2016年1月18日月曜日

家電からの撤退は先進国企業の鉄則:それを高く買ってくれるならそれこしたことはない

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 先進国のメーカーは白物家電からの撤退を常態化している。
 白モノ技術はほぼ完成されたものであり、
 今後は中進国あるいは発展途上国に移転され、
 それらの国の経済発展のエンジンに供される。
 それがこの技術のもつグローバル的意義である。
 先進国にとってその技術が高く売れればそれにこしたことはない。
 その収入で別のより高度な先進技術の開発に力を注いでいくというのが、先進国にあり方になる。
 日本から韓国に移った白モノ家電技術は今、中国に移ろうとしている。
 そしてその後10年もすればベトナムやインドがそれを引き継ぐことになるだろう。
 完成技術はどんどん世界に広がっていく。
 白モノに執着し稼ごうとする企業はハイテクノロジーからはどんどん遅れていく。


サーチナニュース 2016-01-18 14:47
http://news.searchina.net/id/1600011?page=1

ハイアールがGE家電部門を買収
・・・中国の家電企業はなぜ世界を買いに走るのか

 中国メディア・北京青年報は16日、中国の家電企業が国外メーカーの買収を積極的に進めている状況について紹介する記事を掲載した。

 記事は、ハイアール(海爾)が14日に米大手電機メーカーのゼネラル・エレクトリック(GM)の家電部門を54億米ドル(約6320億円)で買収する合意書にサインしたと紹介。
 サムスンやLGといった韓国のライバルを抑えての「勝利」であったことを伝えた。

 また、ハイアール以外にも創維(スカイワークス)がドイツの家電メーカー・メッツのテレビ事業を買収、海信(ハイセンス)がシャープの北米テレビ事業を買収するなど、中国家電メーカーが国外メーカーの事業買収を進めていることを紹介した。
 そして、ある中国家電メーカーの経営者が
 「中国家電市場のニーズが減少していることで、より多くの企業が国外に活路を求め始めた」
と語ったとした。

 一方、ある業界関係者が
 「近年多くの中国企業が国外ブランドを買収しているが、買収したブランドを使い続けており、自らのオリジナルブランドを広めようとしない」
と指摘、
 買収することが目的ではなく、買収をステップとして自らのブランドを国際市場に広めることが必要だと提言したことを併せて紹介した。

 中国家電メーカーによる国外ブランドの買収熱からは、中国企業が持つ勢いの強さが伺える。
 しかし、単に勢いに乗って買収を進めるようであれば、買収のメリットを十分に生かせないまま終わってしまう可能性もある。
 買収した先に確固たるビジョンを持っているかどうかが、成否を決める大きな要素と言えそうだ。
 今後も中国企業による国際的なM&Aの流れは続くものとみられる。
 記事に示された提言が中国企業のなかで浸透するに連れて、世界のさまざまなシーンにおいて今以上に中国ブランドの名を目や耳にすることになるかもしれない。



中央日報日本語版 1月18日(月)13時11分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160118-00000028-cnippou-kr

GE家電までのみ込んだ「チャイナマネー」
…韓国企業も次々と対象に

 中国最大の家電企業ハイアールが米国を代表するゼネラル・エレクトリック(GE)の家電事業部門を買収する。
 買収規模が54億ドル(約6兆5000億ウォン)にのぼる大型M&A(企業の合併・買収)だ。
 GE家電部門はサムスン電子もかつて買収を検討した世界的なブランドだ。
 ハイアールは今回のM&Aで中低価格製品からプレミアム製品までも網羅するポートフォリオを構築し、世界市場でサムスン電子、LG電子に対抗する強力なライバルに浮上した。

