2016年1月3日日曜日

日本「イノベーション大国」構想(1):国産旅客機や自動運転車は序の口、オフィス製紙機で紙の使い捨て時代が終わる!

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ブルームバーグ 2016/01/05 08:02 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O0FOO9SYF01W01.html

日本を「イノベーション大国」に
-国産旅客機や自動運転車は序の口

 (ブルームバーグ):
 日本が国の再起動を目指している。
 安倍晋三首相は世界3位の経済大国である日本の再活性化を図っているが、この一環で2020年の東京五輪開催を前にイノベーション(技術革新)を加速させようとしている。

 自動運転車の路上導入やロボット技術をベースとする最新のテクノロジー利用に向けた公的・民間セクターの共同プロジェクトを国が支援し、首相は今年度末までに
 研究開発投資を国内総生産(GDP)の4%まで高めようとしている。
 この比率は2年前は3.75%だった。
 18年の早い時期までに日本をイノベーションでトップクラスの国にすることが政府の目標だ。

 航空部門ではここ数カ月に進展が既にあった。
 約半世紀ぶりの開発となった国産旅客機が初飛行に成功したほか、国産ステルス機のテスト飛行にも近づいている。
 これに成功した国はこれまで3カ国のみ。
 また、ホンダは小型ビジネ ス航空機「ホンダジェット」の型式証明を米連邦航空局(FAA)から取り付けた。

 ヘルスケアでも進歩が見られる。
 政府は14年、薬事法を改正。
 これで再生医療に使う細胞や組織の早期承認が可能となり、富士フイルムホールディングスは組織や臓器の再生を促す幹細胞利用に野心的だ。
 また、15年のノーベル物理学賞受賞者を陰で支えていたのは浜松ホトニクスの光センサー技術だった。

 最盛期の日本からは「ウォークマン」や新幹線といった世界のイノベーションをけん引するような製品や技術が登場したが、近年はかつての輝きを失っている。
 1990年代初頭のバブル崩壊後の経済成長停滞とデフレが企業の信頼感や事業計画に重しとなってきたほか、隣国である中国や韓国が研究開発投資を急増。現在のスマートフォンやインターネット産業を率いるのは米グーグルやアップル、韓国のサムスン電子などだ。

 一方、日本は自動車業界では世界のリーダーの地位を保っている。
 日産自動車は昨年11月、ハンドルを格納してドライバーを運転から解放するモードを設定したコンセプトモデルを自動車ショーに出展。
 ホンダやトヨタ自動車もドライバーの操作なしに車線を変更したり衝突を回避したりする完全自動運転の最新技術を披露した。

 ベンチャー投資を行うスクラムベンチャーズ(本社サンフランシスコ)の創業者、宮田拓弥氏は、トヨタや他の自動車メーカーは市場シェア、技術、データから見て、同業界の中で引き続き非常に有利な立場を維持していると説明、スマホでの失敗とは異なり、十分に迅速に動けば日本はこの分野では勝者となりイノベーションを率いることができると話した。

 とはいえ、競争相手も取り組みを加速させている。
 経済協力開発機構(OECD)によれば、中国も韓国も近年は研究開発投資を日本よりも速いペースで増やしてきた。
 中国の研究開発投資は対GDP比で13年に2.08%と、2000年の0.9%を大きく上回った。
 韓国は4.15%と、2000年の2.18%から大幅に引き上げた。
 日本は3.47%(2000年は3%)だった。
 さらには中国の企業は韓国企業の買収をかつてないペースで進めており、これも日本にはリスクとなる。

 最近のデータは日本企業が設備投資を増やしている状況を示すが、それでも多くが自国市場への重点投資には後ろ向きで支出は07年につけたピークを大きく下回っている。

 みずほ総合研究所の徳田秀信主任エコノミストは、最大の課題は生産性を押し上げ経済上の結果をもたらす適切なプログラム向けの資金を確保することだと指摘。
 さらに、研究開発費を増やすというより、その質を改善することが重要だと強調した。

 これに対し、マッキンゼーのシニアパートナーでイノベーションが専門のエリック・ロス氏は、日本は現在のポジションを維持するだけでも多大な投資が必要だと説く。
 競争が激化している現状では
 「速く進んでいるつもりでも足踏み状態に終わる。
 加速させたいのなら、一段の投資が必要だ」
と述べた。

