2016年1月31日日曜日

米中軍事衝突の可能性(2):米艦、中国実効支配の島沖12カイリ内を航行

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● トリトン島

 アメリカがおそるおそる中国に対峙しはじめた
といった感じがする。
 選挙を控えて、オバマの考えにも若干の動きがでてきたのだろうか。
 アメリカが強く踏み込むことは、いまのところ考えられない。
 そっと、足を入れた、といったところだろう。


●テレビ朝日系(ANN) 1月30日(土)23時20分配信


●TBS系(JNN) 1月31日(日)1時18分配信


●フジテレビ系(FNN) 1月30日(土)22時44分配信



読売新聞 2016年01月30日 23時16分
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160130-OYT1T50064.html

米艦、中国実効支配の島沖12カイリ内を航行

 【ワシントン=大木聖馬】米国防当局者は30日、米軍のイージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」が南シナ海・パラセル(西沙)諸島で中国が実効支配するトリトン島の12カイリ(約22キロ)内で、航行の自由を訴える巡視活動を実施したことを明らかにした。

 同海域で活動を行ったのは現地時間の29日。米軍による巡視活動は、昨年10月にスプラトリー(南沙)諸島の人工島・スービ礁で実施して以来だ。米海軍の活動を誇示することで、力による海洋進出を続ける中国をけん制する狙いがある。

 米国は今回、トリトン島の領有権を主張する中国、ベトナム、台湾には事前通報をせずに国連海洋法条約で認められている、敵対行動を取らない「無害通航」で通過したという。今回の行動について当局者は、「過度に海洋権益を主張して米国や他国の(航行の)自由を制限していることに挑戦するものだ」と説明した。



毎日新聞 1月30日(土)21時25分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160130-00000074-mai-int

<西沙諸島>米艦、12カイリ内に…中国が実効支配

 ◇「航行の自由」作戦

 【ワシントン和田浩明】
  米国防総省は30日、中国が全域を実効支配する南シナ海・西沙(英語名パラセル)諸島にあるトリトン(中建)島の12カイリ(約22キロ)内に米海軍艦船を派遣する「航行の自由」作戦を実施したと発表した。
 米国は昨年10月にも南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で同作戦を実施。今後も定期的に続ける方針だ。

 西沙諸島では、1974年にベトナムと中国が武力衝突し、現在は中国が全域を実効支配。
 ベトナム、台湾が領有権を主張している。

 米海軍横須賀基地を母港とするイージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」が派遣され、現地時間30日に航行した。
 同省は、トリトン島周辺海域で外国船舶の航行時に事前通告や許可取得が求められるなど「過剰な要求」が行われていると主張。
 対抗措置として、領海内で国際法上認められる「無害通航権」に基づき事前通告なしで航行したと説明した。
 同省は「領有権の主張について特定の立場を示すものではない」と強調。
 あくまで米国を含む全ての国に認められた海洋・空域の合法的な使用の権利などを保護することが目的とした。

 南シナ海では28日、台湾の馬英九総統が、ベトナムやフィリピンなどが領有権を主張する南沙諸島・太平島を訪問し、中国もこれを支持。
 米国務省は「対立の平和的解決に資さない」と不快感を表明した。
 こうした事態を受けた今回の作戦には、航行の自由を侵害するような一方的な領有権の主張を控えるよう促す意図がある。
 トリトン島付近では、中国が2014年5~7月に石油掘削装置(オイルリグ)を設置するなどしてベトナムと対立。双方の船が衝突しベトナム船が沈没する事件も起きた。

 ◇中国「法に違反」

 【北京・石原聖】中国の領海法第6条によると、中国は「外国の非軍用船」に「無害通航権」を認めているが「外国の軍用船」には「中国政府の許可を取ること」を義務付けている。
 中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)副報道局長は30日、談話を発表し
 「米軍艦は法に違反し、無断で中国領海に入った」と批判。
 「中国の法律を尊重・順守するよう促す」と要求した。

 中国国防省の楊宇軍報道官も同日、「違法行為が関係海域の良好な秩序を破壊した」との談話を発表した。


●ANNニュース


WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年02月09日(Tue)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6044

日本が採るべき新たなる対中戦略 
情報共有と“逆A2/AD戦”の必要性

 新アメリカ安全保障センター(CNAS)のヴァン・ジャクソン客員研究員が、Diplomat誌ウェブサイトに1月6日付で掲載された論説において、
 アジアで対中バランスをどう維持するかにつき、
 海域の常時哨戒を行い、
 中国による一方的行動を速やかに把握してその情報を広くシェアすること、
 中国に仕掛ける気を起こさせない抑止力を持たせること
といった、現実的な提案を行っています。

■対中戦略に求められる3つのこととは

 アジアにおける米国の政策の目的は、安定した自由な秩序を維持することだが、最近はアジア諸国間の信頼の欠如、軍事力強化、領土問題とナショナリズムによって、この目的の達成が阻害されている。
 しかも、中国は微細な主張を強引に通そうとし続け、予想外の紛争を起こしかねない。

 現在の米国の政策は、これらの問題を止めようとしていない。
 しかしこのまま進めば、米国のアジアにおける利益は阻害される。
 何ができるだろう?
  戦争にもならず、一方的に譲歩することにもならない解決策が今ならいくつかある。

1].一つは、米国の同盟相手及びパートナーのうち、
 中国と紛争に陥る可能性が高い国、例えば日本、台湾、ベトナム、フィリピンの軍事力を高めることである。
 これは、これら諸国に中国と同等の軍事力を備えさせるということではなく、抑止力を高め、中国の行動を慎重にさせるためである。

2].もう一つは、情報をできるだけガラス張りにすることである。
 中国は南シナ海領土紛争で、軍ではない力を行使し、「これは力の行使ではない」と強弁するが、情報をガラス張りにすれば、このようなことを難しくすることができる。
 そうなれば、いずれの側が仕掛けたかもわかるし、中小国が団結して中国を非難しやすくなる。

 そのためには、米国はアジアの関連国の海上偵察能力を向上させるのが良い。
 それは既にフィリピン、インドネシアで行っていることであり、シンガポールにP-8哨戒機を供与することも正しい一歩である。
 しかしこれはまだ「大海の一滴」であり、2017年に予定されるMQ-4C Triton無人偵察機配備等で米国が収拾する情報は、同盟国、友好国ともっとシェアするべきである。

3].さらにもう一つは
 いくつかの同盟国・友好国の軍事力を高め、中国がこれら諸国との初期段階の小さな戦闘では勝てないようにしておくことである。
 これは、中国が米国に対して取っている「接近阻止」戦略を逆に行くものである。
 そのためには、これまでのMD(ミサイル防衛)、巡視船の供与だけでは不十分である。
 水中機雷、潜水艦、巡航ミサイル、種々の無人機の供与が不可欠だが、これは例えばベトナムに対する従来の政治的・法的制限そして融資上の制限措置を解除することを意味する。
 もっとも重要なことは、先端ミサイル、無人機の供与を制限しているミサイル技術管理レジーム(MTCR)を改正することである。

 以上では生ぬるいと言う者がいるだろう。
 逆に以上の措置は、戦争の危険をかえって高めるという者もいるだろう。
 米国の技術流出を心配する者もいるだろう。

 しかし、以上の措置は、戦争と一方的譲歩の中間を行くものである。
 今日の技術開発は軍事研究より民需部門で行われており、技術の流出を過度に心配しても仕方ない。
 如上の3つの方策は並立し得るものでもあり、将来の大統領の対アジア政策を最も柔軟なものにできるだろう。

出典:Van Jackson,‘Rethinking US Asia Policy: 3 Options Between Appeasement and War’(Diplomat, January 6, 2016)
http://thediplomat.com/2016/01/rethinking-us-asia-policy-3-options-between-appeasement-and-war/

*   *   *

■米軍自身の言及なき提案

 この論説の筆者Van Jacksonは、空軍の朝鮮語専門の情報担当としてキャリアを開始、その後一貫してアジア太平洋関連の国防畑を歩み、2009年から2014年まで国防長官の顧問として朝鮮半島等を担当してきた人物です。
 この論説は、アジアで対中バランスをどう維持するかについて現実的な提案を行っており、オバマ後の政権を主たるターゲットとした提言でしょう。

 提案の肝は、
 海域の常時哨戒を行い、
 中国による一方的行動を速やかに把握してその情報を広くシェアすること、
 同盟相手・友好国に中国との小型戦闘では勝てる力をつける、
 つまり中国に仕掛ける気を起こさせない抑止力を持たせること(中国が米国に対して適用している「接近阻止:の戦略を逆用)、
 そのために水中機雷、潜水艦、巡航ミサイル、種々の無人機の供与まで検討すること
です。

 しかし、気になる点もあります。
 まず、米軍(特に海軍、海兵隊)自身についての言及がほとんどありません。
 豪州の役割についても言及がありません。
 この論説の趣旨には賛成できますが、アジアの安定を地域諸国の間のヤジロベエ的相互抑止に委ねてしまおうという発想であるとすれば、要注意です。

 そして、日米同盟の役割について言及がありません。
 日本で論議を呼ぶのを警戒したのか、それとも、国防省でも日本担当者以外のマインドはこの程度のものなのかは分かりません。

 東アジアのバランスについては、中国、北朝鮮の核兵力、ロシアの新型巡航ミサイルが呈する脅威等も議論する必要があります。
 3月末には米国で核安保サミットが開かれるので、立場を整理しておく必要があります。

 日本の対中抑止力を整備するためには、日本の空母保有を米国が明示的に認めること、F35の供与を急ぐこと、巡航ミサイル、無人機技術を供与することが有効でしょう。







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2016年1月30日土曜日

中国GDPは25年ぶり低水準(4):迫り来る「メガトン級の巨大危機」、「二人っ子政策」と「AIIB」で経済復活なるか

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東洋経済オンライン 2016年01月30日 山内 英貴 :GCIアセット・マネジメント代表取締役CEO
http://toyokeizai.net/articles/-/102625

迫り来る「メガトン級の巨大危機」に備えよ
リーマンショックを予見した運用者が語る

2016年の金融市場は波乱の幕開けとなった。
原油価格は1バレル当り30ドル割れまで下落が続き、通貨人民元も急落。中国株式市場は導入したサーキットブレーカー制度により、取引停止が続いた末、制度そのものを停止。
世界の株式市場でもボラティリティが高まっている。
今後、金融市場はどうなるのか。
2006年末にサブプライムローン専業会社が破綻、2007年2月末の上海株ショックの頃から、来たるべき大暴落=リーマンショックを予言していた運用のプロが山内英貴氏である。
山内氏に現状をどう見るか、語ってもらった。

◆リーマンショックは終わっていない

 年明け以降の市場は1997~98年の通貨危機の頃と似ていて、まさにデジャヴという感じだ。
 過去数年間続いていた資本の流れが逆流し、キャピタルフライトの兆候が明らかとなった。
 ある意味で「リーマンショックは終わっていない」といえる。
 米国はグリーンスパン元FRB(連邦準備制度理事会)議長の時代(1987年8月~2006年1月)から、金融は緩和的でマーケットフレンドリーであり、株式相場が下落しそうになると中央銀行が支えるということを続けてきた。

 そのことで膨れあがったバブルは、リーマンショックによりいったん弾けた。
 しかし、中国を中心とする新興国が、先進国のバブルを肩替わりする形で、債務をどんどん積み上げて、世界経済の成長を引っ張った。
 先進国が敗戦処理を行う時間を中国が稼いだわけだ。
 つまり、
 リーマンショックは単に、米国から中国へ、先進国から新興国へバブルを移転しただけ
とみることができる。
 しかし、いよいよそれが限界に来た。

 米国はいつも同じ行動をとる。
 自国経済が調子に乗りすぎてバブルが膨らむと、ほかへ移転させる。
 1985年のプラザ合意がそうで、これをきっかけにドル安円高に反転、日本が世界経済の牽引役に替わった。
 しかし、1990年代に入り日本のバブルも弾けた。
 今回は、中国がバブルの肩替わりのツケを負う形となった

現状はグローバルに見て、もはや牽引役がいないところまできている。
 現象としてはすべての資産価格が高くなっている。
 株価も足元では調整が入って少し売られたが、長期スパンで見れば非常に高い水準である。
 債券もどこでも超低金利で高値。
 原油をはじめとするコモディティ(商品)価格はこの1年で下落してきたが、その前はもの凄く高かったわけで、バリュエーションが高まりすぎた結果、まさに逆回転を始めている。


●画像

 1997年のアジア通貨危機もバブルが弾ける原因はドル高だった。
 ドル高が続くと、資本が米国・ドルに向かい、グローバルにつながっている経済の中の弱いところから綻びが出始める。
 当時は通貨をドルペッグしていたタイから始まったが、今回は原油やドルペッグの人民元から始まっている。
 この年末年始で大幅に下落したものの、これで終わるとは到底思えない。

◆中国はしばらく頑張れる

 ただし、人民元の大暴落や世界中の株価の大暴落がということがすぐに起きるとは思っていない。
 中国は当時の東南アジアに比べたらはるかに余力があり、強烈な規制を行うことも可能なので、しばらく頑張れる。
 クラッシュは誰も喜ばないので、先進国の中央銀行もいろいろな手を打つだろう。
 ただ、調整を経て再び巡航速度に戻り、FRBが利上げを続けて行うといったことが可能になるかといえば、それは無理だと見ている。

