2016年2月6日土曜日

日中開戦の可能性(3):ステルス戦闘機「F-35」は「劣化版ラプターF-22」なのか

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乗りものニュース 2015年2月6日(土)10時35分配信

ステルス機F-35、今夏にも空自受領へ 
劣化版F-22は誤った認識

◆愛知県内の工場で組み立てた機体も来年度に

 2016年1月28日(木)、ロッキード・マーティン・ジャパン社のチャールズ・ジョーンズ社長は、日本向けとなるF-35A「ライトニングII」戦闘機AX-1(初号機)が、アメリカ会計年度第4四半期中(2016年7~9月)にも完成し、航空自衛隊への引き渡しを行える予定であることを明らかにしました。
 初号機の引き渡しは、ロッキード・マーティン社の米・フォートワース工場にて行われるとのことです。

 日本は現在、この最新鋭の
 第5世代ステルス戦闘機F-35Aを42機調達する計画であり、
今年度中(2016年3月)に4機(AX-1~4)の引き渡しを受ける予定です。
 日本への輸送時期やその方法については明らかにされていませんが、まずアメリカ本土において最低限の日本人操縦者の育成を行ったのちに、恐らく来年以降に自力でのフェリーフライト(回送飛行)が行われるとみられます。

 また、三菱重工の小牧南工場(愛知県)でF-35の最終組立・検査工場(FACO)が稼働したことに伴い、部品を船便によって逐次輸送していることも明らかにしました。
 小牧において組み立てが開始されたAX-5(5号機)以降の機体は、来年度に引き渡される予定です。

◆高性能なF-22を売ってもらえず、仕方なく導入したF-35?

 F-35Aは航空自衛隊が配備するF-4EJ改「ファントムII」の後継となる次期主力戦闘機であり、レーダーなどのセンサーに捉えられにくい超低視認性を特徴とする、いわゆる「ステルス機」です。

 航空自衛隊は当初、F-4EJ改の後継機選定において、
 「世界最強」ともいわれるロッキード・マーティンF-22「ラプター」を希望
していました。
 しかし、アメリカ政府が難色を示し導入が不可能になり、その後にF-35Aの導入が決定された経緯から、一部に「F-35はF-22の性能低下型」という認識があるようですが、それは事実と大きく異なります。

 F-35Aの情報収集および処理能力については、既存の戦闘機をはるかに凌駕する高性能レーダーや赤外線など各種センサー、ソフトウェアを有しています。
 また複数のデジタルデータリンクを活用した情報共有能力によって、自身の得た情報を友軍に分配。
 F-15J「イーグル」やF-2Aといった旧型の戦闘機にも、F-35Aに準ずる状況認識力を与えることが可能です。
 さらに弾道ミサイルの監視能力まで備えています。

◆災害発生時にも活躍できる戦闘機

 空中戦のみならず地上の様子を映像で取得し、準リアルタイムで地上に送信することもできます。
 現在、航空自衛隊はRF-4E「ファントムII」偵察機を保有していますが、RF-4Eの主要なカメラはいまどき珍しい「フィルム」を使っており、地上に持ち帰って現像・印刷したのちに、必要な場所へ写真を運ばねばなりません。

 震度5弱以上の地震が発生した場合、自衛隊は自主的に情報収集を行うことができます。
 対領空侵犯措置のためにアラート待機中の戦闘機もスクランブルさせますが、F-15JやF-2Aはパイロットによる目視確認と音声による被害状況の伝達のみ可能で、特に夜間は何も見えずに帰還し、後続のヘリの到着を待たねばなりません。
 しかしF-35Aならば、初動の段階で素早く映像を取得できます。

 F-22は空中戦に特化しており高い機動性を持ちますが、F-35Aのような多様な情報収集は不可能であり、またレーダーを使って得た情報はF-22の編隊間でしか共有できず、コミュニケーション能力に欠けています。
 F-35Aによって自衛隊の情報収集能力が大きく改善し、ほかの戦闘機の能力も引き上げられることを考えれば、F-35Aの導入は正しい選択であったといえるかもしれません。

 F-35Aは、今年度中にアメリカ空軍でIOC(初期作戦能力)が宣言されるーー簡単にいえば実用化される見込みであり、すでに垂直離着陸戦闘機型のF-35Bは実働体制に入っています。
 そして
 航空自衛隊はF-35Aを今年度中に引き渡されますが、
実用化までにもう3~4年は必要となる見込み
です。

Writer: 関 賢太郎
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

乗りものニュース 2015.12.27 関 賢太郎

光速度兵器、ステルス破り 
見えてきた第6世代戦闘機

 戦闘機の「第6世代」への進化が、少しずつ具体的になってきました。
 この「第6世代」では、何が実現されるのでしょうか。
 「SFの世界」が近づいているのは、確かなのかもしれません。

