2016年1月6日水曜日

習近平の鉄槌(1): 中国共産党批判の書店の関係者5人が行方不明、中国当局拘束を認める

_


ニューズウイーク 2016年1月5日(火)16時53分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/01/post-4325.php

中国批判の書店関係者が行方不明、
行政長官は中国の関与否定
先週から行方不明となった李波氏は当局に中国本土で拘束された?


●中国当局に批判的な書籍を扱う香港の書店関係者5人が次々と行方不明に……

 香港の梁振英・行政長官は4日、中国政府に批判的な書籍を扱う書店の関係者5人が行方不明になっている件について、懸念を表明するとともに、中国当局が拘束したとの憶測を否定した。

 香港のCauseway Bay Booksの株主、李波(Lee Bo)氏は先週から行方不明となっている。
 また、中国政府に批判的な書籍の出版や販売に関わっている4人もここ数カ月、不可解な状況で行方が分からなくなっている。

 梁振英・行政長官は「この件をかなり懸念している」と述べたうえで、今のところ、李氏が中国の国家安全当局に拉致され中国本土に連れ去られたことを示すものは何もないと語った。

 李氏の妻はメディアに対して、李氏から電話があったが、番号が中国の番号だったようだとコメント。
 電話で李氏は、調査に協力している、と述べたという。

 また、別の3人は昨年、深圳で目撃されている。
 残りの1人はタイのリゾート地パタヤで目撃されたのを最後に行方が分からなくなっている。



日本テレビ系(NNN) 1月6日(水)7時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160106-00000007-nnn-int

 書店関係者“不明” 英外相1人は英国籍”



 香港で、中国共産党に批判的な本を扱う書店の関係者5人が行方不明になっている問題で、イギリスのハモンド外相はそのうちの1人がイギリス国籍だとして香港と中国当局に対応を求めた。

 中国を訪問中のハモンド外相は5日、行方不明となっている書店の関係者のうち、株主の男性がイギリス国籍であるとして香港と中国の当局に所在を問い合わせたことを明らかにした。

 ハモンド外相
 「イギリスの旅券を持つ(書店株主の)李波氏が行方不明になった。その問題を王毅外相に提起した」

 これに対し、中国の王毅外相は、男性は中国国民であるとして、
 「根拠のない臆測」
をしないように求めた。

 こうした中、複数の香港メディアは、男性の家族が捜索願を取り下げたと報じた。
 香港の新聞「明報」は、男性の妻が4日夜、男性から
 「自分の意志で中国本土に渡り、関係部門の調査に協力している」
と直筆で書かれたファクスを受け取ったため取り下げた、と報じている。



レコードチャイナ 配信日時:2016年1月6日(水) 14時20分
http://www.recordchina.co.jp/a126487.html

中国政府、香港書店関係者失踪に初言及―米華字メディア

 2016年1月5日、米華字メディア・多維新聞は、中国政府に批判的な書籍を出版・販売する香港の書店関係者が相次ぎ失踪した問題について、中国外交部の報道官が初めて言及したと報じた。

 香港メディアの報道によると、香港の銅鑼湾書店の株主、李波(リー・ボー)氏は先月30日に失踪したとされ、また書店関係者4人もここ数カ月、行方が分からなくなっている。
 香港の警察当局によると、李氏の妻は今月4日、李氏から「自分の意志で中国本土に渡り、関係部門の調査に協力している」と直筆で書かれたファクスを受け取ったとして、捜索願を取り下げた。
 英外務省は、不明者の1人が英国籍だとし、深刻な懸念を示した。

 この問題について、中国外交部の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官は5日の定例会見で、
 「関連状況を把握していないのでコメントすることはない」
とした上で、
 「香港は中国の特別行政区であり、香港の事務は中国の内政に属する。
 いかなる国も干渉する権利を持たない」
と強調した。



ニューズウイーク 2016年1月6日(水)15時33分 遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/01/post-4334.php

香港「反中」書店関係者、謎の連続失踪
──国際問題化する中国の言論弾圧


●抗議活動  李波氏ら消息不明となった書店関係者の捜査を求める香港の民主化活動家たち Tyrone Siu-REUTERS

 昨年10月から反共本の香港書店関係者の失踪が相次いでいるが、今年に入ってから中国治安当局の介入が明らかになってきた。
 失踪した香港人が外国籍を持っていることから、中国の言論弾圧が国際問題に発展しつつある。

◆失踪者からのおびえた電話──中国当局の監視の下か?