 何しろ、債務が積み上がりすぎている。
 日本や欧州では政府債務が膨らんでいる。
 米国は全体として債務は落としてきた。
 これが資産価格にネガティブに働かなかったのは、中国ががんばったおかげ。
 米国内にもシェールガス・オイルの開発企業の発行したハイイールド債など低信用市場のバブルはあるが、局地戦だ。
 巨大なバブルは新興国にある。

 原油価格の1バレル100ドルへの高騰は供給側に原因があるわけではなく、中国の爆買い、需要の高まりによるものだったので、今の原油安は今後の新興国の苦境の予兆といえる。
 先進国の国債が大きく売られるということはなかなか起きにくいので、新興国の中の脆弱な国で問題が深刻化する。

 新興国ではブラジルやロシアのほか、通貨がドルペッグし、原油価格の高騰に政府の財政が依存しているサウジアラビアも厳しい。
 中国は民間のドル建て債務が急激に膨張しているので、人民元切り下げでデフォルトが頻発するという形になる。
 昨年から、中国の不動産会社がドル建ての債券の償還を増やしており、これがキャピタルフライトに見えていることもある。

 ハイイールド債を組みこんだ投資信託などは日本にも多くの投資家が投資している。
 昨年からハイイールド債のデフォルトが出始め、ハイイールド投信の償還停止や解約停止が起き始めて、暴落の予兆が出ている。

 債務が積み上がりすぎているため、中央銀行が緩和をしても効果が薄くなっている。
 先日のECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁による追加緩和をコミットする発言の効果も一日しか持たなかった。
 モルヒネを打ち過ぎて効かなくなっている。
 資産価格の投げ売り状態が出て、債務を軽くしないと解決しない。

 中国政府はやはり勘違いをしている。
 市場も管理できると思っている。
 先進国はいろいろな経験をして結局は、どんなに介入しても市場を管理できないことを理解している。
 中国は、表向きは自由化を標ぼうしているが、政府に都合のよい方向に向かっていれば市場にまかせるが、そうでない方向に向かうと管理しようとする。

 米国から祖国のためにと参加していた優秀なスタッフも、
 この1年ぐらいで民間企業に戻ったりして去っている。
 結局、党中央のエリートや習近平が反対すれば、改革は進まないからだ。
 中国人自身が不安を感じているので、キャピタルフライトも起こる。
 中国国内でお金を稼いでも、家族と資産は外国に置くというお金持ちも多い。

◆中国政府は解決できず、米国は"利下げ"へ

 よく、中国には貯蓄が潤沢にある、外貨準備に余裕があるので、自力で解決できるという見方が語られる。
 しかし、私は懐疑的だ。
 それには、資本規制をガチガチにして資金流出しないように縛ってしまい、ゼロ成長を甘受して、時間をかけて構造調整を行うことになる。
 だが、それをやれば、
 失業が増大し社会不安が高まるので、政治的に保たないと考える。
 共産党の一党独裁体制が維持できなくなる。

 いつも、危機の前には擁護派が出てくる。
 1997年にも、タイの中央銀行が対処できるという主張をしていた人々がいた。
 いわゆる“This time is different” theory (「今回は違う」理論)だ。

 世界が苦しんでいる中で、米国だけが単独で立ち直っていくという姿も描きにくい。
 注目点は、次の利上げがいつか、ということではなく、利下げと見ている。
 昨年12月の利上げは、大間違いであったか、
 うがった見方をすれば、
 FRBが将来の危機に備えてあえて動けるようにのりしろを作っておきたかった
かの、どちらかだと思っている。

 主要国の中央銀行の中で、FRBだけが利上げをする、米国経済だけが順調ですと市場に対して宣言するということ自体が、ドル高と原油安を招き、新興国経済の苦境をさらに増すことになるわけだから、この局面での利上げは矛盾した政策だ。
 道路の右側通行を左側通行に変えるのに、「まずトラックから変えよう」といってるようなものだ。

 結局、中国も米国も苦しくなり、大きな調整を迎えざるを得ない。
 10年に一度のクレジットサイクルが生きている。
 1998年、2008年に続くメガトン級の市場イベントがくる。
 これは人間がやっていることだから仕方がないこと。
 政策担当者の立場では、なんとか対処しなければならないので頭が痛いが、投資家、一市場参加者はそういうこともありうべし、と考えておく必要がある。

◆日本の投資家は当面リスク削減を

 一つ言えるのは、とくに日本の投資家にとって、アベノミクスが始まってからは、誰にとっても儲けやすい相場だったことだ。
 円安で、株高で、債券も売られない。
 分散投資をロングオンリーでやっておけば誰でも儲かった。
 だからこれからは、大変だ。

 以前は為替ヘッジをしていたような市場参加者、輸出企業や機関投資家や個人が、日銀の金融緩和が続くことを前提にして、円高リスクはしばらくないとみて、ヘッジを外していた向きが多い。
 円安と資源価格の低下で日本の交易条件は改善し、貿易収支が劇的によくなっているので、実需の円買いのマグマが溜まっている。
 リスクオフモードで円高が進み、リスク資産が売られて大幅に下がる厳しい状況が出現する可能性が高い。

 危機がいつ来るか、どういう形で来るかは分からない。
 ただ、
 リーマンショックでもサブプライムローンのデフォルトが出始めた2006年末、
 サブプライムファンドの償還停止をBNPパリバが発表したパリバショック(2007年8月)、
 ベア・スターンズの破綻(2008年3月)からリーマンショック(2008年9月)までは、2年ほどかかっている。
 アジア通貨危機の時も、タイが変調を来してから米国のヘッジファンドであるLTCMや日本長期信用銀行の破綻まで、1年半ぐらいかかっている。

 今回は、もっとバブルが大きいことや、中国の体力を考えれば、すぐ危機到来は考えにくいが、逆に言えば、不安を抱えた市場では、ボラティリティ(変動率)の高い、値動きの激しい環境がしばらく続く。
 本当にクライマックスが来るには時間がかかる。
 投資家は雲の上を歩いているような怖さがあるが、テールリスクの発生を前提に、リスクを削減しておくことが必要だ。

 難しいのは、昔は、リスク資産の投げ売りが始まったら、国債が保険になった。
 しかし、日本国債自体は売られないにしても、ほかの資産での損失をカバーできるような上値余地がない。
 これ以上買われたら、マイナス金利に突入していく。昔ながらの分散効果が機能しない。

◆原油安は「原油の時代の終わり」を象徴

 原油安は新興国の苦境の先行指標ともいえるが、もっと広く考えると「原油の時代の終わり」を象徴しているのではないか。
 COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)における「パリ協定」の採択とか、フォルクスワーゲンのディーゼル車の排ガス不正問題なども、そうした流れの中にあるのではないか。’ 
 そう考えると、足元では痛みがあるが、人類と環境にとっては長い目で見るとよいシナリオだ。

 裏庭から油が噴き出しただけで大金持ちとなった中東やロシアのごくごく一部の人々が、投資をしてますます金持ちになり、ロンドンのメイフェアで金ぴかの住宅や車を持つ。
 一方で、中東は人口が増大していて貧しい人々が増えている。
 こうした富の偏在はどこかおかしい。
 持続可能ではない。
 1バレル=30ドルは第2次イラン革命の頃の水準だが、そうした大きな構造転換を考えると、40ドル、60ドルへと戻っていくとは思えない。

 資本主義、市場経済のもとではとりあえず、政策を担う人々は自分の在任期間は大過なく務めたいと考える。
 そうすると、金融政策や財政政策を行って、極論すれば、痛みを避け、いいとこどりなる。
 しかし、クラッシュしないように飛び続ければますます債務が積み上がる。
 債務を積み上げているということは、将来世代に負担を押しつけているということだ。
 債務はどこかで、ある程度まで減らさないと持続不可能だ。

 繰り返される金融市場の危機は
 「本来そこまでエンジョイすべきではなかったのに、将来価値を先食いしてしまったので、痛みも味わってください」
という市場の神様の声だ。

 ところで、話の最後で、日銀の追加緩和の報せが飛び込んできた。
 まずは市場がどの程度反応するのか、とくにその持続力に注目したい。
 次の焦点は米国と日欧・新興国の政策ベクトルの乖離がどちらかに収斂するのか、そうでないのか、という点に移る。
 グローバルにつながった金融資本市場ではマクロ政策の協調なしにどこまでうまくいくのか疑問だ。
 むしろ、ますます、現状は1997年型の様相を帯びてきたと感じている。
 だとすると、ドルにもリスク資産にも、最後の売り場がゆっくりとやってくる。
 当局にとっても、市場参加者にとっても、展望の開けにくい長い戦いになるだろう。

●山内英貴(やまうち ひでき)/1963年生まれ。日本興業銀行でトレーディング・デリバティブ関連業務に従事した後、2000年4月に独立し、ヘッジファンド運用に特化した資産運用会社グローバル・サイバー・インベストメント(現GCIアセット・マネジメント)設立。2007年4月より東京大学経済学部非常勤講師。主な著訳書に『アジア発金融ドミノ』(東洋経済新報社、1999年)、『LTCM伝説』(共訳:東洋経済新報社、2001年)、『オルタナティブ投資入門(第3版)』(東洋経済新報社、2013年)、『エンダウメント投資戦略』(東洋経済新報社、2015年)がある(撮影:梅谷秀司)



新潮社 フォーサイト 1月28日(木)11時35分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160128-00010000-fsight-int

世界の市場を襲った中国発「異常寒波」の正体

 〈2016年を迎えるいま、内外でブラックスワンの不気味な羽ばたきが聞こえる。
 2012年末の政権復帰から丸3年を経過した安倍晋三首相は「桃栗3年」の成果を誇った。
 が、今は申年の世界に待ち受けているリスクにこそ、身構えるときではないのか。〉


 前回はこんな書き出しだった。
 実際のマーケットで今起きているのは、この記述を地で行く天下大乱の光景だ。
 爆弾はまさに中東と中国で炸裂し、全世界へと広がった。
 サウジアラビアによる政治犯の大量処、
 サウジとイランの外交関係断絶、
 水爆と称する北朝鮮の核実験、
 中国株の全面取引停止、
 人民元の下落、
 世界的な株式相場と原油など商品相場の底抜け。

 今さらのようにメディアの喧騒を繰り返すのはやめよう。
 ハッキリ言えるのは、「2016年は参院選の年だから、選挙前までは株価は強いはず」などといった、したり顔の解説がちゃぶ台返しに遭っている事実である。
 経営者への新年株価アンケートをみても、2016年の日経平均株価の安値予想は1万8000円がほとんどで、最も弱気の回答でも1万7000円。

 年初来の株安で株価は1月第3週には1万6000円スレスレまで下落し、安値予想の下限を大きく割り込んだ。
 株式相場が直近の高値から2割以上下落することを「ベア・マーケット(弱気相場)」入りする、と言う。
 昨年12月初めの日経平均は2万円ちょっとを付けていたから、1万6000円を割り込めば、完全な「弱気相場」入りとなる。

■「オイルマネー」の韓国株売り

 同じような株式相場の値動きは、ドイツやフランスなどの欧州諸国でもみられている。
 先進国のなかで、米国株は相対的にはましな方だが、それでも年初来の下げは1割強に達した。
 ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が1月21日の理事会後の記者会見で、3月の追加金融緩和を示唆したのは、景気先行指標である株価が底割れし、実際の景気にも後退シグナルが出るのを恐れたからだろう。
 その心象風景は、黒田東彦日銀総裁にも共通するだろう。

 中国経済の失速懸念が中国株の下げを招き、原油など商品価格の底割れを招いているのは分かる。
 ではなぜ、先進国の株式相場まで道連れにされなければならないのか。
 答は簡単。
 原油安で懐具合が窮屈になった産油国が、保有株式の売却を余儀なくされているのである。
 そのメカニズムは想像に難くないが、東京市場での株式売買の手口が分かるまでには時間がかかる。
 隔靴掻痒の感が拭えないところだが、天網恢恢疎にして漏らさず。
 お隣の韓国で、オイルマネーによる火砕流のような売りが確認された。

 「オイルマネー引き潮……34日連続『セール・コリア』」。
 そう題した韓国紙『中央日報(電子版)』の記事である。
 それによれば、サウジアラビアによる韓国株の売越額は昨年6~12月の合計で4.5兆ウォン(約4380億円)。
 その間の外国人投資家の売越額全体の約30%を占めたという。
 韓国株式市場の時価総額は昨年末時点で5300億ドル強と、日本の3.2兆ドルの約6分の1。
 4300億円強の売り越しでも、相当にこたえているはずだ。
 サウジの売越額は昨年12月だけで7700億ウォン(約760億円)余りにのぼった。
 油の切れ目が縁の切れ目と言える。

■日本株で目立つ「先物売り」

 韓国でオイルマネーの売りが際立った昨年12月以降、日本株についてはどうだったのか。
 財務省統計で、外国人投資家の現物株の売買動向(買越額、▲は売越額)をみると、以下のようになっている。12月の
 第1週=1048億円、
 第2週=▲4901億円、
 第3週=▲2258億円、
 第4週=▲884億円、
 第5週=1357億円、
 1月の
 第1週=▲7464億円、
 第2週=▲3583億円。

 確かに外国人投資家だけでも、1月の最初の2週間で1兆円余りの日本株の売り越しとなっている。
 日本株の場合、こうした現物の売りに加えて、先物、なかでもTOPIX(東証株価指数)先物の売りが目立っている。
 「日本株を保有するオイルマネーが先物の売りに出て、その動きをみてヘッジファンドなどがチョウチン売りに走ったのだろう」。
 ベテランの市場関係者はそう推察する。

