数年前に
『2015年に中国バブルは崩壊する』
と予言したのはソロスであった。
いわゆる『2015年説』である。
彼は自らの予想に沿って動いていたのだろう。
そして年明けの2016年に
『中国のハードランデイングは不可避』
『人民元下落』
を予言している。
だが同時に
『中国がハードランデイングを乗り切ることは可能』
とも言っている。
『
[ニューヨーク 21日 ロイター] 2016年1月22日(金)18時20分
http://jp.reuters.com/article/soros-china-idJPKCN0UZ2WB
中国のハードランディングは不可避
─米投資家ソロス氏=通信社
[ニューヨーク 21日 ロイター] -
米著名投資家のジョージ・ソロス氏は21日、
★.中国経済がハードランディングし、
★.世界的なデフレにつながる
恐れがあるとの見通し示した。
ソロス氏は世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開催されているスイス・ダボスからブルームバーグTVに対し、
「ハードランディングは不可避」
と言明した。
「これは予想ではなく、実際に目にしていることだ」
と述べた。
同時に、中国が十分な資源や3兆ドル規模の外貨準備高を持っていることなどを踏まえ、
★.同国がハードランディングを「乗り切ることは可能」
との認識を示した。
中国経済減速の影響は世界全体に波及するとし、中国情勢に加え、原油や商品価格の急落がデフレの根本的な要因になるとも指摘した。
また、米S&P総合500種をショートに、米長期国債をロングにしていることを明らかにした。
』
『
現代ビジネス 2016年01月25日(月) 週刊現代
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47530
ソロスが警告「2008年に似てきた」
〜日本を襲う「円高・株安」の正しい読み方
いまや世界中が火薬庫だ。
各国は導線でつながり、一つが火を噴けば、全世界が炎の海と化す。
燃え盛る炎をかいくぐり、いかに身を守るか。
正しい「逃げ方」がある。
◆ソロスが警告「2008年に似てきた」
スリランカ最大都市のコロンボ。
海岸沿いに建つ5つ星ホテルのシナモングランドに、その男が現れたのは1月7日のことだった。
ジョージ・ソロス氏。
推定2兆円という巨額資産をたった一代で稼ぎあげた伝説の投資家であり、85歳になったいまもマーケットの最前線で活躍する鬼才である。
この日、ホテルのオークルームでは『スリランカエコノミックフォーラム』が開催されていた。
ソロス氏はそのパネルディスカッションに参加するため、この地を訪れていたのである。
ソロス氏は、そこで衝撃的な発言を口にした。
「いま金融市場に目を向けると、深刻な課題が見つかる。
それは私に2008年の危機を思い起こさせる」
2008年の危機が、同年に勃発し、世界経済を地獄へ突き落としたリーマン・ショックを指していることは言うまでもない。
ソロス氏はさらに、中国経済の失速から起きている世界的な商品価格の下落などを懸念したうえで、警告を続けた。
「われわれはとても深刻な問題に直面している。
それは危機と呼べるものである。
それはいま始まったばかりである」
「投資家に対してガイダンスをするとすれば、とてもとても用心深く、とてもとても慎重になるべきということだ」
そんなソロス氏の「予言」をそのままなぞるかのように、世界のマーケットでは年始から株式ショックが勃発。
中国発で始まった暴落劇は即座に世界全土に波及し、各地でクラッシュが次々と巻き起こる異常事態に発展している。
中でもアラーム音が強く鳴り響いているのが、日本株である。
1月4日の大発会から暴落が止まらず、日経平均株価はたった5日で1000円以上も下げるフリーフォールに突入。
「今年は2万5000円もあるぞ」などと浮かれていたムードが一転し、先行きの見えない恐慌状態に陥っている。
「マネーが大転換を始めました。
日本はいよいよ円安・株高局面が終わり、円高・株安局面に突入したのです」
経済アナリストの中原圭介氏が指摘する。
「実は昨夏あたりから、日本の株式市場から海外の長期投資家が大量に去っています。
アベノミクスもそろそろ限界で、米国の利上げを転機に円高転換が始まり、円高・株安フェーズに入っていくと読んだからです。
日本株市場に残ったのはヘッジファンドなど短期筋で、彼らは急激な空売りを仕掛けることで儲けを狙う。
年始から暴落相場になっているのは彼らの仕掛けです。
年内に1ドル=105〜110円まで円高になると見ています。
株価は早晩に1万7000円を割るでしょう」
◆円高デフレへ逆戻り
あまり知られていないが、目下の事態を重く見た黒田東彦総裁率いる日本銀行は、年始から日本株の買い支えに動いている。
1月4日に369億円、1月6日に352億円、1月7日に352億円。
日銀は立て続けに巨額マネーを株式市場に投入したのである。
しかし、日銀のそんな買い支えもヘッジファンド勢の猛烈な売り圧力にあっさりと敗北。
日本株は脆くも崩れ落ちたというのが、年始からのマーケットの内幕である。
「日本株は1万4500円までの暴落を覚悟したほうがいい」
と、エモリキャピタルマネジメント代表の江守哲氏は言う。
「円安から円高へ転換する流れはこれからますます進んでいくので、円安が支えてきた日本株が下落するのは当然です。
円高の最大の理由は米国の利上げで、直近3回の利上げ局面では平均して23円の円高になっている。
そのままあてはめれば今回は1ドル=102円の円高もあり得る。
そのレートで試算すると、株価は1万4500円ほどまで暴落する可能性がある」
FXプライムでチーフストラテジストを務める高野やすのり氏も言う。
「日本はアベノミクスの好循環が逆回転を始め、円高で輸出企業の業績が悪化、それがさらに円高を進めるという悪循環に入ろうとしています。
最近のドル円の変動幅が年平均で約16円であることを考えれば、1ドル=105円まで進んでもおかしくない。
チャート的に見ても、105円近辺はターゲットにされやすいレートといえます」
日銀が全国の民間企業約1万社を対象に調査した「全国企業短期経済観測調査」には、大企業が為替レートをいくらに想定しているか、その秘中の秘を調べた結果がひっそりと掲載されている。
見ると、自動車は1ドル=118円82銭、電機は119円62銭、鉄鋼は120円77銭など、詳細データがずらりと並ぶ。
製造業全般では119円40銭とされており、マーケットでは、
「この一線を超えれば、救急車を呼ぶ必要があるほど日本経済は重症になる」
との意味を込めて、「ドル119」と呼ばれる。
それが年始から円高が一気に急伸。
119のラインを突破してなお、円高が止まらない非常事態に陥り、市場関係者は震え出した。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部長の鈴木明彦氏が言う。
「これまで日本企業の収益がよかったのは、モノが多く売れていたからではなく、円安で海外売上高が円換算でかさ上げされていたのが大きい。
それが剥落するのだから、株が売られるのは自然な流れ。
原油安で救われている面もあるが、その背後に中国など世界経済の減速があるのだから、収益環境は厳しい。
政府が言う景気の緩やかな回復も怪しく、株価はまだ下がる可能性がある」
業績絶好調とされるトヨタ自動車でさえ、上半期決算で円安効果を考慮しないと、実は減益(前年同期比)。
連結販売台数も前年同期比で約20万台減っており、円安頼みが実情である。岡三証券日本株式戦略グループ長の石黒英之氏が言う。
「日本企業はここ数年の円安で一服できていた時に、大胆な構造転換を進めるべきでした。
が、多くはこれができなかったため、今後は厳しい。
キヤノンは円安で売上高を保ってきたが、円高転換によって海外勢に価格競争力で負けるリスクが出てくる。
新日鐵も、世界的に需要が減少している中で、円高に振れると一段と利益が減るリスクがある。
シャープ買収と騒がれている液晶大手のジャパンディスプレイも、円安で利益を維持していたので、今後はきつい」
マーケットバンク代表の岡山憲史氏も言う。
「円高が長期化するとデフレが再燃してくる。
モノの価値が下落すれば当然、土地の価値も下がっていくので、三井不動産などの不動産関連には悪影響が出てくる。
三菱UFJFGなどのメガバンク、オリコなどのローン各社の業績にもマイナスになる」
ソロス氏が語ったように、危機は始まったばかり。
この先に見えてくるのは、デフレへ逆戻りという悪夢である。
◆日経平均9000円へ
証券会社幹部の間では、さっそく次のXデーの日付まで語られ始めた。
日本株暴落のXデーは3月16日、というのである。
これは、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が、昨年末に続いて2度目の利上げに踏み切るとされる日である。
