![](http://1.bp.blogspot.com/-xtKSAL7FMiM/VouIWeWQnPI/AAAAAAAAADw/-ZNM2Dw9AP8/s640/13440.jpg)
激甚化している世界で
「一路一帯」なんてことは絵に書いたモチである
ことは中国自身がよく知っている。
肝心要の中国が南シナ海でゴタゴタを引き起こして、その構想をヒビ割れ
させているのである。
この構想はあくまで平和安定時に実現可能なものであって、言い出しっぺの中国が世界の不安定要素の一部を構成している現在にとって、冷静に常識な判断すれば「言葉だけの構想」に過ぎないことが分かってくる。
この「言葉楼閣」をデッチあげて、あたかもそれば実現可能なように煽っていくことによって道を作っていくのが中国の外交である。
と、考えれば、あくまで
「夢を語る」もので、限りなく本気度の薄いもの
であることが分かる。
もし本当にその気なら、一歩引いて周辺国とトラブルを起こさないように妥協外交を進めていくだろう。
ただ単に構想をぶちあげ、それによって自国の利益を拡大させようという利己的な発想に過ぎないということある。
早晩、中国もイスラムの影響が入ってきて、見通しがつきにくくなることはほぼ察しがつく。
中国を横断する、特に西部の長大な鉄道路線をどうやって守るのか?
インデイアンはいないがイスラムはいる。
この程度のことは頭の悪いガキでもわかる。
まさか1キロおきに兵隊を貼り付けるわけにもゆくまい。
乗せられてウハウハ言っているヤツが間抜けということであろう。
まあ、世界というのはさほど甘いものではない、ということだろう。
乗せられて陶酔している間抜けも世の中には多い
ということである。
中東の海と陸の安全を保証しているのはアメリカである。
中国はその安全の上に乗って拡大を続けている。
アメリカが徐々に手を引いていくと、この地域は不安定になる。
それを安定できるほどの能力を中国は有していない。
とすれば不安定なエリアでの「一帯一路」というのは夢構想にすぎなくなる。
サーチナニュース 2016-01-05 14:49
http://news.searchina.net/id/1598882?page=1
中国困った!
イラン・サウジの断交で「国家戦略」に支障、
これまでの外交努力が「総崩れ」も=中国メディア
中国共産党機関紙の人民日報系のニュースサイト「海外網」は5日、「サウジとイランの断交は、中国に大きな難題をもたらした」と題する記事を発表した。
同記事は中東情勢の混乱は石油資源の確保や「一路一帯」など中国の国策の大きな障害になるとして警戒を示した。
イランとサウジアラビアの対立の直接の引き金は、サウジアラビアが過去数十年で最大規模の大量の死刑執行の一環として2日イスラム教シーア派指導者のニムル師を処刑したことだった。
ニムル師は2011年の民主化運動で、サウジ王室の追放を主張し、12年に逮捕された。
両国の対立の根底にはさらに、サウジアラビアがイスラム教最大の宗派であるスンナ派の中でも、特に厳格なワッハーブ派の国であるのに対し、イランはスンナ派と対立するシーア派が主導する国という事情がある。
イランでは、イランの最高指導者ハメネイ師は3日、ツイッター上でニムル師の処刑を非難。
さらにインターネットでサウジを「(イスラム国<ISIS>と何か違いはあるか」と非難した。
同国ではニムル師処刑に激怒した群衆がサウジ大使館に火炎瓶を投げつけるなどの暴力的なデモが発生した。
サウジアラビアは3日、イランとの関係断絶を宣言。
4日にはバーレーンとスーダンもイランとの断交を宣言。
アラブ首長国連邦(UAE)も駐イラン大使の召還などを決めた。
事態はスンナ派国家とシーア派国家の対立の様相も示すようになった。
「海外網」は、中東の混乱について、
中国は「芝居を眺めている役ですむわけがない」
と主張。
まず、中国は中東から大量の原油を購入していると指摘し、石油供給の不安定化を懸念した。
さらに、中国が国策/世界戦略として進めている中国と東南アジア、中央アジア、アフリカ、欧州を経済ネットワーク化する「一路一帯」に深刻な影響が出ると指摘。
具体例としては、中国とアフガニスタン、タジキスタン、カザフスタン、イランの5カ国が合意した鉄道建設に影響する恐れを懸念。
イランが危機に陥れば、中国は市場も、資源も、交通手段も失うと論じた。
記事は中国の外交姿勢について、
「政治的な交渉で、国家間の対立を解消する」、
「国連主導の安全メカニズムを十分に発揮する」
立場を一貫して取りつづけてきたと主張。
現在のシリア問題について「すでに5年も血を流してきたが、現地の人々の苦難がますます深刻になっただけで、その他の効果はなかった」と指摘。
欧州連合(EU)であれ、ロシアであれ、米国であれ、サウジアラビアとイランの対立を、流血を見ずに解決できると信じている」と主張した。
**********
◆解説◆
中国は冷戦時代、中東のイスラム教諸国との関係構築に力を入れた。
米国との対立を背景に、イスラエルとも対立しており、逆にイスラム教諸国との関係を強化するとの戦略だった。
中国がパレスチナを国家として承認して外交関係を樹立したのは1988年で、1992年のイスラエルとの外交関係樹立よりも早かった。
一方、中国はイスラム革命後のイランとの関係構築にも努めた。
中国は外交関係樹立に際して「平和五原則」を強調してきた。
同原則内の「内政への不干渉」の本来の意味は
「相互の体制に干渉しない前提で、社会主義国である中国も資本主義国とも平和共存できる」
だったが、中国は経済発展を最優先するようになると、
「人権問題などで非難されたり制裁を受けている国とでも、内政不干渉なのだから交流できる」
と解釈を変質させ、資源買付などの貿易関係の維持や拡大に努めた。
代表的な例のひとつが対イラン関係だった。
核開発などを理由に西側諸国が次々に関係を冷却化していく中で、中国は積極的にイラン原油を買い続けた。
2011年時点で、中国が輸入する原油の約1割がイラン産だったとされる。
ただし2015年にイランが核開発断念を受け入れたことには、中国の説得が大いに役立ったとされる。
イランが中国を信用していたからこその説得成功で、中国がイランと密接な関係を続けたことを単純に批判できない側面もある。
中国にとって、これまで構築してきたアラブ諸国と、非アラブ系イスラム国家のイランの対立が本格化したのでは、中東地域におけるこれまで長年の外交努力の成果を大きく損なわれる可能性が出てくる。
』
サーチナニュース 2016-01-05 06:32
http://biz.searchina.net/id/1598807?page=1
なぜ日本は・・・?