 日本株については、アベノミクスが登場した2012年末以来の上昇率が、主要市場のなかでは最も高かった。
 グローバルな運用で損失を被ったファンド勢などが、損失を埋め合わせるために「益出し」の売りに動いた面もあるだろう。
 それにしても、株価の上昇を経済政策の成功の証としてきた現政権にとって、年初からの市場の乱気流は、暖冬のはずなのに猛烈な寒波に襲われた日本列島のようなものだろう。

■「中国は資本流出を規制すべし」

 では、どうやって中国の底割れを止めるのか。
 「私見だが」と断ったうえで、黒田日銀総裁は「中国当局による資本流出規制」に言及した。
 1月23日、スイスで開かれたダボス会議の席上である。
 「よりによって、金融当局者が資本規制を勧めるなんて」と思ったからだろうか。
 日本のメディアの多くは黒田発言の直後、腰の引けた報道に終始した。

 米欧のメディアの反応は全く違った。『
 ロイター』や『ブルームバーグ』など通信社が敏感に反応したばかりでなく、英紙『フィナンシャル・タイムズ』は26日の社説で、「唯一の合理的な選択肢」との評価を下した。
 中国からの資本流出が加速するなか、中国人民銀行による元買い・ドル売りの介入を繰り返しても、埒が明かない。
 資本流出規制という禁じ手も「背に腹は代えられない」と言う。

 確かに、中国株の下落の背景には、資本流出がある。
 人民銀がドル売り介入を続ければ、外貨準備の取り崩しに歯止めがかからない。
 人民銀が外貨準備を保有する中国の場合、
 人民銀の資産である外貨準備の減少は、意図せざる金融の引き締めを招く
 2014年6月末には4兆ドルに迫っていた外貨準備が、2015年12月末には3.3兆ドルまで枯渇したのは、ただごとではない。
 これだけ外貨準備を減らせば、意図せざる金融引き締めを招いてしまう。
 景気悪化局面で金融を緩和しなければならないのに、あべこべの方向ではないか。

■「王様は裸だ」

 問題は中国1国にとどまらない。
 元安の進行に伴って、輸出市場で中国と競合するアジア諸国の通貨にも、下落圧力が加わる。
 大不況下の1930年代の世界を襲ったような、中国発の「通貨切り下げ競争」が再燃しかねないのだ。
 元財務官である黒田氏は、こうしたリスクを踏まえて、中国に資本流出規制を提案したのだ。

 それはアンデルセンの「裸の王様」で、少年が「王様は裸だ」と叫んだようなものである。
 問題なのは、裸の王様が行進を止めるかどうかだ。
 アンデルセンの童話では、少年の「雑音」に惑わされぬように、というお側用人の忠告に従って、王様はますます「威風堂々」と歩き続ける。
 習近平皇帝の中東訪問に際しての言動を見ている限り、事態はアンデルセンの王様の後をなぞりそうだ。

 サウジ、エジプト、イランの3カ国を訪問した習主席。『人民日報』など官製メディアによる「意義づけ」によれば、
 メソポタミア、エジプトという古代文明の発祥地を中華文明の指導者が訪ね、「文明の交歓」をする。
 21世紀のシルクロードの道中に当たる中東に、中国の足跡を刻むというのだ。

 ウィットフォーゲルの言う「オリエンタル・デスポティズム(東洋的専制)」を好むかどうかは、趣味の領域に属するので、文明の交歓の是非を論じることはすまい。

■中国経済の「実像」

 それにしても、原油安で財政と経常収支が「火の車」になっている産油国や、アラブの春以降の経済悪化に直面するエジプトに、気前よく餅を配る。
 そんな習主席の旅姿をみて、「原油安の元凶はどなたなのか」という疑問を抱くのが人情というものだろう。
 中国需要の停滞→原油底割れ→産油国経済の悪化という将棋倒しは、裸の王様に出てくる少年ですら(ならばこそ)、明らかなはずだからだ。
 まさか「原油安を招いた迷惑料」として、餅を配っている訳ではあるまいに。

 日本の「識者」のなかには、
 「中国は奥が深い。経済危機だと言われるが、餅を配る余裕があるじゃないか」
などという向きもある。
 贔屓の引き倒しとはこのことだ。
 母屋が焼けているのに、旅に出てお大尽ぶりを発揮している姿にこそ、市場関係者は身震いしているのだ。
 身震いの根っこにあるのは、米国に次ぐ世界第2の経済大国の中身が信用できない点に尽きる。

 鉄道輸送、発電量、銀行融資ではじいた「
 李克強指数」によれば、足元の中国の経済成長率は2%程度。
 そんな「実像」が指摘されて久しい。
 この李克強指数に対しては、
 「製造業中心の指標だ。実際の中国経済はサービス化が進んでいる」
との反論も出ている。

 中国を足しげく訪れているジャーナリスト近藤大介氏の近著「中国経済『1100兆円破綻』の衝撃」をみると、
 「サービス化」なるものはにわかには信じがたい。
 それでも、2015年10~12月期の中国の実質成長率は、前年同期比6.8%と7%近い。
 そんな気休めを言う向きも少なくないが、問題は同時期の名目成長率がどのくらいだったかだ。
 名目成長率は5.8%と、実質を1%ポイントも下回っているのだ。

■「デフレ」に陥った中国経済

 「名目<実質」となったという現実は、中国経済がデフレ(物価下落)に陥ったことを意味する。
 実質と名目の差額であるGDPデフレーターでみて、1%のデフレになったのである。
 しかも5.8%という名目成長率は、1999年7~9月期以来の低成長である。
 デフレと低成長といえば、バブルが崩壊し金融危機を経験した日本そのものである。
 アジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクロード基金(SRF)でお大尽ぶりを発揮するそばから、中国は「新たな日本」への道を踏み出そうとしている。

 その姿が見えるからこそ、株式市場は怯え、中国からの資本流出は加速しているのだ。
 皮肉にも、国際通貨基金(IMF)が人民元のSDR(特別引き出し権)の構成通貨入りを認めた昨年11月末から、この矛盾は深刻になった。
 国際金融の世界では、
(1)為替の固定相場
(2)自由な金融政策
(3)自由な資本移動、
 の3兎を追うことはできない。
 有名な国際金融のトリレンマ(三者択一の窮地)である。

 今の中国は「人民元の国際化」という背伸びをしたばかりに、
 本格的な資本流出規制に踏み切れず、
 元安の加速と金融政策の自由度低下という、
 法外なコストを払わされつつあるのだ。
 山頂から転がる石を山頂に持ち上げる所作を繰り返す、ギリシャ神話のシジフォスのようなものである。
 それを英雄の振る舞いと任ずるのは自由であるが、その結果として自らの滅びが世界を道連れにするとしたら――。
 申年のブラックスワンの羽ばたきに日本と世界が戦慄せざるを得ないのは、このためだ。

ジャーナリスト・青柳尚志
Foresight(フォーサイト)|国際情報サイト
http://www.fsight.jp/



レコードチャイナ 配信日時:2016年1月31日(日) 16時31分
http://www.recordchina.co.jp/a128088.html

「二人っ子政策」と「AIIB」で経済復活なるか
―今年は習近平指導部にとって正念場

 今年は年初から中国経済減速への警戒感から、東京をはじめ、ニューヨーク市場など世界同時株安に見舞われたが、年末年始に北京から一時帰国した駐在員の知人と久しぶりに盃を傾けていたら、彼が
 「日本では、中国の経済は落ち込むばかりと思われているかもしれないけれども、ビジネスチャンスはまだまだ大きいよ」
と笑顔を見せていた。

 意外な言葉に、私は
 「でも、環境汚染で住むのも大変だし、株価も急速に下がっているのでは?」
とつい突っ込みを入れてしまった。
 ところが、彼は
 「中国政府は景気浮揚のために2つの秘策を練っている」
と自信たっぷりだった。
 
1].「秘策その1」は今年から本格導入される「二人っ子政策」だ。
 36年も続いた「一人っ子政策」が廃止され、子供を2人まで生むことができるので、当面はベビー用品の需要が高くなる。
 単純に考えると、その後、年を経るごとに生活用品や教育費など、これまでの2倍の需要を見込むことができる。
 ただ、中国メディアのアンケートでは、大都市圏では教育費などが高く、いまのところ4割以上が「経済的に2人も育てることは無理」と回答しているが、それでも賛成は3割、状況次第が3割で、全体の6割が肯定的に受け止めている。

 「それに、中国政府が政策としてアピールすれば、地方都市では『子供は2人持つもの』との認識も広がってくる。
 大都市部でも子供を2人以上持ちたいという富裕層も多い。
 徐々に子供2人が常識になってくるのではないか」
と彼は楽観的だ。

2].「それでは、秘策の2は?」と問うと、
 「中国は人口が多い。
 13億人もいる。
 そのうち農民工(出稼ぎ労働者)は2億7000人。
 中国政府は農村の都市化を急いでおり、農民工がその住人になれば、余っている住宅もどんどん売れていくというわけだ」
と彼は鼻息が荒い。

 中国には「鬼城」と呼ばれる誰も住んでいないマンションなどの空き家の在庫が10億平方メートル、約1300万世帯分もあるとロイター通信は伝えている。
 これはオーストラリアの全人口を収容できる水準だ。

 中国政府は農村の都市化を進めるために、これらの余剰住宅の値段を下げて、農民工ら低所得者に優先的に販売するとの政策を立案中との情報がある。
 また、アジアインフラ投資銀行(AIIB)創設で、海外での出稼ぎ労働も増えることから、農民工の所得アップにもつながるというわけだ。
 彼は 「習近平はこの2つの秘策を単なる初夢には終わらせないと思う」と自信に満ちた笑顔で語っていた。

 さて、彼が言うように、中国経済は2つの秘策で上昇局面に転じるかどうか。
 今年は2017年の党大会の1年前だけに、習近平は人事を含む政治局面を安定化させなければならないが、それには経済が重要なファクターになる。
 このため、今年は習近平指導部にとって正念場となるのは間違いない。
 なんだか、頼りない秘策である、と思われるのだが。



現代ビジネス 2016年02月02日(火) 週刊現代
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47606

中国が出す経済指標はウソ八百
〜習近平の「経済工作会議」議事録を公開する

■GDP成長率を「水増し」

 「2015年のわが国のGDPは、67兆6708億元で、前年比6・9%増だった。
 四半期毎に見れば、第1四半期が前年同期比7・0%増、第2四半期が7・0%増、第3四半期が6・9%増、第4四半期が6・8%増だ。
 世界経済全体が悪化している中で、よくこれだけ経済成長ができたものだと、誇らしく思う」

 1月19日、中国国家統計局の王保安局長が、年に一度の記者発表会でこう述べた時、会見場はシラ~ッとした雰囲気に包まれた。
 すかさず、英字紙『チャイナ・デイリー』の若い記者が、挙手して質問を浴びせた。

 「この一年間というもの、多くのメディアや研究機関が、中国政府が公式発表するGDP成長の数値の真実性について、疑問を投げかけてきた。
 その中には、『中国の本当のGDP成長率は5%以下だ』と暴露するものもあった。
 こうした多くの疑念に対して、国家統計局はどう答えるのか?」

 この思いも寄らぬ「爆弾質問」に、王局長は、やや狼狽した様子を見せながらも、開き直って答えた。
 「私たちも、やれどこかの研究機関だ、研究者だという人々が、中国のGDPについて、あれこれ勝手に論じているのは承知している。
 だが、それらの評論には2通りあるのを知っているか?
 一つは、いま記者が質問したように、国家統計局は、実際のGDP成長の数値を水増しして発表しているというものだ。
 だがもう一つは、国家統計局は、実際のGDP成長よりも控え目な数値を発表しているというものなのだ」
 会場を埋め尽くした数百人の記者たちは、この王局長の発言を聞いて、開いた口が塞がらなかった。

 その日、中国で7億人が使用している「微信」(WeChat)では、次のようなメッセージが広がった。

〈われわれは中国人に生まれて、本当に幸せだ。
 なぜなら今後、中国経済がどんどん悪化していき、財政部や商務部、国家発展改革委員会などが「もうお手上げだ」とサジを投げたとしても、最後には国家統計局がついているのだから〉

 中国は5年毎に、経済の「5ヵ年計画」を策定している。
 習近平主席は昨年末、「第12期5ヵ年計画」('11年~'15年)が、25の主要目標をほぼすべて達成し、大成功のうちに終えたと自画自賛した。
 だが、今年から始まる「第13期5ヵ年計画」については、口数が少ない。
 これから
 5年先の中国経済など、どこまで悪化しているか想像もできない
というのが、正直なところだからだ。
 そのためか、'16年の経済方針を中国のトップが集まって話し合う昨年末の「中央経済工作会議」も、日程さえ発表されないという異常な事態となった。

 在北京ジャーナリストの李大音氏が語る。

 「この会議は習近平主席が招集し、『トップ7』(党中央政治局常務委員)を始め205人の中央委員、7人の中央書記処書記、全人代(国会)常務委員会の幹部、5人の国務委員、最高人民法院(最高裁)院長、最高人民検察院院長、全国政協の幹部、11人の中央軍事委員、31の地方自治体トップら計400人ほどが参加します。

 会場となるのは、北京西郊の人民解放軍総参謀部が経営する要塞のような京西賓館の大会議室です。

 われわれ記者は、このものものしいホテルの近辺に、近寄ることさえできません。
 そこで、京西賓館の最寄り駅である地下鉄9号線の軍事博物館駅西南出口が閉鎖された日を見て、12月18日から21日まで会議が開かれることを突きとめたのです」