目下、中国経済は大失速から抜け出せず、欧州も長期停滞に突入。
アメリカだけが一人気を吐いている中で、FRBのイエレン議長が3月の利上げを成功させれば、アメリカの復活が本物だと確認される一大イベントとなる。
「逆にこの利上げに失敗すれば、世界経済を唯一支えられるアメリカすらダメだという、
逆の意味での一大イベントとなってしまう。
実は、アメリカは3月に利上げに踏み切るほど強くない。
これまで住宅や自動車が売れて景気を牽引してきたが、これはゼロ金利で低所得者が借金購入できたのが大きい。
それが昨年の利上げで、景気の腰折れリスクが高まっている。
アメリカは個人消費がGDPの7割ほどを占めるので、消費が減退すれば、一国全体が大きく冷え込む。
3月に強引に利上げに踏み切れば、アメリカ大減速のトリガーとなりかねない」
(RPテック代表の倉都康行氏)
そうなれば、特に「アメリカ一本足打法」でなんとか持ちこたえてきた日本企業にとっては大打撃。
円高で疲弊しているうえ、頼みのアメリカが崩れるとなれば、マーケットで日本株の凄惨な投げ売りが始まる事態は容易に想像がつく。
「もちろん、日銀が1月中にも追加緩和という対策に動き出す可能性はあります。
しかし、現在の下げ相場はアベノミクスの失政を投資家たちが見抜いて、日本売りを仕掛けている面もある。
昨年末の日銀による追加緩和の補完措置への失望感も広がっている。
日銀の追加緩和で一時的に株価が持ち直しても、長続きせず、再び下落トレンドに入っていく可能性は高い。
最悪、1万5000円割れもあるでしょう」
(株式評論家の渡辺久芳氏)
ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表の菊池真氏は、「日銀の追加緩和が日本株のさらなる暴落をもたらす」と指摘する。
「日銀は4月28日の金融政策決定会合で、追加緩和を打ってくる可能性があります。
4月下旬はちょうど'16年度の企業業績見込みが出始める時期。
減益予想ラッシュで景気悪化ムードが広がれば、追加緩和に動かざるを得なくなるからです。
ここから、日本株の本当の終わりが始まる。
一時的に株価は上がるかもしれないが、金融政策ではもう日本企業の業績は支えられないとわかり、株価はまず1万4000円を目指して下落を始める。
さらに、マーケットが日銀の政策の矛盾を意識し始めると、第2弾の日本売りが幕開けする。
年末までに、日本株は9000円まで売り込まれてもおかしくない」
株価が半値近くまで落ちるリスクがあるのだから、逃げるのが得策だ。
プロが指南する「正しい逃げ方」は明日公開
「週刊現代」2016年1月30号より
』
『
ロイター 2016年 01月 26日 15:37 JST
http://jp.reuters.com/article/china-economy-speculation-idJPKCN0V40G7
中国人民日報、米投資家ソロス氏の人民元・香港ドル下落予想に反論
[北京 26日 ロイター] -
中国の人民日報(海外版)は26日付の1面で、米著名投資家のジョージ・ソロス氏が人民元CNY=CFXSと香港ドルCNY=CFXSの下落を見込んでいることに対し反論する商務省調査担当者の意見記事を掲載した。
記事は
「ソロス氏の元と香港ドルへの挑戦が成功することはないだろう。
そこに疑いの余地はない」
と主張。
中国経済の成長鈍化、元安、株式相場の不安定化にもかかわらず、ファンダメンタルズは引き続き健全であると反論した。
ソロス氏は21日にブルームバーグTVで、中国経済のハードランディングは不可避であり、世界的なデフレにつながる恐れがあるとの見方を表明。
米S&P総合500種をショートに、米長期国債をロングにしていることを明らかにしていた。
この際、元と香港ドル相場には特に言及していない。
』
『
ロイター 2016/1/28 13:47 ロイター
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160128-00000036-biz_reut-nb
ソロス氏は中国経済に「根拠のない懸念」抱いている=人民日報
[北京 28日 ロイター] -
中国国営メディアは、米著名投資家のジョージ・ソロス氏は中国経済に「根拠のない懸念」を抱いていると指摘した。同氏が先週ブルームバーグTVで、中国経済のハードランディングは不可避で世界的なデフレにつながる恐れがあると述べたことに反論した。
28日付人民日報の論説が、資本流出やデフレの観測にもかかわらず、実際は中国への海外直接投資は急速に伸び、消費者物価の伸びは緩やかで、人民銀行(中銀)は穏健な金融政策を維持していると主張した。
また「国内総生産(GDP)に対する中国の債務比率は300%との観測は根拠のない憶測で理解できない」と反論した。
最近の為替相場の変動は妥当な範囲内で、株価の動揺は実体経済ではなく市場や規制環境、投資家が成熟する必要性を示しているとした。
』
『
ロイター | 2016年 01月 27日 11:24 JST
http://jp.reuters.com/article/china-forex-hedgefunds-idJPKCN0V5058?sp=true
元安に賭けるヘッジファンド、
ソロス勝利の再現狙う
[ロンドン 26日 ロイター] -
中国は人民元の再切り下げを迫られ、
人民元の下落率は20─50%に達する──。
ごく一部の有力ヘッジファンドがこうした大胆な予想に基づいてポジションを構築しつつある。
欧州債務危機を見ぬいて数億ドルの利益を稼いだテキサス州に拠点を置くコリエンテ・パートナーズは少なくとも昨年9月終盤以降、「ローデルタ」のオプション買いを増やしている。
これは最大で50%の人民元安という非常に確率の低い事態への賭けを意味する。
コリエンテの見立てでは、
★.中国政府がいくら3兆3000億ドルという膨大な外貨準備を保有していても、
★.国内の個人資産家や企業による海外への資金シフトは
当局が食い止めたりコントロールできないほど強力だ
という。
ロンドンを本拠とするオムニ・マクロ・ファンドも2014年初め以降人民元安に賭ける取引を続けているほか、市場関係者によると46億ドルを運用するムーア・キャピタル・マクロ・ファンドなどの米ヘッジファンド勢の影もちらついている。
より劇的な人民元安を見込むこれらのファンドの予想が正しいかどうかは、
春節(旧正月)休暇明けの2月第2週に海外への資金流出が再び活発化するかどうかではっきりするとの見方が多い。
一連の動きは、ジョージ・ソロス氏が率いるファンドが1990年代初めに欧州各国に対して通貨売りを仕掛けて勝利したケースも彷彿(ほうふつ)させる。
コリエンテの運用担当者マーク・ハート氏は今月のテレビ番組で
「中国は非常に急激な通貨切り下げができる機会を得ている。
迅速にそれを実行するのが賢明だ」
と語っている。
◆<少数派>
人民元安の予想自体はもはや少数意見とはいえないが、
大きく見方が分かれるのは「下落ペース」と「下落率」だ。
コリエンテやオムニは、
中国当局が人民元の下げ圧力に抵抗を続ければ、
外貨準備が目減りしていくので
今年中に一度に大幅な切り下げを迫られる可能性がある
とみている。
だからこそローデルタのオプションを買うという行動につながる。
一方で正反対の立場にあるのは、中国が落ち着いたペースで人民元安を誘導できると考えるファンド勢で、彼らは緩やかな人民元の下落に賭けるオプションを購入しながらローデルタを売ってヘッジしている。
実際、ファンドマネジャーの中で、
年内に人民元が10%以上下落すると想定する向きは乏しい。
ハーミーズ・インベストメント・マネジメントの新興国市場責任者ゲーリー・グリーンバーグ氏は
「一挙に人民元を切り下げても何の解決にもならず、事態を悪化させるだけだ」
と話す。
コリエンテのハート氏も
「多くのマクロ・ファンドは中国が緩やかな人民元安を管理していく方向に賭けている」
と認めた。
それでもコリエンテやオムニの行動は変わらない。
彼らによると、
中国政府は1月に外貨準備を新たに2000億ドル使用した可能性があり、
そのペースなら年内に介入原資がほとんど「弾切れ」となり、
人民元はさらに18─20%下がる
だろうという。
(Patrick Graham記者)
』
『
Bloomberg 2016/1/22 23:19
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160122-00000063-bloom_st-nb
中国は通貨切り下げを余儀なくされるだろう-ゴールドマン社長
(ブルームバーグ):
ゴールドマン・サックス・グループのゲーリー・コーン社長は、
★.中国は景気減速への対応で恐らく人民元切り下げを余儀なくされる
だろうとの見方を示した。