 中国企業のM&Aの動きはさらに強まっている。
 米企業だけでもIBMのPC部門が2004年に中国レノボに売却されたのをはじめ、2013年以降、世界最大豚肉企業のスミスフィールド、スマートフォン企業のモトローラ、メモリー半導体企業のサンディスク、映画『インターステラー』『ダークナイト』製作企業レジェンダリー・エンターテインメントなどが中国に渡った。
 買収規模は通常、数十億ドルから数百億ドルにのぼるほど中国はM&Aに積極的だ。
 もちろん韓国企業も例外でない。
 双龍自動車(2005年)、アガバンカンパニー(2014年)に続き、中国が経営権を取得または取得予定のコスダック上場企業は昨年まで10余社にのぼる。中国企業が5%以上の株式を保有する上場・非上場企業は32社(2014年末基準)で、うち47%が経営参加を目的とした投資という分析もある。
 金融でも中国資本はすでに東洋生命を買収し、ウリィ銀行にも目を向けている。
 「チャイナマネーの恐怖」という言葉が出てくるほどだ。

 中国は株価暴落、人民元切り下げなどで深刻な危機状況を迎えている。
 しかし一部の代表企業の成長は旭日昇天の勢いだ。
 電子商取引企業のアリババ、低価格スマートフォン企業のシャオミとファーウェイ、世界商業用ドローン市場で圧倒的1位のDJIなどがそのような企業にあたる。
 10億ドル以上の巨富が米国よりも多い中国だ。
 新産業どころか従来の投資も増やせない韓国とは対照的な姿を見せている。
 構造改革さえも「大企業は…」という差別的規制を受けるほどだ。
 中国のM&Aは韓国で全方向に向かっている。
 韓国はこのままチャイナマネーに支配されるのだろうか。

※本記事の原文著作権は「韓国経済新聞社」にあり、中央日報日本語版で翻訳しサービスします。



レコードチャイナ 配信日時:2016年1月18日(月) 5時30分
http://www.recordchina.co.jp/a127191.html

世界経済低迷で変化、
中国企業の買収歓迎する海外企業も―英誌

 2016年1月16日、環球時報によると、英誌エコノミストは
 「世界経済の低迷で、各国企業に中国企業による買収を歓迎する動きが出始めている」
と報じた。

 米調査会社ロジウム・グループの調べによると、
★.15年の中国企業の海外での買収額は610億ドル(約7兆1400億円
に上り、前年比16%増加した。
 買収した業種は、石油や銅など自然資源だけでなく、多岐にわたるという。

 今月12日には大連の万達集団が、ハリウッドの映画製作会社レジェンダリー・エンターテインメントを35億ドル(約4100億円)で買収し、また中国のあるネットゲーム会社は、9300万ドル(約108億円)で米国の同性愛SNS「Grindr」の株式を取得。
 化学メーカーの中国化工(ケムチャイナ)が、独重機械メーカーのクラウス=マッファイを10億ドル(約1170億円)で買収したことも注目されている。

 中国企業が海外企業の買収に力を注いでいる背景には、政府の進める反腐敗キャンペーンの存在もある。
 疑惑を向けられる前に、資金を海外に移す必要に迫られているが、
 資金を持ち出すよりも買収するほうが容易で、「地味」に済む
ためだという。

 従来と異なるのは、そうした中国企業の買収を歓迎する動きが各国企業の間に生じていることだ。
 上海の国際ビジネススクール、中欧国際工商学院(CEIBS)の専門家は、
 「(中国企業による買収は)以前なら強い反発を招いた。
 だが最近の中国企業は、海外進出で得た経験から、買収した企業に対してあまり口を挟まなくなっている」
と話している。


 「白モノ家電からの撤退は先進国企業の鉄則」と書いたら、それ以上にシビアな書き方をしているコラムがあった。
 いうなれば「白モノ家電は先進国企業のお荷物」ということらしい。


レコードチャイナ 配信日時:2016年1月20日(水) 6時40分
http://www.recordchina.co.jp/a125714.html

中国企業が独大手企業を買収、
戦略資源を買いあさる中国にEUが懸念―露メディア

 2016年1月18日、参考消息網によると、対中経済開放を望まない欧州連合(EU)は中国による戦略資源買収を懸念している。

 中国化工集団(ケムチャイナ)は11日、独プラスチック加工機械大手クラウス・マッファイの買収を発表した。
 買収額は10億ユーロ(約1280億円)で、中国企業による独企業買収額としては史上最多。ケムチャイナは2015年、イタリアのタイヤメーカー「ピレリ」を買収したことでも注目を集めていた。
 ロシアメディアによると、この動きにEUが懸念を示している。