■人民銀行総裁も更迭か

 では、この4日間、「要塞ホテル」で一体何が話し合われたのか? 
 李氏が続ける。

 「今回は中国経済の見通しがあまりに悪いため、『中央経済工作会議』の前段階として11月上旬に、国内の主要な経済学者らを一堂に集めて、意見聴取したそうです。

 そうしたら、少なからぬ経済学者が習近平政権に媚びて、いまの悪状況を正当化する理論を授けてくれた。
 それに喜んだ習近平主席は、散髪してサッパリした表情で『中央経済工作会議』に臨み、約400人の幹部を前に、自信ありげに『5つの改革プラン』をブチ上げたのです」

本誌が独自に入手した会議の議事録には、次のように記されている。

「5つの改革プラン」とはすなわち、「3つの除去、1つの降下、1つの補填」だ。

 まず生産過剰と、不動産の空き室、金融リスクの3つを除去していく。
 そして減税などによって企業コストを減らし、
 最先端技術など、いまの中国に足りないところを補っていく〉

 「習近平主席は特に、中国全土に広がりつつある『鬼城』(ゴーストタウン)を解消するため、『中央経済工作会議』の後半の2日間に、『中央都市工作会議』なる会議を開いたのです。
 この会議は1978年に開かれて以来、37年ぶりの開催で、習近平主席は、『'16年に戸籍制度改革を断行する』と宣言したのです」(同・李氏)

 中国の戸籍制度は、国際社会から「現代のアパルトヘイト政策」と非難されている。
 中国人を「都市戸籍」と「農村戸籍」に分け、「農村戸籍」の人々が、北京や上海に出稼ぎに来ても、まるで外国人のような扱いを受ける。
 税金、教育、社会保障、住宅など、あらゆる面で差別されるのだ。
 そして「農村戸籍」の人々が都市で出産しても、子供は「都市戸籍」を取得できない。

 会議の議事録には、次のように記されている。

〈わが国の都市化率(全人口に占める都市部の戸籍人口の割合)は、1978年に18%弱だったのが、'14年には55%弱まで上昇した。
 人口で言えば、1億7000万人から7億5000万人に増加した。

 その間、都市の数は193市から653市に増加した。
 毎年の都市部人口の増加は2100万人に上り、これはヨーロッパの中等国家の人口に匹敵する。

 わが国には、2億7000万人の『農民工』(出稼ぎ農民)がいる。
 今後、彼らに、人口500万人以下の都市の戸籍を与える。
 それによって彼らも、マンションを買ったり借りたりできるようになる。
 そうすれば、都市の空き家問題は解決し、消費も拡大し、経済はV字回復するだろう〉

 前出の李氏が解説する。

 「たしかに、本当に戸籍制度改革が実現すれば、それは習近平政権最大の革命的事業になることは間違いありません。
 ところが『中央都市工作会議』を開いている最中、間の悪いことに、中国最大の『模範都市』であるはずの広東省深圳市で、大規模な土砂崩れ事故が発生してしまったのです」

 100人以上が土砂に埋もれている——緊急ニュースが入ってから、習近平執行部は「中央経済工作会議」や「中央都市工作会議」どころではなくなってしまったという。
 年が明けるや、今度は上海株式市場に火がついた。
 何と1月の2週間で、上海総合指数が、18%も下落してしまったのである。
 「1月12日に、危険ラインと言われる3000ポイントも、あっさり割りました。
 このまま1ヵ月間、3000ポイントを下回れば、中小の銀行の破綻が一気に現実味を帯びてきます」(同・李氏)

 いまや、
 「ミスター人民元」こと周小川・中国人民銀行総裁の更迭説が、北京の金融街でまことしやかに広がっている。
 中国経済、もう待ったなしである。

「週刊現代」2016年2月6日号より



サーチナニュース 2016-02-03 07:33
http://news.searchina.net/id/1601501?page=1

中国で「負のスパイラル」加速の可能性 
「人口減少は政府想定よりずっと早くやってくる」
と人口学者が口々に

 中国政府は現在、中国の人口は2030年に増加から減少に転じるとする見解を示している。
 中国メディアの第1財経は1日、多くの学者が
 「中国の人口はもっと早く減少に転じる」、
 「2023年ごろだろう」
と考えていると指摘する記事を掲載した。

 中国では長らく厳しい産児制限が続いた。
 いわゆる「一人っ子政策」だ。2016年までには、届け出をすれが2人目の子を産めるようになったが、政府の思惑通りには、出生数は増えない見通しという。

 記事は、現状において「3人目の子」として生まれる赤ちゃんが、2015年の場合全出生数の1655万人に対して80万人強で、出生数の5%程度しかいないことに注目。
 夫婦1組について「3人目の赤ちゃん」は規則違反ということになるが、それにしても小さすぎる数字で、中国人全般に「子づくり」に対する意欲が低迷しているのは明らかという。

 中国政府は「2人目の出産の解禁」で、年間の出生数が300万増加すると見込んでいる。
 2050年までに出現する労働人口は3000万人分増加し、人口バランスにおける老齢化も緩和できるとの考えだ。
 そして、中国の人口が減少に転じるのは2030年と見積もっている。

 しかし、人口学者の姚美雄氏が計算したところ、2050年における労働人口の増加は「3000万人には、はるかに届かない」水準にとどまるという。
 また、高齢者が多くなるので死亡も増え、2023年には中国の人口は減少しはじめるという。
 政府の見込みより7年も早いことになる。

 人口学者の黄文政氏は、出生人口のピークは2017年で、年間出生数は1750万人から2000万人と予測する。
 しかし2018年には激減し、2020年までの平均で年間出生数は1650万人から1850万人と、最低ラインの場合現在とほとんど変わらないという。

 同じく人口学者の顧宝昌氏は、政府が「2人目の出産を望む可能性がある」として計算に入れている女性のうち、40歳以上の人が50%以上と指摘。
 「2人目の出産を解禁」しても、政府が期待する効果はでないだろうとの考えを示した。
 顧氏が全国各地で調査したところ、
 「2人目の子を作っても、経済的事情で育てるのが難しい」、
 「2人目を生むと、女性は仕事に影響が出る」、
 「子どもを見てくれる人がいない」
などと言う夫婦が多かったという。

 中国経済の柱はこれまで、外需と投資だった。
 しかし、リーマンショックなどは「外需はあてにならない」教訓を示した。
 投資についても、「リターンを真剣に考えない投資」が多く行われ、深刻な財政難に陥った地方政府も多い。

 中国政府はそのため、内需拡大に力を入れることになった。
 そして内需拡大ための大きな障害のひとつが、社会保障制度が未整備であることとされる。
 老後などに不安を持つ人が出費を避けるからだ。

 少子高齢化が進行してから社会保障制度を整備するのは極めて難しい。
 社会保障制度を確立しないと、経済運営が困難になる。
 経済運営が困難になれば、社会保障制度の整備は困難になる。
 社会保障制度が整備できなければ、内需拡大もや少子高齢化の緩和が難しくなる――。

 中国経済と中国社会の構造問題で、
 「負のスパイラル」が加速する可能性は否定できない。



ロイター  2016年 02月 7日 09:30 JST
http://jp.reuters.com/article/column-china-capital-control-japan-idJPKCN0VE0GB?sp=true

コラム:中国に勧めた資本規制、
日本自身も必要か

[2日 ロイター] -
 「資本規制の導入」という中国へのアドバイスに、結局のところ、日本自身が従うことになるかもしれない。
 現在、中国、日本、その他の国のあいだでは、限られた海外需要をめぐって実質的に通貨切り下げ競争が行われている。
 これは最終的に、資本規制のようなきわめて例外的な措置がふさわしく思えるような異常事態を引き起こす可能性がある。

 1月29日、日本はマイナス金利の導入を発表したが、これは明らかに円の価値を引き下げ、金融資産価格を引き上げることを意図した動きだった。
 日銀はデフレ対策という名目で正当化しているものの、この新たな政策の根底にある原因は、膨大な資本が中国から流出して元相場を引き下げ、日本と、その貿易相手国であるアジア諸国に打撃を及ぼしていることなのだ。

 ダボス会議では黒田日銀総裁が、個人的な見解としたうえで、中国の資本規制について、国内金融政策を緩和的としながら通貨を安定させるうえで適切だと述べるという、きわめて異例の場面が見られた。

 先進諸国の中央銀行業務に携わる日銀総裁が資本規制を呼びかけるというのは、聖職者が教区の信者たちに対して、資金繰りのギャップを埋めるために、もちろん一時的にせよ、悪魔との取引を勧めるようなものである。

 ある経済に出入りする自由な資金フローに対して制限を設ける資本規制について、国際通貨基金などが以前よりも柔軟な姿勢をとっているとはいえ、黒田総裁が資本規制の強化を主張するというのは事態の深刻さを物語っている。
 中国は早いペースで外貨準備を取り崩しつつあるが、元安が続くという状況が、特に日本に大きな打撃を与えつつある。

 日本のマイナス金利への移行によって銀行融資が再び活発になる可能性は低い。
 その代わり、マイナス金利は銀行などに対し、円建て債券を売って海外資産を購入するインセンティブを与えるだろう。
 それによって円相場は押し下げられる。
 現在日銀は、政府が国債を発行する以上のペースで国債の買い入れを続けており、日本にとって事実上、最初の貸し手であると同時に最後の貸し手にもなっている。

 確かにこうした状態を長く続けることは可能だ。
 しかし、マイナス金利が金融システムに生み出す、あるいはさらに悪化させるゆがみによって、最終的に日本は、資本規制が魅力的に見えてくるような状況に置かれる可能性がある。

 ハイ・フリクエンシー・エコノミクスでエコノミストを務めるカール・ワインバーグ氏によれば、金利の低下は、超長期の債務を抱える日本の銀行、保険会社、年金基金にとって大きな問題をもたらすという。
 手持ちの債券が満期を迎えても、債務の返済を可能にするほどの利回りをもたらすような新たな債券で置き換えることが不可能になるからだ。

■<出口なし>

 すると、日本には日銀以外に国債を買ってくれる普通の買い手がほとんどいないことになってしまう。

 ワインバーグ氏は顧客向けのノートで、
 「つまり、日銀は国債の購入を絶対にやめられなくなってしまう。
 政府への資金供給が断たれてしまうからだ。
 量的緩和からの出口戦略として、公共財政を完全に破綻させるようなものしか残らない」
と書いている。

  「このスキームによって、マイナス金利のもとでも資金が日本から流出せず、有効に使われるように仕向ける唯一の方法は、
 政府が資本規制を課して海外への投資を抑制することだ。
 これが次の一手かもしれない」

 もちろん、日本経済が回復して金利が上昇し、最終的に資金が国内に環流して、(国債による)資金調達の必要性を徐々に減じていくような形で投資される、という可能性はある。
 理屈のうえではそのとおりなのだが、これまでのところ、マイナス金利政策の実績は芳しくない。

 人口減少局面にあって、なおかつ移民受け入れに消極的な日本が、成長とインフレを確保するうえで非常に困難な問題に直面していることを考えれば、なおさらである。
 もちろん、近年、成長とインフレの回復に向けた日本の取り組みが挫折した例がいくつも見られる一方で、日本が資本危機に直面する方に賭けた投資家が損失を被った例もたくさんあるのは指摘しておく意味があるだろうが。

 日本が抱える問題のややこしさと難しさに拍車をかけているのが、中国の状況である。

 中国は需要の低下と資本の流出を通じて、デフレを海外に輸出しつつある。
 中国は資本流出を防ぐ措置を追加するかもしれないが、そうすれば国内の需要を刺激する余地をある程度犠牲にせざるをえない。
 言うまでもなく、今回の日本の動きによって、中国が対抗措置に出る可能性は高まっている。

 人々がいま、プラザ合意を思い出しているのは少しも不思議ではない。
 1985年、円とドイツマルクに対してドルを切り下げるために米国をはじめとする先進諸国による通貨市場への協調介入だ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが主張するように、元の切り下げに向けて、あるいはドイツ銀行が構想するように、ドルの切り下げに向けて、プラザ合意のような協調が再現されるかどうかは不明である。

 この段階では、状況が奇妙なものになりつつあり、想定される結末がますます多岐にわたっているように見える、とだけ言っておこう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)




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日銀が日本の金融史上初のマイナス金利導入:マイナス金利ってなんだ?