 昨年10月から関係者が相次いで行方不明になっている香港の「銅鑼(どら)湾書店」の5人目の犠牲者である李波氏が、突如連絡を絶ったのは昨年12月30日のことである。
 「銅鑼湾書店」は香港のコーズウェイ・ベイにある出版と販売を兼ねる書店で、中国政府に批判的な本を出版販売することで人気がある。
 李波氏は、その書店の株主の一人だ。

 12月30日午後4時、李氏はその妻と年末の買い物などに関する話をし、「いま忙しいからまた後で」と最後の言葉を残した。
 香港メディアの一つである「明報」が知らせたところによると、李氏は書店の店員には「出荷のために倉庫に行く」と伝え、午後5時半には倉庫にいたという。
 その夜、7時になっても李氏は家に戻らず、妻が夫の携帯に連絡すると携帯はオフになっていた。
 夜10時半になると李氏から妻の携帯に電話があった。
 見れば大陸の深センのエリヤ番号である。
 普段は広東語で話す夫が、突然中国大陸の普通語(標準語)で話し始めたのに驚いた。

 李氏は電話でつぎのように言った。
 「そんなに早くは帰れないと思う。
 今は調査に協力している。
 あの人たちはとても友好的で、いま私のご飯を買いに行ってくれている。
 でも食が進まない」

 会話の中の「あの人たち」とは「中国治安当局の人たち」のことか?
 李氏は
 「あの人たちは、もし私が協力的な態度を示せば、処理は軽くて済むと言っている。
 お前は私がこの(書店の)仕事を、早くやめてほしいとずっと言ってきただろう?」
とも言った。

 夜11時になると、また李氏から電話があった。
 今回も標準語だ。
 「大げさにならないようにしてくれ。
 できるだけ話が広がらないように。
 家のことは頼んだ」
という。

 今回もまた深センのエリヤ番号が妻の携帯に表示された。
 1月2日にも、無事を知らせる電話があった。
 今回は我慢できずに
 「ともかく、どこにいるのかを教えて!」
とせがんだが、その瞬間に電話は切れた。
 妻はすぐに香港の警察に連絡したが、香港の入管側には「香港を離れた記録」は残っていないという。
 実際、香港人が大陸に行く(戻る)ときの李氏の「回郷証」は家の中に置いたままだ。
 香港人は「大陸が故郷」という意味の「故郷に戻る通行証」のようなものを持っていて、ビザなしで大陸に行くことが出来るようになっている。
 中国大陸側が決めた名称だ。
 しかし出入境の記録は残るので、いつ誰が香港を出入りしたかがわかる。
 その記録がないのに、大陸にいるということは、大陸の中国治安当局が「拉致」という形で大陸に連行したとしか考えられない。

◆中英外交問題に発展か?

 実は次の項目で述べる桂民海氏の娘(イギリス在住)によれば、李波氏はイギリス国籍を持っているという。
 VOA(美国之音)が伝えた。
 もしそれが真実なら、中国はイギリス国民を拉致したことになる。

 イギリス外交部も黙っているわけにはいかなくなり、習近平国家主席が昨年エリザベス女王まで引きずり出して築いたはずの「中英黄金時代」は消えてしまうだろう。
 中国外交部報道官はこの問題に関して
 「詳細を知らない。
 このことに関する情報は今のところない」
と回答している。

 イギリスは、本来、人権問題には厳しい国で、だからこそチャールズ皇太子はダライラマ法王との関係を断つことを潔(いさぎよ)しとせず、昨年の習近平国家主席訪英の際の晩餐会にも出席しなかった。
 イギリス国民の一部は、そのことに拍手喝さいを送っている。
 そういった民意にも配慮してか、中国の北京裁判所で弁護士の浦志強氏に対する裁判が行われたときには、中国当局が外国の記者をシャットアウトしたことに対して、イギリスは非難声明を出すなどして、ささやかな抵抗を表示しているほどだ。

 もし李波氏がイギリス国籍を持っているのが真実であり、かつ今般の失踪が中国当局による拉致だと判明すれば、これは確実に大きな国際問題に発展していくことだろう。

◆他の4人の奇怪な失踪

 銅鑼湾書店には実は「巨流傳媒(メディア)有限公司」という親会社があるのだが、昨年10月17日、親会社の株主の一人である桂民海氏(スウェーデン国籍)がタイにいたときに、突然消息不明となった。
 桂氏の妻は、11月に夫からの電話を受け、ひとこと「無事だ」と言っただけで、その後、行方不明になったままだ。
 前出のイギリスに留学している娘は、駐英のスウェーデン大使館に救助を求めたが、未だいかなる情報も得られていない。
 スウェーデン国籍の者を中国当局が拉致したとなれば、今度はスウェーデンと中国の間の外交問題となる。

