●総統選で当選した民進党の蔡英文主席(左)と副総統候補の中央研究院の陳建仁・前副院長
サーチナニュース 2016-01-16 20:25
http://news.searchina.net/id/1599911?page=1
台湾総統選で民進党の「ダブルスコア勝利」が確定、
得票率6割近くで国民党を圧倒
台湾で16日に実施された総統選で、民進党の蔡英文・陳建仁の総統・副総統候補ペアの勝利が確定的になった。
日本時間同日午後8時時点で、国民党の朱立倫・王如玄候補者ペアに「ダブルスコア」に近い差をつけている。
台湾総統選挙は、選挙民が総統の立候補者ペアを選択する方式だ。
中華民国(台湾)中央選挙委員会によると、開票率が5割を超えた日本時間16日午後8時時点で、民進党の蔡・陳候補ペアは58.2%の得票率。
対する国民党の朱・王ペアの29.4%のほぼ2倍の得票を得た。
今後、国民党支持者が比較的多く、大票田でもある台北市や新北市の開票が進むが、台北市でも同時点で民進党ペアへの得票率が52.3%、国民党は37.0%だ。
新北市では民進党ペアが56.5%、国民党ペアが31.8%であり、国民党はいずれも民進党に大きく引き離されている。
朱候補は国民党への大逆風が吹いた2014年12月の台湾統一地方選でも、新北市長に当選したが、総統選では新北市の有権者の支持も低調だった。
今回の総統選で最大の争点になったのは、中国との関係のあり方だった。
民進党主席(党首)でもある蔡候補は、「現状維持」を主張。
中国と敢えて対立することはしないが、急接近もしないと主張した。
国民党主席の朱候補は、大陸との良好な関係構築を訴えた。
朱候補にとって、最大の「ハンデ」は現職で国民党所属の馬英九総統が、強引な対中接近で大きな批判を浴びたことだった。
2014年には馬政権が進めた大陸とのサービス貿易協定に反対する学生が、立法院(国会)を長期にわたって占拠する「異常事態」も発生した。
馬政権には、政策そのものだけでなく民主制度の運用についても大きな批判が浴びせられた。
中国との協定については「外国との条約でない」との台湾特有の「建前」があり、国会における「批准の採択」は必要なかった。
国会の「反対が成立しなければ」、総統には協定を成立させる権限がある。
馬政権は国会で十分に審議すると約束していたが、一方的に
「協定への反対は成立しなかった。審議終了」
と宣言したことで、国民の猛反発が発生した。
朱候補は
「馬総統や国民党に怒ってもよい。
しかし感情にまかせて投票してよいのか」
などと訴えた。
支持者を増やしつつあるとのの世論調査もあったが、結局は挽回できなかった。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2016年1月16日(土) 20時1分
http://www.recordchina.co.jp/a127079.html
台湾、独立志向の民進党が総統選勝利
=中台関係への影響が濃厚の中、中国人は何を語るか?
2016年1月16日、台湾で4年に一度の総統選が投開票され、民進党の蔡英文(ツァイ・インウェン)主席が当選し、8年ぶりの政権交代、初の女性総統が誕生した。
民進党は台湾の独立を掲げており、政権交代が中台関係に影響するとの見方が強く、中国民間レベルでも今後の中台関係に注目する人が少なくない。
台湾の政権交代に関して中国知識層の男性は、
「中台関係の悪化は蔡英文氏にとって不利益なため、彼女の対中政策に注目が集まるだろう。
台湾はかつて『アジア四小龍』と呼ばれるほど大きな経済発展を遂げたが、今では停滞している。
何より経済成長を優先すべきで、民主化のように台湾経済が大きく発展し、中国の鏡となる存在に成長することを期待している」
と自身の見解を語った。
』
『
ウオールストリートジャーナル 2016 年 1 月 17 日 07:49 JST
By JEREMY PAGE, JENNY W. HSU And EVA DOU
http://jp.wsj.com/articles/SB10152201462225363779004581482844205685396
台湾総統選 民進党の蔡氏が勝利
【台北】16日投開票の台湾総統選挙で野党・民進党の蔡英文候補が勝利、初の女性総統が誕生した。
台湾の独立を支持する民進党が政権を握ることによって、「一つの中国」の実現を目指す中国政府は後退を余儀なくされる。
民進党政権の誕生で中台関係が緊張すれば、中国と米国の関係にとって新たな火種となる可能性がある。
蔡氏は59歳。政界に入る前は法学部で教べんを執っていた。
同氏は勝利が確実になると、政党の連携を訴え、対中政策については現状維持を約束した。
さらに
「わが国の民主政治体制、国民性、国際的地位は全面的に尊重されなければならない」
として中国に対する台湾人の誇りであり、中国の一党支配と対照をなす民主主義の堅持をうたった。
中央選挙管理委員会によると蔡氏は690万票(56%)を獲得した。
国民党候補の朱立倫主席は381万票(31%)だった。
蔡氏の当選を受け、中国政府は直ちに声明を発表、慎重に
「海峡の両岸が一つの中国に属することを認める限り、いかなる政党・グループとも交流を深め、関係の強化を進める」
と述べた。
』
サーチナニュース 2016-01-18 10:01
http://news.searchina.net/id/1599950?page=1
国民党の惨敗は「自滅」、大陸との関係は
・・・大陸メディア、有識者の見解を紹介
台湾の総統選挙は16日に投開票が行われ、民進党の蔡英文氏が当選を決めた。
中国メディア・新浪は蔡氏勝利が伝えられた同日夜、大陸との接近を掲げていた国民党が敗北した理由などについて専門家の見解を伝える記事を掲載した。
記事は、国民党が破れた原因として中国現代国際関係研究院の郭擁軍氏が
「経済や社会問題の処理における馬英九相当に対する不満が、国民党自体に向いた」、
「民衆とのコミュニケーション不足」
と解説したことを紹介。
アモイ大学両岸関係平和発展協創センターの陳先才氏も
「世界的な不景気における改革不足と、党の内部分裂」
を挙げ、台湾政治大学外交学部の黄奎博・准教授が不動産価格高騰など内政問題で成果を出せなかったことに加え
「党の宣伝方法が古典的で、ソーシャルメディアを有効利用しなかった」
点を示したことを伝えた。
また、「台湾独立」を掲げてきた民進党・蔡氏の総統就任後における台湾と大陸の関係については、郭氏と陳氏が
「5月20日の就任演説で(双方で『1つの中国』を確認したとされる)『九二共識』について明確な態度を示さなければ、関係に悪影響が出る可能性がある」
との見解を示したことを紹介。
そして、黄氏が
「『共識』は受けられないはず。
得票率の高さから、安易な譲歩はしないだろう。
しかし、大陸側を挑発することもなく、あいまいにする手法を使うと思われる」
とし、有権者への説明を行うと同時に大陸との衝突は避け、米国を安心させる方針をとるとの予測を伝えた。
今後の台湾政府が取る姿勢について、大陸側の専門家と台湾の大学の有識者で意見が分かれたことは、それぞれの立場を示しているようで、興味深い。
内政の問題、大陸との関係の問題、どちらを重んじて票を投じたかについては、有権者たちの声を聞いてみないことには分からない。
しかし、