原題:Planes, Trains and Automobiles Showcase Japan Innovation Push(抜粋)



東洋経済オンライン 2016年01月03日  渡辺 拓未 :東洋経済 記者
http://toyokeizai.net/articles/-/98383?page=3

エプソンが実現した「オフィス製紙機」とは?
4年越しで生み出した水を使わない新技術

「”紙は使って終わり”という時代は終わる」ーー。

 12月1日、セイコーエプソンが発表したのは、世界初となるオフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)」。
 同日に開かれた記者会見で、碓井稔社長は力強く語った。



 ペーパーラボは、使用済みのコピー用紙を入れると、その場で新しい紙に再生する、
すぐれものだ。
 A4用紙の場合、1分間に14枚、8時間稼働すれば、6720枚の再生紙を作ることができる。

◆水を使わず、オフィス内で紙を「再生」


●実際にペーパーラボで作った再生紙。
このように、色のついた紙も作ることが可能だ

 しかも、再生には水を使わない。
 一般的に、A4用紙を1枚作るためにはコップ1杯分の水が使われているというが、エプソンは水なしで再生する技術を編み出した。
 それでも、文書を紙繊維まで分解するため、情報は完全に抹消されるという。

 使い方も簡単だ。結合材をセットし、使い終わった用紙をトレイにのせ、タッチパネル操作でスタートするだけ。
 設定を変更すれば、色や厚さ、香りまで変えられる。
 オフィス用紙から名刺、色付きの紙など、ユーザーは必要なときに紙を「生産」することができるのだ。

 ただ、エプソンはインクジェットプリンタを中心とした印刷機の会社だ。
 なぜ使用済み用紙の再生に取り組むことになったのか。
 プロジェクトの始まりは、2011年夏にさかのぼる。
 きっかけは、プリンタメーカーとしての危機意識だった。
 碓井社長は語る。
 「エプソンは紙に印刷するための努力は続けてきたが、プリンタに使う紙のコストやエコなどの問題には取り組めていなかった。
 こうした課題を払拭しなければと思っていた」。

 社長肝いりのプロジェクトを誰に委ねるべきか。
 ちょうどこの頃、エプソンはインクジェットプリンタに集中するために、レーザープリンタ開発の縮小を進めていた。
 そこで、白羽の矢が立ったのは、技術開発本部でレーザープリンタの開発をしていた市川和宏氏(現Aプロジェクト部長)だった。

 「突然、福島米春常務から『コストやエコの面で、紙に印刷することにためらいを持つ人がいる。
 それを解決したい』という旨の電話がかかってきた。
 そこからすべてが始まった」
と市川部長は振り返る。
 市川部長はレーザープリンタの事業を進める傍ら、碓井社長とともにコンセプトを固め、1カ月後には実現に向けて動き出したという。
 メンバーは市川氏を含め、たった2名だった。

◆どうすれば水を使わずにできるか?

 製紙機を作るという発想は、当初からあったものだ。
 簡単に紙を再利用できるようになれば、もっと気軽に印刷ができるようになると考えたからだ。
 ただ、オフィス機器として製紙機を作るには大きな壁があった。


●シュレッダーでは残ってしまう情報も、ペーパーラボでは完全に抹消できる

 古紙を再生するためには、紙を水でほぐす行程が不可欠のため、給排水設備が必要になることだ。
 「水を使った方法ではオフィス内で場所を選ばずに設置できない。
 まったく違う発想をしなければいけなかった」(市川氏)。

 この壁を超えるべく、苦労の末生み出したのが
 「ドライファイバーテクノロジー」という技術だ。
 この技術では
 機械的衝撃を与えることで紙を一瞬で繊維化した後、
 色素を取り除く。
 そうしてできた綿状の繊維に結合剤を加えて加圧し、再び紙にする。
 水を使わずに紙を再生する技術を生み出したことで、オフィス向け製紙機の実現に大きく近づいた。

 ドライファイバーテクノロジーの技術構想ができてからは、開発はシナリオ通りだったという。
 2人で始まったプロジェクト規模はいつしか10人以上に膨らみ、その過程でさまざまな分野からメンバーを集めていった。
 プリンタ事業の印字技術、ロボット事業の精密機械技術など、社内にある技術をフル活用したことで、スムーズに開発を進めることができたという。