正式に発足したAIIB、
日本不参加の理由は米国が不参加だから
中国の勃興にともない、世界情勢が大きく変わりつつある。
中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が2015年末に正式に発足したが、米国と日本はいまだ加入していない。
日米はなぜAIIBに参加しなかったのか、香港メディアの鳳凰網はこのほど、日本がAIIBに参加しない理由についての有識者の見解を紹介した。
世界第3位の経済大国である日本が中国主導のAIIBに参加するかしないかは、世界の勢力図の変化に大きな影響をもたらす。
記事は、世界の中心が米国から中国に変わりつつあるとしたうえで、「日本はなぜAIIBに参加しないのか」と質問を提起した。
さらに、この疑問に対して政治上の観点から中国の有識者の見解として、
「もし米国がAIIBに参加すれば、
中国を中心とした巨大な経済圏を構築しようとする中国の一帯一路計画を促進することになる」
と指摘。
それは中国が国家としてより大きな力を持つことを手助けするものであり、
米国が政治的な理由でAIIBに参加しない以上、日本も参加することはできない
のだと論じた。
この有識者のコメントの要点は、日本がAIIBに参加しない政治的な理由はあくまでも米国にあるのであって、日本はただ米国の顔色を見ているに過ぎないということだ。
一方で記事は、別の有識者の見解として、中国人はどのような劣勢でも切り抜ける力があると主張し、中国経済の将来はまったく悲観する必要はなく、中国経済の先行きがどうなろうとAIIBが失敗することはないとの見方を示した。
さらに、日本にはTPPという後ろ盾があるものの、このまま参加しないならば「AIIBの成功を指をくわえて見ながら、参加しなかったことを後悔することになるだろう」と論じた。
仮に経済的なメリットがあったとしても、現在の米国と日本の関係上、日本が米国を差し置いてAIIBに参加することはないだろう。
しかしある日突然米国が日本より先にAIIBに参加することはあり得る。
そのとき日本が続いてAIIBに参加しても、果たして経済的なメリットを享受できる余地は残されているだろうか。
将来の世界情勢を見通し、
中国の上回る知恵が日本に求められている。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2016年1月4日(月) 22時10分
http://www.recordchina.co.jp/a126316.html
英国防省が予測する20年後の世界
=米中二強体制、
日英独は衰退―米メディア
2015年1月3日、参考消息網によると、英国防省が20年後の世界を予測した。
米誌ナショナル・インタレストは英国防省の報告書「2035年、未来の作戦環境」を取り上げた。
報告書は20年後の世界について米国と中国が世界をリードする超大国になっていると予測している。
一方、英国は日本やドイツと同じく影響力を失っているという。イ
ンドネシアやナイジェリア、南アフリカ、トルコ、メキシコなどが新たな地域大国として台頭、英国と肩を並べていることが要因だ。
』
『
JB Press 2016年01月07日(Thu) 小原凡司 (東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5836
中東の断裂が中国の希望を砕く
2016年は物騒なニュースとともに明けた。
1月3日、「サウジアラビアのジュベイル外相が、イランとの外交関係を断絶すると表明した」と、サウジ国営通信が伝えたのだ。
日本にも衝撃が走ったのは、サウジとイランの国交断絶が、第5次中東戦争の危険さえ孕んでいるからだ。
イスラム教スンニ派が国民の85%を占めるサウジアラビアとイスラム教シーア派が91%を占めるイスラム大国イランの間の対話のチャンネルが切れたということは、スンニ派とシーア派の間の問題解決の手段は戦争しか残されていないという意味でもある。
サウジアラビアに続いて、サウジアラビアと同じスンニ派の王族が支配しているバーレーンと、スンニ派が国民の多数派を占めるスーダンも、イランとの外交関係を断絶すると発表した。
まさに、中東で、スンニ派とシーア派の断裂が起こっているのだ。
◆サウジの影響力低下は織り込み済みの米国
中東の断裂は、米国や欧州各国が心配する事態であるが、
サウジアラビアに対する米国のグリップが効かなくなっていることを示す
ものでもある。
欧米及びロシアは、核兵器開発に関してイランと合意に至っているが、米国のイランに対する融和的姿勢はサウジアラビアにとって許容できないものだ。
イランの核問題を解決に向かわせる代わりに、米国はサウジアラビアに対する影響力を失ったのだと言える。
サウジアラビアに対する影響力の低下は、米国にとっては織り込み済みだという分析もある。
米国は、イランの核兵器開発の中止を優先させたのだ。
一方で、米国のメディアは、オバマ政権は、同盟国であるサウジアラビアとの関係を再構築しなければならないという圧力に晒されていると報じている。
米ロ両国は、サウジアラビア及びイラン双方に自制を求めている。
すでに、ケリー米国務長官が事態の緊張緩和に向けて動いている。
ロシアも、「イランとサウジアラビア間の関係改善のため仲裁する用意がある」としている。
米ロともに、中東での大規模な衝突を避ける努力を見せるのは、中東で、スンニ派とシーア派が衝突すれば、米ロも巻き込まれる可能性があるからだ。
中東で大きな影響力を持つ、サウジアラビアとイランの対立は、中東を二分した軍事衝突に発展しかねない。
現に、バーレーンもスーダンもサウジアラビアに追随している。
シーア派の盟主の地位を回復したいイランは、イラク及びシリアとの連携を深め、いわゆる「シーア派ベルト」を構築しようとするだろう。
米国は、同盟国たるサウジアラビアが戦闘状態になれば、無視することはできない。
シリアを支援し、イランとも良好な関係を持つロシアも、黙っていられなくなる。
◆中国は中東情勢をどう見ているのか?