★.関係接近を進めようとした勢力が敗れ、
★.急接近に慎重で、「台湾」としてのアイデンティティを重んじる勢力が大差をもって勝利した
ことは事実だ。
「両岸」の関係は「蔡総統」の誕生によって、また新たなステージに進むこととなる。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2016年1月18日(月) 11時50分
http://www.recordchina.co.jp/a127206.html
台湾総統選で蔡英文氏が勝利、
中台関係悪化の可能性高まる
=専門家「蜜月関係は半年程度しかもたない」―仏メディア
2016年1月16日、仏国際ラジオ放送ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語サイトによると、台湾与党の中台関係に対する姿勢は常に中国が注目すべき点となっているが、民進党の蔡英文(ツァイ・インウェン)主席は総統選に勝利した後、中台関係について現状を維持する意向を示した。
しかし、台湾では多くの専門家が、
中国政府の民進党に対する寛容な態度は一時的なものにすぎず、蜜月関係は短ければ半年程度しかもたない
と見ており、さらに5月20日の総統就任までに「92年コンセンサス」の「一つの中国」に対する認識を説明すべきだとする声も上がっている。
台湾中央研究院の林泉忠(リン・チュエンジョン)副研究員は、中国では両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)開催への対応があり、蔡英文氏も事務的な面で対処しなければならないことから、
半年は互いに容認し合うものの、
その後は中国が厳しい態度をとるようになり、徐々に形式的な交流にとどめるようになる
と予測している。
しかし、林副研究員は、
★.蔡氏が高い支持率で選挙に勝利したことや、
★.「天然独」と呼ばれる独立志向の強い台湾の若者の存在
を中国政府が理解しなければ、台湾住民から反感を買うことになり、中台の距離はますます開くことになるだろうと指摘している。
』
『
ロイター 2016年 01月 18日 17:17 JST
http://jp.reuters.com/article/analysis-south-china-sea-taiwan-idJPKCN0UW0OB?sp=true
焦点:南シナ海より「台湾問題」、
独立派圧勝で警戒強める中国
[台北 17日 ロイター] -
東シナ海、南シナ海の領有権問題をめぐり、すでに強硬姿勢を強めている中国にとって、台湾問題は、敏感さと重要度の点で他のいかなる領土問題にも勝るものだ。
16日に投開票された台湾の総統選挙では、台湾独立を志向する最大野党、民主進歩党(民進党)の蔡英文主席が与党国民党候補らに圧勝し、当選を果たした。
8年ぶりに政権交代が行われることとなる台湾は、アジアで最も敏感な安全保障問題の1つとして、再びスポットライトを浴びることになる。
1949年に中国共産党との内戦に敗れた国民党が台湾に逃れて以来、中国は台湾を自国の神聖な領土と主張している。
台湾の推定によれば、中国は数百発のミサイルを台湾に向けており、台湾を支配下に置くための武力行使を放棄してもいない。
当時の台湾国防部は定期的なものだとしたが、中国は昨年9月に台湾海峡で異例の実弾演習を実施している。
「彼女(蔡氏)は中国政府の非常に現実的な指導者を相手にすることになる」と、国立台湾大学の朱雲漢・教授は指摘する。
しかし同時に蔡氏は、自身の支持者、特に急進的で独立を志向する若い世代に対して責任を持たねばならない。
「そのことが彼女に戦略的な余地をあまり与えない」
と朱教授は語る。
2008年に親中である国民党の馬英九氏が政権の座を握って以降、通商や観光で協定を締結するなど中台関係はかつてないほど緊張緩和が進んでいた。
蔡氏率いる民進党は、再び緊張をもたらすことにはならないと主張するのに苦心しているようだ。
蔡氏は勝利宣言で中国問題について触れ、平和の維持に努めるとしたうえで、台湾の権益と主権は守ると語った。
■<苦い果実>
台湾の独立に反対する立場を繰り返す中国は、比較的慎重な姿勢を見せてはいるものの、先には大きな不安が待ち受けている。
新華社は、独立に向けたいかなる動きも、台湾を滅ぼすことになる「毒薬」のようなものだと警告した。
中国人民解放軍の南京軍区副司令官を務めた王洪光・中将は17日、インターネット上で発表した論評のなかで、人民解放軍は現在、対台湾作戦でかつてないほど準備が整っていると明らかにしている。
「前線部隊は翼が生えたトラのようだ。
蔡英文と彼女の独立部隊はそれを逃れられると考えるべきではない。
中国本土は台湾独立という苦い果実を飲み込むわけにはいかない」
と王氏は述べている。
また、ある西側の上級外交官は、台湾について中国当局者と交わした最近の会話について触れ、世界も中国指導部にとっての台湾の重要性を過小評価するべきではないとし、
「中国政府にとって台湾ほど重要なことはない」
と語った。
中国政府はまた、台湾は中国の一部であると疑わない国内世論に気を配る必要がある。
中国版ツイッターと言える微博(ウェイボー)では「台湾を統一するために武力を行使せよ」というフレーズの人気が急上昇した。
■<ミサイル実験>
人民解放軍とつながりがあり、定期的に幹部と会っているという北京に拠点を置く中国人の関係筋はロイターに対し、今回の台湾の選挙は中台関係、中米関係にとって「広範囲な」結果をもたらすと語った。
「今後起きることを非常に懸念している。
状況はもっと悲観的になる」
と、匿名を条件にこの関係筋は述べた。
蔡氏の総統選出は、中国の習近平国家主席にとってばつの悪いことでもある。
習氏は昨年シンガポールで、馬氏と1949年の分断後初の歴史的会談を果たしており、台湾独立派をけん制していた。
1949年以降、中国と台湾の間には3回衝突の危機が訪れている。
直近では1996年の台湾総統選の前で、中国は台湾に近い海域でミサイル実験を行った。
中国が独立派とみていた李登輝氏の当選を阻もうと意図したことだったが、同選挙で李氏は圧勝した。
民進党の陳水扁氏が総統を務めた2000─08年も、中国と前向きな関係を維持しようとした同氏ではあったが独立を主張する言動のせいで、中台関係はひどく悪化した。
今回、総統選と同時に実施された立法院(国会)選挙でも、民進党は過半数の議席を獲得した。
これにより、政権運営をより自由に進められるだろう。
どのみち、中国は台湾に圧力をかけるのに刀を交える必要はない。
台湾にとっての最も重要な貿易相手国かつ投資先として、中国はすでにあらゆる経済カードを握っているのだから。
「台湾は国際社会のサポートなくしては生き残れない。
なぜなら、われわれの敵は巨大な中国なのだから」
と、元台湾外交部の高官で現在は台湾民主基金会のシニアフェローを務めるマイケル・カウ氏は語った。
(Ben Blanchard記者、Faith Hung記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
』
『
ダイヤモンドオンライン 2016年1月19日 加藤嘉一
http://diamond.jp/articles/-/84788
蔡英文陣営が大勝した台湾選挙は
“中国民主化”に何をもたらすか?