◆“商戦略”だった戦闘機の「世代」

 今年2015年、ロッキード・マーティン社(米)の最新鋭戦闘機で自衛隊も導入予定のF-35「ライトニングII」が、初期作戦能力を獲得。
 米海兵隊において実用化されました。
 F-35は「第5世代戦闘機」と呼ばれる区分の機種であり、
 同じく第5世代戦闘機としてはロッキード・マーティンF-22「ラプター」があります。

 現在、中国やロシアでは第5世代戦闘機と推測される成都J-20やスホーイT-50の開発が進んでおり、これらの戦闘機も数年のうちに実用化される見込みとなっています。もうまもなく、第5世代戦闘機はありふれた存在となるでしょう。

 こうしたなかにあって、いよいよ次世代の「第6世代戦闘機」のコンセプトも相次ぎ公表されるようになってきました。
 去る12月12日(土)にもノースロップ・グラマン社(米)は、2035年頃の初期作戦能力獲得を見込んだ、F-22やF-15、F/A-18E/Fの後継機となる第6世代戦闘機の構想図を発表しました。

 そもそも戦闘機の「世代」とは、なんなのでしょうか。
 実は20世紀以前の航空雑誌などにおいては、「第〇世代」という用語はまず見かけることはありませんでした。
 これはロッキード・マーティン社が自社の新製品であるF-22やF-35を「第5世代」と呼称し、他社の競合機を「第4世代」とすることで差別化を図る“商戦略”として登場した言葉なのです。

 ですから競合他社、例えばボーイング社はF/A-18E/F「スーパーホーネット」を「第4世代」と呼ばれることに不快感を露わにしています。
 とはいえ、直感的に理解しやすい区分けだったこともあり、戦闘機の「世代」なる用語はロッキード・マーティン社の思惑通り、世界的に定着してしまいました。

◆「第6世代」は光の速さで

 現在、「第4世代戦闘機」の主流は自衛隊機ならばF-15、F-2といった機種が該当し、
 「ほぼ進化の限界に達した機動性」
 「高性能なレーダーによる視程外距離交戦能力」
 「高い命中精度を誇るミサイル」
の搭載などを特徴とします。

 そして「第5世代戦闘機」は
 「ネットワーク中心戦闘能力」
 「さらに高性能なAESAレーダー」
 「センサー融合」
 「ステルス性」
などが特徴です。
 また第4世代戦闘機のうち、第5世代戦闘機の能力を一部取り込んだ機種を「第4.5世代機」などと呼ぶこともあります。
 例えば先述のF-2は第4世代戦闘機ですが、AESAレーダーを搭載しているほか、ネットワーク中心戦闘能力の付加も行われる予定です。

 それではいったい、「第6世代戦闘機」ではどのような能力が実現するのでしょうか。
 ノースロップ・グラマン社のコンセプト図や、過去にボーイング社が公表した「F/A-XX」、ロッキード・マーティン社の「ミスフェブラリー」、防衛省技術研究本部の「i3ファイター」などからその未来を探ってみます。

  ノースロップ・グラマン社によるコンセプト図を見て目につくのは、なんといっても「レーザー兵器」です。

 強力な赤外線によって対象を焼き切る「赤外線レーザー」は、エネルギー効率の問題を抱えており、放熱システムや熱効率の向上によって解決を見込みます。
 しかし電波で対象の電子回路を破壊する「高出力マイクロ波」は、すでに実用されつつあります。
 これらの“光速度兵器”は「指向性エネルギー兵器」とも呼称され、接近するミサイルを迎撃する「バリアー」を実現します。

◆戦闘も「クラウド」へ

 第6世代戦闘機の機体には、電波を吸収しレーダーに対して不可視となる「メタマテリアル」が多く用いられ、ステルス性はさらに高まるでしょう。

 ただし、「ステルス破り」もまた同時に進化します。
 そのキモとなるのが、さらに高度化されたネットワークです。

 「ステルス」とは、あくまでも発見される確率を下げる技術。
 複数の戦闘機や早期警戒機のレーダーなどをネットワーク上においてひとつに統合することで、誰かのレーダーで見えている敵機を自分で見えているのと同様に扱えるようにしてしまえば、敵ステルス機の発見確率を大幅に高めることが可能です。
 これは「クラウドシューティング」「統合火器管制」などと呼ばれています。

●防衛省が発表した第6世代戦闘機「i3ファイター」のイメージ。
 「指向性エネルギー兵器」「統合火器管制」「ロボット僚機」などを実現する(画像出典:防衛省)。

 また、人工知能で自律交戦する無人戦闘機(UCAV)の実用化も行われ、1機の有人戦闘機に5機程度のUCAVがロボット僚機として作戦を支援するようになるでしょう。

 第6世代戦闘機には数兆円の予算を必要とするため国際共同開発が主流とり、単独開発は恐らく中国以外は不可能です。
 また開発には10年以上の歳月が必要ですから、数年のうちには開発がスタートすると推測されます。
 レーザー兵器や無人戦闘機が活躍する「SFの世界」はまもなく、現実のものとなるかもしれません。






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