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ロイター 2016年1月29日(金)18時09分

日銀が日本の金融史上初のマイナス金利導入、
物価リスクに予防措置

世界経済の退潮に連動しアベノミクスが失速しつつあるなか、日銀・黒田はメガトン級の金融緩和策で賭けに出た

 日銀は29日の金融政策決定会合でマイナス金利を導入する追加金融緩和を決定した。
 年間約80兆円のペースでマネタリーベースと長期国債の保有残高を増加させるこれまでの方針は維持する。

 ETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の買入額も据え置いた。
 日銀では今後、
 量・質・金利の「3つの次元」の緩和手段を駆使して金融緩和を進める、
としている。

 日銀が追加緩和に踏み切ったのは、新興国経済の不透明感の強まりや最近の金融市場の不安定化などにより、
 「企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大している」
ことが背景。

 マイナス金利の導入の狙いは「
 イールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買い入れと合わせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく」
ことにより、
 「3つの次元の緩和手段を駆使して、物価2%の早期実現を図る」
と説明。
 今後も必要があれば、マイナス金利幅をさらに拡大させていく方針だ。

 マイナス金利は、
 日銀当座預金にマイナス0.1%の金利をつける。
 2月16日から始まる準備預金の積み期間から適用する。

 具体的には、日銀当座預金を3つの階層に分け、それぞれに異なった金利をつける。
1].量的・質的金融緩和(QQE)のもとで各金融機関が積み上げた分については、「基礎残高」としてこれまで通りプラス0.1%の金利を適用。
2].また、所要準備額に相当する残高などは「マクロ加算残高」として適用金利をゼロ%とする。
3].らに、各金融機関の当座預金残高のうち上記を上回る部分を「政策金利残高」とし、マイナス0.1%の金利を適用する。

 なお、金融機関の現金保有によってマイナス金利の効果が減殺されることを防ぐため、保有額が大きく増加した場合には「マクロ加算残高」から控除する。

 マイナス金利のもとでの長期国債買入については、下限金利を設けずにマイナス0.1%を下回る金利での購入も行う。

 マイナス金利の導入には9人の政策委員のうち5人が賛成。
 白井さゆり、石田浩二、佐藤健裕、木内登英の4人の審議委員が反対票を投じた。
 このうち白井委員は反対理由として、資産買い入れの限界と誤解される可能性や、複雑な仕組みが混乱を招く恐れを指摘している。

 マイナス金利は欧州の複数の国々で採用されているが、日本では初めて。

 (伊藤純夫 竹本能文)

[東京 29日 ロイター]



2016年01月29日(Fri)  BBC News
http://www.bbc.com/japanese/35436079

日銀、マイナス金利導入 追加緩和策で

 日本銀行は29日に開いた金融政策決定合で、追加的な金融緩和策としてマイナス金利の導入を決めた。

 日銀は金融機関から預かる当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用する。
 主に影響を受けるのは銀行間取引で、預金者の預金金利などには直接影響しない。

 日銀は追加緩和によって、物価上昇率および経済成長率の引き上げを狙っている。
 当座預金へのマイナス金利導入で、金融機関が余剰資金を滞留させる動機が少なくなり、企業などへの貸し出しが増えることを期待している。

 29日に発表された12月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除いたコア指数が前年同月比0.1%の上昇だったが、日銀が目標とするインフレ率2%には遠く及ばない水準となっている。
 同日発表された12月の鉱工業生産指数は前月比1.4%低下し、予想を下回った。
 低下は2カ月連続で、外需と内需ともに弱い状況が浮き彫りになった。

 29日午後に記者会見した黒田東彦日銀総裁は、追加策を決めた理由に世界経済の先行き不透明性を挙げた。
 黒田総裁は、日本経済は緩やかな回復を続けており、物価の基調は着実に改善しているとしながらも、原油価格のさらなる下落や、中国を含む新興国経済の見通しの不透明性、世界的な市場の不安定化が企業心理を弱め、デフレマインドが払拭される時期を遅らせる可能性があると述べた。

 日銀の決定を受けて、アジア株式市場は軒並み上昇し、円の為替レートは下落した。
 一方、日本の銀行株は、さらなる利ざやの縮小見通しから売られた。

■最後の手段

 しかし、追加策の効果については疑問視する声も出ている。
 富士通総研のマルティン・シュルツ上席主任研究員は、
 「マイナス金利は日銀が持つ手段の最後のひとつだ」
としたものの、
 「インパクトはそれほど大きくないだろう」
と語った。

 同氏は、
★.ユーロ圏がマイナス金利を導入したのは金融危機に対応するためで、
★.日本の長引く低成長
とは違うと指摘し、
 「日本で信用拡大が起きなかったのは、銀行が融資を渋ったのではなく、企業が借り入れが必要になる投資機会を見いだせなかったためだ。
 マイナス金利をもっても、状況は変わらないだろう」
と語った。

 同氏はさらに、
 「企業は資金を必要としていない。
 必要なのは投資機会だ。
 それは構造改革によって実現するもので、金融政策によってではない」
と述べた。

 今回の追加策の前に日銀はすでに大規模な量的緩和策を導入しているが、経済成長率を大幅に押し上げるには至っていない。

(英語記事 Japan adopts negative interest rate in surprise move)
提供元:http://www.bbc.com/japanese/35436079



ロイター 2016年 01月 29日 20:18 JST
http://jp.reuters.com/article/boj-policy-rate-idJPKCN0V70AM

日銀追加緩和でマイナス金利導入、
株価は乱高下

[東京 29日 ロイター] -
 日銀は29日の金融政策決定会合で、従来の年間80兆円の国債など資産買い入れに加え、金融機関の手元資金である当座預金の一部金利をマイナスにする新手法を導入する形で追加緩和に踏み切った。
 予想を裏切る緩和手法に市場は混乱、株価は乱高下した。

 原油価格の急落を反映し、2%の物価目標達成時期は従来の2016年度後半から17年度前半に先送りした。

■<当座預金を3分類、新規分にマイナス金利>

 マイナス金利を導入するのは、短い金利をマイナスにすることで利回り曲線の全体を押し下げ、あらゆる年限の金利を押し下げて景気を刺激するのが狙い。
 しかし、当座預金の付利が多くの金融機関の大きな収益源である現状を考慮し、マイナス金利は部分的に導入する。
 従来からからの当座預金(昨年末残高220兆円)には従来通り0.1%の金利を付与、
 所要準備額に相当する額や、定期的に見直す一定額など(「マクロ加算残高」、現残高30兆円)に対してはゼロ金利を、
 これら以外で、今後増える当座預金(現残高90兆円)については0.1%のマイナス金利を適用する。

■<白井委員ら4人が反対、5:4薄氷の決定>

 マイナス金利の導入については白井さゆり委員ら4人の審議委員が「複雑な仕組みが混乱を招く」(白井委員)などの理由から反対票を投じ、9人の審議委員中5対4の薄氷の決定となった。
 展望リポートでは、原油価格の前提を昨年10月の足元バレル50ドル(ドバイ産)から35ドルへと大幅に引き下げた。
 2016年度の見通しでは、エネルギーが消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)を押し下げる幅を従来の0.2%から0.7─0.8%に拡大。
 16年度のコアCPI見通しを1.4%から0.8%に大幅に引き下げた。
 マイナス金利政策を多くの市場関係者は「難解」と受け止め、理解に手間取った。
 公表直後、日経平均.N225は600円近く上昇した後、約270円安まで下落する場面もあった(終値は450円高)。
 ドル/円JPY=も121円半ばまで上昇した後、一時120円を割り込むなど乱高下している。
 このため市場では
 「これまで緩和策を打ち出してきた際のように、一方的に円安に進むシナリオは描きにくい」(ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミストの上野剛志氏)
との声が多い。
 黒田東彦総裁は記者会見で、2年で資金供給量を2倍にして2%目標の達成を目指した量的・質的緩和(QQE)と比べ、マイナス金利政策は一般の人々にわかりにくいのでは、との質問に対し、
 「重要なことは中央銀行の物価目標への強いコミットメント、何でもやるということだ」
としたほか、
 「政策の詳細を国民が理解しないと効果がないということはない」
と反論した。

■<株価急落、「デフレマインド転換の遅延リスク防ぐ」>

  黒田総裁は今回追加緩和に踏み切った背景として
 「中国をはじめ新興国や資源国経済に対する先行き不透明感から金融市場は不安定な動きとなっており、デフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現化を未然に防ぎ、(物価上昇の)モメンタム(勢い)を維持するため」
と説明。
 日銀はすでに国債の3分の1を保有しているため、現在の年80兆円ペースの国債買い入れをさらに度々拡充するのは難しいとの見方が多いが、黒田総裁はマイナス金利を導入したのは
 「量的拡大が限界に達したということではまったくない」
と強調した。



 『マイナス金利』ってなんだ?
 と言うことになる。


知恵蔵2015の解説
https://kotobank.jp/word/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%82%B9%E9%87%91%E5%88%A9-183333

マイナス金利

 金利がマイナスになること。
 通常は預金・貸し金の利子あるいは利息である金利(名目金利ということもある)がマイナスになることはないが、超低金利時には短期金利が極めてまれに瞬間的にマイナスになることもある。
 名目金利から物価上昇分を引いた実質金利では、インフレが高進する時にはしばしば起こりうる。
 逆に、物価が下落(デフレ)している場合は、ゼロ金利であっても実質金利はプラスになる。
 「ゼロ金利政策がとられていた日本だが、デフレのため実質金利は高い。
 高実質金利は企業の経済活動に多大な影響を及ぼし、ひいては日本経済回復の遅れにつながる。
 経済回復には実質金利を下げる対策が望まれ、それにはある程度の物価上昇が必要」
というのが、インフレ・ターゲット論者の根拠の1つになっている。
(本庄真 大和総研監査役 / 2007年)



海外投資データバンク
http://www.world401.com/saiken/mainasu_kinri.html

マイナス金利が起きる理由

2015年1月に、スイスで長期金利(10年債の利回り)がマイナスに転じるという、人類史上初めての珍事が起きました。
 隣国ドイツでも、既に短期金利がマイナスになっているなど、ユーロ圏ではマイナス金利が恒常化しつつあります。
 マイナス金利とはつまり、国債を保有していれば損失が発生する事を意味します。

 なぜスイスやドイツでは、政府や中央銀行はマイナス金利という異常事態を容認しているのでしょう?
 国債のマイナス金利が起きる理由の一つは、
 銀行に国債を買わせず、融資を増やさせたいためです。
 銀行が国債ばかり買って貸出に回さない状態だと、国内の資金循環が停滞して景気が回復しません。
 国債を買えば損失が出る状態にしておけば、銀行は企業への貸出にシフトせざるを得なくなります。
 つまり、銀行が民間企業への融資を増やさせる為の強制政策だとも言えるのです。

 二つ目の理由は、デフレが深刻化している事への対策です。
 金利は常にインフレ率と等しい水準でないと、経済は破綻します。
 例えばインフレ率が10%と高い状態なのに金利が3%しか無ければ、1年で購買力が7%ずつ目減りしていく計算になります。
 これだと国民も企業も、お金を貯めずに使い切らなければ損だという心理になるので、消費が過剰になり、ますますインフレが進みます。
 デフレの場合はこれと逆です。
 物価が年率-1%なのに金利が3%あれば、消費せずに貯蓄しようというバイアスが強まり、物が売れなくなるので増々デフレが進み、景気が悪化します。
 デフレを解消するには、物価水準よりも金利が低ければ、消費や投資を増やすバイアスが働きます。
 インフレ率が-1%なら、金利が-1.5%とか2%とか、物価よりも低い水準になればよい訳です。

 ユーロ圏ではギリシャ危機以降、長らくデフレ圧力が続いており、景気の足かせとなっていました。
 長期金利がマイナスに転じたスイスでは、物価上昇率が-0.5%(2015年1月)というデフレ状態です。
 同時期にドイツも-0.4%です。
 これらの国では、金利もマイナスにしなければ、経済が悪化していく訳です。

 マイナス金利の本質を一言で表すと「強引な金融緩和(景気対策)」だと言うことです。

■それでも国債が買われる理由

 もしマイナス金利で誰も国債を買わなくなれば、国債価格が暴落する事になります。
 しかしドイツやスイスでは、マイナス金利になって以降も、相変わらず金融機関はある程度は国債に投資しており、暴落など起きていません。

 マイナス金利でも国債が売れる理由は、それでもタンス預金するより低コストだからです。
 一般国民は、金利がマイナスだと「家で現金の形でおいておく(タンス預金)」という方法を使えます。
 しかし機関投資家は、保有する金額が数百億円単位という大規模になるので、タンス預金することは出来ず、単純に現金で保有しておくだけでは(セキュリティなどの面で)コストが掛かります。
 国債がマイナス金利でも、現金のまま保有しておくコストよりも安ければ、買った方がマシだと言う訳です(※注1)。

 もう一つの理由として、
 国債は金融機関同士の短期資金の融通の際に、担保として利用できるという意味もあります。
 よって機関投資家は、たとえマイナス金利であっても、国債の形で保有しておく方が有利になる訳です。
 ですから、ドイツやスイスがマイナス金利でも国債の暴落は起きず、購入が絶えないのです。


 どうも
 この『マイナス金利』というのは「日銀のやる気」を示すためのアドバルーンで、
 実質効果を狙ったものではないようだ。
 心理的効果で市場を活性化させようとということであり
 一種のショック療法
である。
 ショックで動き出せば万々歳といったもののようである。
 実質的なものではないようだ。


ダイヤモンド・オンライン編集部 2016年1月30日
http://diamond.jp/articles/-/85484

驚きの日銀マイナス金利導入、効果はどれほどか?

