で低下することも考えられる。
 「賃金上昇が緩やかになることで、今年は消費支出の伸びが抑えられると予想している。
 さらに、産業の不振が消費に及ぼす悪影響が強まるリスクも残っている」
と、オックスフォード・エコノミクスのアジア経済担当責任者ルイス・クイジス氏(香港在勤)は分析する。

 中国の国家統計局によれば、GDP成長に対する消費の貢献比率は、昨年15ポイント上昇して3分の2を超え、巨大な製造部門の減速を相殺することに貢献した。
 もっとも、そのうち民間消費ではなく政府支出によるものがどの程度あるのか、公式の内訳は発表されていない。
 中国の内閣に相当する国務院は昨年11月、民間消費を加速させる試みとして、小売、医療、旅行やスポーツなど「ライフスタイル関連ビジネス」に対する融資提供において、金融機関がこれまで以上に多様な担保を受け入れることを奨励していくと発表した。

<強靱さの兆候も>

 とはいえ、消費財の小売販売額は前年比で11%以上増大し4000億ドルを超え、オンラインショッピングサイトのタオバオでは、11月の販促イベント期間中、たった1時間で約40億ドルの売上高を稼いでいる。
 こうした消費の強靱さを示す兆候は続いている。

 ANZの消費者信頼感調査からは、「今こそ高額商品を購入すべき時期だ」と考える回答者が増えていることが分かる。
 昨年の新車販売台数は4.7%増と伸び悩んだが、中国自動車製造者協会によれば、今年は6%増が見込まれている。

 それでも、上海の婦人服店の経営者は
 「この1年間、商売は不振だったし、上向きになるとは考えられない」
と懸念する。
 「富裕層が高級品を買うとしても、貧困層は節約に走るだろう」と語った。

(Pete Sweeney記者)
(翻訳:エァクレーレン)



レコードチャイナ 配信日時:2016年1月29日(金) 7時10分
http://www.recordchina.co.jp/a127341.html

中国人の爆買いにはもう期待せず?
日本が欧米人観光客の誘致強化へ―SP華字紙

 2016年1月27日、シンガポール華字紙・聯合早報によると、日本は中国人観光客の「爆買い」はピークを過ぎたと見ており、欧米の観光客誘致を目指しているという。
 28日付で参考消息網が伝えた。

 2015年の訪日外国人観光客は前年比47.1%増の1973万7400人で、うち約25%を中国人が占めた。
 昨年は中国人観光客による「爆買い」が流行語大賞に選ばれるなど、その購買力が大きな話題になった。
 日本全国の百貨店の売り上げは過去4年間で初めて前年を下回ったが、外国人観光客の消費は前年の2.6倍(1943億円)に及んだ。

 しかし、そうした勢いに懸念が見え始めた。
 中国経済の減速だ。
 元安が続けば中国人観光客の減少は避けられない。
 あるデパートの担当者は、
 「中国の富裕層の資産は多くが不動産だと聞いている。
 株価だけでなく不動産価格も下落するのが怖い」
と話した。

 こうした状況下で、日本政府はより多くの国や地域から観光客を受け入れようと調整している。
 政府観光局は欧米各国に日本の歴史や伝統文化の魅力を発信していくほか、民間に対して富裕層向けの高級ホテル建設を呼びかける。
 日本は欧米に比べてこのようなタイプのホテルが不足しているためだ。

 ある大手旅行会社の担当者は、
 「爆買いのピークは過ぎた。
 もう伝統文化や景観など健全な観光戦略を策定すべき時に来ている」
と話している。



ダイヤモンドオンライン  2016年2月6日
http://diamond.jp/articles/-/85863

ある日、「爆買い」中国人が来なくなったらどうするか?
~『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか?』(中島恵著)を読む

◆「爆買い」で何を買っている?