米ロが、軍事衝突を避けるようにサウジアラビア及びイラン双方に自制を求めているのに対して、中東や地中海沿岸国に影響力を強めつつある中国は、情勢をどのように見ているのだろうか。
米国や国際社会の関心が中東に向かえば、南シナ海における中国の自由度が高まると考えられることから、現在の状況を歓迎しているのか。
いや、問題はそのように単純なものではない。
中国にとって、中東の断裂は、「中華民族の偉大な復興」という中国の夢を砕く可能性を持つ深刻な事態である。
そもそも、中国が南シナ海をコントロールしたいのは、米国の対中武力行使を抑止しつつ、インド洋から地中海にかけての米海軍のプレゼンスを少しでも低下させるために、南シナ海を航行する米海軍艦隊にコストを強要したいからだ。
米国海軍のプレゼンスを低下させることができれば、地中海等における中国海軍のプレゼンスも活きてくる。
そのために、中国は空母や大型駆逐艦を建造し、海軍を増強しているのだ。
地域に対して、中国の影響力を行使できることが重要なのである。
影響力を行使して中国が実現したいのは、「一帯一路」イニシアティブによる、中国が主導する巨大経済圏の創出である。
◆「一帯一路」が中央で破壊される
中国の「一帯一路」の終点は、地中海沿岸国であり大西洋東岸である、とされる。
もし、中東の断裂が深刻になり、軍事衝突を起こすことになれば、中国の「一帯一路」は、その中央から破壊されることになる。
さらに、「21世紀の海上シルクロード」構築の重要な目的の一つであるエネルギー資源の海上輸送の出発地が衝突のただ中に置かれ、海上シルクロードの意義さえ失ってしまう。
中国にとって、「一帯一路」は、米国のアジア回帰によって生じる米中対立を避け、西へ向かうものである。
そして、中国の継続的な発展をかけた経済活動の海外への展開でもある。
もし、中国の経済発展が停滞したら、国内の経済格差は解消できず、社会は安定を失う。
共産党の統治が危うくなるという意味だ。
中東の断裂は、中国の経済発展戦略を根底から覆すかもしれないのである。
中国は、米国やロシアと異なり、イランかサウジアラビアのいずれかの側に立つことなく、双方とも良好な関係を築こうとしてきた。
海外にニュースを発信する中国メディアは、「サウジとイランの断交は、中国に大きな難題をもたらした」と報じている。
中国は「黙って見ている訳にはいかない」としつつも、その立場は複雑である。
今さら、サウジアラビアかイランかの、どちらかの側に立つことができないからだ。
中国は、イランにもサウジアラビアにも、巨額の投資をし、安全保障面での協力も強化している。
中国国内の報道は、事実を伝えるに止まっている。
現段階では、それ以上に踏み込むことが難しいのだ。
中国は中立の立場を崩していない。
中国が見ているのは、サウジアラビアとイランだけではない。
米国とロシアの動きが問題である。
中国は、中東等の地域において、米国と影響力行使の競争をするために、海軍の増強に努めてきた。
しかし、中国にとってみれば、中東の断裂は、早く起こり過ぎた。
現在の中国の軍事力では、米国とのプレゼンス競争に勝てないばかりか、地域に影響力を行使することも難しい。
中国は、サウジアラビア及びイランに対する自らの影響力が十分でない以上、米ロがプレイする大国のゲームの中で行動せざるを得ない。
中東の情勢を安定させるにも、米ロの影響力次第ということである。
中国は、サウジアラビアとイランの緊張を緩和するための、米国とロシアの取り組みに、どのように関わるかを模索している。
サウジアラビアとイランのバランスをとり、緊張を緩和するためには、中国は米国とも協調的な姿勢をとるだろう。
◆海軍力増強の必要性を思い知る中国
しかし、問題は、サウジアラビアとイランの間で軍事衝突が起こってしまった場合である。
中国は、中東において、米国の影響力が強くなりすぎることを警戒している。
米国がサウジアラビアを強力に支援して、地域のパワーバランスが崩れそうになったと認識したら、中国は、南シナ海において、米海軍に対する圧力を高めるかもしれない。
中東に展開する米海軍艦艇の航行を妨害するのである。
中東で軍事衝突が生起すれば、中国は石油の輸入にも窮することになる。
せっかく、ロシアからの天然ガスの購入等によって、ウクライナ危機で経済的窮地に陥ったロシアを助ける形になっているものが、今度は中国がロシアに助けてもらうことになりかねない。
これも中国にとっては避けたい状況である。
いずれにしても、中東における軍事衝突は、中国にさらに難しい問題を突きつけることになるのだ。
しかし、中東の断裂という状況は、中国に軍事力、特に海軍力増強の必要性を思い知らせるものになっただろう。
中国人民解放軍の改革は始まったばかりであるが、中国が改革を加速し、空母打撃群を、早期に、インド洋から地中海に展開しようとすることは間違いない。
中国は、大国として地域情勢に影響を与えてこそ、自らが生き残れると考えているのだ。
』
これまでの中東問題は『イスラム対ユダヤ』であった。
しかし、これはイスラムがお金持ちになったことによって、下火になった。
そこで、出てきたのが豊かになった『イスラムの内ゲバ』である。
イスラム内での勢力争いである。
象徴的には
『スンニ派対シーア派』である。
宗教理論ではなく、勢力争いにすぎない。
もちろん宗教戦争というのは、政治的勢力争いであるのだが。