 10月24日には、銅鑼湾書店を主管する元社長の林榮基氏が突然いなくなった。
 11月5日に林氏の妻に夫からの電話があった。
 「無事だ」という一言を残しただけで、それ以上は何もわからない。
 そこで妻はすぐに香港の警察に連絡したが、一般の「行方不明者」として扱われ、今もなお情報がないままだ。
 10月26日、巨流傳媒の株主で総経理を務める呂波氏と業務経理を務める張志平氏の二人がともに「消えた」。
 このときまだ「消えて」いなかった李波氏が香港の警察に連絡したが、やはり一般の失踪者として扱われ、未だ情報は何を得られていない。

◆香港保安局の対応

 今年1月2日になると、香港の保安局は初めて見解を発表し「現在、積極的に調査している。
 もし関係者が香港以外の地にいることが判明した場合は、その当該地域の当局と連携を取りながら救助を試みる」とした。
 しかしこれらの経緯から、中国当局によって連行されていることは明らかなので、果たして香港政府が北京政府の意向に反して、香港市民のために動いてくれるか否かは疑問だ。

◆香港のメディア関係者と大陸の民主活動家

 個人的なことを書いて申し訳ないが、イギリスのBBC中文網(網:ウェブサイト)は拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に関して筆者を取材し、昨年12月25日、インタビュー記事を公開した。
 するとイギリスやアメリカを始め香港からも翻訳出版のオファーが殺到したのだが、驚いたのは北京にいる民主活動家から「記事を見ました」というメールが入ったことだった。
 BBC中文網のこの手の記事は中国大陸では検閲により削除されているはずである。
 「どのようにして見たのか?」
と聞くと、
 「簡単さ。壁越えをしているから」
と言う。
 「壁越え」とは「万里の防火壁」という中国大陸のファイアーウォールのことで、最近は技術が発達して、香港の禁書でも自由に見ることが出来るという。
 北京政府が警戒しているのは、このことだろう。

 たしかに銅鑼湾書店は、『習近平の情人(恋人、不倫相手)』というタイトルの本を出そうとしていたという噂は、早くから聞いていた。
 香港の出版社に、
 「銅鑼湾書店の失踪問題があるが、大丈夫か?」
と聞いたところ、
 「中国当局の言論弾圧は非常に厳しくなっているが、自分たちは負けない。
 むしろ、力を貸してほしい」
と言ってきた。
 大陸の民主活動家に今回の失踪事件に関して聞いたところ、
 「今はどこにでもスパイが潜り込んでいて、いったい誰が味方で、誰が敵なのか区別がつかないほどだ。
 まるで文革時代に戻ったようだよ」
と嘆いていた。

◆国際化することによって圧力を受けるはず──中国の言論弾圧

 外国籍の者までが中国当局に捕まるとなると、筆者自身も日本国籍だからと言って、香港にも行けなくなってしまう。
 最近では中国大陸に気軽に出かけることも自重しているが、香港でも危ないことになる。

 台湾の若者たちが大陸との間のサービス貿易協定に反対してひまわり運動を起こしたことはまだ記憶に新しいが、賢明な抗議だったと思う。
 さもなかったら台湾のメディアも北京政府のコントロール下に置かれて、反対する者は「当局」が逮捕するという事態になっていただろう。
 もっともこの「当局」は、現地の政府でなくてはならず、香港にしても「一国二制度」を保障する基本法があるので、大陸の「当局」が動いたのだとすれば、香港の行政法においても違法となる。
 そうでなければならない。
 ましていわんや、拘束あるいは拉致、連行された者が第三国の外国籍を持っていたとなれば、重大な違法行為である。

 ただ、こうした違法行為を中国が侵せば侵すほど、逆にそれによって中国の言論弾圧が外交問題となり、国際社会で糾弾されることになるので、その意味では積極的な意味合いを帯びてくる。
 すなわち、中国は国際社会において窮地に立ち、一党支配体制の強引な維持が危うくなるだろうということになる。

 言論の自由は人間の根幹であり、尊厳の問題だ。
 それを揺るがすものは、必ずいずれは人類によって裁かれるであろう。
 そう信じたい。



ニューズウイーク 2016年1月7日(木)18時01分 高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/01/post-4344.php

香港名物「政治ゴシップ本」の根絶を狙う中国
書店関係者「連続失踪」の影には、
薄熙来の重慶モデルを踏襲したかのような、習近平体制の検閲ライン厳格化がある


●踏みにじられた言論の自由 政治ゴシップ本を扱う書店として知られる銅鑼湾書店の入り口には「休息 CLOSED」のサインが(2016年1月1日撮影) Tyrone Siu-REUTERS