 そうして実用化への見通しが立ったが、すぐに市場には投入せず、社内への供給という形での利用を開始した。
 エプソンには、当時からすでに機密文書を再生し、インクジェットプリンタの部品として使われる廃インクの吸着剤を作る活動を行っていた。
 その過程にドライファイバーテクノロジーの技術を用いることで、古紙再生のノウハウを積み上げた。
 こうして、社内で1年以上技術を磨き、満を持して今回の発表に至ったというわけだ。

 ペーパーラボは2016年内の販売を目指しているが、導入先として狙うのは、金融機関や公的機関といった、機密文書を扱う機関だ。
 外部業者へ委託する場合、印刷物1キログラム当たり50円~150円ほどかかるが、今回の技術は社内で紙を繊維単位まで分解できるため、機密情報処理に伴うコストを下げ、リスク面の課題も解決できる。

◆「小型化のイメージはできている」

 今後の課題は小型化。
 将来的にはコピー機の隣におけるサイズになるという

 ただ、機密文書の処理用途のみでは市場は限られる。
 その点に関して、碓井社長は
 「単に機密文書の処理ができるようなったから出したわけではない。
 機械の償却費を含めたトータルコストで見ても、紙を買うよりも安くなるメドがついたから今回発表した」
と、通常の印刷物を再生してもメリットがあることを強調している。

 今後の課題は小型化だ。
 現状の製品は高さ1.8メートル、横幅2.6メートル、奥行き1.2メートルと大型で、一般的なオフィスに簡単に設置できる大きさとは言いがたい。
 将来的には複合機の横に置ける大きさにしていくという。
 市川部長は
 「今回は大量の文書を処理するために大型化した。
 小型化への技術的なイメージはすでにできている」
と展望を語る。

 社長直轄で、4年の歳月をかけて投入された今回の新技術。
 期待は大きいが、その新しさゆえ、どれだけ市場が発展するからは未知数だ。
 ”紙は印刷して終わり”の常識を変え、新境地を切り開くことができるのか。
 エプソンの新しい挑戦が始まった。



2015.12.31(木) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45680

日本のイノベーションに光を当てたパイオニア
青色LEDで世界を変え、次の奇跡の開発に挑む中村修二氏
(2015年12月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


●ノーベル物理学賞の中村氏 「LED照明の夢実現に満足」
2014年10月、米カリフォルニア州サンタバーバラでノーベル物理学賞の受賞決定後に会見する中村修二氏〔AFPBB News〕

 今から20年以上前、青色発光ダイオード(LED)の試作品ができあがったその瞬間から、中村修二氏はこの発明が世界を変えることになると分かっていた。

 数年かかったが、この発明はスマートフォン、太陽電池で駆動する街灯、高出力な自転車ライト、「iPad(アイパッド)」、おもちゃのライトセーバー、電子書籍リーダーの「Kindle(キンドル)」、薄型テレビなど数十億台の製品につながっていった。
 また今では、青色LEDの次の奇跡が開発の途上にあり、光を使って非常に広い帯域を作り出す「LiFi(ライファイ)」という次世代通信ネットワークの中心部分になる見通しだ。

 中村教授はこうした展開の一部を予想していた。
 愛媛県出身のけんかっ早いエンジニアだった教授は1990年代の初めという早い時期から、20世紀が白熱灯の時代だったとしたら、21世紀の生活はLEDの明かりの下で暮らし、働き、遊ぶ時代になると分かっていた。
 教授の青色LEDによってそれらがすべて可能になるのだ。

 教授が知らなかったのは、ストックオプションがどのような仕組みになっているかとか、何かを発明しても日本ではごくわずかしか報われないということだった。

◆青色LEDが日本の産業界にもたらした衝撃

 また、2014年にはこの発明によりノーベル賞を受賞したが、青色LEDが日本の産業界に強烈なインパクトを与えることや、今日でも語り草になる訴訟が行われることまでは予想していなかった。
 強くてエネルギー効率も高い種類の光を完璧に作り上げたものの、それを産み落とした日本の産業システムに激しく跳ね返ることになるとは思いもしなかったのだ。