外部からみれば『中核対革マル』みたいなものである。
イスラム対ユダヤの答えはないが、内ゲバも答えはない。
世界が激甚化しているということは、僅かな火種があれば局地的に一気に吹き出るということである。
そのキッカケとしては宗教対立は燃えやすい。
ちょうど、中国や韓国の「反日運動」みたいなものである。
中国国内でも山のような小さな火種を抱えている。
どれに火がつくか、これまで考えもしなかったものが大火事を誘発することもある。
激甚化とはそういうことである。
局部的に理論値をダイナミックにオーバーしてしまうことでもある。
『
BBCニュース 2016.1.6 視聴時間 02:04
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45715
●イランとサウジアラビア 対立の理由は宗教なのかそれとも
サウジアラビアがテロ関連の罪状だとしてイスラム教シーア派の宗教指導者を処刑したことで、イランが猛反発し、サウジアラビアが外交関係断絶を発表するなど、両国関係は悪化している。なぜ両国は対立を続けるのか、それは宗派間対立だけが理由なのか。
BBCペルシャ語のシアバシュ・アルダラン記者とBBCアラビア語のハナン・ラゼク記者が、両国関係を解説する。
』
『
ロイター 2016年 01月 6日 13:56 JST
http://jp.reuters.com/article/saudi-iran-escalation-idJPKBN0UK0BU20160106?sp=true
焦点:サウジ・イラン関係は悪化の一途たどる恐れ
[リヤド 5日 ロイター] -
サウジアラビアとイランが過去に国交を断絶したのは直近では1988年まで遡り、その後、1990年のサダム・フセインによるクウェート侵攻という形で中東地域のパワーバランスの変化をもたらした。
今回鮮明になったサウジとイランの対立劇が、当時よりも穏便な展開を経てやがて収まりがつくと考えるのは難しい。
それどころか、両国の関係は今後悪化の一途をたどる恐れがある。
複数の外交筋によると、現在起きている危機の核心は、サウジがサルマン国王の即位以降、イランとその連携勢力に対して軍事力で立ち向かう姿勢を強めていることにある。
国王はムハンマド・ビン・サルマン副皇太子を腹心として選び、舞台裏での根回しを駆使した外交を放棄しようとしている。
サウジは昨年、イエメンでイランと同盟する軍事勢力が政権を握るのを防ぐため武力行使に踏み切り、シリアでもイランと手を組むアサド大統領に反抗する諸勢力の支援を強化した。
サウジがシーア派の有力指導者ニムル師の死刑を執行したのは、主に国内政治情勢が理由とはいえ、イランとのあからさまな対決方針も一因になっている、というのが政治アナリストの分析だ。
こうした軍事介入は、サウジにとってはイランによる中東各地域への影響力行使が「野放し」にされているという不満が何年も積み重なった結果といえる。
イランが各地のシーア派勢力を支持し、ペルシャ湾岸諸国の反政府グループに武器を密輸した、ともサウジは批判している。
サウジのジュベイル外相は4日ロイターに
「われわれはイランが地域の安定を損い、わが国や同盟国の国民に危害を加えるのを看過せず、対抗していく」
と語り、強硬姿勢を崩さない構えを示した。
シリアやイエメンでの軍事介入は、イランが欧米などとの核合意よって中東で積極的行動を取るための資金力や政治力を高めることへの警戒感の裏返しでもある。
<相互不信>
1960─70年代までは、サウジとイランは決して心から許せる間柄ではなかったものの、米国がソ連の中東への影響を抑える戦略における「2本柱」として連携する関係にあり、宗派上の争いも表面化しなかった。
しかしその後サウジは潤沢な石油収入を背景に、厳格なイスラム信仰を主張してシーア派を異端とみなすスンニ派「サラフィー主義」の守護者に任じ始めた。
逆にイランは1979年の革命を経て、「ヴェラーヤテ・ファギーフ(法学者の統治)」という教義を採択し、同国の最高指導者がシーア派の頂点に君臨することになった。
こうした宗派上の路線の違いで相互不信が生まれ、地政学的に両雄相争う事態へとつながった。
またイランは、1980─88年の対イラク戦争の後、アラブ諸国内のシーア派勢力との結びつきを利用して新たな敵の侵攻に備えた拠点を築く「前進防衛」戦略を打ち出したが、サウジはこれを革命を扇動して地域の安定をかき乱す動きだと不安を抱くようになった。
そして1988年にテヘランのサウジ大使館が襲撃されると、イランとサウジは国交を断絶。
サダム・フセインのクウェート侵攻への対応で一時的に敵対関係が棚上げされたが、2003年にフセイン政権が崩壊してイランがイラク国内で多数を占めるシーア派を利用して影響力を強めたため、双方がより公然と対立するようになった。
<対立がエスカレート>
足元では、両国の対立がエスカレートする余地がある。
カーネギー国際平和財団のシニアアソシエーツ、Karim Sadjadpour氏は「1979年以降、両国は中東各地域でずっとさまざまな代理戦争を闘ってきた。
しかし直接対決は自制し、最終的に冷戦状態に落ち着かせることに合意している」としながらも、イランが今後、国交断絶したサウジやバーレーン国内のシーア派コミュニティに騒動を起こさせようとする可能性があるとの見方を示した。