■蔡英文主席率いる民進党が大勝した
台湾総統選挙・立法委員選挙の意義
現在、台北の一角で本稿を執筆している。
1月16日に行われた台湾総統選挙・立法委員選挙において、蔡英文主席率いる民進党が躍進した。
同氏は689万票(得票率56.12%)で初の女性総統に当選し、民進党は台湾立法院113席のうち68席(前回+28席)を勝ち取り、単独過半数を超えた。
一方、宿敵国民党の議席は35席にとどまり(前回-29席)、同党主席の朱立倫氏は381万票(得票率31.04%)で蔡氏に大敗した。
台湾政治史において3回目の政権交代となった
今回の選挙を経て、蔡英文総統当選人率いる民進党は
総統府、立法院双方で実権を握る“完全執政”を展開できる
ことになった。
本稿では、本連載の核心的テーマである中国民主化研究という視角から、今回の歴史的な台湾選挙が対岸・中国の“民主化”プロセスにもたらし得るインプリケーションを3つの観点から書き下しておきたい。
ここで、私があえて“歴史的”という言葉を使うのは、中台関係が経済・人文面だけでなく、政治的にも“促進”されているかのように見える状況下における国民党の大敗、および華人社会で初めて民主化を実現した台湾が、今回の選挙を経て、華人社会で初めて女性総統を誕生させたという文脈を意識するからである。
なお、本稿はあくまで同選挙が中国共産党統治下にある対岸の政治動態に与え得る影響や要素に絞って議論を進める。
したがって、なぜ国民党が大敗したのか、なぜ民進党が躍進したのか、蔡英文という政治家はどんな人間かといった内政的要因、あるいは同選挙がアジア太平洋地域の地政学にもたらし得るインパクトは何かといった外交的要因には原則触れず、別の機会に譲ることとする。
1つ目の議論に入る導引として、拙書『中国民主化研究』(ダイヤモンド社、2015年7月刊)の第三部「外圧」第12章“台湾と中国人”で指摘した、次のパラグラフを引っ張っておきたい。
若者世代を中心とした台湾人は、
「中国とこういう付き合い方をするべきではないか」
「中国と付き合う過程で法治や民主の枠組みを着実に重んじるべきではないか」
といった市民としての欲求を訴えている。
中国との付き合い方という文脈において、法治・自由・民主主義といったルールや価値観を守るべく、市民社会の機能を駆使しつつ、自らの政府を徹底監視し、自覚と誇りを持って奮闘する過程は、対岸の中国が民主化を追求する上でポジティブな意味合いを持つ。
なぜなら、台湾が中国と付き合うなかで、政治体制やルール・価値観といった点で中国に取り込まれる、
すなわち台湾が“中国化”していくことは、中国共産党の非民主主義的な政治体制が肥大化しながら自己正当化する事態をもたらし得るからだ。
その意味で、同じ中華系に属する社会として、民主化を実現した歴史を持つ台湾、そしてそこに生きる人々が果たす役割は大きい。(394~395頁)
1].1つ目のインプリケーションは、
「今回、国民党の大敗および民進党の躍進という形を以て幕を閉じた台湾選挙は、
中国共産党の統治プロセスに健全で動態的な圧力を加える
という意味で、ポジティブな長期的インパクトをもたらす」ということである。
今回の選挙を対岸の中国共産党指導部は、一種の諦念と最後の期待を抱きつつ眺めていたであろう。
選挙キャンペーンにおけるかなり早い段階から蔡英文の勝利が予想されており、焦点は立法院における議席数に向けられていた。
国民党の朱立倫は
「そもそも当て馬で、彼のミッションはあくまでも立法院で民進党に過半数を取らせない」(国民党幹部)
ことにあった。
結果は見ての通りである。こ
れから“完全執政”する民進党と向き合っていかなければならない共産党指導部の諦念は緊張に、期待は失望に変わったに違いない。
俗に“中国寄り”と言われる国民党政権は、昨年11月にシンガポールで馬英九・習近平会談を実現させた。
センシティブな政治的課題を巡って立場や認識の相違が存在するなかで、両岸指導者を向きあわせた根拠は、「1つの中国」政策に関する“九二コンセンサス”と呼ばれる産物であった(同会談および九二コンセンサスを巡る両岸の認識ギャップについては、連載第64回「習近平・馬英九会談実現の背景にある動機と懸念」参照)。
■中国に対する健全な圧力の発生
「九二コンセンサス」はどうなる?