 2016年は年頭から中国の株式市場が不安定になり、いよいよ中国経済の減速が実感されるようになってきた。
 しかし日本を訪れる中国人観光客の「勢い」は衰えない。


●『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか?』
中島 恵著 プレジデント社 255p 1500円(税別)

 中国の旧暦で元旦にあたる「春節」は、今年は2月8日。
 その前後、2月7日から13日にかけて、中国では大型連休になる。
 そのため、この1月の中国人観光客へのビザ発給数は昨年同時期を上回り、日本行き航空便の予約はほぼ満席。
 今年の2月も膨大な数の中国人観光客を迎えることになりそうだ。

 2015年の「ユーキャン新語・流行語大賞」を受賞した「爆買い」。
 本書はフリージャーナリストの中島恵氏が、来日する中国人観光客や中国国内に住む人々、そしてインバウンド消費を推進する日本の全国各地の観光関係者にいたるまでの「生の声」をていねいに取材して書かれたものだ。

 中島氏は、北京大学や香港中文大学に留学後、新聞記者を経てフリーとなり、中国・香港・台湾など主に東アジアのビジネス事情、社会事情等を新聞、雑誌、インターネット上に執筆。中国との関係は29年に及ぶベテランジャーナリストだ。’ 
 本書では長年つき合い、見つめてきた中国人、とりわけ庶民たちの心理や考え方にも焦点を当てながら、「爆買い」の現場で実際に何が起こっているのか、それが今後どのように変化していくかをわかりやすく解き明かしている。

 ここ数年ほどは、靖国問題や尖閣諸島を巡る領土問題などにより、政治面での日中関係は良好とはいえない。
 そんな状況に加え、中国のGDPは日本を上回り、日本は中国に世界2位の経済大国の座を奪われてしまった。

 政治レベルでの日中の緊張関係はしばらく続きそうだが、そんなことにはおかまいなく、中国の人々は大挙して日本を訪れている。
 彼らの多くは経済的に余裕がある富裕層だ。

 彼らは日本にある「良いもの」をどんどん中国に持って帰っている。
 持って帰っているのは電化製品や日用品、食品だけではない。
 私は、仕事でつき合いのある東大教授から、いかに中国人留学生たちが真面目で優秀かをよく聞かされる。
 彼らの多くは学位を取ったら中国に戻っていくそうだ。
 知識や技術も「持ち帰り」の対象なのだ。

 大量の中国人観光客による「爆買い」現象を目の当たりにして、あたかも日本が浸食されているかのようなとまどいや脅威を感じている日本人も少なくないのではないだろうか。

 しかし、中島氏は本書のプロローグで、「爆買い」をする今の中国人観光客は、バブル期の日本人観光客にソックリであることを指摘する。
 70年代後半から急速に円高が進み、団体で海外旅行に繰り出していったかつての日本人は、欧米人に煙たがられながらも大量にブランドものを「爆買い」していた、というのだ。

 そう言われれば確かに、私自身も90年前後に円高が頂点に達していた頃は、アメリカ西海岸のシリコンバレーに出かけては、友達の分も含めて大量にPCパーツやソフトウェアを「爆買い」した経験がある。
 「爆買い」の元祖はわれわれ日本人だったのだ。

◆中国人富裕層が日本を目指す本当の理由とは?

 中島氏は中国人観光客の「爆買い」はまだまだ続くと分析する。
 しかしその中身は変化しているとも指摘。
 彼らの関心は、われわれが「爆買い」という言葉から想像する
 「モノ」だけではなく「コト」、つまり体験や経験へと移っている
のだ。

 観光庁がまとめた訪日外国人消費動向調査レポートからもその傾向を見てとることができる。
 2014年に訪日した中国人観光客が「次回(来日した時に)したいこと」の上位には、
 「四季の体感」
 「テーマパーク」
 「日本の歴史・伝統文化体験」
  「スキー・スノーボード」
などが挙げられている。

 中島氏は、
 「急速な経済発展が進みつつある中で多くの中国人が、
 日本は自分たちの『未来の姿」だと潜在的に感じている
のではないか」
という旧友の中国人の言葉を引用しながら、
 それこそが中国人富裕層が日本を目指す本当の理由だ
と感じたそうだ。
 つまり急速な経済成長を経験する中で、中国は日本の後を追いかけている
というのだ。
 「爆買い」とはその過程に過ぎない。

 かつて欧米で盛んに「爆買い」を繰り広げていた日本人も、80年代になると、徐々に
 「物の豊かさ」よりも「心の豊かさ」を重視するようになる。
 中国人は30年遅れて今その転換点に差し掛かろうとしているのではないか。
 今「爆買い」をしている中国人富裕層の中には、
 「日本から何かを学ぼう」
 「自分たちも変わろう」
という意識が芽生えているのではないか。