サウジによるニムル師処刑後、同国やバーレーンのシーア派による抗議行動が再燃し、イラクではスンニ派の2カ所のモスクが爆破された。
サウジ側はこれらをイランの使嗾(しそう)とみなすかもしれない。
一方サウジは同盟諸国にイランとの断交を促すとともに、イスラム協力機構(OIC)のような組織にサウジのテヘラン大使館襲撃事件で非難声明を出すよう圧力もかけている。
場合によってはシリアの反政府勢力支援を強化することもあり得るだろう。
サウジ、イランそれぞれの政府内にいる強硬派でさえ、全面衝突は避けたいと考えている可能性が大きい。
ただ、実際の出来事が関係者の戦略などあっさりと崩し去ってしまうことは今回の一連の動きで証明されている。
イランの革命防衛隊は、ニムル師が死刑を執行された後、近いうちにサウジ王家は「手厳しい復讐」を受けると警告した。
サウジの民間シンクタンク、ガルフ・リサーチ・センターの責任者、Abdulaziz al-Sager氏は
「革命防衛隊はイラン政府の一部であり、彼らの脅しは深刻に受け止めるべきだ。
なぜなら彼らはレバノンやシリア、イラク、イエメンの民兵組織を統括しており、対サウジの軍事行動に利用したとしても何ら驚かない」
と話した。
(Angus McDowall記者)
』
『
ロイター 2016年 01月 7日 16:01 JST Trita Parsi
http://jp.reuters.com/article/column-me-saudi-us-idJPKBN0UL0HB20160107?sp=true
コラム:「中東危機」仕掛けるサウジ、米国は挑発に乗るか
[4日 ロイター] -
イスラム教シーア派の有力指導者ニムル師を処刑したサウジアラビアの狙いが、中東地域の「緊張」を「危機」にまでエスカレートさせることであることはほぼ確実と思われる。
処刑と同じ日、サウジ政府はイエメンとの停戦合意を一方的に破棄した。
イランは、在テヘランのサウジ大使館に対する抗議参加者による放火を黙認することで、サウジが仕掛けた罠にすっかりはまってしまったように見える。
米国がサウジ側に立ってこの紛争に介入することを余儀なくされれば、サウジの目的は達成されたことになるだろう。
ニムル師処刑の決定が中東に混乱をもたらすかどうか、また、ただでさえ対立していたイランとの関係をさらに緊張させるかどうかをサウジが理解していなかったとは考えにくい。
サウジ大使館に対する許しがたい放火について、イランのロウハニ大統領は
「まったく不当である」
と批判したが、報道によれば、イランの治安部隊は放火を防ぐ行動をほとんど取らなかったようである。
この放火によってサウジ政府は、イランとの断交に踏み切る完璧な口実を得た。
こうしてサウジ政府は、シリア、イエメン両国における米主導の地域外交を大きく損なったことになる。
サウジは以前から、シリア内戦であれ核開発問題であれ、イランを参加させ、同国政府の中東での役割・影響力を正常化するような外交イニシアチブに反対してきた。
筆者が米当局者から聞いた話では、これまでにもサウジ政府は、イランが出席するのであればボイコットするとほのめかし、シリア情勢に関するジュネーブでの協議からイランを確実に排除することに成功してきた。
ホワイトハウス筋によれば、昨年秋には、オバマ米大統領自らサルマン国王に電話し、シリアに関するウィーンでの協議にサウジが参加するよう説得しなければならなかったという。
イランとの外交関係を断つことにより、サウジは、いざとなれば米主導によるこれらの交渉を遅らせ、骨抜きにし、恐らくは完全に断念させる、格好の口実を得たことになる。
サウジ側から見れば、この10年以上にわたって、中東地域の地政学的トレンドはサウジの国益に不利な方向に進んできた。
イランが台頭し、米政府はイランの核開発プログラムに関してイラン政府と交渉し、妥協する道を選んだことで、サウジの焦りは募る一方となった。
このように考えていくと、ニムル師の処刑という意図的な挑発の裏にあるサウジ政府のもくろみは、危機を(恐らくは戦争さえも)仕立て上げることにより、中東地域の地政学的な針路を自国に有利なように修正できるという期待にあったのではなかろうか。
その目標は、米国がサウジ側に回らざるを得ないようにして、ゆっくりとではあるが確実にイラン政府との関係を改善していこうという試みを挫折させることだろう。
サウジ政府に近い人物はウォールストリート・ジャーナル紙に次のように語っている。
「ある時点で米国は(サウジかイランの)どちらかの側を選ばざるを得なくなる。
これによって核開発交渉が頓挫する恐れがある」
イラン政府は今回のサウジ側の罠にうっかり陥ってしまったが、米政府はその失敗を真似るべきではない。
事実、米国の視点から見れば、混乱を引き起こそうとするサウジの活動は、2015年に米国がイランとのあいだでまとめた核開発をめぐる合意の正しさを裏付けている。
この合意の決定的な利点の一つは、オバマ政権当局者からはまだ明言されていないものの、米国のサウジ依存を軽減しやすくする点なのである。
核開発をめぐる行き詰まりを解消し、イランと交渉可能な関係に戻ったことにより、中東地域における米政府の選択肢は増えた。
マイケル・マレン元海軍大将は昨年、核開発合意についてポリティコ誌に次のように書いている。