 クラウス・マッファイは1931年に設立された老舗企業。
 もともとは機関車や戦車の製造を手掛けていた。
 車両・兵器部門はすでに売却済みとはいえ、ドイツの国防産業に携わっていた重要企業であることに違いはない。

 懸念が広がる中、EUは中国の市場経済国認定をさらに引き延ばす姿勢を示している。
 これまでに何度も議題に上っていたにもかかわらず、さらに数カ月間情報を収集し、今年後半に結論を出す方針だという。



 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2016年01月21日(Thu)  土方細秩子 (ジャーナリスト)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5924

ハイアールが名門家電を買収
「お荷物」を高く売却したGE


 中国の家電メーカー、ハイアールと米ジェネラル・エレクトリック(GE)が、GEの家電部門を54億ドルでハイアールに売却することで合意した。
 ハイアールはシェアにおいて世界一の家電メーカーだが、米国でのプレゼンスは低い。
 主に一人用の低価格ポータブル洗濯機、小型冷蔵庫などがネット販売されているのみだ。
 今回の買収は、ハイアールの米国でのシェア拡大と「プレミアム」ブランドへの変身を目論んだものとみられる。


●名門GEを買収したハイアール(iStock)

 ハイアールは世界21カ所にインダストリアル・パークを展開する大企業で、2014年の総売上額は326億ドルに上る。
 今回の買収は米国では2016年に入り最大のもので、過去の中国企業による米企業買収を合わせても3番目という大規模なもの。
 また、家電業界では2008年のパナソニックによる三洋電機買収(71億ドル)に次ぐ規模となる。

 一方のGEアプライアンスは100年以上の伝統を持ち従業員1万2000人の家電メーカーではあるが、このところはサムスン、LGなどの韓国系企業に押され気味。
 2014年の総売上額は59億ドルだ。

◆GEは「お荷物」を高く売却

 GEにとってはハイアールへの売却により、巨大な中国市場へのアクセスが可能になる。
 またハイアールは米国内でGEブランドで自社製品を販売することになり、これまでの「安い小型家電」のイメージから総合的な家電メーカーへと成長できる。
 さらにGEの買収にはGEが株式の48.4%を所有するメキシコの家電メーカー、Mabeも含まれており、中南米での市場拡大も期待できる。

 GEのCEOジェフ・インメルト氏は売却発表の声明の中で
 「ハイアールは米国市場での成長にフォーカスを当てており、米国内に生産拠点を建設することに意欲を持っている。
 米産業への投資も視野に入れ、米国にとっては雇用環境上も有利な売却と信ずる」
と述べた。

 GEは「お荷物」だった家電部門を思ったよりも高く売却できた。
 同社は以前から家電部門の切り離しを画策しており、スウェーデンのエレクトロラックス社と33億ドルでの譲渡話が出ていた。これは昨年12月にご破算となったが、その陰でGEはより高い価格での買い手をしっかりと確保していたことになる。

 今後GEはジェットエンジン、医療用機械、クリーンエネルギーなどの重工業部門に注力する。
 またハイアールとは家電売却のみならず、インターネット、ヘルスケア、先進産業用ロボットなどの分野で戦略的パートナーシップを組む。
 つまり、両社はIoTや自動車産業と提携したスマートホームなどを推進していく構えだ。
 GEはすでに本社をマサチューセッツ州ボストンに移転すると発表。
 世界的に有名なMIT、ハーバードなどと研究部門での提携も視野に入れている。

◆米市場でのハイエンド家電販売は未知の分野

 現在自動車と家電をインターネットで結ぶIoTが急速に進んでいる。
 パナソニックとホンダ、サムスンとBMWなど、自動車メーカーと家電メーカーの提携が次々発表されているが、伝統的米国企業であるGEの看板を背負うハイアールは、今後例えばゼネラル・モーターズ(GM)との提携の可能性もある。