コーン社長はスイスのダボスで開かれている世界経済フォーラム(WEF)年次総会の会場でブルームバーグのテレビインタビューに応じ、
「中国は今後6カ月の間に何らかの措置を講じなければならないだろう」
とし、
「最終的に元が切り下げられると思うかと問われれば、私の答えはイエスだ」
と語った。
中国の李源潮国家副主席は21日のブルームバーグとのインタビューで、同国政府には人民元を切り下げる意向はなく、そのような政策は取っていないと述べていた。
人民元中心レートの意外なほどの大幅引き下げを引き金に、今年は波乱の幕開けとなった。
人民元は年初の1週間で1.5%下落し、中国当局の思惑をめぐる懸念が高まった。
原題:Goldman’s Cohn Says China Will Probably Have to
Devalue Currency(抜粋)
』
Bloomberg 2016/1/22 23:19
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160122-00000063-bloom_st-nb
中国は通貨切り下げを余儀なくされるだろう-ゴールドマン社長
(ブルームバーグ):
ゴールドマン・サックス・グループのゲーリー・コーン社長は、
★.中国は景気減速への対応で恐らく人民元切り下げを余儀なくされる
だろうとの見方を示した。
コーン社長はスイスのダボスで開かれている世界経済フォーラム(WEF)年次総会の会場でブルームバーグのテレビインタビューに応じ、
「中国は今後6カ月の間に何らかの措置を講じなければならないだろう」
とし、
「最終的に元が切り下げられると思うかと問われれば、私の答えはイエスだ」
と語った。
中国の李源潮国家副主席は21日のブルームバーグとのインタビューで、同国政府には人民元を切り下げる意向はなく、そのような政策は取っていないと述べていた。
人民元中心レートの意外なほどの大幅引き下げを引き金に、今年は波乱の幕開けとなった。
人民元は年初の1週間で1.5%下落し、中国当局の思惑をめぐる懸念が高まった。
原題:Goldman’s Cohn Says China Will Probably Have to
Devalue Currency(抜粋)
』
『
2016.1.22(金) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45843
中国人民元:戦いか、それとも逃避か
中国の指導者たちは為替レートについて、
魅力のない選択肢に直面している
(英エコノミスト誌 2016年1月16日号)
中国の経済運営責任者たちの評判にとって、過去6カ月間は厳しいものだった。
厄介な株式市場を何とか従わせようとする彼らの試みは、ほとんどドタバタ劇だ。
一方、中国の為替レートの覚束ない扱いは、笑いごとではない。
中国の通貨価値の予期せぬぐらつきは、世界各国の市場を混乱させる。
だが、将来への確実かつ安全な道筋を与えてくれる為替政策は存在しない。
中国の窮状に1990年代後半のアジア金融危機との類似点を見て取る人もいる。
当時は、投資家心理が強気から弱気に転じたことで、インドネシアや韓国、タイといった急成長を遂げる国々が資本流出に見舞われた。
各国の外貨準備が減少すると、政府は通貨のドルペッグを放棄せざるを得なかった。
大幅な通貨下落は金融の大混乱につながった。
資産価格が急落し、これらの国が抱える巨額債務がドルベースで膨れ上がったからだ。
その後には痛みを伴う景気後退が続いた。
■アジア危機の教訓から予防策は講じたが・・・
だが、アジア危機の教訓は、中国の指導者にも分かっていた。
2000年代の高度成長期に、中国は厳格な資本規制を維持し、外国からの直接投資を認めながら「熱銭(ホットマネー)」を回避した。
中国人民銀行(中央銀行)は、人民元を安く保つために盛んに外国為替市場に介入し、その過程で外貨準備を4兆ドル積み上げた。
1990年代に危機に見舞われた国々が絶えず貿易黒字を計上していたのに対し、中国は経常黒字を維持していた。
そのため、中国の外貨準備は減少するどころか、むしろ増加した。
これらの予防措置にもかかわらず、中国も今、金融の逼迫に直面している。
資本逃避と資産価値の下落によって、
外貨準備はピークから7000億ドル近く減少している。
決意の固い資金はずっと、中国の防御柵からゆっくりと漏れ出していた。
2015年後半には、より大きな流出の兆候が現れた。
12月だけで外貨準備は1000億ドル余り減少した。
2015年下半期は、年間1兆ドルのペースで資本が国外に流出した。
![](http://2.bp.blogspot.com/-Q4JzcAlmxXA/VqP2bii_srI/AAAAAAAAANQ/E3_EZr03YE0/s640/img_3ca0373c81638c06b58871b9125e30ff121593.png)
』
『
現代ビジネス 2016年01月25日(月) 近藤 大介
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47520
中国の公式発表「6.9%」成長は本当か?
「国家統計局」の苦しい弁明・全内幕
現実には「マイナス0.2%」という声も
![](http://4.bp.blogspot.com/-0DdynVWQ50E/Vqg_vtzFQQI/AAAAAAAAAQE/_I9AOhQXsdk/s400/img_9110eec1f5331f5e38e98a83f5ebb84398067.jpg)
●王保安・中国国家統計局長
いまとは比較にならないほど言論が自由だった胡錦濤時代のこと。
秋の「国考」(国家公務員試験)の季節に、中国のインターネット上で、
「中国国務院で最も就きたい職業は何か?」
「最も就きたくない職業は何か?」
という話題が盛り上がったことがあった。
中国国務院というのは、中国の中央官庁の総称だ。
おそらく国務院に勤める少なからぬ官僚たちも、面白がって匿名で投票していたのではないか。
「就きたい職業」第1位は、国家民族事務委員会のチベット族担当者だった。
理由は明示されていなかったが、それは「言わずもがな」というものだ。
すなわち、多額の賄賂収入が期待できる部署だったのだろう。
一方、「就きたくない職業」第1位はと言えば、外交部スポークスマンと国家統計局長だった。
こちらも理由は明示されていなかったが、容易に想像できた。
すなわち、いつも公にウソをつかなければならないポストだからだ。
その国家統計局長が一年で一番注目されるのが、毎年1月中旬に行われる「前年のGDP成長」の発表日だ。
数百人の中国内外の記者が詰めかけ、世界中のテレビカメラが中継する。
◆「初期の概算によれば、2015年のGDPは…」
1月19日午前、世界が注視するなか、王保安・中国国家統計局長の記者発表会が開かれた。
名前を逆さまから読めば、「安保王」。
それだけで何だか国民に安心感を与えるような印象だが、本人はクソマジメな口調で、強硬な発言することで知られる。
1963年12月、河南省魯山生まれで、中南財経大学を卒業後、難関で知られる財政部に就職。
財務官僚としてキャリアを積み、昨年4月に、財政部副部長(副大臣)から国家統計局長に天下った。
そのため、今回が初の檜舞台だった。
思えば、前任の馬建堂局長は、「ミスター0.3%」というニックネームで、やはり海千山千の人物だった。
不動産が3割、5割と異常高騰した2010年に、「われわれの統計によれば、年間0.3%しか上昇していない」と嘯いたことから、この名が付いたのだ。
それでも馬建堂前局長は、長年の「統計テクニック」が高く評価されたようで、中国共産党中央委員会委員に抜擢された。
そんな「大口叩き」だった馬建堂局長に較べると、王保安局長は、いくらか地味で堅実なイメージを与えるが、そこは世界に向かって虚勢を張る国家統計局長である。
銀縁メガネの奥の細い目を時折、記者席の方に泳がせながら、強弁を通したのだった。
「2015年、複雑に錯綜した国際情勢と、不断に増大する経済の下降圧力に向かいながら、党中央、国務院は、戦略的な保持能力を見せた。
国内と国際の大局を見据えながら、かつ『平穏な中に進展を求める』という基調を堅持しながら、主導的に『新常態』に適応し、『新常態』を導いてきた。
新しい理念でもって新しい実践を指導し、新しい戦略でもって新しい発展を目指してきた。
不断にマクロの調整を創造し、構造改革を深く推進してきた。
そして『大衆が創業し、万人が創造する』ことを地道に推進し、経済の総体的な平穏を保持し、それでも平穏な中に進展があり、平穏な中に特長があるという発展態勢を築いてきたのだ……」
このような、いかにも中国共産党的な「前口上」を述べた上で、いよいよ本論に入った。
「初期の概算によれば、2015年のGDPは、67兆6,708億元で、価格計算をすれば、前年比で6.9%増だった。