 彼らが日本から学ぼうとしているのは
★.高度に発達した社会システムであったり、
★.モノづくりでも細部にまでこだわって品質を高めようとする姿勢、
★.さらには「衣食住」に関する「安心・安全」であったり、
★.相手に気を配るおもてなし
であったりする。
 ハード面よりもむしろソフト面の“細やかさ”に彼らは価値を見出している。
 表面的な「爆買い」現象にばかり気をとられていてはいけないのかもしれない。

◆インバウンドが盛んな今こそ、相互理解を進めるチャンス

 1月27日、日本空港ビル、三越伊勢丹、NAAリテイリングの3社が設立した新会社「Japan Duty Free Fa-So-La」は、沖縄以外では初となる市中空港型免税店「Japan Duty Free GINZA」を、三越銀座店8階にオープンした。
 約3300平方メートルの広々とした売り場で、1日あたり2000人の来店を見込み、年間売上げ150億円を目指すそうだ。

 銀座といえば、中国企業の傘下に入り、家電量販店から免税店大手にすっかり衣替えをしたラオックスが爆買いのメッカとして有名だ。
 春節を前に、日本企業がタッグを組んでこれに対抗しようという動きのようだ。
  「爆買い」を大きなチャンスと捉えて、どんどんモノを売ろうという考え方はもちろんあってもいいだろう。
 しかし、ラオックスは親会社の蘇寧電器が中国全土に持つ店舗網を通じたアフターサービスもセットで提供していることを見落としてはならない。
 日本で売るインバウンドの消費を捉えるだけではなく、もう一歩中国側に入り込んだアウトバウンドでのサービス展開まで考えていかなければ、爆買い後も視野に入れた長期的なビジネスにはなりにくいのではないか。

 不文律の規制やしきたりも多く、外国企業がビジネスを展開しづらい中国市場に踏み込むには、相手の視点に立ったパートナーシップの構築を視野に入れることが不可欠だ。
 長い歴史を通じて日本は多くのモノや文化、制度などを中国から取り入れてきた。
 古くは漢字や仏教、諸子百家の思想を始め、官僚制度や暦、着物や茶、さまざまな日用品は、もともとは中国から学んだものばかりだ。
 明治以降西欧化が急速に進む間に、日本は中国よりもアメリカやヨーロッパを重視するようになった。

 しかしGDPで追い抜かれた今、本当にわれわれがあらためて中国から学ぶべきものはないのだろうか。
 商機を捉えるためだけではなく、日本人がさらに成長していくためにも考えていく必要があるのではないか。
 相手をきちんと理解したうえで、自分たちの強みや良さもしっかり認識し、自身の価値を広げる努力も続けなければ、いつか“日本ならではの良さ”と評価されていたソフト面でも中国に追い抜かれ、相手にされなくなってしまう日が来るかもしれない。

 本書で「ある日彼らが来なくなってしまったらどうするのか」という問いに対する
 「その時は元に戻せばいい」
という、全銀座会街づくり委員長の回答が紹介されている。
 私個人としては、「本当にそんな悠長な構えでいいのだろうか」という感想をもった。
 彼らが来なくなる時とは、日本にもう魅力がなくなった時だ。

 今のうちにわれわれの方からも彼らの中に入り込んで中国という国をもっと深く理解し、互いの魅力を高め合う努力が必要なのではないだろうか。

 本書を読んで、そんなことを考えさせられた。

(文/情報工場シニアエディター 浅羽登志也)



ダイヤモンドオンライン 中島 恵 [フリージャーナリスト] 2016年2月10日
http://diamond.jp/articles/-/86032

爆買いから「爆学」へと進化し始めた、
中国人の日本リスペクトぶり


●今年も春節の季節がやって来た。中国人の興味は日本の「モノ」から「コト」へと移り始めており、とりわけ「ラーメン道」はリスペクトされている

 春節期間を迎えた今週、「爆買い」報道が再び過熱している。
 従来通りの「モノの爆買い」に加え、猛烈な勢いで変化する中国人の興味や関心は美容や医療、芸術・文化、自然、アウトドアスポーツなどの「コト」に移行してきている。
 「モノ」はいつか事足りて満足してしまうし、飽きてくるが、「コト」は奥が深く、追求すればするほど面白いからだろう。

 だが先日、来日したある中国人の友人とおしゃべりしていたとき、筆者は友人のユニークな視点に感心させられた。
 その友人は30代の上海在住の女性で、1年に1~2回、日本に遊びに来る。
 筆者はこれまで彼女を通して、彼女と同世代の中国人の考え方を教えてもらってきたが、今回雑談の中で素朴な疑問を投げかけてみた。