青色LEDの特徴は、長年追い求められてきた青・赤・緑の3色がそろい、
 従来型の白熱灯の数分の一の電力で白色光を作り出せるところにある。
 LEDは比較的高価だったが、中村教授の技術はすぐに市場を席巻できるように思われた。
 だが実際には、闇の世界の征服はゆっくりとしか進んでいない。
 日本が従来型の白熱灯と蛍光灯の販売を2020年以降やめると決めたのは、つい最近のことだ。

 中村教授は2015年、青色LEDの省エネルギーへの功績が認められて「グローバルエネルギー賞」を受賞した。
 この賞は、ロシアが革新的な技術の促進を目指して2002年に設けたものだ。
 青色LEDが2000年代の前半から家電製品や乗用車、小型の電子機器などに少しずつ採用され始めると、それを機に同じくらい大きな変化が、日本とその知的財産権へのアプローチに向かって次々と押し寄せるようになった。

 日本は自己と戦い始めた。
 会社に忠誠を誓うよう生まれたときから教えられていた発明家たちが、自分たちの価値を完全に個人的な観点から考え始めたのだ。
 知的財産権法制を改正せよという圧力が高まり、発明家が強く抗議したり訴訟も辞さないという態度を示したりするケースも出始めた。
 日本株式会社は、自社の最も優秀な社員に訴えられることを恐れ始めた。

 最初は、何気ない感じで始まった。
 本紙(フィナンシャル・タイムズ)の取材にカリフォルニア州サンタバーバラから電話で応じた中村教授は、1997年にノースカロライナ州で会った米国の科学者たちからストックオプションなるものを初めて教えてもらったときのことを話してくれた。
 説明を聞いて、教授は自分の母国に嫌悪感を抱いたという。
 青色LEDの製造工程を完成させたことに対して勤務先の日亜化学工業からもらった約200ドルのボーナスが、お話にならない金額に思えたのだ。

 中村教授は言う。
 「発明した後、その話をしに米国の学会に通い続けた。
 すると米国人は必ず『キミはすごい金持ちに違いないね』と言った。
 そこで自分の給料は10万ドルだと明かすと、彼らはとにかく笑うばかり。
 おまけに、もし米国にいたら1億ドルはもらえるだろうにと言う。
 私は研究所の仕事が好きだし、会社にも忠誠を尽くしたいと思っていたけれども、報酬ももらいたかった」

◆文化の衝突

 中村教授はこの状況と戦った。
 彼は日本中の企業で搾取が行われていると考えた。
 当時の日本企業は、社内の研究部門で生み出された発明や発見に対する商業的な権利はすべて自社の所有物だと見なすのが普通だった。
 発明者に権利の一部を所有させたりロイヤルティー(特許権使用料)を払ったりすることは、ごくまれにしか行われていなかった。

 中村教授の説明によれば、教授は結局、1999年に日亜化学を退社して米国に向かった。
 まずカリフォルニア州の大学で職を得て、後にSoraa(ソラー)という会社を立ち上げた。
 同社は現在、紫色の光を出す次世代のLED技術を推進している。
 光の品質は今後劇的に改善し、LED技術は極めて効率的な水質浄化システムにも利用されると教授は述べている。
 汚染された水をどんな場所ででも浄化できる可能性があるという。

ここで重要なのは、中村教授が日亜化学を辞めるときに機密保持契約の締結を拒んだことだ。
 日亜化学は2000年、訴訟を避ける日本企業の伝統と決別し、白衣をまとったかつてのスーパースター社員を訴えた。
 「日本では、訴訟というのはとっても悪い印象しかない」
と教授は言う。
 「私はやりたくなかったが、会社側が訴えてきた。
 あんまり腹が立ったから、反訴した」

 その後、壮大な文化の衝突が続き、日亜化学が日本の財界の後押しを得て、身勝手な欧米の強欲の潜在的な潮流と見なすものから、忠誠と自己犠牲の古い流儀を守ろうとして戦った。
 戦いの中心にあったのは、日本の特許法にある「合理性」という1つの言葉だった。
 特許権を会社に承継させることで「相当」な対価を発明家に保証する用語だ。

 日亜と経団連にとって恐ろしいことに、中村教授が勝訴し、約2億ドルの支払いを勝ち取った。
 この結果は日本中に変化を強い、パニック状態の企業が規則を修正し、発明を可能にした科学者に「相当」な利益の分け前を与えるようにした。
 中村教授の対価はその後、上訴で800万ドルに引き下げられ、経団連は引き続き、知的財産権法にもっと企業寄りの修正を加えることを求め、安倍晋三首相率いる政府にロビー活動を行っている。