四半期毎に見れば、第1四半期が前年同期比7・0%増、第2四半期が7.0%増、第3四半期が6.9%増、第4四半期が6.8%増だ。
産業別に見ると、第一次産業が6兆863億元で3.9%増、第二次産業が27兆4,278億元で6.0%増、第三次産業が34兆1,567億元で8.3%増だ。
前期比で見れば、四半期の成長率は1.6%増だった……」
◆「中国のGDPについては2通りの評論がある」
王局長から、「6.9%」という数字が読み上げられた瞬間、会場に「シラ~ッ」としたムードが漂った。
数年前までのどよめき調の高揚感はなく、「しめやかに執り行われた」という感じだった。
すかさず、英字紙『チャイナ・デイリー』の若い記者が、挙手して質問を浴びせた。
「この一年間というもの、多くのメディアや研究機関が、中国政府が公式発表するGDP成長の数値の真実性について、疑問を投げかけてきた。
その中には、『中国の本当のGDP成長率は5%以下だ』と暴露するものもあった。
こうした多くの疑念に対して、国家統計局はどう答えるのか?」
この思いも寄らぬ「爆弾質問」に、王局長は、やや狼狽した様子を見せながらも、開き直って答えた。
「私たちも、やれどこかの研究機関だ、研究者だという人々が、中国のGDPについて、あれこれ勝手に論じているのは承知している。
だが、それらの評論には2通りあるのを知っているか?
一つは、いま記者が質問したように、国家統計局は、実際のGDP成長の数値を水増しして発表しているというものだ。
だがもう一つは、国家統計局は、実際のGDP成長よりも控え目な数値を発表しているというものなのだ」
会場を埋め尽くした数百人の記者たちは、この王局長の発言を聞いて、開いた口が塞がらなかった。
その日、中国で7億人が使用している「微信」(WeChat)では、次のようなメッセージが広がった。
〈 われわれは中国人に生まれて、本当に幸せだ。
なぜなら今後、中国経済がどんどん悪化していき、財政部や商務部、国家発展改革委員会などが「もうお手上げだ」とサジを投げたとしても、最後には国家統計局がついているのだから 〉
◆「中国経済は『新常態』という『新たな正常な状態』にある」
もう少し、この王保安局長と記者との問答を続けよう。
アルジャジーラ記者:
6.9%という数値は、過去25年で最低だ。
それは(王局長が強調する)国際的要因だけでなく、中国国内の問題もあるのではないか。
例えば、地方政府の借金とか、不動産バブルの崩壊とか、株式市場の低迷などだ。
これらの要因は中国経済の成長にどのような影響を与えているのか?
王局長:
記者会見の時間の制約もあるので、それほど詳しい話はできないが、2015年の中国の不動産市場の下降と、株式市場に発生した動揺は当然、中国経済の成長に影響を与えるものだ。
だが一体どれほどの影響を与えたのかについては、われわれはこれからもっと精査が必要だ。
例えば株価というのは、上がることもあれば、下がることもある。
しかしGDPの計算は、取引量に依拠している。
だから株価が下がったからといって取引量が増えれば、GDPにとってはプラスに働くというわけだ。
2015年の不動産投資の伸びは、2014年に較べて落ち、1%になった。
だが不動産商品の面積と売上高は、それぞれ6.5%と14.4%伸びている。
総合的に見て、やはりGDPの計算にはプラスに働いたりマイナスに働いたりする。
政府の債務に至っては、明確な増加はしていない。
GDPの4割にも至っていない。
国際的には6割が警戒ラインだが、中国はまったくそれ以下だ。
ここ数年、党中央と国務院が唱えているように、中高速成長を保持し、新常態に適応し、新常態を導いている。
2015年の中国経済は、
「全体的に平穏で、平穏な中に進歩があり、平穏な中に良い点がある」
のだ。
もう少し説明しよう。
まず、「平穏」という意味は、
第一に経済発展の速度が平穏だ。
第二に就業も平穏で、失業率は5.1%前後だ。
第三にCPIも1.4%増で平穏だ。
国民収入も平穏に伸びていて、都市部で6.6%増、農村部で7.5%増だ。
次に、「平穏な中に進歩がある」という点だ。
GDPに占める第三次産業の割合は50.5%に達した。
これは第二次産業よりも10%高い。
次にGDPに占める消費の割合も、60%以上だ。
その消費の中身も、エンゲル係数は低下していて、31.2%(2013年)、31.0%(2014年)、30.6%(2015年)となっている。
「平穏な中に良い点がある」とは、最先端技術の増加値は既存の工業よりも4.1%高い。
非工業増加値の成長も7.9%で、工業平均よりも1.8%高い。
利益で見ると8%高い。
経済日報記者:
現在、経済の下降圧力は大変強いものがある。
これに対する政府の対応策をどう評価するか。
王局長:
第一に、政府は強力な刺激策を打っていない。
2008年と2015年のM2(通貨供給量)、銀行貸出高、固定資産投資額の伸びを見てみると、それぞれ17.8%と13.3%、18.8%と14.3%、26.6%と10.0%だ。
赤字比率、債務比率も突出して伸びてはいない。
昨年、政府は地方債3兆2,000億元を置換したが、これも突出した額とは言えない。
第二に、改革を不断に深化させている。
2015年の新規登録企業は毎日平均1万2000社に上った。
第三に、各地域の協調した発展を目指している。
2015年の投資を見れば、西部地区は東部地区よりも伸びが3%高い。
農村の収入増は都市の収入増よりも0.9%高い。
第四に、対外開放を深化させていることだ。
「一帯一路」政策を実施し、(AIIBなどの)開放された機構を整備した。
中国の国有企業の「一帯一路」関連49ヵ国の国家への投資は、18.2%伸びている。
第五に、国民生活も平穏に発展している。
昨年、貧困層向け住宅を1733万戸も建造した。
れらはすべて、政府の有効な対応策と言える。
テレビ朝日記者:
生産過剰の問題を整理したら、失業者が急増するのではないか。
また、今年に入っての人民元安は、中国経済にどんな影響を与えているのか。
王局長:
人民元安の問題から答えよう。
実際、国家統計局はこの方面の問題を専門的に研究しているわけではないが、経済への影響という面では分析している。
第一に、人民元安は、中国内外の要素がある。
特に米ドル高による人民元安だ。
人民元安が中国経済に与える影響はそれほど大きなものではないし、顕著なものでもない。
3兆ドルの外貨準備があるし、長期的に人民元が下がり続けるとも思わない。
中国経済には、「4つの不変」がある。
①:長期的には良いという基本面は変わらない。
②:忍耐性が良く、潜在力が十分で、回復の余地が大きいという特長は変わらない。
③:持続的な経済成長のための基礎的条件は変わらない。
④:構造調整により良くしていくという前進姿勢は変わらない。
特に、中国の工業化と都市化が経済成長に与える要素が大きい。
だから一時的に人民元が安くなったからといって、それで何かが大きく変わるわけではないのだ。
第二に、生産過剰の調整が失業問題に与える影響についてだ。
政府が主導する生産過剰の調整は、法治化と市場化の理念に基づいて行われる。
一部の伝統的な業界には、たしかに行き詰まっている企業が存在する。
そして生産過剰を調整していけば、これらの企業に影響が出て来ざるを得ない。
だが党中央と国務院は、就業政策を打ち、失業保険を整え、生産過剰の調整が平穏に進んでいくようにする。
そして経済の中高速成長を保証していく。
* * *
他にも中国人記者たちが立て続けに質問したが、王局長は、「ああ言えばこう言う」で、都合のいい統計を並べ立て、「中国経済は引き続き、『新常態』という『新たな正常な状態』にある」と抗弁し続けたのだった。
◆国家主席が政治を経済に優先させた結果
この日、王局長が発表した数値を、もう少し細かく見ていこう。
まず3ヵ月ごとのGDPに関しては、7.0%、7.0%、6.9%、6.8%である。
これは
第一に、3月5日に行われた全国人民代表大会の政府活動報告で、李克強首相が、「今年のGDPの成長目標は7%前後」と公言してしまったことが大きかった。
これによって4月中旬に発表した第1四半期のGDP成長率を、7.0%に持って来ざるを得なくなった。
中国経済は明らかに下降局面なので、最初から6%台に持ってくることはできなかったのだ。
同様の理由で、第2四半期も7.0%にした。
続いて9月25日、ホワイトハウスでオバマ大統領との米中首脳会談後、共同記者会見に臨んだ
習近平主席は、力強い口調で、
「中国経済は今年も7%前後の成長を維持するだろう」と語った。
国家主席が世界に向けて語ったからには、維持しないといけない。
というわけで、10月中旬に発表した第3四半期で、6.9%とちょっと落とし、第4四半期でまた自然な形でちょっと落として見せた。
この辺りの技術は、ナチュラルなカールを作る美容師のようなセンスというべきだろう。
では今後はどうするのか?