 政治ゴシップ本を扱う書店として知られる香港の銅鑼湾書店。
 その関係者5人が次々と失踪した事件が注目を集めている。

 事件の発端は2015年10月のこと。
 銅鑼湾書店を保有するマイティ・カレント・メディアの筆頭株主・桂民海さんが滞在中のタイのリゾート地から姿を消した。
 その後、同社株主の呂波さんが広東省深圳市で、銅鑼湾書店店員の張志平さんと林栄基さんが広東省東莞市でと、次々に失踪した。

 そして12月30日、銅鑼湾書店店主にしてマイティ・カレント・メディアの編集者である李波さんが香港で失踪した。
 失踪から3日後、李さんは広東省深圳市から香港の妻に電話をかけ、
 「(捜査に)協力している。騒がないで欲しい」
と話している。
 また、銅鑼湾書店に無事を伝える直筆のファックスも送っている。

 しかし、香港住民の李さんが中国本土に入境するためには「回郷証」という、パスポートに相当する証明書が必要となる。
 「回郷証」は自宅にあり、また出境記録も残されていないため、密出国の形で中国本土入りしたと考えざるをえない。
 なんらかのトラブルに巻き込まれていることは明らかだ。
 中国当局は認めていないが、強引に連れ去られた可能性が高い。

 李さんは昨年11月に香港メディアの取材に答え、失踪した仲間たちは中国当局に拘束された可能性が高い、それでも自分は「香港にいるので不安はない」と語っていた。
 香港の言論の自由に対する李さんの信頼は、はかなく裏切られてしまった。

 今回の事件は世界的に大きな注目を集めている。
 「言論の自由」の問題、中国本土とは別個の法体系を香港に保証している「一国二制度」の枠組みが踏みにじられたという問題、
 さらにはスウェーデン国籍の桂民海さん、英国籍の李波さんが連れ去られたという外交問題
が焦点となっている。

 いずれも重要な問題だが、ここでは視点を変えて中国の言論規制の変化について考えてみたい。

◆政府批判のSNSは検閲対象ではなかった

 ハーバード大学ケネディスクールのギャリー・キング教授は2013年、中国の検閲基準に関する研究を発表している。
 中国のSNSやネット掲示板でどのような書き込みが検閲対象になったかを調べたものだが、意外な事実が浮かび上がった。
 政府批判の書き込みが検閲対象になることは少なかったのだ。
 削除されていたのは、デモやストライキの呼びかけなど、人を集めてなんらかの行動を起こすよう呼びかける書き込みが中心だった。

 この研究はネットを対象としたものだが、新聞や書籍、雑誌でも、ネットよりは規制が厳しいとはいえ同様の傾向がある。
 ジャーナリストや作家は問題となる一線を理解し、そのぎりぎりで言論活動を続けてきた。

 ところが習近平政権誕生以後、検閲のラインは変化し次第に厳しくなりつつある。
 拙著『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』に詳述したが、習近平政権は「ネット世論の陣地」掌握を命題に掲げ、人権活動家やオピニオンリーダーを激しく弾圧、逮捕するとともに、アニメや漫画、ブロガーを活用したイメージ戦略を採用している。直接行動を呼びかける言論だけではなく、政権のイメージにとってマイナスとなる言論をも規制しだしたわけだ。

 習近平体制の手法を先取りしていたのが、失脚した元重慶市共産党委員会書記の薄熙来だ。
 大規模な革命歌コンサートを開き、地元テレビ局に中国共産党賛美を中心とするよう指示した薄熙来は、自らを毛沢東の後継者、革命の申し子として印象づけ、人民の支持を自らの政治力に変えようとしていた。

 その一方で、自分のイメージを汚すような言論は徹底弾圧する姿勢を示しており、薄熙来批判の風刺漫画をリツイートした人や「薄熙来は大便」と書き込んだ人が労働矯正処分を受けるという事件もあった。
 薄熙来が重慶市という地方自治体で展開していた手法を、習近平が踏襲したという見方もできるだろう。

◆配本数が10分の1に減少した出版社も

 銅鑼湾書店の問題もこの流れに位置づけられる。 
 「一国二制度」によって言論の自由が保証された(はずの)香港では、中国政治指導者の政治ゴシップ本が粗製濫造され、大量に出版されている。
 購入者は香港人だけではない。中国人観光客が本土では手に入らない珍しいおみやげとして購入してきた。
 この香港政治ゴシップ本を潰そうというのが狙いだろう。