 大方の人は中村教授の訴訟が永続的な影響をもたらすと考えているが、教授自身はまだ日本企業を痛烈に批判する。
 日本の研究部門は若くて向上心のある科学者が向かう先として良い場所かどうか聞かれると、こう答える。
 「ノー、ノー、ノー。
 まだ過度な洗脳がある」

 彼によると、問題は、報酬制度の変更が日本の慢性的な問題を変えなかったことだ。つまり、製品についてグローバルに考えられないこと、そして、それに応じて発明家と発明の価値を軽視する傾向だ。
英語力のなさも大きな問題

 中村教授は日本企業における英語力不足を指摘する。
 世界がLiFiと青色LEDの次の、もしかしたら最も重要な役割に関する世界標準の制定に着手する中、半導体、テレビ、携帯電話についてグローバルに考えられなかった過去の失敗が間もなく繰り返されようとしているという。

 「日本企業の経営者はそこに座って、自分たちは最高の製品を作れると言うが、我々は標準化の交渉に参加できない。
 そうした議論にはネイティブの英語が必要で、友人を作らないといけない。
 それが標準化の最も基本的な部分だ」
と中村氏は言う。
 「そのせいで、彼らはLiFiとLED照明市場を失うだろう」

By Leo Lewis
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ロイター  2016年 01月 6日 09:10 JST
http://jp.reuters.com/article/toyota-tri-idJPKBN0UK00920160106

トヨタの米新会社TRI、
人工知能開発へ技術チーム結成

[5日 ロイター] -
  トヨタ自動車が米カリフォルニア州シリコンバレーに設立した新会社トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)は、人工知能やロボット技術の研究開発に向け、科学者や技術者で構成するチームを結成したことを明らかにした。

  トヨタは昨年11月、自動運転車など人工知能技術の開発を手掛けるTRIを今月設立すると発表していた。5年間で約10億ドルを投資する計画。

 TRIは諮問委員会の委員長にジョン・ルース前駐日米国大使を起用。
 副委員長には自動掃除機「ルンバ」で知られる米アイロボット(IRBT.O)創設者で、マサチューセッツ工科大(MIT)コンピュータ科学・人工知能研究所の所長も務めていたロドニー・ブルックス氏を指名した。

 最高執行責任者(COO)には、米国防総省国防高等研究計画局の元プログラムマネジャー、エリック・クロトコフ氏が就く。

 TRIは数年かけて段階的に社員数を増やし、200人規模にする予定。


ダイヤモンドオンライン 2016年1月20日 桃田健史 [ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/84654

トヨタの「人工知能ドリームチーム」を阻む4つのハードル


●プラットCEO以下、TRIの首脳陣が壇上に並んだ Photo by Kenji Momota

◆トヨタがシリコンバレーで人工知能研究の“ドリームチーム”を結成

 2016年1月5日、米ネバダ州ラスベガス。
 世界最大級のIT・家電見本市CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)の開催を直前に控え、マンダレーベイホテルで報道陣向けの記者会見が続いた。
 フォード、LG、サムスン、パナソニックなどのビッグネームのなかで、メディアの注目が大きかったのがトヨタだ。
 なぜなら、シリコンバレーで開設されるTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)の詳細が明らかになったからだ。

 TRIについては、2015年11月9日の東京での記者会見で豊田章男社長が、
 「AI(人工知能)の研究に、5年間で10億ドル(約1200億円)を投じる」
と発表。
 世界各国から“自動車産業界の転換の前兆だ”と大きな話題となっていた。
 今回の会見では、オートモーティブ・オペレーションの筆頭副社長、ボブ・カーター氏がプレゼンを幕開けし、詳細の説明をTRI初代CEOのギル・プラット博士に任せた。
 筆者は、プラット博士が前職のDARPA(国防総省・高等研究計画局)のロボティクス・チャレンジのプログラムマネージャーの時にインタビューをおこなっている。
 トヨタ関係者によると、トヨタがプラット博士に最初にコンタクトしたのは2015年3月。
 つまり、このインタビュー時点で、TRIへの転職がほぼ確定していたはずだ。