■意表を突いたマイナス金利導入
市場は“迷って”一時大混乱に


●はたして三度目の“黒田バズーカ”となり得るのか
Photo:REUTERS/AFLO

 1月29日12時半過ぎ、日本銀行がマイナス金利導入を発表した。
 このタイミングでこの内容の追加緩和は、間違いなくサプライズである。
 1月の追加緩和を予想する向きはある程度あったが、マイナス金利導入は、黒田総裁自身が従来否定的な発言をしていたこともあり、ほぼ全ての専門家・市場関係者にとっても想定外だったと言ってよい。

 これに対し、市場は複雑な反応を示した。
 日経平均は発表直後に500円近く上昇した後、約860円急反落。
 その後再び上昇に転じ、終値では477円高となった。
 ドル円相場も同様に、1ドル119円前後から121円台前半まで一気に円安方向に振れた後、119円まで戻し、再び円安に動いて29日19時時点で約121円となっている。日銀の決定をどう受けとめるべきかという、市場の迷いが感じられる。
 一方、長期金利は約0.2%から一時0.09%まで急低下、過去最低を更新した後、0.1%程度での推移となった。


●出所:日本銀行

 市場が“迷った”要因の一つは、日銀の発表した内容が少々複雑だったことである。
 マイナス金利は、銀行が日銀に預ける当座預金で、利息をつけず逆に手数料を課すことで、実質的に金利をマイナスにする(つまりお金を預けると目減りする)ものだが、今回、マイナス金利となるのは一部に限られた(上図参照)。

 当座預金を3種類に分け、
 既に銀行が預け入れている分(基礎残高)は従来通り金利+0.1%、
 今後預け入れが増える分のうち、金融機関が預金額の増に応じ積み立てを義務づけられる分や、東日本大震災復興支援のための資金供給関連(マクロ加算残高)分は0%とされた。
 そして、これ上回る分(政策金利残高)についてマイナス0.1%とするものだ。

■経済活性化、市場安定につながるという期待も
一方で「インパクト不足」で効果は限定的か

 今回の決定自体への、専門家や市場関係者の評価は分かれている。

  「マイナス金利の導入は、国債買い入れを増やすよりは効果的。
 日銀が金融機関から国債を買い取っても、金融機関はそれで得たお金を日銀に預けるだけだった。
 だがマイナス金利となれば、そういうわけにはいかなくなる。
 投資や貸し出しなど他に資金を振り向けざるを得ず、経済の活性化につながるだろう。
 本当の意味での金融緩和策になり得る」(井出真吾・ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト)

  「マイナス金利というキーワードを出したのは演出としてうまい。
 為替相場の動きを見ても、期待に働きかけるサプライズは成功と言える。
 ドル円は117円~122円、あるいは120円~122円で値固めしてくる可能性がある。
 欧州中央銀行(ECB)の追加緩和も想定されるため、米国の利上げの影響を日欧がカバーする体制、ということで、マーケットにとっては安心感になる。
 金融市場が少し安定する期待を持てる」(村田雅志・ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト)

  「イールドカーブ(金利曲線)を押し下げ、消費や投資を刺激することを狙ったものだが、これ以上これが低下しても、追加的な緩和効果は大きくない。
 むしろ、市場機能の喪失がいっそう進むという副作用の方が大きい。
 マイナス金利となる対象が限られたことから、現時点での金融機関への影響はさほどないが、将来的には金融機関の収益が悪化し、そのコストが貸出金利に転嫁されて(貸出金利引き上げなどで)金融引き締めになるリスクもある」(小玉祐一・明治安田生命保険チーフエコノミスト)

 日銀の“狙い”についての見方も様々だ。

  「日銀の“陰の政策変数”は為替相場だ。
 年明け以降の金融市場混乱で円高が進んだ。
 今回追加緩和を行わなければ、1ドル115円を突破し、日経平均も1万6000円程度まで下落するリスクがかなり高かった。
 そうした“見送りリスク”を考慮して動かざるを得なかった」(小玉チーフエコノミスト)

  「円高進行を避けたかったのは確かだろうが、むしろ金融機関に実体経済を刺激するよう、促したかったのではないか。
 将来的には、法人口座預金の金利がマイナスになる可能性もあり、企業にもあらためて、内部留保の一部を設備投資や賃上げ、配当などに回せ、というメッセージを送ったものだと思う。
 特に賃上げに関しては、春闘を意識すれば、日銀にとって今回が最後のチャンスだった」(村田通貨ストラテジスト)

 一方で、多くの識者の間で一致している見解がある。
 「とりえあずサプライズではあったが、過去2回の緩和策に比べればインパクト不足」(小玉チーフエコノミスト)
であり、その効果、特に実体経済すなわち景気や企業への効果は限定的、ということだ。

■銀行が貸し出しを増やすかは疑問
株高・円安も長くは続かない可能性

 村田通貨ストラテジストは、
 「マイナス金利となるのは一部であり、+1%の部分のほうがはるかに大きいため、
 当座預金全体として見れば実はマイナス金利ではない」
と指摘する。
  「従って、効果はマーケットが最初に驚いたほどではないだろう。
 技術的にはマイナス幅を拡大することも可能であり、将来的には全体がマイナス金利となる可能性もある。
 金融機関がこれで追い込まれたのは事実で、資金は(当座預金への預け入れ以外のところに)しみ出さざるを得ない。
 だが、それが貸し出し増につながるかと言えば疑問だ。
 結局は株や不動産などのリスク資産に向かうのではないか」(村田通貨ストラテジスト)

  「経済の活性化につながる」と言う井出チーフ株式ストラテジストも、
 「足元で銀行の貸し出し増に需要があるかと言えば疑問であり、効果が出るまでには時間がかかるだろう」
とする。

 市場への影響という面でも、あまり期待はできない、という見方は多い。

  「株式市場は冷静に受けとめている。
 2014年10月の追加緩和では日経平均が当日で約755円、その後数日では1000円以上、上昇したが、今回は29日時点で477円というのはその表れだ。
 今後について言えば、1万8000円台への回復は少し早まったと思うが、その程度は実力値で放っておいても到達した。
 そんなことのために今回の決定を行ったとすれば、もったいない」(井出チーフ株式ストラテジスト)

  「“やはり量的なところ(国債・金融資産買い入れ)では限界があるから、金利という手段をとった”とマーケットは受けとめるだろう。
 株高・円安も長くは続かないのではないか」(小玉チーフエコノミスト)

 門司総一郎・大和住銀投信投資顧問経済調査部部長は、
 「インパクトは全くない」
と断じる。
  「これで株高・円安・デフレ脱却、となるかと言えば、ならない。昨年ECBが行った追加緩和では、資産買い入れ増額がなかったことで“失望売り”という結果になったが、それと同じようなものだ。
 タイミングとしては良く、株価上昇のトリガーにはなった。
 だが既に株価水準が低く、原油価格も下げ止まり、中国も悪材料出尽くしで投資家も押し目買いに動き始めているところだったため、実際には株価が上昇しても“日銀のおかげ”ではない。
 むしろ“やってもこの程度か”ということで、今後“黒田プレミアム”が剥げ落ちる可能性もある。
 日銀頼みの株式市場は決して健全ではなく、いずれ剥落は避けられないので、かえってそのほうが望ましい」(門司経済調査部部長)

■日銀が撃ち出した弾は
金融機関・企業・市場に届くのか

 黒田総裁は、金融決定会合後の会見で、
 「日銀が物価上昇率2%という目標に強くコミットし、そのためには何でもやる、と示すことが重要」
とし、
 「量的拡大が限界に達したということでは全くない」
 「今後は、経済・市場の状況に応じ、必要ならば“量、質、金利”という三つの次元でさらなる緩和を行う」
と強調した。

 実際、これで日銀の緩和手段が尽きたわけではない。
 状況次第で次の手を打ってくるだろう。
 今回、資産買い入れ拡大などの量的緩和は今後のオプションとしてあえて残した、との見方もできる。

 だが、“サプライズ”は、重ねるごとにそのインパクトが薄れるという面は否定できない。
 日銀はあくまで従来の金融政策方針を貫くのか、あるいはどこかで根本的な転換を迫られるのか。
 金融機関、企業、そして市場が、今回日銀が撃ち出した弾をどう受け止め、今後どう動くのかによって、答が見えてくることになるだろう。

(ダイヤモンド・オンライン編集部 河野拓郎)



朝日新聞デジタル 1月30日(土)8時40分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160130-00000014-asahi-bus_all

日銀、苦肉の「奇策」 マイナス金利導入



  株価の下落傾向が続くなか、日銀は金融緩和手法の転換に動いた
 大量に国債を買い、市場に巨額のお金を流し込む金融緩和を続けてきた日本銀行が、「マイナス金利政策」という新手法の導入に追い込まれた。
 欧州で先行例があるものの、日本では未知の政策に踏み込む。
 世界経済の先行きに不透明感が強まるなか、効果は出るのか。

■量的緩和、限界近づく

 「帰国後、仮に追加緩和を行うとしたら、どんな選択肢があるか検討してくれ」

 スイスで開かれた世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)へ先週末出発する前、黒田東彦(はるひこ)総裁は幹部にそう指示した。
 年明けから中国経済の不透明感や原油安による資源国経済の低迷を嫌って、金融市場は混乱。円高と株安が同時に進んだ。
 だが、日銀の追加緩和への期待が徐々にふくらみ、先週22日には日経平均株価が前日終値より941円も上昇。
 追加緩和を予想した投資家が先回りして買いに動いたためで、2014年10月の追加緩和とは打って変わり、日銀は市場との駆け引きで後手に回った。
 「一発逆転の威力を秘めた追加緩和の必然性は増している」(大手証券エコノミスト)。
 そんな見方が市場で広がった。

 帰国した黒田総裁に幹部が用意していたのは、金融機関が日銀に任意で預ける預金の金利をマイナスにする「マイナス金利政策」だった。
 欧州中央銀行(ECB)が一昨年から導入しているが、日銀には経験がない「奇策」だ。

 その背景には、近づきつつある現行の緩和策の限界があった。
 13年4月に大規模な金融緩和を始めた当初、日銀が長期国債を購入する規模は年50兆円だった。
 だが、14年10月の追加緩和で年80兆円まで拡大。
 それでも、物価はなかなか目標に近づかず、日銀が保有する国債は発行額全体の3割まで占めるようになった。
 「17~18年には限界が来る」との外部機関の調査報告が相次いでいた。

 ただ、29日の金融政策決定会合では、日銀執行部が提案したマイナス金利政策の評決は、14年10月の追加緩和時と同じ5対4と「薄氷」の差だった。
 石田浩二審議委員は
 「これ以上の金利の低下が実体経済に大きな効果をもたらすとは判断されない」
と主張し、効果に疑問を投げかけた。



ニューズウイーク 2016年2月5日(金)10時47分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/post-4464.php

黒田が見せた多彩な緩和手段、
マイナス金利決定の舞台裏
荒技を打ち出した背景には先行して導入した欧州の実態チェックも

 日銀が切った「マイナス金利」のカードは、市場の意表を突いて、株安・円高の流れを止めた。
 最も効果が出たのは、市場が「限界」と感じていた「緩和手段」が豊富にあることを示した点だ。
 それにより、投機筋の「円買い」を強くけん制する力を獲得したとも言える。
 その秘密裡に進んだ準備の裏側を探った。

◆黒田総裁の帰国直後に固まった方向性

 日銀の黒田東彦総裁は1月22日、スイス・ダボスで開催されている世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」に参加するため、あわただしく東京・日本橋本石町の日銀本店をあとにした。
 複数の関係筋によると、黒田総裁はその直前、現行の量的・質的金融緩和(QQE)の継続を前提に「追加緩和の案を用意するように」と事務方に指示した。

 24日(訂正)に帰国した黒田総裁は、休む間もなく事務方から追加緩和のオプションを聞く会合を持つ。
 そこで提示されたのは「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」だった。
 総裁は、これによって追加緩和の障害となっていた政策打ち止め感も払しょくできると判断。
 28、29日の金融政策決定会合で提案することが固まったもようだ。

◆先行した欧州各国との意見交換

 その間、事務方の準備作業は水面下で着々と進んだが、政府サイドでその動きを察知した関係者はいなかった。
 ある政府関係者は、日銀金融政策決定会合が開催される直前の27日夜、日銀の動きについて「今回はやらないとみている」と言い切っていた。
 密かに進められた日銀の事前準備の一つに、マイナス金利を先行して導入したスイス、スウェーデン、デンマークなどにおける実態チェックがあった。
 複数の関係筋によると、日銀はこれら3カ国と欧州中銀(ECB)を含めた複数の中銀と、マイナス金利政策を実行に移した場合に発生が予想される様々な現象について、かなり突っ込んだ意見交換を行った。

◆地銀危機を封印した3段階の階層構造

 その成果の一つが、当座預金を3段階に分ける階層構造の導入だ。
 当座預金残高の全てにマイナス0.1%の利率を適用すると、金融機関の経営に負担がかかるため、これまでに積んだ分はプラス0.1%を維持した。

 スイスなどは2階層となっているが、金融仲介機能を弱めることに配慮し、日銀は3階層とすることを決断した。
 ここで日銀が配慮したのは、地域金融機関の動向だったとみられる。

 地域金融機関の当座預金残高は、所用準備額を除くと約20兆円で、QQE)が始まって以降3倍に膨らんでいるが、昨年6月以降は横ばいで推移している。
 つまり、この基調が今後も継続するなら、地域金融機関全体として負担が急増し、金融システム不安が地方から起きるというリスクを配慮したということだ。

◆市場の目安になったスイスなどの先行例

 また、先行事例を研究した結果は、早速、日銀にとってプラスになる現象を生んだ。
 29日に発表した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入という発表文のページ1の脚注に、スイスでは0.75%、スウェーデンでは1.1%、デンマークでは0.65%とマイナス金利の先行例を明記した。

 その結果、市場の一部では
 「今後、追加緩和をする場合、マイナス金利を深くするのだろう。
 そのメドは、先行して実施しているケースが参考になる」(外資系証券の関係者)
との思惑が台頭。
 中には「マイナス金利に限界はない」(外資系銀の関係者)との声まで出てくるようになった。

 直前までくすぶっていた
 「日銀の緩和手段は、完全に制約されている」(国内大手銀関係者)
とのムードを払しょくした。

◆従来型QQEに立ちはだかった市場の制約論

 従来のQQEからマイナス金利付きQQEに、緩和政策の「立てつけ」を変更したのはなぜか──。
 複数の関係筋によると、日銀は従来のQQEを維持し、資産買い入れ額を80兆円から100兆円方向に増額しても、直ちに「制約」状況に直面するとは認識していなかった。
 しかし、日銀のQQEをシニカルに眺めている海外の投機筋だけでなく、これまで日銀に国債を売却し、QQEの中核であるマネタリーベースの拡大に協力してきた国内大手銀の中にまで「QQEは限界に接近している」(別の国内大手銀関係者)と言い始め、市場心理は「日銀に限界」という見方に傾きつつあった。