一方で、俗に“中国とは距離を置き、中国との関係構築には慎重・強硬的になる傾向がある”と言われる
民進党は、九二コンセンサスを認めていない。
そして、私が判断するに、蔡英文は5月20日に総統に就任してからもこのコンセンサスを(少なくとも公に)認めたり、支持したりすることはないであろう。
「両岸は共に1つの中国に属し、台湾は中国の一部である」
という定義を加える中共側のスタンスに、
「台湾の国号は中華民国であり、台湾は自由民主主義を擁する国家である」
という認識を持つ民進党サイドが同調する可能性は、限りなくゼロに近い。
もっとも、両岸関係を安定させることを(この点を呼びかける米国との関係維持という観点からも)重視する蔡英文としては、
九二コンセンサスを公に否定したり、それに反対したりすることもないであろうが。
いずれにせよ、少なくとも政治的に見れば、蔡英文・民進党サイドとの関係づくりに中国共産党は悪戦苦闘するに違いない。
台湾選挙の前後、蔡英文陣営の動向を追っていたが、同氏は随所で台湾が自由と民主主義を重んじる“国家”であることを呼びかけ、
「尊厳、団結、自信を持った新しい台湾」
の到来を告げていた。
たとえば、次のセンテンスには、私から見て、蔡英文が政治体制や価値観という観点から中国を牽制し、かつ中国と台湾が“異なる”ことを暗示する姿勢が如実に体現されている。
「私たちは国際社会に対して改めて告げた。
民主主義の価値が台湾人の地に深く流れていることを。民主主義に基づいたライフスタイルが、2300万人にとっての永遠の堅持であることを」(1月16日、選挙結果が出た後の国際記者会見にて)
往々にして自由民主主義を持たず、人権を軽視したり、国民の自由な言動を抑圧することを以て国際社会、特に西側社会から批判される中国共産党としては、自らが政治的に関係を維持・発展させたい対象である台湾の新しい指導者からこのように告げられることは、圧力になるかどうかは別として、少なくとも心地よくはないであろうし、警戒心や嫌悪感を強めるであろう。
それでも、「両岸関係を安定的に発展させること」は台湾にとってだけではなく、中国にとっても対米関係を安定的にマネージする上での政治的基礎になる。
仮に中国が台湾を武力で“解放”などしようものなら、米中関係は極度に悪化するであろうし、中国は国際社会から制裁を受けることになる。
したがって、習近平国家主席率いる中国共産党としても、蔡英文率いる民進党との関係を安定的に推し進めていかざるをえない。
この一点に関して、私は“健全な圧力”という解釈を加えている。
中国共産党が異なる政治的スタンスや価値観を持った相手と良好な関係を構築していくことはポジティブであるし、それは“The Great challenge”になるであろう。
視点を転換して現状や展望に考えを及ぼせば、民進党という俗に対中強硬的と呼ばれる相手とも良好な関係を構築できれば、それは中国共産党が国内外で少なくとも以前よりフレッシュなイメージを与えることになるに違いない。
私は、そのプロセスは中国の広義における国益に符合すると考える。
■中国とどんな距離感で付き合うか?
市民社会の成熟度を感じる選挙結果
2].2つ目のインプリケーションは、
「華人社会初のデモクラシーである台湾が、
その公正で自由な選挙を通じて政権交代をしたという事実は、
台湾の政党政治の成熟性という意味からもポジティブであると同時に、
今回多くの小さい党が出現し、
一部が台頭したという事実は台湾における市民社会の成熟性をも示している」
ということである。
このインプリケーションの重心は
中国と同じ“華人社会”である台湾の政党政治と市民社会が民主主義を発展させるという文脈のなかで、成熟度を向上させた
ことに見い出せる。
そもそも、この現象を生み出した根本的な背景は良くも悪くも“中国の台頭”にある。
中国が不透明だが着実に台頭する過程において、国民党は警戒心や恐怖心を強める台湾市民の心情を考慮して
中国とは適度な距離を置かなければならない状況に直面し、
民進党はそれでも中国との関係を重視する台湾市民の利益を考慮して、中国に適度に近づかなければならなくなる。
要するに、
「中国とどのような価値観を持ってどのような距離感で付き合うか」
が最大の焦点である台湾の政治が中道的になっていく傾向が、近年生まれている。
それはそれで現状として受け止めるべきであるし、
今回蔡英文は自らの政治的スタンスを若干中国寄りに修正したことによって(具体的には“九二コンセンサス”を承認はしないが反対もしなくなったこと)、“中間層”を取り込むことに成功したと言われている。
逆に国民党は中国との距離の取り方に“失敗”し、先行きが見えない経済情勢も重なって惨敗した。
そんな中、“政治の中道化”に満足できない、どちらかと言えば極端な政治的立場・主張を抱く人々が新たな政党を設立し、今回の選挙に挑んだ。
そこには、
★.台湾の国家としての団結を掲げる「台湾団結連盟」や、
★.中国との統一を掲げる「中華統一促進党」
などが含まれるが、何と言っても注目すべきは、2014年3月、国民党政権が中国とサービス貿易協定を拙速に締結することに学生や若者が立ち上がり、反対した
「太陽花学生運動」(日本では「ひまわり学生運動」とも呼ばれる)のリーダーたちが中心となって結成した政党である
★.「時代力量」の躍進
である。
民進党が側面的に支持してきた同党は、今回5つの議席を獲得している。
この結果は、国会運営を有利に進めたい民進党にとっても追い風となるに違いない。
そして何より、「時代力量」の台頭は、台湾が中国との付き合い方というバッファー(緩衝地帯)を通じて、若い世代による市民運動が民主政治に実質的かつ直接的なインパクトをもたらしたことを意味している。
もう1つ指摘しておきたいのが、国民党陣営(俗に“藍”陣営と呼ばれる)でもなく、民進党陣営(俗に“緑”陣営と呼ばれる)でもない、
★.両党の対立や争いの超越を訴える“第三勢力”として、親民党の宋楚瑜主席が157万票(得票率12.84%)を獲得し、2012年時の36万票から大きく躍進した事実
である。
この点も、
「藍と緑という2大陣営という枠組みでは、多元化する利益や価値観の欲求、とりわけ若年層のそれを体現できなくなっている」(国立台湾大学・何明修社会学教授)台湾政治が、
これまでの枠組みを超えて、市民たちの多元化する欲求をより立体的に反映する形態に近づこうとしている現状を示すインディケーターであると、解釈できるだろう。
■対台湾ナショナリズムはなぜ
中国の民主化にとって不利なのか?