 それは
 「中国人がこれほど日本観光にやってくるようになってきて、日本にだいぶ慣れてきた人々もいる。
 彼らは日本に来ても、もうあまり感動しなくなってきているんじゃないか?」
という問いだ。

 感動というと、読者は「なに? 日本旅行が感動だって?」と不思議に思うかもしれないが、一般の中国人にとって、日本での観光体験はまさに感動、感動の連続である。

■人の対応から生活環境に至るまで日本と中国の「ソフト」は雲泥の差

 日本人にとっては「これが普通」だから気がつかないが、中国と比べたら、モノの品質だけでなくハード、ソフト、人の対応、生活環境、何もかもが母国とは雲泥の差だからである。
 筆者は決して日本を礼賛して、自画自賛で言っているわけではなく、これは本当のことだ。

 たとえば空港。
 到着後、入国審査に向かう途中にあるトイレには、たいてい女性の長い列ができているが、中国人は日本の空港のトイレに入ってまずびっくりする。
 床も鏡もピカピカ。
 空港は大きな荷物を入れやすいようにと個室が広めにつくってあるし、カバンを掛けるフックがちょうどいい位置にある。
 最近の上海や北京はトイレ革命がかなり進んでおり、きれいになっているが、正直言って日本のトイレと比べたら月とスッポンだ。

 そんなところから始まって、ホテルにチェックインし、観光に出かけたり、コンビニに入ったりするうちに、日本の様々な面で質の高さに驚き、感動する。
 そうした声は私たち日本人の耳にはほとんど届いてこないが、中国のSNSには、日々大量にコメントが書き込まれている。
 中国の友人のSNSを見せてもらうと、
 「日本のラーメン。このボリュームとおいしさで、なんとこのお値段!」
 「東京にもきれいな公園がこんなにたくさんある!」
 「日本の店員は常に笑顔で丁寧。
 言葉が通じなければ筆談してくれる。
 決して中国人の店員のように怒り出したりしない(笑)」
といったコメントが溢れている。
 筆者も以前から知っていたが、今や“国民総コメンテーター”となった中国では、SNSで何でも情報発信するようになった。

 だが、前述したように、それはきっと最初のうちだけで、何回も日本に来るようになると慣れてしまい、最初に味わった感動が薄れてくるのではないかと思っていた。
 自分自身も海外に行ったときよくある経験だが、自分の国にはない珍しい料理を食べたときの感動は、最初の1回か2回だけ。
 何度も食べていると飽きてきて、「う~ん、それほどでもないかも」と思ってしまったりする。

 そういう感覚と同じで、中国人も最初のうちは日本の見るもの、聞くものに感動して写真を撮りまくるが、そのうちに感動が薄れてくる。もともと中国人は変化が激しく、日本人よりも飽きっぽい性格のため、筆者はその点を危惧していた。

 ところが、友人の答えはとても意外なものだった。

  「そんなことないですよ。
 貪欲な中国人が日本に飽きるなんてことは考えられない。
 もちろん、飽きる人が全然いないと言っているわけではないですよ。
 ありとあらゆる中国人がいますから。
 でも、日本のことをよく知っている私ですらびっくりしたんですが、
 最近、日本の情報の中身がどんどん深くなっているんです。
 数百年前の中国と日本の関係と違って、やっぱり今の日本は中国の先生。
 私たちは日本から学ぶべきこと、教えてもらうことがまだたくさんあるのです」

■収納術や田園風景に憧れる!
SNSに溢れる「日本リスペクト」の声

 どんなことかというと、たとえば、その友人の周囲では「日本の収納術」が大きな話題になっているのだという。

 片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんのベストセラー『人生がときめく片づけの魔法』は中国語にも翻訳されていて、多くの中国人読者に読まれている。
 その本や、あるいは来日した人が日本のテレビで「収納術」の特集をやっているのを見たことなどがきっかけで、日本旅行経験のある女性たちが、
 「日本の収納術、最高!」
 「やっぱり日本の女性は世界一」
などと書き込んでいるというのだ。

 中国と日本とでは家具や間取りが少し異なるが、近藤さんの収納術やキッチンの片づけ方法などは、中国人にとっても参考になることが多く、
 「日本人女性の片づけを学べば、自分の家もあんな風にきれいになる」
と感じるらしい。
 筆者も何度も都内の100円ショップで中国人観光客を見かけたが、かゆいところに手が届く100円ショップの雑貨や掃除道具は、「収納」に目覚めた中国女性にとって、欲しいものだらけ。