「これによって、米国の影響力がより均衡の取れた形でリバランスされる。
我々は、スンニ派優位の国との関係を中心として、中東地域におけるすべての関係を再検証する必要がある。
イランとの緊張緩和によって、宗派対立のもとでの我々の取り組みのバランスが改善させる可能性がある」
サウジが意図的に中東危機を招くような方向に事態を進めている様子を考えると(一つにはサウジ政府自身のイランとの敵対関係に米国を引きずり込みたいという動機がある)、
米政府としては、中東地域でのサウジの暴発を全面的に支援する義務を負うよりは、サウジとイランのあいだの調整役を演じられるようにしておく方が明らかに有利だ。
とはいえ、両国の対立から距離を置きたいという米政府の希望が正当化できるかどうかが問題だ。
オバマ政権の当局者はすでに、今回のサウジ主導の危機が、過激派組織「イスラム国」との戦い及びシリア情勢をめぐる外交に及ぼす影響について懸念を表明している。
ある米当局者はワシントンポスト紙に対し、匿名で、サウジがやろうとしているのは「危険なゲーム」と指摘する。
「これらの処刑に対する反応以上に大きな影響」が生じており、イスラム国対策だけでなく、シリア和平プロセスにも悪影響が及んでいるという。
米政府にとっての優先課題が、イスラム国をはじめとするジハーディスト運動を打倒することであるならば、同組織に厳しい姿勢をとっているイランと、過激なジハード主義の推進に関して否定できない役割を演じているサウジのあいだの調整役を米国が演じることは、正しい答えではないかもしれない。
サウジアラビアとイランの国交断絶は、中東が抱える混迷の度合いを一層深めている。
米国は、長年同盟関係にあるサウジアラビアとの関係で溝が深まり、任期最後の年を迎えたオバマ大統領は難しいかじ取りを迫られている。
*筆者は 「A Single Role of the Dice–Obama’s Diplomacy with Iran」 (Yale University Press, 2012)の著者で、ナショナル・イラン・アメリカン・カウンシル会長。本コラムの見解は筆者の個人的見解に基づいており、同カウンシルの立場を反映するものではありません。(翻訳:エァクレーレン)
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【激甚化する時代の風貌】
そこで、出てきたのが豊かになった『イスラムの内ゲバ』である。
イスラム内での勢力争いである。
象徴的には
『スンニ派対シーア派』である。
宗教理論ではなく、勢力争いにすぎない。
もちろん宗教戦争というのは、政治的勢力争いであるのだが。
外部からみれば『中核対革マル』みたいなものである。
イスラム対ユダヤの答えはないが、内ゲバも答えはない。
世界が激甚化しているということは、僅かな火種があれば局地的に一気に吹き出るということである。
そのキッカケとしては宗教対立は燃えやすい。
ちょうど、中国や韓国の「反日運動」みたいなものである。
中国国内でも山のような小さな火種を抱えている。
どれに火がつくか、これまで考えもしなかったものが大火事を誘発することもある。
激甚化とはそういうことである。
局部的に理論値をダイナミックにオーバーしてしまうことでもある。
『
BBCニュース 2016.1.6 視聴時間 02:04
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45715
●イランとサウジアラビア 対立の理由は宗教なのかそれとも
サウジアラビアがテロ関連の罪状だとしてイスラム教シーア派の宗教指導者を処刑したことで、イランが猛反発し、サウジアラビアが外交関係断絶を発表するなど、両国関係は悪化している。なぜ両国は対立を続けるのか、それは宗派間対立だけが理由なのか。
BBCペルシャ語のシアバシュ・アルダラン記者とBBCアラビア語のハナン・ラゼク記者が、両国関係を解説する。
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ロイター 2016年 01月 6日 13:56 JST
http://jp.reuters.com/article/saudi-iran-escalation-idJPKBN0UK0BU20160106?sp=true
焦点:サウジ・イラン関係は悪化の一途たどる恐れ
[リヤド 5日 ロイター] -
サウジアラビアとイランが過去に国交を断絶したのは直近では1988年まで遡り、その後、1990年のサダム・フセインによるクウェート侵攻という形で中東地域のパワーバランスの変化をもたらした。
今回鮮明になったサウジとイランの対立劇が、当時よりも穏便な展開を経てやがて収まりがつくと考えるのは難しい。
それどころか、両国の関係は今後悪化の一途をたどる恐れがある。
複数の外交筋によると、現在起きている危機の核心は、サウジがサルマン国王の即位以降、イランとその連携勢力に対して軍事力で立ち向かう姿勢を強めていることにある。
国王はムハンマド・ビン・サルマン副皇太子を腹心として選び、舞台裏での根回しを駆使した外交を放棄しようとしている。
サウジは昨年、イエメンでイランと同盟する軍事勢力が政権を握るのを防ぐため武力行使に踏み切り、シリアでもイランと手を組むアサド大統領に反抗する諸勢力の支援を強化した。