 そうした中で買い取り資産の増額を打ち出しても、「限界」が意識されると、「100単位」の効果が期待されても、現実には「70単位」程度かそれ以下の効果しか出ない展開も予想される。

◆投機筋が懸念する日銀の多彩な緩和策

 マイナス金利付きを導入すれば、スイスの0.75%までできると市場が判断するなら、あと数回は追加できると多くの市場関係者が連想する。
 さらに昨年12月に決めた補完措置を駆使すれば、量の拡張も1回だけと即断できなくなる。

 質の面では、ETF(上場投資信託)の増額も想定でき、これらを組み合わせれば、相当に多彩な選択肢が出来上がったことになる。

 複数の関係筋によると、この「多彩な選択肢」の獲得こそ、今回の政策対応の最大の眼目の一つであるという。
 実際、先の外資系証券の関係者は、日銀がたくさんの「武器」を手にした結果
 「ドル/円で115円を割り込めば、日銀は放置せずに追加緩和を実行してくるとの観測が多くなった。
 緩和前と比べ、円高方向の壁が厚くなった」
と指摘する。

 その意味で、今回の追加緩和は、円高─株安─企業心理の冷え込み─賃上げ・設備投資の意欲減退─デフレマインドの復活、という「逆戻りシナリオ」をとりあえず抑え込んだと言える。
 日銀の戦術は、短期的に成功した格好だ。

◆金融機関の収益低下

 ただ、手放しで喜べない要素も少なからずある。
 一つは、イールドカーブが一段と押し下げられ、金融機関の収益力が先細る構図が鮮明になったことだ。
 黒田総裁が1月29日の会見で指摘したように、デフレに戻れば金融機関の経営は危機に直面する。
 そうさせないための政策選択ではあるが、長期化すれば、地域金融機関など経営体力の弱いところから、足元がおぼつかなくなるリスクが高まる。

 石原伸晃・経済再生相は2日の定例会見で、知人の地銀頭取らから、マイナス金利が経営に及ぼす副作用については聞いている、と明言した。
 また、ある金融関係者は、当座預金金利をマイナスにしても、預金金利や貸出金利がマイナス金利になる可能性は小さいと指摘。
 「為替・株式市場以外の実体経済への波及効果は極めて乏しい。
 今後、国債市場と実体経済の分断がますます激しくなる」
と断言する。

 一方、10年の国債金利までマイナスになると、預金手数料など「顧客にコストを転嫁せざるをえない」(国内銀行関係者)との空気も金融界にはあるという。

◆政府の財政規律弛緩リスク

 先の金融関係者は、別のリスクも指摘する。
 国債金利の低下によって、政府の資金調達コストは確実に低下する。
 一方、大規模な国債買い入れを続けていく日銀の買い取り価格は上昇。
 「これは日銀から政府への所得移転を意味する。
 実質的な財政ファイナンスにさらに近づくことになる」
と予想する。

 別の金融関係者も
 「今でさえ、ばらまきと言える政策を取っている政府が、赤字国債の増発という誘惑に負けて、財政規律が一段と崩れることが最大の懸念材料だ」
と指摘する。

 さらに市場が注目するのは、3月米利上げの行方だ。
 もし見送りとなった場合、世界経済の唯一のエンジンである米経済への懸念が表面化し、リスクオフ心理に戻る展開も予想される。

 実際、原油価格が下落基調に戻る兆しを見せると、3日の米株市場が急落。
 4日の日経平均<.N225>は一時、前日比600円を超す下落となり、リスクオフに神経質な市場の最近の特徴を見せた。

 今のところ、ドル/円は119円台で推移しているものの、10日に予定されているイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の米議会証言の内容次第では、市場がリスクオフへの傾斜を強めるリスクが存在する。

 その時にマイナス0.1%で持ちこたえることができるのかどうか。
 日銀の新スキームの真価が、そう遠くない時期に問われる可能性はかなりの確率でありそうだ。

 (伊藤純夫 竹本能文 編集:田巻一彦)







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「一帯一路」という夢構想(4):「踏み絵」になってしまったインドネシア高速鉄道、中国がインドネシアの政府保証を求める

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 以前にも中国はフィリピンで請け負ったが、途中で投げ出してしまった。
 両国の政治問題もからんでいたのであろうが、今回のインドネシア高速鉄道は「一帯一路」稿相後のはじめてのプロジェクトであり、これを取得すべく強引にして破格の条件で日本から強奪したものである。
 それがためにも中国は威信をかけて臨んでいるはずである。
 もしこれが、フィリピンと同じような経緯をたどるようなら、「一帯一路」は実施の始めから躓き「悪帯長路」にもなってしまう。
 そうなれば中国の世界評価は一気に没落することになる。
 今、中国の人気は下降気味であり、
 周辺国は中国を信用に価する国、信頼できる国とは見ていない。
 この不人気を挽回するのが、お金の「バラマキ作戦」である。
 ゼニを見せびらかして見方を増やそうということである。
 その作戦の最初がこのインドネシア高速鉄道事業である。
 そのためにはなんとしても中国はこれを成功させたい。
 もし、それに失敗すると中国を見る他国の眼は相当に厳しいものになる。
 最後は軍事力しかない、ということにならないようにしないと中国の立場は危うくなる。
 言い換えれば、このインドネシア高速鉄道事業とは中国にとって踏み絵になってしまっている。


レコードチャイナ 配信日時:2016年1月30日(土) 7時0分
http://www.recordchina.co.jp/a128058.html

迷走のインドネシア高速鉄道、
中国が「工期内の完成」目指すも建設許可は線路5キロ分だけ―中国紙

 2016年1月29日、環球時報によると、中国が受注したインドネシアの高速鉄道建設をめぐり、一部プロジェクトで当局の許可が下りない中でのスタートだと報じられた問題に関し、現地の中国大使館関係者は28日、
 「インドネシア側と細かい点について踏み込んだ協議を続けている」
と説明、予定工期内での完成を目指す決心は揺るぎないとの考えを示した。

 首都ジャカルタとバンドンを長さ150キロの線路で結ぶ同事業は、今月21日に起工式が行われた。
 地元紙ジャカルタポストは27日付で、
 「企業からの書類提出が不十分なため建設許可を出していない」
 「このような事業はわが国にとって初めて。慎重な姿勢で臨みたい」
とする交通担当相の発言を紹介。
 香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは
 「中国とインドネシアがこの事業のために立ち上げた合弁企業は11の文書を提出する必要がある」
と指摘した上で、現段階で設計関連の資料や工程説明図などが欠けていると報じた。
 建設許可が下りているのは5キロ分だけだという。

 さらに、ジャカルタポストは
 「中国語で作成された一部文書は合弁企業に返却された。
 インドネシア政府が未翻訳の資料を基に事業評価を進められないからだ」
とも指摘。
 当局と企業の間には「敏感な問題」があり、交通担当相は
 「工事期間中にトラブルが生じても政府は責任を取れない。
 この点に関する保証がほしい」
と発言、
 当局が提示した条件には
 「何らかの原因で工事が終わらなかった場合、
 企業側が原状回復の責任を負う」
という項目が含まれている。



レコードチャイナ 配信日時:2016年1月27日(水) 14時50分
http://www.recordchina.co.jp/a127827.html

中国のインドネシア高速鉄道、許可下りる前に着工
=日本メディアの「見切り発車」報道
中国ネットが反論「最も効率的な建設方法」「日本は焦ってる」

 2016年1月25日、中国紙・参考消息によると、21日に起工したインドネシアの高速鉄道プロジェクトについて、日本メディアは
 「落札からわずか4カ月で建設を開始するのは例がない」
とし、一部のプロジェクトはまだ監督官庁の建設許可も出ておらず、見切り発車を強行する形になっていると報じた。


サーチナニュース 2016-02-02 06:32

「日本に任せれば良かった」と言わないよう、
ジャワ高速鉄道で早くもトラブル、
中国の杜撰さ

 インドネシア・ジャワ島の高速鉄道の受注競争において、中国は日本より遅れて競争に参入したうえで、インドネシア政府の財政負担や債務保証などを求めない破格の条件を提示、受注をさらっていったことは記憶に新しい。

 中国側が提示した破格の条件に対し、果たして本当に問題なく高速鉄道が開業できるのか、その後も問題なく営業を継続できるのかなどと疑問視する声が存在した。
 だが、開業はおろか着工式典が行われたばかりのインドネシア高速鉄道で、早くもトラブルが起きているようだ。

 中国メディアの新浪はこのほど、日本や英国メディアの報道を引用し、中国側がインドネシア政府側に提出した書類の大半は中国語で記載されており、政府関係者がプロジェクトの評価ができずにいると紹介。

 さらに、インドネシア政府側の見解として、中国側がまだ必要な書類を提出していないため、工事の許可証もまだ発行されていないとしたうえで、
 「インドネシア高速鉄道の工事は着工式典が行われてわずか1週間後に一時停止に追い込まれた」
と指摘した。

 一方で記事は、高速鉄道の建設のほか、運営を行う中国とインドネシアの合弁企業「インドネシア中国高速鉄道」の関係者は
 「着工式典は単なる式典だ。
 許可証が発行されれば工事は始まる」
と述べたことを紹介している。
 インドネシア中国高速鉄道の関係者の話は確かに間違っていない。
 だが、本当の問題は
 「当たり前のことを当たり前のようにできていない」という点ではないか。

 工事を行うには許可が必要で、そのために書類を提出して許可をもらうならば、完璧な書類を提出しようと思うのが普通だ。
 少なくとも、日本が受注していたら、このようなつまづきはなかったはずだ。
 必要な書類も未提出であるうえに、提出した書類も中国語で記載しているという点から、「当たり前のことを当たり前のようにできない」ことがわかり、工事そのものだけでなく、完成後の安全性すら信頼できないと言わざるを得ず、将来的に「日本に任せれば良かった」などという声があがらないことを願いたい。

サーチナニュース 2016-02-04 06:32

インドネシアが態度を急変させた! 
ジャワ島の高速鉄道で中国メディアが不快感

 日本との競り合いの末に中国が受注したインドネシア・ジャワ島の高速鉄道計画。着工式典が行われたばかりの計画に、早くもトラブルが生じ始めているようだ。
 日本や英国のメディアの報道によれば、中国側はプロジェクトを進めるにあたって必要となる一部の書類をインドネシア政府に提出していないほか、提出した書類の大半は中国語で記載されており、インドネシアの政府関係者がプロジェクトの評価ができずにいるという。

 こうした中国側の動きに対し、インドネシアの現地紙は「準備不足」、「計画が失敗に終わる可能性は高い」などと批判している。
 日本と受注を競った中国側は、なりふり構わぬ形で受注をさらっていったが、インドネシア紙が指摘しているとおり、明らかに準備不足としか言いようがない状況だ。
 しかし、中国メディアの突襲新聞はジャワ島の高速鉄道計画が
 「不完全な書類と未解決の問題を理由に、一時停止に追い込まれた」
と伝えている。

 記事は、インドネシアの政府関係者が
 「必要な書類が提出されていないため、プロジェクトに対して許可を出していない」、
 「プロジェクトに対する評価も完了していない」
と述べたことを紹介。
 一方で、インドネシアの態度について、
 「中国が世界に高速鉄道を売り込むための努力に対する打撃である」
と主張したうえで、
 「インドネシアが態度を急変させた」
などと主張、自国の不手際を棚に上げてインドネシアに対して不快感を示した。

 中国がジャワ島の高速鉄道計画をなりふり構わずに受注しようとしたのは、中国が自国の影響力を高める「一帯一路」戦略が背景にあったとの見方もある。
 「一帯一路」を推進するためには、ジャワ島の高速鉄道は今後のロールモデルとして何が何でも成功させる必要があると推測されるが、それだけ重要な存在であるにもかかわらず、
 「受注さえしてしまえば、その後は杜撰」
という形では、今後の中国高速鉄道の売り込みにおいても悪影響が出るのではないだろうか。




レコードチャイナ 配信日時:2016年2月5日(金) 13時20分   

インドネシア高速鉄道、「誤ったイメージ持たれている」
=建設許可めぐる問題で大統領府が火消し―中国紙

 2016年2月4日、建設許可が不十分なままでスタートしたと報じられたインドネシアの高速鉄道建設事業をめぐり、同国大統領府は「この問題で工事が中断されたりはしない」との考えを表明した。5日付で環球時報が伝えた。

 インドネシア高速鉄道は中国が日本との競争に競り勝ち、受注を獲得。
 先月21日に起工式が行われたが、提出書類不備の問題から一部プロジェクトには当局の建設許可が下りていないと伝えられている。 

 この問題について英BBCから取材を受けた大統領府報道官は
 「プロジェクト全体で許可が下りていないといった誤ったイメージが持たれているようだ」
と語り、
 「無許可のままで起工式を開催するなどあるはずがない」
と指摘。
 その上で、「(建設許可の問題で)工事が中断することなどない」と工事の継続を強調した。

Global News Asia 2月5日(金)4時39分配信

中国がインドネシアの政府保証を求めるー高速鉄道計画

 2016年2月4日、現地メディアによると、高速鉄道計画の中国案採用を積極的に勧めた国営企業大臣は
 「中国側がインドネシア政府の保証を求めている」
と明言し激震が走った。
 中国案を採用した理由は『中国は、
 インドネシア政府の債務保証を一切求めないこと』だったからだ。