3].そして3つ目のインプリケーションが、
「中国で不健全に蔓延・高揚する対台湾ナショナリズム、
およびそれに対する共産党のガバナンス力の欠如と脆さは、
台湾社会・市民、特に若い世代の対中感情を悪化させ、
両岸社会が真摯に向き合い、付き合うプロセスを阻害し、
結果的に中国民主化プロセスにとって不利に働く」
ということである。
台湾選挙の前日、台湾の有権者を震撼させた「周子瑜事件」がこの点を赤裸々に露呈している。
韓国のアイドルグループ「TWICE」で活躍する台湾の周子瑜氏が、韓国のテレビ番組に出演した際、韓国の旗と台湾を実質的に統治する中華民国の旗を掲げた。
その後、中国で活動する他の台湾人タレントに「台湾独立派」であると公に“告発”され、同グループが中国で予定していたテレビ出演がキャンセルされるなどしていた。
中国における経済的利益を守るためだったのだろう。
事態を憂慮した韓国のプロダクションが、台湾選挙前日の1月15日にあるビデオを公開した。
そこには、弱冠16歳の周氏が、両手で1枚の用紙を握りしめ、そこに視線を落としながら読み上げ、
「中国は1つしかありません。海峡両岸は一緒なのです。
私はいつも中国人であることを誇りに思っています」
と言って謝罪する、うつろな姿が映っていた。
様々な憶測または“陰謀論”が交錯していることもあり、詳細や背景については触れないが、結果的にこれを見た台湾の有権者、特に
「台湾がそもそも自らの政府、領土、国旗を持つ主権国家だと信じて疑わない環境で育った若者たちは、
海外で中華民国の国旗を掲げることすら許されないのかという驚きと怒りを覚えたのは間違いない」(台湾行政院スタッフ)。
私は、この事態が選挙前日という微妙なタイミングで起こったことにより多くの票が民進党に流れた、と言われる政局よりも、
これによって、これまで国民党が自らの政権的基礎、中国共産党と関係を構築する上での政治的根拠としてきた“九二コンセンサス”というロジックが実質崩壊し、両岸が政治対話を促進する上での辻褄が合わなくなる可能性のほうが重要だと考えている。
国民党は九二コンセンサスを掲げる過程で台湾の有権者たちを「一個中国、一中各表」、つまり、「中国は1つだが、各自がそれぞれに述べ合うこと」というロジックで説得してきた。
ただ、今回の事件によって、
「台湾は中国と付き合う過程でいかなる場所でも中華民国の国旗を掲げることが許されない」
=「それぞれが述べ合うことが許されない」
という印象や認識が台湾社会の間で広がってしまった。
台湾でテレビや新聞、インターネットをチェックしていたが、まさに1月16日前後は、選挙そのものの動向を伝える報道以外は「周子瑜事件」一色という具合であった。
蔡英文も、この事件を受けて、勝利演説において、
「この国家を団結させ、壮大にさせ、対外的に一致を図ることが私にとって最も重要な責任である」
と主張した。
これから、蔡英文はこれまでよりも
中国に対して警戒的・敏感的・抵抗的になる世論をバックに、対中政策を進めていかざるを得なくなる
ということである。
何がこの事態をつくり上げたのか?
私が判断するに、まさに中国国内で排他的・攻撃的・狭隘的に高揚するナショナリズムであり、それを前に立ち往生し、体制内で健全な対応策を打てずにいる中国共産党の在り方である。
実際に、対台工作を担当する中国国務院台湾事務弁公室は、この事件を受けて相当アップセットしていた。
「当然、我々が望む事態ではない。
両岸関係を壊しかねない事件だ」
1月16日の太陽が沈む前に、同弁公室の幹部は私にこう語った。
■「周子瑜事件」が投げかけた教訓
中国共産党に求められる選択肢
それでも、中国のインターネット上では周氏を「台湾独立派」と非難する世論が収まらない。
それに対して、台湾ではそんな“中国”の状況に反発する世論と、台湾人としての尊厳を打ち砕かれたというショックが収まらない。
そして、
「両岸は1つの中国に属する。台湾は中国の一部である」
というロジックで国内的にプロパガンダを進め、それを武器に台湾との政治関係を発展させてきた中国共産党は、目の前にある事態に対して何もできない。
間違っても
「いや、実は台湾では異なる解釈が存在する。
対岸には対岸の言い分がある」
とは言えないからだ。
「じゃあなぜ習近平は馬英九と会ったのだ?
根拠は九二コンセンサスだったのではないのか?」
という民衆からの逆襲をくらうことになってしまう。
私から見て、中国の“有権者”たちは聡明で、頭の回転が早く、身の回りの事態に常時クリティカルに反応する習性を備えている。
中国共産党指導部には、自らの核心的利益である台湾問題を安定的にマネージするという観点から、国民に“真実”を説明し、国内で高揚するナショナリズムを真っ当に緩和させていくという選択肢も理論上はある。
仮にそれでも世論が収まらない場合、残された退路は、“担当者”が責任を取るべく辞任し、日本で言うところの内閣を改造することであろう。
政権の正統性は、そうやって未来に引き継がれていく。
ただ、中国共産党にそれらの選択肢はない。
』
『
新潮社 フォーサイト 1月18日(月)17時39分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160118-00010000-fsight-int
台湾総統選を決した「天然独」の台頭
●今後、世代交代が進むにつれて「天然独」勢力は増え続けるのだろう
かつて日本の参院選で社会党(現・社民党)が大勝したときに「山が動いた」という土井たか子委員長(当時)の“名言”が語り草になったが、今回の台湾総統選・立法委員選挙の結果は、まさに「山が動いた」という表現がふさわしい。
動いた山は、戦後半世紀以上にわたって台湾政治に君臨していた国民党主導の政治体制だった。
民進党は過去にも総統を勝ち取ったことがあるが、2000年は国民党分裂による漁夫の利。
2004年の総統選は、大接戦の末に銃撃事件が起きて超僅差での勝利。