サウジがシーア派の有力指導者ニムル師の死刑を執行したのは、主に国内政治情勢が理由とはいえ、イランとのあからさまな対決方針も一因になっている、というのが政治アナリストの分析だ。
こうした軍事介入は、サウジにとってはイランによる中東各地域への影響力行使が「野放し」にされているという不満が何年も積み重なった結果といえる。
イランが各地のシーア派勢力を支持し、ペルシャ湾岸諸国の反政府グループに武器を密輸した、ともサウジは批判している。
サウジのジュベイル外相は4日ロイターに
「われわれはイランが地域の安定を損い、わが国や同盟国の国民に危害を加えるのを看過せず、対抗していく」
と語り、強硬姿勢を崩さない構えを示した。
シリアやイエメンでの軍事介入は、イランが欧米などとの核合意よって中東で積極的行動を取るための資金力や政治力を高めることへの警戒感の裏返しでもある。
<相互不信>
1960─70年代までは、サウジとイランは決して心から許せる間柄ではなかったものの、米国がソ連の中東への影響を抑える戦略における「2本柱」として連携する関係にあり、宗派上の争いも表面化しなかった。
しかしその後サウジは潤沢な石油収入を背景に、厳格なイスラム信仰を主張してシーア派を異端とみなすスンニ派「サラフィー主義」の守護者に任じ始めた。
逆にイランは1979年の革命を経て、「ヴェラーヤテ・ファギーフ(法学者の統治)」という教義を採択し、同国の最高指導者がシーア派の頂点に君臨することになった。
こうした宗派上の路線の違いで相互不信が生まれ、地政学的に両雄相争う事態へとつながった。
またイランは、1980─88年の対イラク戦争の後、アラブ諸国内のシーア派勢力との結びつきを利用して新たな敵の侵攻に備えた拠点を築く「前進防衛」戦略を打ち出したが、サウジはこれを革命を扇動して地域の安定をかき乱す動きだと不安を抱くようになった。
そして1988年にテヘランのサウジ大使館が襲撃されると、イランとサウジは国交を断絶。
サダム・フセインのクウェート侵攻への対応で一時的に敵対関係が棚上げされたが、2003年にフセイン政権が崩壊してイランがイラク国内で多数を占めるシーア派を利用して影響力を強めたため、双方がより公然と対立するようになった。
<対立がエスカレート>
足元では、両国の対立がエスカレートする余地がある。
カーネギー国際平和財団のシニアアソシエーツ、Karim Sadjadpour氏は「1979年以降、両国は中東各地域でずっとさまざまな代理戦争を闘ってきた。
しかし直接対決は自制し、最終的に冷戦状態に落ち着かせることに合意している」としながらも、イランが今後、国交断絶したサウジやバーレーン国内のシーア派コミュニティに騒動を起こさせようとする可能性があるとの見方を示した。
サウジによるニムル師処刑後、同国やバーレーンのシーア派による抗議行動が再燃し、イラクではスンニ派の2カ所のモスクが爆破された。
サウジ側はこれらをイランの使嗾(しそう)とみなすかもしれない。
一方サウジは同盟諸国にイランとの断交を促すとともに、イスラム協力機構(OIC)のような組織にサウジのテヘラン大使館襲撃事件で非難声明を出すよう圧力もかけている。
場合によってはシリアの反政府勢力支援を強化することもあり得るだろう。
サウジ、イランそれぞれの政府内にいる強硬派でさえ、全面衝突は避けたいと考えている可能性が大きい。
ただ、実際の出来事が関係者の戦略などあっさりと崩し去ってしまうことは今回の一連の動きで証明されている。
イランの革命防衛隊は、ニムル師が死刑を執行された後、近いうちにサウジ王家は「手厳しい復讐」を受けると警告した。
サウジの民間シンクタンク、ガルフ・リサーチ・センターの責任者、Abdulaziz al-Sager氏は
「革命防衛隊はイラン政府の一部であり、彼らの脅しは深刻に受け止めるべきだ。
なぜなら彼らはレバノンやシリア、イラク、イエメンの民兵組織を統括しており、対サウジの軍事行動に利用したとしても何ら驚かない」
と話した。
(Angus McDowall記者)
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ロイター 2016年 01月 7日 16:01 JST Trita Parsi
http://jp.reuters.com/article/column-me-saudi-us-idJPKBN0UL0HB20160107?sp=true
コラム:「中東危機」仕掛けるサウジ、米国は挑発に乗るか
[4日 ロイター] -
イスラム教シーア派の有力指導者ニムル師を処刑したサウジアラビアの狙いが、中東地域の「緊張」を「危機」にまでエスカレートさせることであることはほぼ確実と思われる。
処刑と同じ日、サウジ政府はイエメンとの停戦合意を一方的に破棄した。
イランは、在テヘランのサウジ大使館に対する抗議参加者による放火を黙認することで、サウジが仕掛けた罠にすっかりはまってしまったように見える。
米国がサウジ側に立ってこの紛争に介入することを余儀なくされれば、サウジの目的は達成されたことになるだろう。
ニムル師処刑の決定が中東に混乱をもたらすかどうか、また、ただでさえ対立していたイランとの関係をさらに緊張させるかどうかをサウジが理解していなかったとは考えにくい。
サウジ大使館に対する許しがたい放火について、イランのロウハニ大統領は