 ただし、ハイアールにとって米市場でのハイエンド家電販売は未知の分野だ。
 これまで低価格のダンピング製品を販売してきた同社にとって、ハイクオリティ、デザイン、機能を求められ、なおかつサムスン、LGの価格に対抗しながら利益を上げる製品を開発するのは至難の技、との指摘もある。
 現時点での米国最大の家電メーカーはワールプール社だが、競争によりマージンは著しく減少、ワールプールも経営難が囁かれている。

 一方で、中国家電が米国に「メジャーデビュー」する、という注目度は高い。
 かつて日本の家電業界が米国を驚かせ、現在韓国企業が人気ブランドとなっているように、中国の新興勢力が家電業界でも無視できない存在になったことを意味する。

 売却は今後米公正取引委員会の承認を得る必要がある。
 ハイアールは中国国営企業であり、
 トップのザン・ルイミン氏は共産党中央委員会のメンバーでもある。
 選挙の年でもあり、伝統企業であるGEが中国企業に買収される、ということが候補者討論の議題になる可能性も十分だ。
 しかしザン氏は「ハイアールは米国に投資し、雇用を創出する」と語り、GEも売却承認への自信を見せる。

 「中国のGE」と自らを呼んでいたハイアールが、本国のGEブランドを手にいれる。
 米家電業界は「アジア家電の決戦地」となるかもしれない。
 さらに、中国のエンターテイメント・コングロマリット、ワンダ社がハリウッドのレジェンダリー・エンターテイメント社を35億ドルで買収、という話もあり、今年は中国の『爆買い』が米企業を対象にクローズアップされる。



現代ビジネス 2016年01月24日(日) 西田宗千佳
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47499

「ガラパゴス化」こそ、日本の家電復活のカギ! 
国ごとの売れ筋はこんなにも違う

 米・ラスベガスの年初は、世界最大の家電展示会「CES(Consumer Electronics Show)」で始まる。
 今年も「CES 2016」が開かれ、17万人以上の業界関係者を集める盛況ぶりだった。
 これは昨年とほぼ同じ水準で、2010年以降右肩上がりである。

 「なるほど、家電業界は景気が戻ってきたのだろう……」
と思う方もいそうだ。
 だが、実際には逆である。
 我々がふつうに考える「家電」ビジネスは、今年のCESでは苦戦していた。
 「次の世代を担う家電」がどれなのか、
フォーカスが絞れないイベントになっていたのだ。

■IoTに期待するも、ニーズと合致せず!?

 過去10年のCESで主軸となっていたのは、テレビビジネスだった。
 それは、テレビにとって2000年代前半からの10年間が、「デジタル化」と「フラットパネル化」の二大テーマが同時進行する、大きな変化の時期と重なっていたことに起因している。
 製品としての機能が大幅に変化したうえに品質もどんどん上がり、一方では価格が下がっていったために、需要も旺盛だった。

 テレビは単価の高い家電であるだけでなく、周辺ビジネスの広がりが大きな製品でもある。
 解像度がHDになれば、それに対応したBlu-ray Discプレイヤーが必要になるし、映像ソフトの売り上げも伸びる。
 ビデオカメラの解像度が向上することで、コンテンツ制作システムの入れ替え需要も発生する。
 そして、言うまでもなく、テレビは一家に一台、ほぼ必須の家電製品である。
 そのビジネス規模はきわめて大きく、家電業界にとどまらないさまざまな企業が、製品・技術開発を進めるのも当然だ。

 だが、いまの家電市場では、テレビはそこまで大きなトレンドをつくれていない。
 誤解してほしくないのだが、テレビメーカーが現在、開発している技術に意味がないわけではまったくない。
 4Kテレビの画質はおどろくほど美しく、さらに今年から導入が本格化する「HDR」技術を使えば、色と光の濃淡をより写実的に再現できるようになる。
 そして、4Kコンテンツも2016年から本格的に供給されるようになり、それを楽しむのは掛け値なしにすばらしい体験である。