しかも、国会にあたる立法院で、民進党は1度も国民党の勢力を上回ったことがなく、
政権担当の8年間は「ねじれ国会」で、やりたいことを国民党に掣肘(せいちゅう)されてばかりだった。
それが今回、総統選においては、56%の得票率、300万票の大差によって、野党・民進党主席である蔡英文候補が勝利。
立法委員選挙でも、定数113議席のうち、民進党は68議席を獲得して、圧倒的第1党に躍り出た。
国民党は主席の朱立倫候補を立てたが、得票率は31%と惨敗。
立法院でも、現有勢力だった64議席が半分近い35議席になった。
これは、戦後の台湾において、1党専制時代から民主化の後も政治の主役として君臨した
国民党という「山」が、根こそぎ動かされた
ということである。
■「生まれながらの独立派」
では、山を動かしたものは何だったのか。
その主役の1つが、「天然独」と呼ばれる20代から30代の若い世代の動きだった。
「天然独」は、日本語では「生まれながらの独立派」と訳せばいいだろうか。
日本の読者には耳慣れないかもしれないが、この「天然独」の存在は、現在の台湾政治において極めて重要なキーワードである。
実際、この「天然独」を主な支持層とする新政党「時代力量」は、今回大方の予想を超えて3つの選挙区で現職有利の情勢を逆転して勝利し、比例区でも2議席を獲得して
合計5議席となり、民進党、国民党に続く第3党に躍り出た。
今回の総統選で初めて投票した人々はおよそ130万人。
台湾でそうした若い人たちに話を聞いても、国民党に入れたいという人を見つけるのは至難の業だ。
時代力量か、民進党。
それが若者たちの圧倒的な選択となった。
「天然独」の台頭は、2014年3月の「ひまわり運動」と切っても切り離せない。
中国とのサービス貿易協定に反対して立法院の議場に立てこもったひまわり運動の主要な参加者たちに取材したとき、最も驚かされたのが、「台湾は独立している」あるいは「台湾は独立すべきだ」という主張を、何の躊躇もなく、堂々と、軽々と、笑顔で口にしている若者たちだった。
従来、台湾のなかで独立を主張することは、過去には違法とされ厳しい弾圧の対象であったこともあり、基本的には深刻で重いものだった。
台湾独立運動の原点は、
国民党政権に弾圧され、海外に逃れた知識分子たちであり、日本や米国で独立運動を立ち上げたからだ。
彼らは、戦後処理のなかで台湾の帰属が国際法的に未定であるという前提に立って、国民党の台湾支配は法的根拠がなく、そのため、台湾共和国を建国するべきだという理論を作り上げ、国民党の1党専制と闘ってきた。
それゆえに彼らの主張は「法理台独」とも呼ばれる。
その「法理台独」と対比される言葉が、ひまわり運動などの社会運動をきっかけに政治意識に覚醒した若い世代を中核とする「天然独」なのである。
■「中国への祖国意識」は皆無
「天然独」の認識では、台湾の独立は空気や水があるように当たり前のことであり、
中国はあくまでも外国の1つで、もちろん自分を中国人と思いようがない。
それゆえに、中華民国を廃止して台湾共和国を打ち立てようという「老台独」たちの「法理台独」にも強いシンパシーは示さないし、逆に、中華民国へのアレルギーもそれほどない。
民主化が進んだ1990年代以降に教育を受けて成人した人々であり、自由と民主を満喫して成長し、
「台湾は台湾」と素直に考える人々
である。
台湾の「中央研究院社会研究所中国効応テーマ研究小組」が2014年に行った調査によれば、
青年世代(20~34歳)のなかで独立の支持者は56%に達する。
壮年世代(35~49歳)は46%、
中老年世代(50歳以上)は41%
と少なくなる。
全体の平均値は46%。
若い世代が突出して高い。
独立への支持が台湾でなだらかな増加傾向にあるのは、世代が進むたびに、否定派が消え、肯定派が生まれる「自然増」状態にあるため
と見られる。
上の世代になるほど、中国への特殊な繋がりを肯定する傾向は強いが、
若い人たちには中国への祖国意識は、ほとんど皆無に等しい。
■「野いちご運動」から「ひまわり運動」へ
この天然独の政治意識は、逆に「中国」という存在抜きには覚醒しなかった。
なぜなら、「中国」という存在が目前に迫ってきて、はじめて、若者たちは自分たちの内なる「台湾」に気づいたからで、
馬英九政権の対中接近がもたらした反作用という要素もある。
最初は2008年、中国の対台湾窓口機関である「海峡両岸関係協会」(海協会)の陳雲林会長の台湾訪問に対する抗議を行った。
このとき、多くの若者が初めて中国に向き合う形でデモに参加したという。
宴会会場になった台湾のリージェントホテルや、陳会長の宿泊先であった圓山飯店に若者たちが押し掛け、ホテルを包囲して、一時陳会長が動けなくなる事態に陥った。
この運動は「野いちご運動」と呼ばれた。
参加した若者はその後も台湾でたびたび起きた「反メディア独占運動」など各種の社会運動のなかで活躍し、デモや集会の技術やノウハウを習得していったという。
その勢力が最終的に結集し、花を咲かせたのが「ひまわり運動」だった。
世界を驚かせた若者たちの情報発信のテクニックや組織の運営能力は、一夜で身につけられるものではなかったのである。
蔡英文は民進党主席として、ひまわり運動のあとの2014年の党大会で、台湾独立をうたった民進党綱領を凍結するかどうかについて議論したとき、天然独を念頭に、このように語って凍結論を葬り去った。
「台湾の民主化の進展に伴って、台湾に思いを寄せ、独立した自主的な価値観を堅持することは、若者世代のなかで天然成分になっている。
このような事実、このような状態のなかで、なぜ凍結を? なぜ廃止を?」
ひまわり運動の勢力を中心に結党され、躍進した新政党「時代力量」も、その結党の精神について「天然独が、時代力量の結党DNAだ」と明言している。
■「老台独」から「天然独」への世代交代
もともと「天然独」の主張は、確かに民進党らと近いものはあったが、国民党の側にも、彼らを取り込んだり、敵対を回避したりするチャンスがあった。