 銅鑼湾書店関係者の失踪以外でも、昨年から中国の税関で荷物検査が徹底され、政治ゴシップ本が没収されるケースが増えている。
 また香港の大手書店には中国政府の圧力がかかり、政治ゴシップ本の販売をとりやめるケースも出ているという。

 政治ゴシップ本の出版で知られる香港新世紀出版社の鮑朴社長は昨年10月、米紙インタビューに答え、香港書店業界で70%のシェアを持つ聯和出版が習近平就任以来、政治ゴシップ本の仕入れ数を大幅に減らしていることを明かしている。
 香港新世紀出版社の配本数はわずか10分の1にまで減少しているという。
 このままでは香港名物ともいえる政治ゴシップ本市場の存続すら危ぶまれている。

 また人民日報社旗下の環球時報は5日の社説で、「香港は敵対勢力による国家政治制度の転覆活動の基地になってはならない」と主張し、香港政治ゴシップ本の取り締まりを支持する姿勢を明らかにしている。

 かつて香港は中国の窓だった。この地を通じてさまざまなコンテンツが中国に流れ込み、大きな影響を与えていった。
 しかし香港返還、中国本土の経済成長を経た今、すっかり様変わりしてしまった。
 中国に影響を与える窓になるどころか、中国から非民主的な検閲が流れ込みつつある。



2016.1.13(水) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45753

香港と中国本土の関係:
出版して誘拐される?
(英エコノミスト誌 2016年1月9日号)

 書店関係者の失踪は香港の自治に関する疑問を投げかけている
 香港で出版社員5人失踪、「習主席の恋愛本」絡みで中国当局が拉致か

 慎ましさは香港の銅鑼湾の派手な店頭にはあまり馴染みのない特徴だが、小さな書店の目立たない入口は、その店の最近の悪評を覆い隠している。
 薬局と衣料品店に挟まれた「銅鑼湾書店」は、中国の秘密諜報員による拉致疑惑にまつわる謎と、旧英国植民地の中国統治下での自治に関する激しい議論の的になっている。

 踊り場のある階段を上ったところにある書店の扉は、今は鍵がかかっている。
 ポツリポツリと書店を訪れるのは、ここ数カ月で姿を消した書店関係者5人に関するニュースに興味を持つジャーナリストや通行人だ。

 多くの香港人は、中国本土の諜報員が関係しており、失踪した男たちは店のゴシップ本が原因で標的にされたのではないかと心配している。
 最近販売されている書籍の題名には、
 『2017年習近平(国家主席)崩壊』や『
 習近平と長老たち:頂上決戦』
などがある。

★.香港の「高度の自治」が失われたら・・・

 中国が1997年に英国から香港を取り戻したとき、中国は「高度の自治」を香港に与えることに同意した。
 遠慮なく共産党を批判する人たちは、本土の批判者たちによく起きるように、警察によって「行方不明」にされることを恐れずに自分たちの意見を自由に表明することができた。
 それだけに今回の一件に大きな関心が寄せられている。

 「夜中のドアのノックは、香港で我々が心配しなければならないことではなかった」。
 香港の有力英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(最近本土の実業家によって買収された新聞)のコラムニストは、こう書いた。「
 だが、もし今心配するなら、我々の生活様式の終わりだ」


<<有料会員のみ>>





● BBC ニュース 2016.1.11 視聴時間 02:51
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45745

香港の書店で相次ぐ失踪 中国政府の汚職や色恋を出版



レコードチャイナ 配信日時:2016年1月16日(土) 13時0分 相馬勝
http://www.recordchina.co.jp/a127084.html

中国人の団体客が消えた香港
=書店関係者の行方不明事件で今年も波乱
―反中機運、高まる気配?

 昨年末、香港を訪れたが、なぜか漠然と「何か、いつもと雰囲気が違うな」と感じた。
 その「何か」が分からない。
 週末に訪れたためか、外に出ても、人であふれており、いつもの風景が展開されていたにもかかわらずだ。

 それが、年明け早々に銀座に出かけた際、すぐに分かった。
 香港では、大陸からの中国人観光客の団体が見えなかったのだ。

 年末だったせいか、いつも泊まるホテルに近いデパートは客であふれており、とくに日本の食材を中心にした地下の食品売り場は買い出しに来た人々で歩くのもままならないほど混雑していたのだが、街なかで中国語特有の甲高くて、大きな声が聞こえなかったのは確かだ。
 1、2年前に比べて、明らかに中国人観光客が少なくなっているのだ。

 銀座では大型のマイクロバスがデパートの前に停車して、多くの中国人観光客でにぎわっており、店内でもいたるところで中国語が飛び交っていた。
 つい数か月前は、香港でも同じような風景を見ることができたのに、なぜ香港から中国人観光客が消えてしまったのか。