 4K+HDR対応で高画質のテレビには、「UHD Premium」のロゴが。
 映画などでも4K+HDRの高画質コンテンツの開発が進んでいる。
 だが、現状で4K+HDRが目指しているのは、
 「画質にお金をかけてもいい人」に向けて“プレミアムな体験”を提供する、
というものだ。
 画質(デジタル化)とデザイン(フラットパネル化)という、2つの強烈な変化が同時に起きた時代とは違う。
 すべての家庭に浸透するには、かなりの時間が必要だ。

 テレビが難しいのであれば、次なる対象はスマートフォン……と言いたいところだが、スマートフォンは通信系のイベントで新技術が発表されると相場が決まっているから、CESという場はなかなか使えない。

 そこで、「家電のインターネット端末化」という側面から、いわゆる「IoT」(インターネット・オブ・シングス。
 モノのインターネット化)が注目されていた。
 特に、韓国系メーカーはそうした側面に熱心だった。
 たとえばサムスンは、テレビに大型のタッチパネル付き液晶ディスプレイを取りつけた冷蔵庫を出展、自社ブースでも広い面積を割いて、アピールに余念がなかった。
 サムスンが開発し、アメリカ市場で販売を予定している新型冷蔵庫。
 大型液晶を搭載し、「IoT」的な機能を備え、キッチンのコントロールセンターを標榜している。
 このディスプレイには、中に入れた食材の賞味期限を確認する機能や、家族との伝言を共有する機能が備わっており、テレビを見ることもできる。
 家庭の中心にある機器のディスプレイとして活用しよう、という発想だ。

 だが、この新製品に対する会場の反応は鈍かった。
 サムスンのブースはCESにおいて人気が高く、つねに人だかりが絶えない印象が強いのだが、件(くだん)の冷蔵庫の前で足を止めてじっくり説明に聞き入る人の姿は、筆者が見るかぎり、きわめてまばらだった。

■真にグローバル化した家電はごく少数

 それも当然だと思う。
 アメリカ人が冷蔵庫に求めるニーズはシンプルで、
 「大量の食材を入れておいて、確実に冷える」ことに集約できる。
 他に必要なのは、飲み物のための製氷機能くらいだろう。
 アメリカの家電量販店で売れ筋の冷蔵庫を見ても、日本の製品に比べて「デカい」「でもシンプル」であることが目につく。
 数多くの機能がついて複雑になることを求める人の割合がぐっと少ないことが見て取れる。

 これに限らず、他国の量販店に並ぶ家電は、日本のものとは大きく異なっている。
 冷蔵庫のサイズがアメリカと日本とでまったく違うのは当然のこととして、たとえば
★.除機は、日本であれば長いホースに本体がくっついた「キャニスター型」がほとんどだが、欧米では本体が一体になったスティック型が多い。
★.洗濯機は、日本でおなじみの縦型・洗濯槽式はまず見かけることがなく、洗濯・乾燥が一体化した全自動のドラム式が主流だ。
 しかも、サイズがかなり大きい。

 そもそも、日本では「洗濯物には天日干し」が求められるものの、欧米ではそのニーズはかなり少ない。
 それどころか、一部地域(たとえばサンフランシスコ市内など)では、天日干しが禁止されているほどだ。

 日常的に、当たり前に接している家電だが、実は、そのスタイルは国によって大きく異なる。
 日本と韓国でも異なるし、日本とアメリカでも、アメリカとヨーロッパでも異なる。
 生活に密着した機器であるだけに、「どんなものが受け入れられるか」の基準が異なるのだ。

 家電の話題について回る言葉に「ガラパゴス化」がある。
 そのニュアンスはつねに否定的で、その対立概念としての「グローバル化」が持ち上げられるのが常だ。
 曰く、
 「日本の家電はガラパゴスだ」
 「全世界で同じものをつくって売らないといけない」。