今年3月の全国人民代表大会では、
「6.5%前後の成長」を謳った「第13次5ヵ年計画」(2016年~2020年)を承認する予定だ。
だが、今後5年間で平均6.5%の経済成長というのは、走り高跳びの選手が棒高跳びに挑戦するくらい気宇壮大な目標に思える。
続いて、工業分野で、国有企業の増加値は1.4%まで減速した。
中国の富の6割を占め、ほぼすべての基幹産業を独占している国有企業が中国経済を牽引するというのが、これまでの中国経済の「必勝パターン」だった。
だがここに黄信号が灯っている。
国有企業改革は中国の経済システム改革の本丸で、それは本来、
国有企業の市場化→多元化→民営化
という3つのステップを踏むはずだった。
だが昨年8月、習近平政権は、
国有企業の淘汰(合併)→共産党中央の指導強化
という2つのステップによる「改革」を決めた。
これは、習近平主席が、政治(つまり自分への利権集中)を経済に優先させた結果に他ならない。
これでは、国有企業が市場のニーズに合った企業活動がしにくく、かつ民営企業が育ちにくい。
つまり改革が「改悪」になってしまうリスクを孕んでいるのである。
◆輸入が13%減で、消費が10%増?
先へ進もう。
2015年の固定資産投資(農家への投資を含まず)は、55兆1,590億元で、名目で10.0%アップである。
だが昨年が、15.7%アップだったことと較べれば、5%以上落としている。
これは政策的には健全なことだ。
日本も同様だが、これ以上、地方に大型の公共投資をつぎ込んでも、投資効果は見込めない。
中国は今年、さらに4500kmの高速道路を作るとしているが、これは国境の先を見越しての計画だ。すなわち、習近平政権の周辺外交政策である「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)と、発足したばかりのAIIB(アジアインフラ投資銀行)への活用だ。
いずれにしても、固定資産投資の増加分の減少は、今後も続くだろう。
ちなみに、固定資産投資のうち外資利用分が29.6%も減少しているのが気になる。
外資も引き始めているということだ。
不動産開発投資は9兆5,979億元で、名目の増加率は1.0%。うち住宅投資は0.4%、不動産の新たな起工面積は15億4454万㎡で、14.0%減少した。
うち住宅用起工面積は14.6%の減少だ。
不動産開発企業による土地購入面積は2兆2811万㎡で、31.7%も減少した。
一方、不動産商品の売上高は8兆7,281億元で14.4%増、うち住宅分は16.6%増だ。
こうしたデータは、「空き家が多いが不動産価格は下がらない」という中国独特の現象を物語っている。
実際、昨年12月の全国70都市不動産価格調査では、前月比で39都市が上昇、27都市が下降、不変が4都市だった。
5大都市に限って前年同月比で見ると、北京が108.3%、天津が103.1%、上海が115.5%、広州が109.1%、深圳に至っては146.8%で、すべて上昇しているのである。
不景気にもかかわらず、都市市民はますます不動産が買えない状況になっているのだ。
次に、社会消費品の売上総額は30兆931億元で、名目成長率は10.7%である。
私は昨年、5回訪中したが、都市や農村部を見た肌感覚から言えば、とても消費が二ケタ成長しているようには見えない。
逆に二ケタ減少と言われたほうが納得がいく。
この消費の成長を表すデータは、物価上昇分による割合が、かなり多い気がする。
消費のうち、やはり注目すべきはネット通販の伸びだ。
3兆8,773億元で、33.3%の伸びだ。
消費全体に占める割合も10.8%と、初めて10%ラインを越えた。
これを中国政府は、消費の新たな牽引役として喧伝しているが、それほどハッピーなものではない気がする。
なぜなら、ショッピングモールが次々に潰れていっているからだ。
換言すれば、デパートの棚の商品がネットに流れただけのことなのである。
次に貿易は、明らかに悪かった。
24兆5,849億元で7.0%のマイナス。
うち輸出は14兆1,357億元で1.8%減。
輸入は10兆4,492億元で13.2%減だった。
輸入の減少は、消費の減少を表すのが通常だ。
つまり、輸入が13%減っていて、消費が10%増えるというのは、大変不思議なことだ。
CPI(消費者物価指数)は1.4%増。
うち都市は1.5%増で、農村は1.3%増だ。
これをもって、中国もデフレ時代に突入するという報道もあったが、私はそうは思わない。
相変わらず物価は上がっているというのが肌感覚だ。
国民所得は、平均2万1966元で、名目で8.9%増、物価上昇分を除けば7.4%。
都市市民は3万1195元で8.2%増、農村は1万1422元で8.9%増である。
ちなみに
地元在住の農民工(出稼ぎ農民)は1億863万人、
都市部在住の農民工は1億6884万人である。
産業構造は、第三次産業の割合が50.5%(2.4%増)と、初めて過半数を占めた。
2015年末時点の人民元の貸出残高は93兆9,500億元、
人民元の預金残高は135兆7,000億元
である。
2015年の人民元の新規貸出額は11兆7,200億元で1兆8,100億元増、
新規預金額は14兆9,700億元で、1兆9,400億元増だった。
最後に人口は、2015年末時点で、13億7462万人で、出生者1655万人、死亡者975万人、出生率は1.207である。
うち都市人口は7億7116万人で、2200万人の増加。
農村人口は6億346万人で1520万人の減少。
都市人口の比率は56.1%になった。
また、65歳以上の人口が4386万人と、総人口の10.5%を占めるに至ったことは注目に値する。
60歳以上は2億2200万人で16.1%を占める。
日本はすでに65歳以上人口が25%を超えたが、中国はこの先、凄まじい老齢社会に入っていく。
◆発電量は真のGDPを示す(李克強)
以上が、王局長が発表した数値だが、省略したものの中で重要な数値が一つある。
それは、発電量が5兆6184億kW時で、0.2%のマイナスになっていることだ。
発電量は、2007年に李克強首相が「真のGDPを示す」としたいわゆる「李克強指数」の筆頭に来るものだ。
それにならうなら、「真のGDPはマイナス0.2%」ということになる。
こうした「外野の声」に対し、中国政府は「節電技術の進歩によるものだ」と主張する。
だがこれも肌感覚だが、わずか一年で節電技術がそれほど進歩したようには思えない。
だが、こうして細かな統計をつぶさに見ていくと、中国という国が、いかに巨大な存在かを思い知る。
中国経済や習近平政権を批判するのは容易だが、この大国を統治していくのは、やはり並大抵のことではないと痛感させられた。
』
『
サーチナニュース 2016-01-27 11:31
http://news.searchina.net/id/1600892?page=1
中国・国家統計局長が失脚
「自信満面」の経済情勢説明会の直後に共産党が「重大な規律違反」で取り調べと発表
中国共産党中央紀律委員会と中国政府・監察部は26日午後6時40分付で、国家統計局の王保安局長を「重大な規律違反の疑い」で取り調べ中と発表した。