 ある香港の知人は「中国人バイヤーの粉ミルクなどの爆買で、香港政府が中国市民の香港訪問を週1回に制限したためだ」と語っていた。
 このため、中国人バイヤーが激減したのに加え、一般の中国人観光客も香港の反中ムードに反発して、訪問客が激減したという。

 昨年10月までの5カ月間連続で香港を訪問した中国人観光客が減少しており、10月は前年に比べて3万人も減っている。
 この傾向は今年も続きそうだ。

 このコラムでも書いたが、香港では昨年10月から12月にかけて、香港の書店関係者が5人次々と行方不明になっているからだ。

 真相はやぶの中だが、彼らは習近平主席の女性関係についての本の出版を計画しており、それが習主席の逆鱗に触れ、中国当局が身柄を拘束したのではないかと香港メディアは報じている。

 1月10日の日曜日に行われた中国への抗議デモには6000人以上の香港市民が参加したほか、中国寄りの行政長官や議会議長、政党関係者らが、中国政府は香港の独自性を50年間認めた「『1国2制度』を守るべきだ」などのコメントを出さざるを得ない状況だ。

 一昨年は学生らが香港の幹線道路を占拠する「アンブレラ(雨傘)革命」が吹き荒れたが、今年も香港の反中機運はますます高まりそうな気配が濃厚だ。



時事通信 1月17日(日)22時37分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160117-00000112-jij-cn

失踪の香港書店関係者は拘束下
=「出頭」と国営通信―中国

 【北京時事】中国共産党体制や国家指導者を批判する書籍を取り扱う香港の「銅鑼湾書店」関係者5人が相次いで失踪した事件に関連し、国営新華社通信は17日夜、
 昨年10月に最初に行方不明となった同書店の筆頭株主の桂敏海氏が拘束下にあると認めるとともに、桂氏が「犯罪に関わっており、関係者も捜査に協力している。さらに捜査を進めている」と伝えた。

 具体的な容疑は明らかにしていないが、
 中国国営メディアが今回の件で捜査や拘束の事実を認めたのは初めて。
 スウェーデン国籍を持つ桂氏は、タイで行方が分からなくなり、中国当局に連れ去られたとの見方が出ていた。
 新華社は、桂氏が2003年に飲酒運転で女子大生を死亡させた事件をめぐり、昨年10月に帰国し出頭したと伝えた。
 桂氏は04年に執行猶予判決を受けたが、被害者の親が厳罰を求めたため、投獄を恐れ、他人の身分証を使って密出国し海外を転々。
 06年に裁判所が執行猶予を取り消し、公安当局が行方を追っていた。

 桂氏は、遺族への贖罪(しょくざい)意識が高まった上、自身の父親の最期をみとれなかったこともあり、帰国したという。
 新華社によると、桂氏は出頭後、香港や海外で「失踪事件」と報じられたことについて「自分の帰国に介入したり、悪意を持って騒ぎ立てたりしないでほしい」と述べたとされる。
 中国当局は、書店に関する問題も捜査している可能性が高い。

 今回の失踪をめぐっては、中国当局が「一国二制度」の下で言論・出版の自由が認められた香港に越境し、関係者を連行しているとの見方も出ており、中国政府への批判が高まっていた。 



毎日新聞 1月18日(月)0時38分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160118-00000000-mai-int

<香港>書店関係者を拘束…中国当局が認める

 【北京・西岡省二】香港で中国共産党や国家指導者に批判的な書籍を取り扱う「銅鑼湾(コーズウェイベイ)書店」の関係者5人が相次いで失踪した事件で、中国国営新華社通信は17日夜、昨年10月に行方不明になった同店の筆頭株主、桂敏海氏が当局の拘束下にあると報じた。
 国営報道機関が拘束の事実関係を認めたのは初めて。

 ただ、新華社は桂氏について「中国国内で起こした交通事故を反省し、自ら出境し、出頭した」などと伝え、出版物や書店運営との関わりは触れていない。

 5人は昨年10月から12月にかけて相次いで失踪した。
 いずれも中国に出た記録はなく、何者かに連れ去られた可能性が指摘されていた。
 うち1人は英国籍、1人はスウェーデン国籍を所有。
 両政府が安否確認に乗り出していることから、中国外務省は「内政干渉だ」と反発していた。

 香港からの情報によると、同店は中国で発禁になった共産党批判本や民主化思想書などを専門に扱っているという。
 店の存在が香港の「1国2制度」の指標の一つとも言われていた。