 しかし、家電においてグローバル化が意味をもつのは、スマートフォンやAV家電に限られる。
 それらの機器は、家電全体としては珍しく、
 「世界的に似たようなニーズに基づいて開発されている機器」
ということもできる。
 それでも、たとえばテレビであれば各国それぞれに放送規格が異なることに対応しているなど、実際の中身は少しずつ違う。

 サイズにしてもそうだ。
 アメリカでは、もはや55型が「普及サイズ」であり、60型以上の製品がどんどん売れていく。
 日本でも大型化は進んでいるが、普及サイズは40〜50型にとどまっている。
 60型を越えると「特大」の印象が強く、やはり特別なサイズという位置づけだ。
 そもそも、アメリカでは55型・60型クラスの製品ですら、配送ではなく、家電量販店から箱詰めのまま車に乗せて消費者自ら持ち帰るのが基本だ。
 60型のテレビを「抱えた」ままレジ前に並び、清算する姿をよく見かける。
 だから、テレビを梱包する箱も、アメリカと日本とでは大きく異なっているのだ。

 家電とは、我々の生活に密着した道具である。
 国によって文化や生活スタイルが異なるのは当たり前で、それに合わせた商品企画が行われるのが理想的な製品なのだ。
 特に、さまざまな家電の普及が進んだ先進国では、特徴のない製品だと値段くらいしか差別化点が存在しない。
 「これはどんな人に向けた家電なのか」
をきちんとアピールできなければ、市場で支持を得ることは不可能だ。

 アメリカ人は比較的ヘビーデューティで効率が良いものを求める傾向が強く、省エネなどにはさほど興味がない。
 わかりやすく、長く使えて、シンプルな製品への需要が高いのだ。

 ヨーロッパの場合には、「その製品が生活をどう良くしてくれるのか」をわかりやすく示してくれるものを好む。
 たとえば調理家電なら、「どんなおいしい料理ができるか」を明確に指し示す必要がある。

 そのため、アメリカのショーではなかなか見ない光景として、ヨーロッパではブースをキッチンに見立てて「その家電を使ってつくった料理を実際にふるまう」パターンが多い。
 そうでないと、魅力が伝わらないのだ。
 加えて、デザインに対する要求が強いのも、アメリカとは異なる特徴だ。

 日本の場合にももちろん、国内市場に合わせた事情がある。
 きちんと付加価値を作り込めば、高い製品でも売れるのがこの国の特徴だ。
 その最たる例が炊飯器。
 「故障するまで買い換えない」ものが多い家電の中では例外的に、実に4台に3台が、寿命が来る前に買い換えられている。
 しかも、近年では低価格機種の売り上げが落ち、高級機種に人気が集中している。
 それだけ、「毎日美味しいご飯を食べたい」という欲求が強く、そこに価値を見出す消費者が多く存在するからだ。

 今後、IoT機器が普及していくプロセスにおいても、白物家電と同じように「その市場でのニーズに合わせた価値の追求」が重要になるだろう。
 アメリカのショーであるCESでは、監視カメラ機能をもつIoT機器が多く展示されていた。
 ホームセキュリティに対する、アメリカ市場の強いニーズを反映したものだ。

 これからの家電製品は、「単一機種で世界を征す」のがますます難しくなっていくに違いない。
 各国のニーズを正確にくみ取り、コストと市場価値が見合うかたちで「各マーケットに合致した製品」を提示していくことが重要だ。
 そのために創意工夫を凝らしていくことこそ、家電メーカーの知恵と技術の見せどころである。


●これぞローカルフィット! 要求水準の高い日本市場で生まれた「すごい技術」と「すごい発想」が満載

西田 宗千佳(にしだ むねちか)
1971年福井県生まれ。ネットワーク、IT、先端技術分野を中心に活躍するフリージャーナリスト。著書に『漂流するソニーのDNA』、『ネットフリックスの時代』、『暗号が通貨(カネ)になる「ビットコイン」のからくり 』、『スマートテレビ』、『iPad VS. キンドル』、『クラウド・コンピューティング』などがある。小寺信良氏 との共同発刊メルマガ「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を毎週金曜日に発行中。



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