 しかし、大統領令(2016年第3号)には「政府保証を行う」と明記されていた。
 この問題について国営企業大臣は、法律面だけで事業資金の事ではないと苦しい言い訳をしているが、批判の的になっている。

 インドネシアの高速鉄道計画は、政権内部で混乱の原因になっている。
 1月21日の高速鉄道の起工式に担当の国土交通大臣が欠席したことから、注目を集め露見した。

 国土交通大臣は
 「私は高速鉄道の認可についての手続きをするだけで、この計画が正しいのか、必要なのか、採算性はあるのかについては国営企業大臣に聞いてほしいと」
と話しを濁している。
 
 以前から国土交通大臣は、日本案を高く評価しており、中国案の採用が決まった時に「国土交通省は、高速鉄道の認可についての手続きをするだけで、計画について責任は持てない」と不安を示していた。

 国土交通大臣の不安は的中しており、許可申請の書類も中国語で提出するなど、中国側の対応は杜撰だ。
 従来、提出書類の言語はインドネシア語だけだったが最近は英語での提出が認められるようになった。







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2016年1月28日木曜日

零戦 里帰り飛行 2016年1月27日:

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●【地上カメラ】零戦 里帰り飛行 2016年1月27日  ~飛行まで
2016/01/26 に公開 零式艦上戦闘機 里帰り飛行

海上自衛隊鹿屋基地

●【パイロット&一部地上カメラ】~零戦 里帰り飛行~  日本の空に零式艦上戦闘機を飛ばす 【BGMカット版】
2016/01/27 に公開
説明平成28年1月27日

海上自衛隊鹿屋航空基地にて
株式会社ゼロエンタープライズ・ジャパンさん企画の
零戦22型のテスト飛行が行われました。
そのテスト飛行のパイロットカメラからの映像で
ニコニコ動画のライブ映像「パイロットカメラ」を録画した映像になります。

先ほどあげた動画のBGMなしの映像追加バージョンになります。
エンジン音などが聴こえるようになっていると思いますが
録画の都合上一部音が途切れてしまっています。
その旨、ご了承のほどお願いします。


太平洋戦争後にパプアニューギニアで回収され、
米国で復元された零式艦上戦闘機(零戦)が27日、
海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)で行われた
テスト飛行で72年ぶりに日本の空を飛んだ。
(Yahooニュースより原文引用)


サーチナニュース 2016-01-26 14:33

零戦は「殺人魔機だ」 
中国メディアが「醜名とどろく飛行機」と罵倒、「
日本での復活飛行は安倍政権の意向が関係」と決めつける

 旧日本海軍の零式艦上戦闘機(零戦)の試験飛行が27日、鹿児島県鹿屋市の海上自衛隊鹿屋航空基地で行われることを受け、中国メディアの環球網は26日付で「日本で明日、第二次世界大戦の『殺人魔機』が復活飛行。
 戦後初の登場」と題する記事を発表した。

 記事本文でも最初の部分で、「第二次世界大戦終了後、同機型(零戦)が初めて日本の空に出現する。
 『第二次世界大戦殺人魔機』の『復活』と見なされていると強調した。

 日本における零戦の飛行復活を進めてきたのは、ニュージーランド在住の実業家、石塚政秀氏だ。
 環球網は日本メディアを引用して、石塚氏の取り組みや日本政府の反応を紹介したが、石塚氏が零戦を「日本のものづくりの原点」と強調していることには触れていない。

 記事は、石塚氏の取り組みを紹介した次に、改めて
 「零戦は中国侵略戦争にも参与した。
 戦争末期には『神風特攻隊』として自殺攻撃を行うさいの、主たる機種だった。
 第二次世界大戦時の『殺人魔機』として醜名がとどろいている」
と、改めて零戦を非難した。

 日本政府が零戦の国内飛行を認めたことについては、
 「第2次安倍内閣の発足以来、日本政府はこの種の罪悪戦争の『殺人神器』の記憶を増やしている」
と主張。

 さらに、
 「今回の零戦の復活飛行を許可する前にも日本はヘリコプター空母の出雲(いずも)を2013年8月6日に、ヘリコプター空母の加賀(かが)を2015年8月27日に進水させた」、
 「出雲も加賀も第二次世界大戦中の日本の主力航空母艦であり、米軍に撃沈された」
と論じた。

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◆解説◆
 零戦の初飛行は1939年で、制式採用された皇紀2000年(1940年)だったことから、零式艦上戦闘機と名づけられた(航空機名に皇紀を用いるのは、敵に開発時期を伝えているのと同じとの理由で、後に取りやめられる)。

 零戦は極限までの軽量化、定速回転プロペラ、超々ジュラルミン、剛性低下式操縦索など、機体設計で当時の最新技術が込められていた。
 特に格闘性能、操縦性のよさがもたらした射撃命中率のよさ、航続距離の長さなの優れた点があった。
 ただし、軽量化のために機体の強度などを犠牲にした面があり、急降下の限界速度が低く、被弾した際の防御も考えられていなかっため、戦争の進行とともに撃墜されるケースが増えた。

 零戦が初めて実戦を行ったのは1940年9月12日。
 重慶市近くの上空で零戦13機が中華民国軍の戦闘機34機の編隊と戦闘になった。
 中国軍はソ連製戦闘機のI-15、I-16を使用していた。
 零戦は機数が半数以下だったのにもかかわらず、27機を撃墜した(中国側発表は被撃墜13機、被撃破11機)。
 日本側は1機が被弾したが、撃墜された機はなかった。

 日本は敗戦にともない航空機開発が禁止された。
 そのため航空関連の技術者は自動車や鉄道の開発に携わるようになった。
 現在の自動車産業や新幹線技術の基礎を築いたと言える。

 写真は米国のシアトル市上空を飛行する零式艦上戦闘機(22型)。
 2013年6月29日撮影。

中国製造業に必要なもの(4):「中国の過剰生産能力淘汰、  一つの業界で40万人が失業か」

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レコードチャイナ 配信日時:2016年1月28日(木) 8時10分
http://www.recordchina.co.jp/a127538.html

過剰生産能力の淘汰を進める中国、
失業者300万人の痛みに耐えられるか―中国メディア

 2016年1月26日、新華網は記事
 「中国の過剰生産能力淘汰、
 一つの業界で40万人が失業か」
を掲載した。

 先週開催された国務院常務会議では鉄鋼業界の過剰生産能力の淘汰が協議された。
 過去数年で9000万トン以上の製鉄能力を淘汰してきたが、
 さらに1億〜1億5000万トンの粗鋼生産能力を淘汰する。
 新規建設は原則的には認めない方針も決まった。

 昨年末に開催された中央経済会議で、過剰生産能力の淘汰は2016年の5大課題の一つに位置づけられている。
 取り組みが続くなか失業問題に注目が集まっている。
 中国冶金工業計画研究員の李新創(リー・シンチュワン)院長は
 製鉄業界の減産で40万人が失業するとの見方を示した。
 関連産業の影響を含めれば影響はもっと大きく、社会の安定に影響しかねないと危惧している。

 一方、影響は軽微との見方もある。
 中金公司のレポートによると、
 今後2〜3年で製鉄、炭鉱、セメント、造船、アルミ、ガラスの各業界で30%の減産を実施した場合、300万人が失業するという。
 この数は都市就労者の0.3%に過ぎず、大きな影響はないと結論づけている。(翻訳・編集/増田聡太郎)



レコードチャイナ 配信日時:2016年1月31日(日) 6時30分
http://www.recordchina.co.jp/a128012.html

中国メディア「円安元高で撤退した日本企業は巨大市場失う」
に「典型的な阿Q精神」と中国人、
日本人「中国の時代は終わり」

 2016年1月29日、中国メディア・今日頭条はこのほど、最近の人民元安について
 「円安元高の時に中国から日本撤退した企業は巨大市場を失う」
との記事を掲載した。
 これに中国のネットユーザーは「典型的な阿Q精神(精神勝利法)」などと反応、
 日本のネットユーザーは「もう中国の時代は終わり」などの声を上げている。

 記事は、人民元安が日本に与える影響について分析。
 「円安元高の時に中国から撤退した企業は円高元安になった今、そのメリットを失いつつある。
 中国より人件費が安い国はインフラや設備が中国よりずっと遅れており、
 設備の整った国は人件費が中国より高い」
と指摘。
 何より、中国を撤退することで巨大な中国市場を失うことは大きなデメリットだと論じた。

 これに対し、中国のネットユーザーからは
 「これは典型的な阿Q精神(精神勝利法)ですね」
 「こんなのただの自己陶酔にすぎない」
 「人民元安は中国の庶民に大きな影響となっている。
 物価が上がり、銀行金利が下がった。
 庶民の家計は火の車だよ!」
 「日本も米国も泣いていないし、中国の役人も泣いていない。
 大泣きしているのは中国の庶民」
などの書き込みが集まった。

一方、日本のネットユーザーは
 「もう中国の時代は、終わりだと思うけどな。 
 今、日本が目を向けている国は、インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国。
 日本企業はもう中国には戻らないだろう。
 基盤技術の強化に投資せず、不動産に投資している国に未来はない」
 「日本企業が中国から撤退するに至ったチャイナリスクは為替の問題ではないのだが」
などとコメント。

 さらに
 「道路などだけがインフラじゃない。 
 人や社会もインフラだ。 
 中国は道徳が崩壊し賄賂が横行、
 法の順守もないのでリスクが大きすぎる。 
 人件費の増大は一部でしかない」
 「撤退理由が為替レートだけと思ってるところが痛々しい」
などとも言及している。


サーチナニュース 2016-01-31 20:18
http://biz.searchina.net/id/1601239?page=1

日本から輸入しないとボールペンも作れない中国、
技術力に大きな偏り

 年間で約400億本ものボールペンを製造している中国だが、ペン先のボールやインクなどの技術は輸入に依存している。
  高速鉄道を自国で生産できる中国だが、その技術力には大きな偏りがあると言わざるをえない。

 中国メディアの新華社はこのほど、中国がボールペンのペン先を製造できない理由について分析する記事を掲載した。
 ボールペンの要となるのはペン先とインクだ。
 そのうちペン先はボールとボールの台座に分けられるが、中国には台座の生産技術がなく、スイスや日本といった国に技術を掌握されているという。
 また、国外の生産設備は原材料に対する要求が高いため、
 国産のステンレス材を使用できず
 日本の快削ステンレス鋼線材に頼らなければならないという。
 さらにこれに合うインクもドイツや日本などの国から輸入しなければならず、材料や設備は輸入頼みという現状だ。

 ボールペンのペン先には、ボールのほかに5本のインクを導く溝があり、加工精度は0.001ミリレベルと高精度が求められる。
 さらに書く角度や圧力などを考慮して、ボールとペン先、インクの溝が絶妙なバランスでなければならず、加工誤差は0.003ミリ以内に収める必要があることも、中国での生産を難しくしているようだ。

 では、中国は宇宙船や高速鉄道を造り出せるのに、どうして鋼材は輸入頼みなのだろうか。
 これは技術的な問題というよりも研究を行う動機づけが不足しているからだという。
 ペン製造に使用する鋼材量は少なく、利潤が薄いため研究開発するより輸入に頼ってしまうようだ。

 しかし、中国も2011年からペンの研究開発プロジェクトがスタートし、国も資金面でサポートを開始した結果、インク製造やペン先のステンレス材、加工設備等の科学技術力が向上し始めているという。
 記事は結論として
 「中国は製造大国から製造強国へと進化するため、
 先進技術と設備を持ち、
 世界で真に一流の製品を作り出し、
 そのうえ絶えず改良する匠の精神を育成しなければならない」
と結んだ。



サーチナニュース 2016-02-01 15:11
http://news.searchina.net/id/1601328?page=1

中国の技術は日米独に敵わない、
手元にある技術は競争力不足

 経済成長率が低迷する中国が抱える問題の1つに、生産能力の過剰がある。
 2008年の世界金融危機の際、中国は4兆元(約72兆円)の景気刺激策を打ち出し、内需拡大を図ったが、それは過剰投資につながり、鉄鋼をはじめとする各産業で生産能力の過剰となっている。

 また、生産能力が過剰となっている技術はいずれも質が劣り、競争力の低いものばかりで、競争力の高い製品を生み出せるような技術については欠乏するという矛盾まで抱え込んでいる。

 中国メディアの証券時報はこのほど、中国政府も生産能力の過剰については極めて深刻な問題であることを認識しており、2016年の主要な改革任務の1つに挙げていることを紹介し、特に鉄鋼や石炭などの産業が対象になると伝えている。

 記事は、中国の各産業では技術力が低いうえに生産能力の過剰によって生産の稼働率が低下し、製品の価格も下落が続いていると指摘。
 特に鉄鋼メーカーは極めて深刻な状況にあるとし、生産能力の過剰を解消することは重要な改革に値すると論じた。

 一方で、中国の鉄鋼業界で生産能力の過剰を解消できたところで、高品質な製品を作れるようになるわけではないと指摘し、品質が高く、競争力のある製品を造るうえでは日本や米国、ドイツとは大きな力の差があると指摘。

 その力の差こそ、中国人旅行客が日本で温水洗浄便座を買い求めるという行動に現れていると指摘し、中国は世界の工場として名を馳せたが、製品を造るために必要な高品質な金型や質の高い原材料などは輸入に頼っていたのが現状であると論じた。









【激甚化する時代の風貌】



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