王局長は同日3時に、メディア記者に対する経済情勢の説明会を開催した。
王局長は説明会で、中国経済は長期的はよい方向に向かっているなどと強調。
香港メディアは午後4時39分付で説明会での王局長の主張を簡単に紹介。
会場からの入稿だった可能性が高い。
その後、中国メディアは午後6時ごろに、説明会の比較的詳しい内容を報じはじめたが、午後6時40分に共産党中央紀律委員会と政府監察部が「取り調べ」を発表した。
「重大な規律違反」とは、いわゆる金銭絡みの「腐敗」を指すことが恒例だ。
要職にある人物が「規律違反」で取り調べを受ける際には、公の場に姿を見せなくなって一定期間が経過してから発表される場合がほとんどだ。
中国では公務員の「ランク」が定められており、統計局局長は「省部級」という閣僚級の地位だ。
突然の失脚に、中国では驚きの声が上がった。
記者会見に臨んだ王局長の様子に不自然さはなく、
「本人もまさか、自分が直後に失脚するとは思っていなかったのだろう」
との見方が出た。
中国の大手ポータルサイト「捜狐」は27日になって
「消息筋:統計局が大問題を出すと分かっていても、局長にまで達するとはだれも思わなかった」
と題する記事を掲載した。
王局長は、1990年代に項懐誠財政部長(財政相)の秘書を務め、財政部制作企画局局長、税制部経済建設局局長、財政部長補佐、財政部副部長などを歴任し、2015年4月に国家統計局長に就任した。
同年6月からは中国人民銀行貨幣政策委員会委員も兼任した。
不正があったとすれば、財政部時代ではないかとの指摘も出始めた。
中国では2006年にも、邱暁華国家統計局が失脚した。
上海市トップの同市共産党委員会書記だった陳良宇受刑者が主導した、社会保障基金を不正に流用して蓄財した「上海市社会保険基金事件」に絡む収賄罪と重婚罪だった。
』
現代ビジネス 2016年01月25日(月) 近藤 大介
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47520
中国の公式発表「6.9%」成長は本当か?
「国家統計局」の苦しい弁明・全内幕
現実には「マイナス0.2%」という声も
![](http://4.bp.blogspot.com/-0DdynVWQ50E/Vqg_vtzFQQI/AAAAAAAAAQE/_I9AOhQXsdk/s400/img_9110eec1f5331f5e38e98a83f5ebb84398067.jpg)
●王保安・中国国家統計局長
いまとは比較にならないほど言論が自由だった胡錦濤時代のこと。
秋の「国考」(国家公務員試験)の季節に、中国のインターネット上で、
「中国国務院で最も就きたい職業は何か?」
「最も就きたくない職業は何か?」
という話題が盛り上がったことがあった。
中国国務院というのは、中国の中央官庁の総称だ。
おそらく国務院に勤める少なからぬ官僚たちも、面白がって匿名で投票していたのではないか。
「就きたい職業」第1位は、国家民族事務委員会のチベット族担当者だった。
理由は明示されていなかったが、それは「言わずもがな」というものだ。
すなわち、多額の賄賂収入が期待できる部署だったのだろう。
一方、「就きたくない職業」第1位はと言えば、外交部スポークスマンと国家統計局長だった。
こちらも理由は明示されていなかったが、容易に想像できた。
すなわち、いつも公にウソをつかなければならないポストだからだ。
その国家統計局長が一年で一番注目されるのが、毎年1月中旬に行われる「前年のGDP成長」の発表日だ。
数百人の中国内外の記者が詰めかけ、世界中のテレビカメラが中継する。
◆「初期の概算によれば、2015年のGDPは…」
1月19日午前、世界が注視するなか、王保安・中国国家統計局長の記者発表会が開かれた。
名前を逆さまから読めば、「安保王」。
それだけで何だか国民に安心感を与えるような印象だが、本人はクソマジメな口調で、強硬な発言することで知られる。
1963年12月、河南省魯山生まれで、中南財経大学を卒業後、難関で知られる財政部に就職。
財務官僚としてキャリアを積み、昨年4月に、財政部副部長(副大臣)から国家統計局長に天下った。
そのため、今回が初の檜舞台だった。
思えば、前任の馬建堂局長は、「ミスター0.3%」というニックネームで、やはり海千山千の人物だった。
不動産が3割、5割と異常高騰した2010年に、「われわれの統計によれば、年間0.3%しか上昇していない」と嘯いたことから、この名が付いたのだ。
それでも馬建堂前局長は、長年の「統計テクニック」が高く評価されたようで、中国共産党中央委員会委員に抜擢された。
そんな「大口叩き」だった馬建堂局長に較べると、王保安局長は、いくらか地味で堅実なイメージを与えるが、そこは世界に向かって虚勢を張る国家統計局長である。
銀縁メガネの奥の細い目を時折、記者席の方に泳がせながら、強弁を通したのだった。
「2015年、複雑に錯綜した国際情勢と、不断に増大する経済の下降圧力に向かいながら、党中央、国務院は、戦略的な保持能力を見せた。
国内と国際の大局を見据えながら、かつ『平穏な中に進展を求める』という基調を堅持しながら、主導的に『新常態』に適応し、『新常態』を導いてきた。
新しい理念でもって新しい実践を指導し、新しい戦略でもって新しい発展を目指してきた。
不断にマクロの調整を創造し、構造改革を深く推進してきた。
そして『大衆が創業し、万人が創造する』ことを地道に推進し、経済の総体的な平穏を保持し、それでも平穏な中に進展があり、平穏な中に特長があるという発展態勢を築いてきたのだ……」
このような、いかにも中国共産党的な「前口上」を述べた上で、いよいよ本論に入った。
「初期の概算によれば、2015年のGDPは、67兆6,708億元で、価格計算をすれば、前年比で6.9%増だった。
四半期毎に見れば、第1四半期が前年同期比7・0%増、第2四半期が7.0%増、第3四半期が6.9%増、第4四半期が6.8%増だ。
産業別に見ると、第一次産業が6兆863億元で3.9%増、第二次産業が27兆4,278億元で6.0%増、第三次産業が34兆1,567億元で8.3%増だ。
前期比で見れば、四半期の成長率は1.6%増だった……」
◆「中国のGDPについては2通りの評論がある」
王局長から、「6.9%」という数字が読み上げられた瞬間、会場に「シラ~ッ」としたムードが漂った。
数年前までのどよめき調の高揚感はなく、「しめやかに執り行われた」という感じだった。
すかさず、英字紙『チャイナ・デイリー』の若い記者が、挙手して質問を浴びせた。
「この一年間というもの、多くのメディアや研究機関が、中国政府が公式発表するGDP成長の数値の真実性について、疑問を投げかけてきた。
その中には、『中国の本当のGDP成長率は5%以下だ』と暴露するものもあった。
こうした多くの疑念に対して、国家統計局はどう答えるのか?」
この思いも寄らぬ「爆弾質問」に、王局長は、やや狼狽した様子を見せながらも、開き直って答えた。
「私たちも、やれどこかの研究機関だ、研究者だという人々が、中国のGDPについて、あれこれ勝手に論じているのは承知している。
だが、それらの評論には2通りあるのを知っているか?