ひまわり運動による学生の立法院占拠が起きたとき、馬英九総統は、自らが推し進めた中国とのサービス貿易協定の進め方が拙速であると批判されると、自分のやり方は「合法、合理、合情」であると突っぱねた。
その結果、「天然独」勢力に対して発言権を完全に失ってしまった。
今回、選挙戦の最終日に、馬英九総統が有権者の前で深々と頭を下げて「自分のやり方にいろいろ至らない点もあった」と謝罪していたが、知人の国民党の中堅幹部は、
「ひまわり運動のときに謝ってくれていたら、選挙結果もそれなりに違っていたかもしれないが、あまりに遅すぎた」
と吐き捨てていた。
一方、民進党は、今回の選挙では李登輝氏を精神的指導者とする「台湾団結聯盟」という従来の台湾独立を象徴する政党とは距離を置き、ひまわり勢力の「時代力量」を友党として優遇した。
李登輝氏が今回の選挙でほとんど存在感を示せなかったのは、高齢による体調の問題もあるが、間接的に民進党から距離を置かれたことも関係していただろう。
「老台独」から「天然独」への世代交代をひしひしと感じさせる選挙だった。
「天然独」の定義や投票行動については、今後より詳しい検証が待たれるのは言うまでもないが、2014年のひまわり運動以来の台湾政治のうねりの中心にいた勢力として、また、中台関係における新たな不確定要素としても、今後も「天然独」の動向に注目が集まることは間違いない。
国民党がもし、ひまわり運動のインパクトを深刻に受け止め、天然独と民進党の結合を適切に防いでいれば、ここまで若者にそっぽを向かれて不利な情勢に追い込まれることはなかっただろう。
その意味では、2014年3月という2年近くも前の時点で、今日の敗北に向けて国民党は歩んでいたと言える。
その後、統一地方選で壊滅的敗北を喫し、さらに総統候補選びなどでさんざんもたつきを見せた。
すでに負けと分かった戦のなかでも、いさぎよい負け方すらできなくなった醜態には、辛亥革命以来、100年以上の伝統を持つアジア最古クラスの政党として、このままでは寿命が尽きる日が近いかもしれないと感じさせるほどだった。
ジャーナリスト・野嶋剛
Foresight(フォーサイト)|国際情報サイト
http://www.fsight.jp/
』
『
サーチナニュース 2016-01-21 11:43
http://news.searchina.net/id/1600349?page=1
台湾・蔡次期総統に大陸から「大量攻撃」
FBに書き込み殺到、
民進党は
「民主自由の台湾にようこそ。削除はしません」
台湾(中華民国)次期総統に当選した民進党の蔡英文主席(党首)のフェイスブックに20日、大陸からの
「攻撃」が殺到した。
台湾独立を批判・非難する込みだ。
民進党の楊家俍報道担当は同事態について「民主自由の台湾にようこそ」と表明。
書き込みを削除する考えはないという。
台湾メディアの聯合新聞網によると20日、大陸側の電子掲示板に、午後7時(日本時間同日午後8時)を指定して「フェイスブックに出征しよう」との書き込みが寄せられた。
同時刻帯に蔡主席が、議長の中立化など国会改革の方向性を民主党内で協議していることを紹介する書き込みを掲載すると、3時間内に「台湾独立」を批判する書き込み約2万件が寄せられたという。
ただし、台湾人と見られるユーザーも「反撃」。
蔡主席を祝福する書き込みや、台湾独立に反対する書き込みへの反論を行った。
蔡主席による上記書き込みに寄せられたコメントは日本時間21日午前9時半現在、5万件を超えた状態だ。
「私は大陸人だよ!
一番、見るに堪えない汚い言葉で(台湾独立や蔡主席を)罵っているバカ者は、中国共産党がカネを払って雇っている奴らだ」
という書き込みもある。
台湾では中国側の「官民」の主張を、
台湾では「民主や自由」が確保されていることを用いて、「さらりとかわす」ことがある。
2013年には、馬英九総統の周辺で「中国大陸のテレビ番組を台湾で放送すべきだ」との主張が出た際、テレビなどを所管する政府部門・文化部の劉応台部長(当時)は、
「台湾人の公民としての素養は十分に高い」、
「大陸で制作された番組内容が台湾人の考え方に悪影響を及ぼす恐れはない」
との考えを示した後、公平さを保つために
「大陸の番組を台湾で放送するなら、台湾の番組も大陸で放送すべき」
と主張した。
台湾と違って大陸では、自由な情報発信ができず、台湾制作の番組放送は不可能であることを見越しての発言だった。
なお、中国政府は国内のインターネットユーザーに対して、フェイスブックやツイッターなど国外発のサービスの利用ができないようネットワークを設定している。
ただし中国には政府の規制を回避することができるサービスを有料提供する業者が相当数、存在する。
』
【激甚化する時代の風貌】
サーチナニュース 2016-01-21 11:43
http://news.searchina.net/id/1600349?page=1
台湾・蔡次期総統に大陸から「大量攻撃」
FBに書き込み殺到、
民進党は
「民主自由の台湾にようこそ。削除はしません」
台湾(中華民国)次期総統に当選した民進党の蔡英文主席(党首)のフェイスブックに20日、大陸からの
「攻撃」が殺到した。
台湾独立を批判・非難する込みだ。
民進党の楊家俍報道担当は同事態について「民主自由の台湾にようこそ」と表明。
書き込みを削除する考えはないという。
台湾メディアの聯合新聞網によると20日、大陸側の電子掲示板に、午後7時(日本時間同日午後8時)を指定して「フェイスブックに出征しよう」との書き込みが寄せられた。
同時刻帯に蔡主席が、議長の中立化など国会改革の方向性を民主党内で協議していることを紹介する書き込みを掲載すると、3時間内に「台湾独立」を批判する書き込み約2万件が寄せられたという。
ただし、台湾人と見られるユーザーも「反撃」。
蔡主席を祝福する書き込みや、台湾独立に反対する書き込みへの反論を行った。
蔡主席による上記書き込みに寄せられたコメントは日本時間21日午前9時半現在、5万件を超えた状態だ。
「私は大陸人だよ!