「まったく不当である」
と批判したが、報道によれば、イランの治安部隊は放火を防ぐ行動をほとんど取らなかったようである。
この放火によってサウジ政府は、イランとの断交に踏み切る完璧な口実を得た。
こうしてサウジ政府は、シリア、イエメン両国における米主導の地域外交を大きく損なったことになる。
サウジは以前から、シリア内戦であれ核開発問題であれ、イランを参加させ、同国政府の中東での役割・影響力を正常化するような外交イニシアチブに反対してきた。
筆者が米当局者から聞いた話では、これまでにもサウジ政府は、イランが出席するのであればボイコットするとほのめかし、シリア情勢に関するジュネーブでの協議からイランを確実に排除することに成功してきた。
ホワイトハウス筋によれば、昨年秋には、オバマ米大統領自らサルマン国王に電話し、シリアに関するウィーンでの協議にサウジが参加するよう説得しなければならなかったという。
イランとの外交関係を断つことにより、サウジは、いざとなれば米主導によるこれらの交渉を遅らせ、骨抜きにし、恐らくは完全に断念させる、格好の口実を得たことになる。
サウジ側から見れば、この10年以上にわたって、中東地域の地政学的トレンドはサウジの国益に不利な方向に進んできた。
イランが台頭し、米政府はイランの核開発プログラムに関してイラン政府と交渉し、妥協する道を選んだことで、サウジの焦りは募る一方となった。
このように考えていくと、ニムル師の処刑という意図的な挑発の裏にあるサウジ政府のもくろみは、危機を(恐らくは戦争さえも)仕立て上げることにより、中東地域の地政学的な針路を自国に有利なように修正できるという期待にあったのではなかろうか。
その目標は、米国がサウジ側に回らざるを得ないようにして、ゆっくりとではあるが確実にイラン政府との関係を改善していこうという試みを挫折させることだろう。
サウジ政府に近い人物はウォールストリート・ジャーナル紙に次のように語っている。
「ある時点で米国は(サウジかイランの)どちらかの側を選ばざるを得なくなる。
これによって核開発交渉が頓挫する恐れがある」
イラン政府は今回のサウジ側の罠にうっかり陥ってしまったが、米政府はその失敗を真似るべきではない。
事実、米国の視点から見れば、混乱を引き起こそうとするサウジの活動は、2015年に米国がイランとのあいだでまとめた核開発をめぐる合意の正しさを裏付けている。
この合意の決定的な利点の一つは、オバマ政権当局者からはまだ明言されていないものの、米国のサウジ依存を軽減しやすくする点なのである。
核開発をめぐる行き詰まりを解消し、イランと交渉可能な関係に戻ったことにより、中東地域における米政府の選択肢は増えた。
マイケル・マレン元海軍大将は昨年、核開発合意についてポリティコ誌に次のように書いている。
「これによって、米国の影響力がより均衡の取れた形でリバランスされる。
我々は、スンニ派優位の国との関係を中心として、中東地域におけるすべての関係を再検証する必要がある。
イランとの緊張緩和によって、宗派対立のもとでの我々の取り組みのバランスが改善させる可能性がある」
サウジが意図的に中東危機を招くような方向に事態を進めている様子を考えると(一つにはサウジ政府自身のイランとの敵対関係に米国を引きずり込みたいという動機がある)、
米政府としては、中東地域でのサウジの暴発を全面的に支援する義務を負うよりは、サウジとイランのあいだの調整役を演じられるようにしておく方が明らかに有利だ。
とはいえ、両国の対立から距離を置きたいという米政府の希望が正当化できるかどうかが問題だ。
オバマ政権の当局者はすでに、今回のサウジ主導の危機が、過激派組織「イスラム国」との戦い及びシリア情勢をめぐる外交に及ぼす影響について懸念を表明している。
ある米当局者はワシントンポスト紙に対し、匿名で、サウジがやろうとしているのは「危険なゲーム」と指摘する。
「これらの処刑に対する反応以上に大きな影響」が生じており、イスラム国対策だけでなく、シリア和平プロセスにも悪影響が及んでいるという。
米政府にとっての優先課題が、イスラム国をはじめとするジハーディスト運動を打倒することであるならば、同組織に厳しい姿勢をとっているイランと、過激なジハード主義の推進に関して否定できない役割を演じているサウジのあいだの調整役を米国が演じることは、正しい答えではないかもしれない。
サウジアラビアとイランの国交断絶は、中東が抱える混迷の度合いを一層深めている。
米国は、長年同盟関係にあるサウジアラビアとの関係で溝が深まり、任期最後の年を迎えたオバマ大統領は難しいかじ取りを迫られている。
*筆者は 「A Single Role of the Dice–Obama’s Diplomacy with Iran」 (Yale University Press, 2012)の著者で、ナショナル・イラン・アメリカン・カウンシル会長。本コラムの見解は筆者の個人的見解に基づいており、同カウンシルの立場を反映するものではありません。(翻訳:エァクレーレン)
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【激甚化する時代の風貌】
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