 さて、今回の会見で公開されたTRIの詳細は、次の通りだ。

施設は2ヵ所で、
 一つはカリフォルニア州パロアルト市内、スタンフォード大学まで“自転車で10分程度の距離”の場所にある「スタンフォード・リサーチパーク」内。
 もう一ヵ所はマサチューセッツ州ケンブリッジ市で、MIT(マサチューセッツ工科大学)まで“自転車で10分程度の距離”の「ケンドル・スクエア」だ。

 また、TRIの使命として、
 (1):交通事故の抑制、
 (2):高齢や身体の不自由によって運転できない人々に対する移動手段の提供、
 (3):ロボットなどの屋内モビリティにトヨタの技術を活用、
 (4):材料科学の研究、
以上4点を挙げた。

 こうしたタスクに対して、各分野の研究をリードし、さらに助言を行うTRIの首脳陣6人が紹介された。
 機械学習やクラウドコンピューティングの専門家で、このうちふたりはMITの教授および准教授の“パートタイム”だ。
 またトヨタからは、材料研究担当およびTRIとトヨタ本社との“リエゾン(橋渡し役)”として、日本人が1名加わる。 
 
 このなかで、メディアの注目度がもっとも高かったのは、クラウドコンピューティング部門を統括する、ジェームス・カフナー氏だ。
 彼は、元グーグルの自動運転プログラムの中心人物である。
 会見後、カフナー氏は筆者の取材に対して
 「TRIの職責を得て、今日でまだ2日目だ。
 ギル(プラット博士)から直接電話があり、TRIに誘われた」
と明らかにした。
 グーグルからTRIへの転職の理由については、
 「AIのドリームチームに参加したかったからだ」
と語った。

 さらに
 「私としても、トヨタを以前から信頼していた。
 なぜなら、グーグルでの自動運転では、(プリウスやレクサスRX450hなどの)トヨタ車を使ってきたが、車両の制御における性能の高さを実感してきた。
 そうした技術があったからこそ、グーグルとして自動運転の研究に集中できた」
と、少々トヨタへのリップサービスに聞こえるような回答をした。

 なお、同氏は自らの経歴について、
 「スタンフォード大学で制御に関するPhD(博士課程)を取得後、
 CMU(カーネギーメロン大学)に8年間、
 東京大学に2年間、
 そしてグーグルで自動運転の制御およびデータ解析の責任者として6年半従事した」
と説明した。

◆TRIの将来に対して思うこと

 2015年11月に、TRIの存在が公になってから、日本の経済メディアでは「トヨタは先見の明あり」と、トヨタを称賛する報道が目立つ。

 これに対して、筆者としてはTRIについて冷静に、その有り様を“等身大”で考えてみたい。

(1):5年で10億ドルという予算は少ない

 10億ドル(約1200億円)を、巨大な予算と見るメディアが多いが、筆者はそうは思わない。
 TRIは量産モデル、またはプロトタイプの研究開発施設というよりは頭脳集団だ。
 実物を使った研究は、ミシガン州内のトヨタの技術研究所と連携しておこなうという。
 つまり、TRIの予算の多くは、総勢200人規模の優秀な研究者のギャラだ。
 あくまでも筆者の推測だが、プラットCEOをはじめとして、豊田章男氏のトヨタ社長としての年収1億数千万円を超える年俸の“高額研究者”がゴロゴロいるはずだ。

 とはいえ、アップル、グーグル、アマゾンなどの次世代研究領域の予算は、TRIより最少でも一ケタは多いはずだ。
 実のところ、TRIの発表の2日後、筆者が日本の大手企業関係者らと意見交換をした際、同社の北米事業の代表者が、
 「アメリカの大手IT企業の視点ならば、年間200億円程度の金額は、AI事業への投資額として、決して高くない」
と指摘した。

(2):トヨタが現状で未解決の領域で、うまく意識統一ができるか?