一番、見るに堪えない汚い言葉で(台湾独立や蔡主席を)罵っているバカ者は、中国共産党がカネを払って雇っている奴らだ」
という書き込みもある。
台湾では中国側の「官民」の主張を、
台湾では「民主や自由」が確保されていることを用いて、「さらりとかわす」ことがある。
2013年には、馬英九総統の周辺で「中国大陸のテレビ番組を台湾で放送すべきだ」との主張が出た際、テレビなどを所管する政府部門・文化部の劉応台部長(当時)は、
「台湾人の公民としての素養は十分に高い」、
「大陸で制作された番組内容が台湾人の考え方に悪影響を及ぼす恐れはない」
との考えを示した後、公平さを保つために
「大陸の番組を台湾で放送するなら、台湾の番組も大陸で放送すべき」
と主張した。
台湾と違って大陸では、自由な情報発信ができず、台湾制作の番組放送は不可能であることを見越しての発言だった。
なお、中国政府は国内のインターネットユーザーに対して、フェイスブックやツイッターなど国外発のサービスの利用ができないようネットワークを設定している。
ただし中国には政府の規制を回避することができるサービスを有料提供する業者が相当数、存在する。
』
「お詫びと反省の国」であった日本が、中国の絶え間ない恫喝によって変身をとげ、
「普通の国」という新常態(ニューノーマル)に変異したことは記憶にあたらしい。
「普通の国」という新常態(ニューノーマル)に変異したことは記憶にあたらしい。
同じように台湾への中国の圧力は台湾人をして、中国嫌いを助長し、それが台湾人意識の新常態へと進化させる可能性が高い。
作用があれば反作用がある。
決して思惑のように相手が動いてくれるとは限らない。
多くの場合、降伏はせずにハリネズミのように防備を固めるのが普通の対応である。
圧力をかけて対岸に押し戻しては何にもならない。
『
時事通信 2016/1/23 08:21 (台北時事)
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160123-00000022-jijnb_st-nb
国民党、若者が拒絶
=対中政策に「ノー」
-分裂含みの展開も・台湾
台湾総統選で最大野党・民進党の蔡英文主席が圧勝し、国民党の政権転落が確定した。
馬英九政権に対する住民の不満が爆発した形で、対中政策をはじめとする国民党の取り組みに「ノー」が突き付けられた。
とりわけ若い世代で国民党に対する拒絶反応が広がっており、1世紀以上の歴史を持つ老舗政党は最大の危機に直面している。
◇国民党は「最悪」
「国民党は最悪。友達もみんなそう言っている」。
新政党「時代力量」の選挙集会に参加した北部・桃園市の大学生、林子※(※=王ヘンに奇)さん(21)は、強い口調で語った。
有権者1878万人のうち、20~39歳は4割弱の711万人。
その多くは総統選では蔡氏に、立法院選では民進党もしくは時代力量など「第3勢力」と呼ばれる新政党に投票したとみられている。
若者が国民党に向ける視線は冷ややかだ。
馬政権下での経済情勢悪化や対中接近に加え、実力者の2世を重用するなど旧態依然とした体質が敬遠される原因となっている。
民間団体が昨年12月、15~20歳を対象に実施した世論調査によると、
政党支持率は民進党の28%に対し、国民党は16%。
従来、民進党が45%、国民党が55%とされてきた支持者の比率は、若者世代では通用しなくなっている。
国民党の地方議員は
「若者の間では、反国民党が格好良いといった風潮になっている」
と嘆き、
「こうした状況を招いた馬総統の責任は大きい」
と語気を強めた。
◇逆走した馬総統
国共内戦に敗れ、1949年に中国大陸から台湾に逃れてきた国民党は、蒋介石総統の下で一党独裁体制を確立。学校現場では本省人(台湾出身者とその子孫)が台湾語を話すことを禁止し、中国の歴史のみを教えてきた。
87年の戒厳令解除後、本省人の李登輝、陳水扁両総統は台湾重視の教育・施策を推進し、「台湾人意識」が広まった。
20代、30代では9割以上が「自分は台湾人」と認識し、「中国人」との思いは希薄だ。
一方、香港生まれの外省人(中国出身者とその子孫)である馬総統は「中華民族意識」が強く、国民党が特別な存在だった時代の記憶も引きずっている。
中国を「外国」と見る若者世代との意識の隔たりは大きい。
中央研究院近代史研究所の林泉忠副研究員は
「馬総統の取り組みは、今の台湾社会が目指す方向と違っていた。
時代の変化に気付かなかったのだろう」
と分析する。
◇党解体に現実味
国民党は14年11月の統一地方選に続き、総統選も敗北したことで、地方・中央の権力基盤を失い、党の弱体化が急速に進むのは確実だ。
民進党は、国民党が一党独裁時代に築いた巨額の党資産にメスを入れる構えを見せており、党解体も現実味を帯びる。
党の将来を担う30~40代のリーダーも育っていない。
今後、政権を失った責任をめぐり、馬総統ら外省人の主流派グループを追及する声が上がり、分裂含みで推移する可能性もある。
』
時事通信 2016/1/23 08:21 (台北時事)
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160123-00000022-jijnb_st-nb
国民党、若者が拒絶
=対中政策に「ノー」
-分裂含みの展開も・台湾
台湾総統選で最大野党・民進党の蔡英文主席が圧勝し、国民党の政権転落が確定した。
馬英九政権に対する住民の不満が爆発した形で、対中政策をはじめとする国民党の取り組みに「ノー」が突き付けられた。
とりわけ若い世代で国民党に対する拒絶反応が広がっており、1世紀以上の歴史を持つ老舗政党は最大の危機に直面している。
◇国民党は「最悪」
「国民党は最悪。友達もみんなそう言っている」。
新政党「時代力量」の選挙集会に参加した北部・桃園市の大学生、林子※(※=王ヘンに奇)さん(21)は、強い口調で語った。
有権者1878万人のうち、20~39歳は4割弱の711万人。
その多くは総統選では蔡氏に、立法院選では民進党もしくは時代力量など「第3勢力」と呼ばれる新政党に投票したとみられている。
若者が国民党に向ける視線は冷ややかだ。
馬政権下での経済情勢悪化や対中接近に加え、実力者の2世を重用するなど旧態依然とした体質が敬遠される原因となっている。
民間団体が昨年12月、15~20歳を対象に実施した世論調査によると、
政党支持率は民進党の28%に対し、国民党は16%。
従来、民進党が45%、国民党が55%とされてきた支持者の比率は、若者世代では通用しなくなっている。
国民党の地方議員は
「若者の間では、反国民党が格好良いといった風潮になっている」
と嘆き、
「こうした状況を招いた馬総統の責任は大きい」
と語気を強めた。
◇逆走した馬総統
国共内戦に敗れ、1949年に中国大陸から台湾に逃れてきた国民党は、蒋介石総統の下で一党独裁体制を確立。学校現場では本省人(台湾出身者とその子孫)が台湾語を話すことを禁止し、中国の歴史のみを教えてきた。
87年の戒厳令解除後、本省人の李登輝、陳水扁両総統は台湾重視の教育・施策を推進し、「台湾人意識」が広まった。
20代、30代では9割以上が「自分は台湾人」と認識し、「中国人」との思いは希薄だ。
一方、香港生まれの外省人(中国出身者とその子孫)である馬総統は「中華民族意識」が強く、国民党が特別な存在だった時代の記憶も引きずっている。
中国を「外国」と見る若者世代との意識の隔たりは大きい。
中央研究院近代史研究所の林泉忠副研究員は
「馬総統の取り組みは、今の台湾社会が目指す方向と違っていた。
時代の変化に気付かなかったのだろう」
と分析する。
◇党解体に現実味
国民党は14年11月の統一地方選に続き、総統選も敗北したことで、地方・中央の権力基盤を失い、党の弱体化が急速に進むのは確実だ。
民進党は、国民党が一党独裁時代に築いた巨額の党資産にメスを入れる構えを見せており、党解体も現実味を帯びる。
党の将来を担う30~40代のリーダーも育っていない。
今後、政権を失った責任をめぐり、馬総統ら外省人の主流派グループを追及する声が上がり、分裂含みで推移する可能性もある。
』
【激甚化する時代の風貌】
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