一つは、いま記者が質問したように、国家統計局は、実際のGDP成長の数値を水増しして発表しているというものだ。
だがもう一つは、国家統計局は、実際のGDP成長よりも控え目な数値を発表しているというものなのだ」
会場を埋め尽くした数百人の記者たちは、この王局長の発言を聞いて、開いた口が塞がらなかった。
その日、中国で7億人が使用している「微信」(WeChat)では、次のようなメッセージが広がった。
〈 われわれは中国人に生まれて、本当に幸せだ。
なぜなら今後、中国経済がどんどん悪化していき、財政部や商務部、国家発展改革委員会などが「もうお手上げだ」とサジを投げたとしても、最後には国家統計局がついているのだから 〉
◆「中国経済は『新常態』という『新たな正常な状態』にある」
もう少し、この王保安局長と記者との問答を続けよう。
アルジャジーラ記者:
6.9%という数値は、過去25年で最低だ。
それは(王局長が強調する)国際的要因だけでなく、中国国内の問題もあるのではないか。
例えば、地方政府の借金とか、不動産バブルの崩壊とか、株式市場の低迷などだ。
これらの要因は中国経済の成長にどのような影響を与えているのか?
王局長:
記者会見の時間の制約もあるので、それほど詳しい話はできないが、2015年の中国の不動産市場の下降と、株式市場に発生した動揺は当然、中国経済の成長に影響を与えるものだ。
だが一体どれほどの影響を与えたのかについては、われわれはこれからもっと精査が必要だ。
例えば株価というのは、上がることもあれば、下がることもある。
しかしGDPの計算は、取引量に依拠している。
だから株価が下がったからといって取引量が増えれば、GDPにとってはプラスに働くというわけだ。
2015年の不動産投資の伸びは、2014年に較べて落ち、1%になった。
だが不動産商品の面積と売上高は、それぞれ6.5%と14.4%伸びている。
総合的に見て、やはりGDPの計算にはプラスに働いたりマイナスに働いたりする。
政府の債務に至っては、明確な増加はしていない。
GDPの4割にも至っていない。
国際的には6割が警戒ラインだが、中国はまったくそれ以下だ。
ここ数年、党中央と国務院が唱えているように、中高速成長を保持し、新常態に適応し、新常態を導いている。
2015年の中国経済は、
「全体的に平穏で、平穏な中に進歩があり、平穏な中に良い点がある」
のだ。
もう少し説明しよう。
まず、「平穏」という意味は、
第一に経済発展の速度が平穏だ。
第二に就業も平穏で、失業率は5.1%前後だ。
第三にCPIも1.4%増で平穏だ。
国民収入も平穏に伸びていて、都市部で6.6%増、農村部で7.5%増だ。
次に、「平穏な中に進歩がある」という点だ。
GDPに占める第三次産業の割合は50.5%に達した。
これは第二次産業よりも10%高い。
次にGDPに占める消費の割合も、60%以上だ。
その消費の中身も、エンゲル係数は低下していて、31.2%(2013年)、31.0%(2014年)、30.6%(2015年)となっている。
「平穏な中に良い点がある」とは、最先端技術の増加値は既存の工業よりも4.1%高い。
非工業増加値の成長も7.9%で、工業平均よりも1.8%高い。
利益で見ると8%高い。
経済日報記者:
現在、経済の下降圧力は大変強いものがある。
これに対する政府の対応策をどう評価するか。
王局長:
第一に、政府は強力な刺激策を打っていない。
2008年と2015年のM2(通貨供給量)、銀行貸出高、固定資産投資額の伸びを見てみると、それぞれ17.8%と13.3%、18.8%と14.3%、26.6%と10.0%だ。
赤字比率、債務比率も突出して伸びてはいない。
昨年、政府は地方債3兆2,000億元を置換したが、これも突出した額とは言えない。
第二に、改革を不断に深化させている。
2015年の新規登録企業は毎日平均1万2000社に上った。
第三に、各地域の協調した発展を目指している。
2015年の投資を見れば、西部地区は東部地区よりも伸びが3%高い。
農村の収入増は都市の収入増よりも0.9%高い。
第四に、対外開放を深化させていることだ。
「一帯一路」政策を実施し、(AIIBなどの)開放された機構を整備した。
中国の国有企業の「一帯一路」関連49ヵ国の国家への投資は、18.2%伸びている。
第五に、国民生活も平穏に発展している。
昨年、貧困層向け住宅を1733万戸も建造した。
れらはすべて、政府の有効な対応策と言える。
テレビ朝日記者:
生産過剰の問題を整理したら、失業者が急増するのではないか。
また、今年に入っての人民元安は、中国経済にどんな影響を与えているのか。
王局長:
人民元安の問題から答えよう。
実際、国家統計局はこの方面の問題を専門的に研究しているわけではないが、経済への影響という面では分析している。
第一に、人民元安は、中国内外の要素がある。
特に米ドル高による人民元安だ。
人民元安が中国経済に与える影響はそれほど大きなものではないし、顕著なものでもない。
3兆ドルの外貨準備があるし、長期的に人民元が下がり続けるとも思わない。
中国経済には、「4つの不変」がある。
①:長期的には良いという基本面は変わらない。
②:忍耐性が良く、潜在力が十分で、回復の余地が大きいという特長は変わらない。
③:持続的な経済成長のための基礎的条件は変わらない。
④:構造調整により良くしていくという前進姿勢は変わらない。
特に、中国の工業化と都市化が経済成長に与える要素が大きい。
だから一時的に人民元が安くなったからといって、それで何かが大きく変わるわけではないのだ。
第二に、生産過剰の調整が失業問題に与える影響についてだ。
政府が主導する生産過剰の調整は、法治化と市場化の理念に基づいて行われる。
一部の伝統的な業界には、たしかに行き詰まっている企業が存在する。
そして生産過剰を調整していけば、これらの企業に影響が出て来ざるを得ない。
だが党中央と国務院は、就業政策を打ち、失業保険を整え、生産過剰の調整が平穏に進んでいくようにする。
そして経済の中高速成長を保証していく。
* * *
他にも中国人記者たちが立て続けに質問したが、王局長は、「ああ言えばこう言う」で、都合のいい統計を並べ立て、「中国経済は引き続き、『新常態』という『新たな正常な状態』にある」と抗弁し続けたのだった。
◆国家主席が政治を経済に優先させた結果
この日、王局長が発表した数値を、もう少し細かく見ていこう。
まず3ヵ月ごとのGDPに関しては、7.0%、7.0%、6.9%、6.8%である。
これは
第一に、3月5日に行われた全国人民代表大会の政府活動報告で、李克強首相が、「今年のGDPの成長目標は7%前後」と公言してしまったことが大きかった。
これによって4月中旬に発表した第1四半期のGDP成長率を、7.0%に持って来ざるを得なくなった。
中国経済は明らかに下降局面なので、最初から6%台に持ってくることはできなかったのだ。
同様の理由で、第2四半期も7.0%にした。
続いて9月25日、ホワイトハウスでオバマ大統領との米中首脳会談後、共同記者会見に臨んだ
習近平主席は、力強い口調で、
「中国経済は今年も7%前後の成長を維持するだろう」と語った。
国家主席が世界に向けて語ったからには、維持しないといけない。
というわけで、10月中旬に発表した第3四半期で、6.9%とちょっと落とし、第4四半期でまた自然な形でちょっと落として見せた。
この辺りの技術は、ナチュラルなカールを作る美容師のようなセンスというべきだろう。
では今後はどうするのか?
今年3月の全国人民代表大会では、
「6.5%前後の成長」を謳った「第13次5ヵ年計画」(2016年~2020年)を承認する予定だ。
だが、今後5年間で平均6.5%の経済成長というのは、走り高跳びの選手が棒高跳びに挑戦するくらい気宇壮大な目標に思える。
続いて、工業分野で、国有企業の増加値は1.4%まで減速した。
中国の富の6割を占め、ほぼすべての基幹産業を独占している国有企業が中国経済を牽引するというのが、これまでの中国経済の「必勝パターン」だった。
だがここに黄信号が灯っている。
国有企業改革は中国の経済システム改革の本丸で、それは本来、
国有企業の市場化→多元化→民営化
という3つのステップを踏むはずだった。
だが昨年8月、習近平政権は、
国有企業の淘汰(合併)→共産党中央の指導強化
という2つのステップによる「改革」を決めた。
これは、習近平主席が、政治(つまり自分への利権集中)を経済に優先させた結果に他ならない。
これでは、国有企業が市場のニーズに合った企業活動がしにくく、かつ民営企業が育ちにくい。
つまり改革が「改悪」になってしまうリスクを孕んでいるのである。
◆輸入が13%減で、消費が10%増?