 しかも、グッズだけでなく、近藤さんのような片づけコンサルタントは、中国人にとって聞いたことがない職業で、非常に珍しい存在だ。
 これまでは日本で掃除道具を買うところまでだったが、今後は“収納術”というテクニックを日本から学びたいという方向へと、進化しているのである。

 友人によると、「日本の美しい田園風景」も中国のSNSで話題騒然となっているというから驚く。
 家電などのモノはもう手に入れて、爆買いをしなくなった人々は、日本の風景に感動する。
 北海道などにある大きな畑や、新幹線の車窓から見る茶畑や水田などは、中国では(地域によって異なるが)めったに見られないからだ。

 「中国では珍しい田園風景をただ写真に撮るだけでなく、
 こういう美しい田んぼをつくれる日本の農業技術、農家の工夫、有機農法、日本のコメのおいしさについて、もっと中国人は学ぶべきだ」
という声すら挙がっているというからびっくりする。
 筆者は著書の中で、2年ほど前に上海の元大学教授の女性が九州を訪れたとき、田んぼの畦道が真っ直ぐなことに感動した、という話を聞き、それをそのまま本に書いたのだが、同様に感じる中国人が非常に多く、しかもそこから、農業技術にまで話題が発展するようになってきたのだ。

■ラーメン道にこそ「日本らしさ」がある?
モノからコトへと興味が移る中国人の成熟度

  「『ラーメン』も学ぶべきもの(?)の1つだ」
と語るのは、40代の別の男性だ。
 中国人が日本人のつくる1杯のラーメンに感動することはこれまでも触れてきており、すでに多くの日本人が知っていることだが、
 “学ぶ”のはラーメンを食べることではなく、ラーメン道ともいうべき哲学的なものだ。
 実はラーメンだけに限らないが、スープをつくるのに十数時間かけたり、何年間も出汁を研究したり、具や麺に創意工夫をしたりして、それらを1杯のラーメンの中にすべて凝縮して落とし込む、という日本人の徹底したこだわりに、中国人は感動を覚える。

  「ラーメンこそ日本人の真髄」と言い切る中国人すらいる。
 道を究めるというのは日本人の得意分野だが、料理や農業など、日本人がこだわり出したらきりがない業界にも、中国人は注目し始めている。
 日本人の徹底した仕事ぶりから、学ぶべきことが多いからである。

 「収納」「美しい田園風景」「ラーメン」――。
 一見まったく関係がない事柄のように感じるが、これらはいずれも“日本らしさ”の特徴だ。

 きれい好きな日本人が整理整頓や掃除をよくやることは中国でも知られているが、まさかこれほど収納にこだわり、収納の専門家や掃除のコンサルタントまでいることは、中国人にとって驚きという以外にないだろう。
 田園風景やラーメンも同様だ。
 日本人にとっての「普通」は中国人にとっての非日常だが、それを見て楽しむだけでなく、さらに一歩先に進んで、
 「非日常がなぜ、どのようにつくられていて、日本人はそれをどう活用しているのか」
というところにまで、興味の範囲は広がっている。今回ここに挙げたのは、そのごく一例だ。

 度々日本を訪れ、日本に慣れ始めた中国人たちだが、日本に飽きることはない。
 むしろ、回を重ねることで日本の細部にまで目を配れるようになってきた。
 オタクと言うのとは違い、日本文化に対する本当の理解を深めつつあるのだ。

その背景には、中国国内のあらゆるものに対する不信感がある。
 実際は中国製品の品質はどんどん向上し、中国人の中にも手腕のある企業経営者が次々と生まれているのだが、「中国のものはダメに決まっている」という自虐的思考が中国人自身の間にすっかり広まっており、「日本は素晴らしい」という風に、より強く感じてしまう部分があるのではないか、と筆者は考えている。

 それにしても、「爆買い」に代表されるような日本の「モノ」だけでなく、そうしたモノづくりがいかにして生まれたか、日本人のこだわりにまで関心を抱いてくれるようになってきているとは……。
 私たちにとってありがたいことであるのと同時に、中国人の成熟度のスピードは恐ろしいほどの速さで進んでいることに、改めて気づかされるというものだ。





【激甚化する時代の風貌】



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