中国当局 不明の書店関係者の拘束認める
日本テレビ系(NNN) 1月19日(火)5時15分配信


レコードチャイナ 配信日時:2016年2月6日(土) 9時0分
http://www.recordchina.co.jp/a128581.html

失踪していた香港の書店関係者3人、
中国本土で拘束
=中国当局が香港警察に通知―米メディア

 2016年2月5日、ロイター通信によると、失踪していた香港の書店「銅鑼湾書店」の関係者3人について、中国当局が拘束していることを明らかにしたと報じた。

 香港警察は4日、中国広東省の公安当局から、香港の書店「銅鑼湾書店」の関係者3人を拘束しているとの通知を受け取ったことを明らかにした。
 銅鑼湾書店は中国共産党に対して批判的な内容の書籍を扱っており、3人は昨年11月から行方が分からなくなっていた。
 公安当局の通知によると、3人は違法な犯罪活動に従事したため、中国本土で拘束されたと述べているが、拘束されている場所などの詳細については知らせていないという。
 ほかに2人の銅鑼湾書店の関係者も失踪後に中国当局に拘束されたことが明らかになっている。
 中国当局は、5人の失踪への当局の関与や5人が拘束された経緯などについても明らかにしていない。



BBC News 2月8日(月)18時13分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160208-10000702-bbcv-int

「発禁になると人気が出る」 中国指導部のゴシップ本事情



 中国政府に批判的な書籍を扱う香港の出版関係者が昨年秋以降、相次いで失踪した事件で、失踪した人たちが次々に中国国内で姿を現しテレビで過去の罪を「自白」する事態が繰り返されている。
 書店が扱っていたのは主に、中国共産党幹部のゴシップ本で、その多くが発禁処分を受けていた。
 香港で盛んなゴシップ本市場について、BBCのジュリアナ・リュウ記者が香港の民主派リーダーで香港立法会(議会)議員の李卓人氏に尋ねた。
 李議員は、「中身が本当かどうかは問題じゃない」、「発禁された方が本は人気が出る」と話す。




2016年06月17日(Fri)  BBC News
http://www.bbc.com/japanese/36557277
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7090

失踪の香港書店店長 「歯ブラシ自殺監視下」にあったと


●香港で記者会見する「銅鑼湾書店」の林栄基店長(16日)

 香港で拉致され中国本土で8カ月にわたり拘束されていた「銅鑼湾書店」の林栄基店長(61)は16日夜、香港で会見し、自殺しないよう歯ブラシも自由に使えなかったなど、24時間の監視下にあった拘束状況を赤裸々に語った。

 香港で中国政府に批判的な本を扱う「銅鑼湾書店」の店長など関係者5人が昨年10月以降、相次ぎ失踪。
 親会社の桂民海氏はまだ拘束中だ。
 事件は中国が香港の表現の自由に介入している証拠だと、香港で強い危機感をもって注目された。

 林氏は昨年10月24日、恋人に会うためいつものように広東省に渡ったところ、深圳市で拘束されたという。
 翌朝、手錠と目隠しをされた状態で電車で東部の寧波市に連行され、そこで3月まで拘束され尋問された。

 24時間監視される狭い独居房に監禁され、身体的な虐待は受けなかったが、恐怖で心理的に追い詰められていたという。

 室内の家具はプラスチックのラップフィルムで覆われていた。
 自殺防止のためだろうと、林氏は言う。

 「渡された歯ブラシはとても小さかった。
 ナイロンの紐がついていた。
 歯を磨く時は看守が紐の反対側を持っていたし、終わったら返さなくてはならなかった。
 歯ブラシを飲み込んで自殺を図るんじゃないかと、思われていたのだろう。
 前に誰かがやったに違いない」
と林氏は話した。

 3月に同僚3人が釈放され香港に送還されると、林氏は広東省韶関市に移動させられた。
 そこでは監視が少し緩やかになり、14日に香港に戻るまで過ごした


●記者会見する林氏

■特別チーム

 書店関係者5人の拘束はいったい誰の指示によるものだったのか、議論が続いている。
 中国政府指導部トップだったという意見もあれば、中央政府に気に入られたい下級役人だったのではないかという推理まで、内容はバラバラだ。

 習近平国家主席の私生活に関する暴露本の出版が目前だったからではないかという見方もある。

 林氏は確かなことは分からないが、自分は政府の「特別捜査チーム」に拘束されていたと話した。
 動かすには中央政府幹部の承認が必要な政府横断的な特別精鋭組織で、その成立は文化大革命までさかのぼるという。
 当時は毛沢東と対立して失脚した劉少奇など、中国共産党幹部の捜査に使われたとされる。
 最近では、収賄罪などで無期懲役判決を受けた元最高指導部メンバーの周永康・前共産党政治局常務委員や、同様に失脚した重慶市トップだった薄熙来・中央政治局委員などの捜査を主導したと考えられている。