先へ進もう。
2015年の固定資産投資(農家への投資を含まず)は、55兆1,590億元で、名目で10.0%アップである。
だが昨年が、15.7%アップだったことと較べれば、5%以上落としている。
これは政策的には健全なことだ。
日本も同様だが、これ以上、地方に大型の公共投資をつぎ込んでも、投資効果は見込めない。
中国は今年、さらに4500kmの高速道路を作るとしているが、これは国境の先を見越しての計画だ。すなわち、習近平政権の周辺外交政策である「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)と、発足したばかりのAIIB(アジアインフラ投資銀行)への活用だ。
いずれにしても、固定資産投資の増加分の減少は、今後も続くだろう。
ちなみに、固定資産投資のうち外資利用分が29.6%も減少しているのが気になる。
外資も引き始めているということだ。
不動産開発投資は9兆5,979億元で、名目の増加率は1.0%。うち住宅投資は0.4%、不動産の新たな起工面積は15億4454万㎡で、14.0%減少した。
うち住宅用起工面積は14.6%の減少だ。
不動産開発企業による土地購入面積は2兆2811万㎡で、31.7%も減少した。
一方、不動産商品の売上高は8兆7,281億元で14.4%増、うち住宅分は16.6%増だ。
こうしたデータは、「空き家が多いが不動産価格は下がらない」という中国独特の現象を物語っている。
実際、昨年12月の全国70都市不動産価格調査では、前月比で39都市が上昇、27都市が下降、不変が4都市だった。
5大都市に限って前年同月比で見ると、北京が108.3%、天津が103.1%、上海が115.5%、広州が109.1%、深圳に至っては146.8%で、すべて上昇しているのである。
不景気にもかかわらず、都市市民はますます不動産が買えない状況になっているのだ。
次に、社会消費品の売上総額は30兆931億元で、名目成長率は10.7%である。
私は昨年、5回訪中したが、都市や農村部を見た肌感覚から言えば、とても消費が二ケタ成長しているようには見えない。
逆に二ケタ減少と言われたほうが納得がいく。
この消費の成長を表すデータは、物価上昇分による割合が、かなり多い気がする。
消費のうち、やはり注目すべきはネット通販の伸びだ。
3兆8,773億元で、33.3%の伸びだ。
消費全体に占める割合も10.8%と、初めて10%ラインを越えた。
これを中国政府は、消費の新たな牽引役として喧伝しているが、それほどハッピーなものではない気がする。
なぜなら、ショッピングモールが次々に潰れていっているからだ。
換言すれば、デパートの棚の商品がネットに流れただけのことなのである。
次に貿易は、明らかに悪かった。
24兆5,849億元で7.0%のマイナス。
うち輸出は14兆1,357億元で1.8%減。
輸入は10兆4,492億元で13.2%減だった。
輸入の減少は、消費の減少を表すのが通常だ。
つまり、輸入が13%減っていて、消費が10%増えるというのは、大変不思議なことだ。
CPI(消費者物価指数)は1.4%増。
うち都市は1.5%増で、農村は1.3%増だ。
これをもって、中国もデフレ時代に突入するという報道もあったが、私はそうは思わない。
相変わらず物価は上がっているというのが肌感覚だ。
国民所得は、平均2万1966元で、名目で8.9%増、物価上昇分を除けば7.4%。
都市市民は3万1195元で8.2%増、農村は1万1422元で8.9%増である。
ちなみに
地元在住の農民工(出稼ぎ農民)は1億863万人、
都市部在住の農民工は1億6884万人である。
産業構造は、第三次産業の割合が50.5%(2.4%増)と、初めて過半数を占めた。
2015年末時点の人民元の貸出残高は93兆9,500億元、
人民元の預金残高は135兆7,000億元
である。
2015年の人民元の新規貸出額は11兆7,200億元で1兆8,100億元増、
新規預金額は14兆9,700億元で、1兆9,400億元増だった。
最後に人口は、2015年末時点で、13億7462万人で、出生者1655万人、死亡者975万人、出生率は1.207である。
うち都市人口は7億7116万人で、2200万人の増加。
農村人口は6億346万人で1520万人の減少。
都市人口の比率は56.1%になった。
また、65歳以上の人口が4386万人と、総人口の10.5%を占めるに至ったことは注目に値する。
60歳以上は2億2200万人で16.1%を占める。
日本はすでに65歳以上人口が25%を超えたが、中国はこの先、凄まじい老齢社会に入っていく。
◆発電量は真のGDPを示す(李克強)
以上が、王局長が発表した数値だが、省略したものの中で重要な数値が一つある。
それは、発電量が5兆6184億kW時で、0.2%のマイナスになっていることだ。
発電量は、2007年に李克強首相が「真のGDPを示す」としたいわゆる「李克強指数」の筆頭に来るものだ。
それにならうなら、「真のGDPはマイナス0.2%」ということになる。
こうした「外野の声」に対し、中国政府は「節電技術の進歩によるものだ」と主張する。
だがこれも肌感覚だが、わずか一年で節電技術がそれほど進歩したようには思えない。
だが、こうして細かな統計をつぶさに見ていくと、中国という国が、いかに巨大な存在かを思い知る。
中国経済や習近平政権を批判するのは容易だが、この大国を統治していくのは、やはり並大抵のことではないと痛感させられた。
』
『
サーチナニュース 2016-01-27 11:31
http://news.searchina.net/id/1600892?page=1
中国・国家統計局長が失脚
「自信満面」の経済情勢説明会の直後に共産党が「重大な規律違反」で取り調べと発表
中国共産党中央紀律委員会と中国政府・監察部は26日午後6時40分付で、国家統計局の王保安局長を「重大な規律違反の疑い」で取り調べ中と発表した。
王局長は同日3時に、メディア記者に対する経済情勢の説明会を開催した。
王局長は説明会で、中国経済は長期的はよい方向に向かっているなどと強調。
香港メディアは午後4時39分付で説明会での王局長の主張を簡単に紹介。
会場からの入稿だった可能性が高い。
その後、中国メディアは午後6時ごろに、説明会の比較的詳しい内容を報じはじめたが、午後6時40分に共産党中央紀律委員会と政府監察部が「取り調べ」を発表した。
「重大な規律違反」とは、いわゆる金銭絡みの「腐敗」を指すことが恒例だ。
要職にある人物が「規律違反」で取り調べを受ける際には、公の場に姿を見せなくなって一定期間が経過してから発表される場合がほとんどだ。
中国では公務員の「ランク」が定められており、統計局局長は「省部級」という閣僚級の地位だ。
突然の失脚に、中国では驚きの声が上がった。
記者会見に臨んだ王局長の様子に不自然さはなく、
「本人もまさか、自分が直後に失脚するとは思っていなかったのだろう」
との見方が出た。
中国の大手ポータルサイト「捜狐」は27日になって
「消息筋:統計局が大問題を出すと分かっていても、局長にまで達するとはだれも思わなかった」
と題する記事を掲載した。
王局長は、1990年代に項懐誠財政部長(財政相)の秘書を務め、財政部制作企画局局長、税制部経済建設局局長、財政部長補佐、財政部副部長などを歴任し、2015年4月に国家統計局長に就任した。
同年6月からは中国人民銀行貨幣政策委員会委員も兼任した。
不正があったとすれば、財政部時代ではないかとの指摘も出始めた。
中国では2006年にも、邱暁華国家統計局が失脚した。
上海市トップの同市共産党委員会書記だった陳良宇受刑者が主導した、社会保障基金を不正に流用して蓄財した「上海市社会保険基金事件」に絡む収賄罪と重婚罪だった。
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