 プレゼンテーションのなかで、トヨタがすでに開発している介護ロボットや燃料電池車が紹介された。
 まず、屋内ロボットについては、トヨタはこれまで量産化・商業化について“さらに一歩が踏み出せない状況”が続いてきたように思える。
 この領域について、TRIドリームチームと“同じ言葉”でコミュニケーションすることは、極めて難しいのではないか。
 ドリームチームに参画するのは、教育機関での研究、政府機関での各種活動、そして世界トップクラスのIT民間企業の3領域を渡り歩いてきた、研究と実務とのバランス感に極めて優れた人たちだからだ。

 そして、燃料電池車を事例とする革新的な材料開発については、正直なところTRIが掲げるそのほかの3つのタスクに対する“後付け感”がある。
 もちろん、材料科学の分野でディープラーニングなどのAI研究が、有効に活用される可能性は否定できない。
 ただ、トヨタとして“虎の子”である燃料電池車を、TRIに絡めてアピールしたいという思惑が感じられるのだ。

(3):オープンソース、コンソーシアムはあくまでも理想像か?

 プラットCEOは、TRIの研究成果をオープンソース化して、自動車やIT業界の垣根を越えたコンソーシアムを形成することが理想的だと語った。
 いわゆる「競争領域と協調領域」を分けて考えることで、人類全体にとって有益になるという考えだ。
 だが近年、自動車分野では車載OSで、
1].グーグル(アルファベット)のアンドロイドと、
2].トヨタが主導するリナックスを活用したAGL(オートモーティブ・グレード・リナックス)が、
競争領域と協調領域の間で火花を散らしている、という現実がある。
 さらにそれを遠目でアップルが見ているという構図だ。

 AIについても、グーグルが技術の一部をオープンソース化すると発表しており、TRIの今後の動向が気になるところだ。

(4):他社を辞めてきたということは、また引き抜かれるということでは?

 前出のカフラー氏のように、TRIにはIT大手や、他の自動車メーカーから転職する人たちが多いはずだ。
 彼らがTRIに来る大きな理由には、カフラー氏が語ったように「ドリームチームで研究したい」ということに加えて、「トヨタウェイ(トヨタの経営・開発・製造戦略)を学びたい」という点があると思う。

 こうした研究者にとって“宝の山”であるTRI従事者は当然、ヘッドハンティングの標的になる。
 超優秀な人材が短期間にトヨタウェイを学ぶことは、結果的にトヨタにとって、外部に頭脳が流出するリスクとなる。

 以上のような不安があることを百も承知で、TRIはスタートしたのだと思う。

 リスクなきところに、未来はない。

 つまり、
 トヨタがここまで大きなリスクを背負わなければならないほど、
 自動車産業界が直面している時代変革が巨大だ、ということだ
と思う。



サーチナニュース 2016-01-24 08:42
http://biz.searchina.net/id/1600583?page=1

日本との差は「想像を超えるほどに巨大」、
中国人から見た日本

 世界第2位の経済大国となった中国。
 経済成長にともない、中国人の生活水準も大きく向上したが、それでも中国人から見れば日本との差は「想像を超えるほどに巨大」であるようだ。

 中国メディアの捜狐はこのほど、日本人の一般的な生活水準や日本社会の各種水準について紹介し、
 中国国内では、中国経済の成長に対して「天狗になっている」
かのような論調も見られるが、
 日中には想像もできないほど大きな差がある
と論じた。

 まず記事は、日本には世界に名だたる大企業が数多く存在し、その多くは中国人でも見聞きしたことのある社名であることを指摘。
 さらにこうした日本企業は世界の各産業をリードするような先進技術を持つことを指摘する一方で、こうした先進技術の分野では日本の競合相手は主に欧米の企業であり、中国企業は「相手にもならないのが現実」であるとした。

 さらに、「中国のぼっ興は事実」であるとしながらも、「正確に言えば、部分的な事実にとどまると主張。
 さまざまな指標から日本と中国の差は依然として大きく、中国が日本に本当の意味で追いつくには極めて困難が伴うはずであると論じた。
 また、日本と中国の人口規模や国土の広さなどを比較したうえで、日本の10倍の人口を抱える中国が国内総生産(GDP)で日本を抜くのは当然であると指摘。
 だが、1人あたりGDPなどを比較してみれば、日本との差は歴然であると論じた。

 また記事は、中国経済が急速に成長したことは事実だが、
 日本は戦後の焼け野原からわずか四半世紀で「軽々と」、世界の先進国へと成長したとし、
 日本の国外における資産規模や産業の効率性などにおいても中国を遥かに上回っていると指摘。
 中国国内では、中国経済の成長に対して「天狗になっている」かのような論調も見られるが、実際には日本と中国の間には想像もできないほど大きな差があると論じた。




【激甚化する時代の風貌】



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