■ハードディスク

 林氏は、自分は釈放の条件として、巨流発行公司(マイティ・カレント)の本を購入した中国本土の人間の名前が収められた謎のハードディスクを香港で手に入れるよう指示されたと話した。

 3月に釈放された英国籍の李波氏も同じ条件を提示され、数百人の名前が入ったディスクを中国当局に渡したはずだと林氏は言う。

 「そこで得た情報をもとに自分は尋問されたのだと、今は分かる」
と林氏。
 「読者については決して話さなかった。
 巻き込まれてしまうのが心配だったし、そうすれば香港の人たちは私が裏切ったと思うはずだ。
 でも私はそんなことはしていない」。

 密告者としてまた中国に戻るのではなく、釈放条件を無視して記者会見を開くことにしたと林氏は述べた。

 「これは私だけの問題ではない。
 本屋の問題でもない。
 これはみんなの問題だ。
 香港の人にとって、ここが譲れない一線だ。
 やみくもな暴力に屈服するわけにはいかない」

■失踪した香港の書店関係者

1. 呂波
 2015年10月15日に深圳市で行方不明に。
 「マイティ・カレント・メディア」ゼネラル・マネージャー。

2. 張志平(32)
 2015年10月15日に東莞市で所在確認後、行方不明に。
 「マイティ・カレント・メディア」ビジネス・マネージャー。

3. 桂民海(51)
 タイ滞在中の2015年10月17日に失踪。
 中国生まれのスウェーデン国籍。
 「マイティ・カレント・メディア」オーナー。

4. 林栄基(60)
 2015年10月23日に香港で所在確認後、行方不明に。
 「銅鑼湾書店」店長。

5. 李波(65)
 2015年12月30日に香港で失踪。
 「銅鑼湾書店」株主で英国籍。

(英語記事 HK missing bookseller was on 'toothbrush suicide watch')



ニューズウィーク 2016年6月17日(金)19時30分  [香港 16日 ロイター]
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/06/8-4.php

拘束された香港「体制批判」書店店主が会見、
中国当局の監禁を告発

 中国共産党に批判的な本を扱う香港の書店「銅鑼湾書店」の関係者ら5人が昨年行方不明となった問題で、解放されて2日後の16日に香港で記者会見を行った書店店主、林栄基さんが、自分は中国当局に8カ月以上拘束されていたほか、5人のうち1人は香港から拉致されたと語った。

 林氏は、昨年12月末に失踪した同業者の李波氏は香港で拉致されたのであり、中国当局による香港への「越権行為」は容認できないと述べた。

 自らについて林氏は、昨年10月に深センで拘束され、14時間かけて東部寧波に連行されたと説明。
 1人で個室に監禁されて本土での禁書販売について繰り返し尋問を受けたと述べた。
 この間は、家族との連絡も弁護士との接触も禁止されたという。
 その後、広東省の韶関に移された。

 2月に林氏ら4人が中国のテレビで、本土における「違法な書籍販売」で拘束されたと証言したが、林氏は、証言内容は中国当局が「台本を作った」もので、当局の要求通り話すよう強要されたと述べた。

 林氏は疲れた様子で、この事件は「明らかに香港の権利に抵触」しており、発言する必要を感じたと会見を実施した経緯を述べた。



日本テレビ系(NNN) 6月19日(日)13時15分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160619-00000016-nnn-int

書店関係者“不当拘束”香港で抗議デモ



 中国共産党に批判的な本を扱っていた香港の書店関係者が、中国当局に不当な拘束を受けたと主張している問題で、香港市民らが18日、抗議デモを行った。

 抗議デモには、拘束されていた書店の店長・林栄基さんを含む約6000人が参加し、「香港の言論の自由を守る」などと訴えた。

 この問題は、香港の書店関係者ら5人が、中国本土で発行が禁止されている本を扱った疑いで中国当局から拘束などされたもの。
 林さんは今月、香港に戻り、16日の会見で、中国当局から拘束された際に、当局が用意した自白のコメントを読むよう強要されたなど、不当な拘束を受けたと話していた。

 一方、関係者ら5人のうち3人が地元メディアに対し、「林さんの主張は事実とは異なる」と話しているが、林さんは
 「3人は中国本土に親族がいるので、真実を話せない」
と主張している。



【激甚化する時代の風貌】



_